2019年10月4日
宇宙に生命はあるか?
人類は科学的ミッションによって、「そこには何があるのか?」という疑問に答えを出そうしています。宇宙生物学者は生命を発見するかもしれませんが、それを見たときに生命だと認識できるかどうかはまったく分かりません。
NASAの宇宙船インサイトは11月に火星に着陸し、現在進行中の大規模な宇宙探査に加わりました。そして、「宇宙に生命はあるのか?」という火急の問題に答えを出そうとしています。
「別の場所が居住可能かどうかを知るための私たちのアプローチは、過酷な環境など、私たちが知る生命が地球上で育まれている場所を調べることです」と、NASA本部の科学ミッション総局、宇宙生物学の上位研究者であるMary Voytek氏は言います。「この地球では、『極限環境微生物』が塩類鉱床、温泉、乾燥した寒い砂漠、永久凍土、海底の熱水噴出孔、地球の地殻奥深くの過熱地帯など、あらゆる『過酷な』環境条件の下で生息しています」
Voytek氏によれば、NASAの宇宙科学ミッションは、私たちの太陽系内の他の惑星や月の環境条件について、またそれらのいくつかが地球の過酷な環境といかに似ているかについて知ることを可能にしています。
「地球の過酷な環境で生命が育まれているのなら、そのような生物が私たちの世界の外にもいるというのは理にかなっています」とVoytek氏は言います。
事実、科学者と宇宙生物学者が望遠鏡や宇宙船など、識別のためのより高度な設備を利用できれば、私たちの太陽系の外で生命が見つかることは確実に思えます。このようなミッションに向けてたくさんの新しいテクノロジーが導入中か、あるいはまもなく導入されようとしています。
ミッション: 宇宙の生命
その1つの例として、2018年4月にNASAが打ち上げたトランジット系外惑星探索衛星 (TESS) があります。この衛星により、数千個の太陽系外惑星を発見できると期待されています。太陽系外惑星とは、私たちの太陽系の外にある恒星の軌道を回る惑星のことです。科学者たちは数年間かけてこれらの惑星における生命の兆しを調べ、その他の調査も実施する予定です。カーネギー研究所の記事によれば、今年の4月、TESSは初めて地球規模の惑星を発見しました。
NASAの惑星探査宇宙望遠鏡ケプラー (最近燃料切れとなり、引退しました) は、太陽系外惑星を見つけることに長けていました。2009年の打ち上げ以降、4千個近くの惑星を見つけたのです。
NASAによれば、「ケプラーによる発見の直近の分析では、夜の空に見える恒星の20~50パーセントには地球と似た大きさの小さな、岩だらけと思われる惑星が、親星の生命居住可能領域内にある可能性が高いという結論が出ました。つまり、これらの惑星と親星との距離は、私たちの知る生命にとっては欠かせない水が惑星の表面に溜まるような距離であるということです」。
「過去10年で、私たちは数千個の太陽系外惑星を観察してきました。そして、宇宙にはまだ桁違いの数の惑星があることが分かっています」とVoytek氏は言います。「初期の観察で、これらの惑星の多くが、私たちの太陽系と似た居住可能な環境を持っていることが分かりました」
最も期待される宇宙探査機の1つは、2021年に宇宙に打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ望遠鏡です。NASAが主導するこの国際的なプロジェクトでは、最新の機器を多数使用して地球から遠く離れた宇宙を探索し、太陽系外惑星の特徴を調査します。
NASAによれば、ウェッブ望遠鏡は次の10年の主要な観測拠点となります。「この望遠鏡は、ビッグバン後の最初の明るい光から、地球のような惑星の生命を維持できる太陽系の形成、私たちの太陽系の進化まで、宇宙の歴史のあらゆる段階を調査します」
地球に近い宇宙の生命?
