2020年6月5日

企業に競争力をもたらすITベンチマーク

インテリジェンスやパフォーマンスの向上は、ITベンチマークが競争力を高めたいと思っている企業にもたらすことができるメリットのごく一部にすぎません。

「今どこにいるのかがわからなければ、地図は役に立たない。そしてどこへ行きたいのかがわからなければ、どの道を行っても違いはない」という古いことわざがありますが、ITベンチマークは企業に方向性を示すツールであり、進むべき道筋を明らかにするのに役立ちます。こうした観点はさまざまな側面を描き出し、リーダーはそこから組織の競争上の位置付けを常に把握することができます。過去と現在の状態をベンチマークすることにも意味はありすが、あらゆることが変化しつつあるため、将来の状態をベンチマークすることの方が重要です。

これについて、著名なITベンチマークのエキスパートであり、Rubin Worldwide社のCEOであるHoward Rubin氏は次のように述べています。「顧客とビジネスや市場におけるその他の財務的側面とともに、テクノロジーに関してビジネスの現状を把握することは、最も重要なことの1つであると思われます。そしてデジタル化は、私たちが目にしているすべてのものの基盤となっています」。

 

単なるオプションの1つではない

Rubin氏は、テクノロジー自体がビジネスの本質を変えたと強調したうえで、「ベンチマークと調整を行っていない企業は、本能と洞察に基づいてただ闇雲に未来に向かっており、それでかまわないのかもしれないが、もはやそうした対応では不十分だろう」と警告しています。APQC.orgのAmerican Productivity & Quality Centerには、ベンチマークの開始点となるオンラインのIT Organization Performance Assessment(英語)ツールが用意されています。

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ベンチマークの開始

企業にとって何が重要なのかを把握し、いくつかの重要な評価基準を明らかにするか、そうした基準についてアナリスト企業からアドバイスをもらって試用してみます。膨大な時間を費やしてベンチマークを絞り込むまで待っていてはなりません。きわめて正確な測定尺度はわずかしかありませんが、長い期間をかけてそうしたものを開発するより、ベンチマークのプロセスを設けて今すぐ開始できるようにする方が効率的です。また、長年にわたる比較データなど、参考にできる数値も数多くあるため、それらを活用するとともに、今入手できる情報を組み合わせてITベンチマークのプロセスを開始することが重要です。

まずはコスト、人員、およびインフラストラクチャに重点を置きます。これについて、Rubin氏は次のように述べています。「最初の教訓は、コストの透明性についてです。数値は良くなる一方で、そこから他の数値、さらには最初の期待も生じます」。最初の段階では、リーダーは競争上の調整についてではなく数値について学びます。企業の進歩に伴って数値は良くなり、その時点で競争上の調整を開始してワークスタイルに組み込むことが可能になります。

企業は少なくとも次の3つのサイクルでベンチマークを行う必要があります。

  1. 年初
  2. 1年の中頃での検査 (四半期のサイクルで経済が大きく変わるため、現在の位置付けと市場の変化を確認する)
  3. 年末 (締めくくりとして1年を振り返るとともに、将来にも目を向ける)

 

誰もが利用できるKPI

主要業績評価指標 (KPI) の決定は、すべての段階で必要です。どの企業のテクノロジーでも、(それが外部の市場で使用されているのか、社内で使用されているのかにかかわらず) テクノロジーインフラストラクチャが中心的な役割を果たすため、サーバー、デスクトップ、およびストレージを評価してそれらのボリュームを確認する必要がありますが、そうしたビジネスプロセスはすでに設けられているかもしれません。

より高いレベルではコストと人員を考慮します。企業は、必要な人員の数を含む通常運用を維持するための実際のコストをベンチマークする必要がありますが、これについて、Rubin氏は次のように述べています。「企業は将来を見据え、ビジネスの成長と変革のための変更にどれだけのコストを費やしているのかを調べる必要があります。つまり、ベンチマークの対象となるものを設定しなければなりませんが、それほどわかりにくいことではありません」。比率はわかりにくくなってくる可能性があるため、IT支出と売上高やIT支出と運用費用の割合について考えてみてください。こうした割合は、そのうちにさまざまな点で役に立つようになります。

誤りであることが証明されたIT支出と売上高の比較

IT支出と売上高、または運用費用の適切な額を把握するのは、それらの傾向から近視眼的と言えます。企業がテクノロジーをうまく活用している場合、注目すべきなのは、企業がテクノロジーに投資すると、時間とともに売上高が増えるはずであるという点であり、これについて、Rubin氏は次のように述べています。「実際のところ、売上高に対してIT支出は減っていくはずです。業績が順調で売上高を増やすために投資を行っている場合、テクノロジーに対する支出を上回るペースで売上高が増えていくはずですが、そうでなければ投資効果を得られていません」。

