2019年4月16日

オールフラッシュストレージへの最適な移行方法

主要なアプリケーションで要求されるI/Oの性能は増大し続けています。使用しているインフラストラクチャを最新のオールフラッシュストレージアレイに移行すると、これまで以上に大きな価値とパフォーマンスを得られるでしょう。

一般に、新しいテクノロジーは高価です。革新的な新しいテクノロジーを採用するときは、通常、パフォーマンス向上と新機能によって得られるメリットが最も大きなケースから開始します。このようなやり方は、ストレージがテープからディスクに移行したときと同様です。

フラッシュストレージが最初に普及してきたときには、限られたアプリケーションや、フラッシュと回転ディスクストレージの両方を使用するハイブリッドストレージアレイでのみ使用されていました。今や、そのテクノロジーと優れた経済性により、データセンターの主なアプリケーションでオールフラッシュストレージアレイを利用でき、手頃な価格で十分な信頼性が確保されるレベルに到達しました。

パフォーマンス上のメリットは注目に値します。フラッシュのスループットは回転ディスクストレージの何倍もの値であり、レイテンシは回転ストレージではミリ秒単位ですが、フラッシュではマイクロ秒単位に短縮されます。最新のオールフラッシュアレイは、従来のものより大幅に実装密度が高くなっており、さらに省スペースかつ効率的な設置が可能になりました。しかし、まだすべての目的にフラッシュを採用することはできません。ストレージに対して注意深く慎重なアプローチを取れば、予算に見合った最高の価値を得ることができます。

 

適切なメディア

オールフラッシュアレイは、既存の階層的なプライマリストレージシステムの最上位で新しいレベルのパフォーマンスを発揮します。さまざまなデータセットは、そのニーズや特性ごとに異なる保存方法に対応付けられます。

プライマリストレージのキャッシュ層にフラッシュやハイブリッドストレージを使用していた場合、オールフラッシュストレージはキャッシュ層とキャパシティ層の双方で役立ちます。このような目的に適した、より高密度で低価格のさまざまなフラッシュストレージがあります。

ほとんどアクセスされないようなデータが特に多数あるような場合は、より安価なディスクデバイス上のセカンダリストレージに格納するのが適しています。わかりやすい例として、大きなサイズの履歴イメージやドキュメントライブラリ、一般にオブジェクトストレージとして知られるその他の用途が挙げられます。このようなデータは利用できる状態にあることが求められますが、頻繁にアクセスされたり、定期的なレポートで使用されたりすることはありません。データアクセスの頻度が少なくなると、ある時点からはテープが最適な保存方法になります。テープはおそらく、オンラインライブラリやコールドストレージで使用されています。たとえば、銀行に8年前からの口座取引明細を請求した場合、受け取るまでに数日かかると考えられます。このように低速な保存方法のニーズは、今後も長期にわたって残るでしょう。

最新のクラウドシステムが備える高度な機能により、このような手法の価値はさらに高まります。通常、ストレージをいずれかの層に割り当てる操作は、一般化されたポリシーに基づいてインフラストラクチャレベルで行われますが、最新のアプリケーションでは、インフラストラクチャから提示されるオプションに基づいて特定のタスクに使用するストレージクラスの決定に関わることができます。このような場合、アプリケーションとインフラストラクチャを最適化すると、総所有コストが削減されます。

さらに、ストレージシステムの設計が優れていると、フラッシュを超える次世代ストレージにも対応できるため、運用を中断することなくストレージをアップグレードできます。

オールフラッシュストレージではストレージ管理の負担が軽減されるというメリットもあります。ハードディスクドライブには、ランダムアクセスとシーケンシャル操作の間でパフォーマンスに大きな違いがあるといった特徴があるため、ピーク性能で稼働させるには絶えず管理する必要があります。ランダムアクセスのみのオールフラッシュストレージでは、そのような手間は必要ありません。ハードディスクドライブに比べれば、パフォーマンスのチューニングは単純な問題です。

 