南カリフォルニアに拠点を置くアナリスト企業のComputer Economics社で社長を務めるFrank Scavo氏は、IT支出と売上高の比較に目を向けるのは一面的であるという点に同意したうえで、次のように述べています。「企業のリーダーは、売上高に占める割合としてあらゆる事業部門の支出に目を向け、研究開発費、一般管理費、人事や営業・マーケティングといった部門の支出に注目してきました。しかし私たちは、そうしたアプローチが全体的なIT支出を一面的に捉えたものであるということに気付き、ユーザーあたりのIT支出を用いています。これに関しては、従業員あたりのIT支出を用いることもできますが、ユーザーあたりのIT支出の方が比較の基準に適しているのではないかと思います」。

またScavo氏は、デスクトップあたりのIT支出にも注目し、ユーザーか従業員、またはデスクトップのいずれであっても、これらの基準の両方がIT支出のより直接的な尺度になると考えています。IT部門はサポート部門と考えられることが多く、直接売上を生み出さないため、IT支出の全体的なレベルを把握するには、全体的な支出レベルを少なくとも3方向から見るのが良いということに同氏は気付いたのです。

 

クラウドの効果とその他の変動の予測

Computer Economics社の2019~2020年のIT支出と人員に関するベンチマーク調査(英語)では、比較対象となる最新の増加率のデータを必要とする企業について、いくつかの興味深いベンチマーク統計情報が示されました。この調査によると、2019年前半のIT運用に関する支出の増加率は横ばいの3.1%でしたが、この値はインフレ率をわずかに上回っています。そしてScavo氏によると、「IT予算が3~3.5%増加している場合は基本的にGDPに対応しており、実際のところIT支出はそれほど増加していません」が、このように数値が低くなった原因の1つとして、同氏はこの年の前半の経済成長の鈍化、あるはそれを超える景気後退に対する懸念を挙げています。

予算の増加率がほぼ横ばいであるというデータは、多くのCIOが現状の予算でやりくりしているということを示す調査によって裏付けられています。Scavo氏は、自身の会社がこの点を熟慮し、こうした傾向が続いていると述べたうえで、次のように語っています。「事業部門としてのIT部門は生産性を向上させてきました。IT部門は組織が生産性を高められるようサポートすることを常に求められていますが、IT部門自体が生産性を向上させる必要があり、多くの要素がその向上に貢献しています」。

生産性の向上で大きな役割を果たしているのはクラウドと思われ、同氏は「クラウドに移行されるアプリケーションポートフォリオが増えると、それらのアプリケーションをサポートするIT組織の負荷が軽減される」と指摘しています。IT部門は負荷の高い管理業務やメンテナンス業務から解放され、ユーザーの負担を取り除いてビジネスに付加価値をもたらす、より価値の高いタスクに注力できるようになります。そして組織が継続的なサポートに資金を費やさないようになると、大幅な予算の増額を求めることなく生産性を高められると同氏は考えています。これは、同氏が長年にわたって目にしてきた傾向であり、こうした移行が勢いを増し続ける中、クラウドのベンチマークの重要性が高まりつつあります。

(少なくとも小規模企業にとっての) もう1つの朗報として、小規模企業では、IT予算の増加率が中規模企業の3.0%や大企業の3.2%と比較して最大の3.5%となっています。これについて同氏は、「多くの場合、小規模組織は炭鉱のカナリアのような存在であり、現在の市況にいち早く対応するため、これを今後IT支出が増加する兆しと捉えている」と述べています。つまりこれらの数字は、全体的に見てIT支出が一定のレベルで増加していることを示しているのです。

 

上層部がテクノロジーに精通してトップダウンの体制を築けばパフォーマンスが向上する

MITが実施した調査では、企業がテクノロジーを十分に理解してそのメリットを得るには、事業部門側がテクノロジーを受け入れる必要があるということが示されています。そしてITベンチマークの推進を支援してきたRubin氏によると、「テクノロジーを展開するだけでなく、CIOが役割を変え、ビジネスメリットとテクノロジーの両方に同時に目を向けるチーフテクノロジーエコノミストになることが重要です」。テクノロジーに精通したチーフテクノロジーエコノミストは、自社の上層部のガバナンス構造にかかわらず、部門の枠を超えて会議を開いており、この調査によると、テクノロジーに精通した取締役がいる企業 (取締役会に技術委員や技術者がいる企業) とそうでない企業の間にはパフォーマンスの差が見られます。調査の結果から、取締役がデジタルに精通している企業の売上高の増加率が38%、総資産利益率が34%、時価総額の増加率が34%高かったことがわかっていますが、これについてRubin氏は、「上層部からトップダウンで指示を出すとともに、サーバーを実行するスタッフから事業部門へとボトムアップで情報を伝達することが非常に重要である」と述べています。ベンチマークはこのような点をつないでパフォーマンスを向上させ、企業に競争力をもたらします。

 

ITベンチマーク: リーダーのためのアドバイス

  • 最も影響の大きい評価基準を把握する
  • 事業部門からの情報が重要
  • 簡単なプロセスではなく、信頼できるデータの収集には時間がかかると思われる

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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