適切なコントローラー

最新のストレージシステムでは、階層間のデータの管理、割り当て、および移動は、ポリシーに基づいて自動的に実行されます。このような操作を実行するストレージ管理ハードウェアとソフトウェアのインテリジェンスは、デバイスとストレージネットワーク全体で最適なパフォーマンスを得るための鍵となります。システムには、パフォーマンスを最大限に高めつつ無駄を最小限に抑えることが求められます。

高速なストレージメディアは、最適化されたストレージシステムを構成する1つの要素に過ぎません。ストレージメディアの種類にかかわらず、ソフトウェアとコントローラーのロジックは、容量の使用効率に大きな違いをもたらします。ストレージコントローラーでは、ストレージの使用効率を最大限に高めるために、あらかじめ設定されたポリシーを使用します。

重複排除、つまり、すでに他の場所に書き込まれたデータをコントローラーが検出する機能は、この点で重要な手法です。パフォーマンスに負担をかけずに重複排除を行うには、ストレージコントローラーのロジック内でのインライン実行が必須です。スマートなストレージコントローラーは、ゼロのための領域を割り当てたり、変更されていないデータを層間で移動したり、実際にはまだ必要でない領域を予約したりすることはありません。

ストレージシステムが備えるハイエンド機能の多くは、ホストソフトウェアによって直接制御されています。マイクロソフトやVMwareのハイパーバイザーソフトウェアでは、それぞれのインターフェイスを使用して、コントローラーベースの高度なストレージ操作が可能です。Dockerなどのコンテナー化された環境であっても、ストレージ管理インターフェイスを使用して、ステートフルコンテナーの展開時にリソースのプロビジョニングを最適化できます。

 

適切な費用

オールフラッシュアレイは、優れたパフォーマンスに加えて、回転ディスクストレージよりも高い信頼性を備えています。インテリジェントなストレージコントローラーから得られたデータを使用して、この信頼性とクラウドベースの分析を組み合わせれば、オールフラッシュストレージに移行することでメンテナンス費用の大幅な削減が期待できます。

オールフラッシュストレージと最新のストレージインフラストラクチャでは、その他の節約も期待できます。現在のモデルを使用すると、企業はSANとNASのインフラストラクチャを統合できるようになるため、データセンターの間接費が削減され、両方のインフラストラクチャのパフォーマンスが向上します。

ストレージと周囲のシステムのアップグレードによって生じる運用中断のコストが心配になるかもしれませんが、適切な計画を立てればダウンタイムは不要になり、将来のアップグレードが容易で中断が不要になるような基盤を作ることができます。

フラッシュストレージデバイスは回転ディスクストレージに比べて小型かつ軽量であり、動作温度も低いため、多くの企業では、オールフラッシュアレイのサイズ、重量、冷却面での節約効果を認識しています。このような特徴によって、インフラストラクチャの物理的な管理作業が容易になるだけでなく、さらに高密度な設置が可能になるため、設備のコスト削減につながります。部品やサポートなど、ストレージアレイのライフサイクル全体の運用コストが削減されるので、場合によっては膨大な金額を節約できます。

 

適切なポリシー

使用するアプリケーションとアプリケーションでのデータの使用方法に関する知識さえあれば、オールフラッシュアレイを適切に構成できます。そのため、データを分類して優先順位を付ける必要があります。高スループットと低レイテンシのニーズが高いアプリケーションでは、フラッシュストレージへのアクセスによって最大限のメリットを得られます。

オールフラッシュストレージを使用すると、最小限のレイテンシで最高のパフォーマンスが得られます。アプリケーションとワークロードのパフォーマンスのプロファイリング作業は、最適なストレージ構成を決定するうえで欠かせませんが、それ以上に重要な点は、オールフラッシュに移行する必要があるアプリケーションと低コストのストレージ層に移行できるその他のワークロードとの間に優先順位を付けることで、TCOをさらに削減できることです。

ストレージのパフォーマンスを適切に分析することは困難な作業であり、ラボのリソース、時間、そしておそらく外部の専門家の助けが必要となります。ストレージシステムを最高のパフォーマンスで稼働させるための情報や、将来の計画を立てるのに役立つ情報を得られるので、最終的には、そのために費用をかける価値があるでしょう。また、そのようなテストでは、これまでに気付かなかった問題が明らかになることもあります。

 

適切な計画

これからインストールする新しいハードウェアの寿命が来るずっと前に、より優れた新しいテクノロジーが利用できるようになります。必要なワークロードは着実に増加していくので、オールフラッシュアレイと同様に、そのようなテクノロジーへの投資は適切だと判断されるでしょうが、業務を中断せずに新たなテクノロジーを導入することができるでしょうか。

アップグレードは常に将来を見据えて行う必要があります。今日、新しいテクノロジーとしてSCM (ストレージクラスメモリ) とNVMe (Non-Volatile Memory Express) があり、これらはRAMとほぼ同等の速度と機能を永続ストレージにもたらします。使用中のソリューションにこのようなテクノロジーを導入できるでしょうか。

これらの問題については、ベンダーやコンサルタントに解決を求める必要があります。次世代のストレージに目を向けていれば、数年後、そのようなストレージに移行するときに満足できる結果を得られるでしょう。

 

専門家に協力を求める

複雑な階層型ストレージシステムの導入経験は一般的ではないため、そのようなシステムを正しく実装するには、バックアップ、アーカイブ、事業継続性、障害回復など、数多くのIT機能についての専門知識が必要になります。そのため、重要なストレージプロジェクトでは外部のプロフェッショナルサービスに頼るのが賢明でしょう。

現場に最適なストレージ構成を決定する作業には、使用するアプリケーションとワークロードに固有のベストプラクティスや推奨事項を適用する手順も含まれます。また、データ保護戦略とポリシーのレビュー (必要に応じて更新) が欠かせません。この手順により、負荷とパフォーマンスのメトリックの計算でバックアッププロセスが確実に考慮されるようにします。このような情報があれば、移行中にデータが使用できなくなるリスクも軽減されます。

移行の目標は、ビジネスクリティカルなデータをレガシーストレージから新しいストレージソリューションにシームレスに移動し、その際にビジネスプロセスやアプリケーションにほとんど影響を与えないようにすることです。必要な手順の一部を以下に示します。

  • カットオーバーイベント中の最大ダウンタイムという観点から、各ワークロードの要件を慎重に特定します
  • 各ワークロードに最適なデータ移行アプローチと方法を特定します
  • データの移行前に完了する必要がある修復アクションを特定します
  • 一連の移行手順とカットオーバーイベントを含むデータ移行計画を作成して実行します

さらに、計画を適切な関係者に伝えて、期待されるメリットと、リスクを最小限に抑えて緩和する取り組みについて説明する手順も欠かせません。

このような作業のベストプラクティスに精通しているか、作業を実践した経験がある人員が社内にいる可能性は低いので、知識と経験が豊富な専門家と協力することが必要になります。

 

まとめ

オールフラッシュは、階層型エンタープライズストレージの進化における次のステップですが、ストレージアーキテクチャーの一般的なルールは引き続き適用できます。実際に重要となるのは、インテリジェントなコントローラーとソフトウェアを使用し、適切なタイミングで適切なデータを層間で移動させることや、シンプロビジョニングや重複排除などの最適化手法を活用して、ハードウェアのパフォーマンスと使用可能時間を最大限に高め、容量の使用を最小限に抑えることです。さらに、システムの設計が優れていると次世代ストレージにも対応できるため、運用を中断することなくストレージをアップグレードできます。

ストレージシステムとその周りのネットワークを最新のテクノロジーに更新して最適化するプロセスに終わりはありません。これは、より良い結果にたどり着かないという訳ではなく、全く逆の意味です。適切な調査を行って優れた計画を作成し、適切な製品を導入していくことで、保守、最適化、将来のアップグレードが容易になります。オールフラッシュアレイの採用は、このようなメリットを得るための重要な手段の1つです。

 

オールフラッシュへの移行: リーダーのためのアドバイス

  • タスクに応じて、最適なタイプのフラッシュアレイを使用します。
  • フラッシュアレイを適切に展開するには、ストレージに関する問題を注意深く分析する必要があります。
  • 外部の専門家に協力を求めることで、フラッシュへの移行を効率化できます。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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