もちろん、宇宙の生命を見つけるために私たちの太陽系の外側を調査する必要はない可能性もあります。
例えば、木星の月の1つであるエウロパは近年多くの科学的関心を集めています。その理由は、NASAによれば、この月には化学反応を促進する環境を作り出す液体水、生物学的プロセスにとって重要な必須の化学元素、生命によって活用可能なエネルギー源という3つの主要な要素が揃っているためです。
「エウロパは、大量の液体水が存在する可能性があり、また表面の有益な化学物質が氷の下の水生環境と交換されることを促進する地質学的活動があるという点で、私たちの太陽系の中でも特別です」とNASAのウェブサイトに書かれています。「木星のような惑星は他の恒星の間で共通して見られ、その多くがエウロパのような氷に覆われた月を持っていることが、過去25年間に明らかになりました。つまり、エウロパを調査することで、宇宙全体の氷の世界における居住可能性を知ることができるのです」
しかし、関心を集めている惑星の月はエウロパだけではありません。土星のエンケラドゥスは氷に覆われた小さな海の世界であり、何らかの生命を育むことができるのではないかと考えられています。エンケラドゥスは、その大気圏に水蒸気を噴出しています。エンケラドゥスの30~40キロメートルの厚さの氷の下には大きな海があるのです。事実、NASAによれば、エンケラドゥスの水煙からは揮発性のガス、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、塩、ケイ土と一緒に、地球の生命の基礎となっている有機化合物が検出されています。
「エウロパは、木星からの潮汐加熱のために多くの関心を集めています。私たちは、エウロパには生命を育むことができる地下海があると考えています。また、土星の月である エンケラドゥスとタイタンにも注目しています」とVoytek氏は言います。Voytek氏によれば、私たちの太陽系内では「現地」観測で生命を探すことができます。しかし、宇宙生物学者がこの太陽系外で居住可能な惑星を調査するには、遠距離から生命の兆しを検出できる強力な望遠鏡が不可欠です。
未来のミッションであるエウロパクリッパーによって、いくつかの疑問に答えが出るかもしれません。打ち上げ日はまだ決まっていないものの (おそらく2022年)、このミッションでは最終的に宇宙船が木星の軌道上に配置され、エウロパの詳細な調査が行われる予定です。「このミッションでは、高機能の、放射線に耐性のある宇宙船を木星の長い軌道に打ち上げ、氷に覆われた月に何度も接近させ、近くを通過させます」とVoytek氏は言います。
火星ほど「宇宙の生命」についての関心を集めている星は他にありません。NASAによれば、「火星こそは正真正銘の居住可能な惑星」です。火星は、地球型惑星 (地球、水星、金星など) を形成した最初期の内部過熱と、地殻、マントル、核の解離プロセスが発生するのに十分なほど大きいものの、これらのプロセスの痕跡が40億年以上続くのに十分なほど小さな惑星です。NASAによれば、「火星の構造的特徴には、これらのプロセスの太陽系で最も詳細で正確な記録が刻まれている可能性があります」。
そして、最近着陸した探査ロボットであるインサイトに搭載された高度な機器は、まさにこのことを綿密に調査しようとしています。「現在では火星表面の生態系が豊かでないことは明確ですが、35億年前の火星の表面はより暖かく、水分も豊富で、地球に似ていた可能性があります」とVoytek氏は言います。
過去数年で火星に対する50を超える探査ミッションが実施され、さまざまな惑星探査機や衛星が打ち上げられてきました。そして、今後もミッションが計画されています。例えば、欧州宇宙機関とロシアは共同で、2020年に生命を探す火星探査機を打ち上げるExoMarsというミッションを計画しています。また、Tesla、SpaceXなどのイノベーティブな企業のリーダーであるElon Musk氏がやりたいことを実現するなら、彼は火星に生命を「送り」、2050年までに人が住む都市を造るでしょう。
私たちが知らない生命
しかし、もし生命が「いた」として、私たちは認識できるのでしょうか? 特に、私たちが考える生命とは異なっているとしたらどうなるでしょうか?
「生物が歩いたり泳いだりしているところをカメラで捉える以外にも、別の世界で生命の存在や過去に存在した証を検出する多くの方法があります」とVoytek氏は言います。「例えば、この地球では光合成によって酸素が発生し、大気中に蓄積することが分かっています。そこで、別の世界でも大気中の生命の兆しを検出する方法を考えることができます。これは、太陽系外惑星、つまり私たちの太陽系の外の惑星で生命を探す方法の1つとなるはずです」
このような生命の兆しの調査は勢いを増しています。最近、NASAの宇宙生物学プログラムは、新しい学際的なプログラムであるLaboratory for Agnostic Biosignatures (LAB)に700万ドルの資金を提供しました。LABプロジェクトでは火星と、木星と土星の氷で覆われた月で使用できる、地球とは異なる生命を検出する新しいアプローチを開発する予定です。「私たちの目標は、現在の理解の枠を超えて、ほとんど想像できないような形態の生命を見つける方法を考案することです」と、主任研究者でありジョージタウン大学教授であるSarah Stewart Johnson氏は声明で述べています。
「これらすべては、地球における生命をどう理解するかにかかっています」とVoytek氏は言います。「しかし、宇宙生物学者が懸念している別の問題は、私たちが知らない生命です。宇宙には水を必要としなかったり、異なる化学物質を土台に構成されたりしている生命がいるとしたら、どのようにしてそれを探せばいいのでしょうか?」
宇宙の生命がやってくる?
もしかしたら、生命を探す必要はないのかもしれません。宇宙の生命は、向こうからやってくるかもしれないのです。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターによる最近の記事は、昨年地球の近くを通り過ぎた不可解な未確認物質という形で何らかの宇宙生命体が私たちのところにやってきたことを示唆しています。葉巻のような形をした惑星であるオウムアムアは、パンスターズ1望遠鏡によって2017年10月にハワイで初めて発見されました。オウムアムアには独特な形状 (その幅に比べて長さが10倍もあります) や質量などの特徴があります。加速能力を持っていると思われることも、宇宙物理学者を困惑させる原因となりました。ハーバードの宇宙物理学部の学部長であるAvi Loeb氏をはじめとするハーバードの宇宙物理学の研究者たちは、オウムアムアは「人工的な起源」を持ち、遠く離れた他の太陽系からやってきた探査船か、宇宙人の使われなくなった宇宙船である可能性があると言っています。
Loeb氏は『ハーバード・ガジェット』で、オウムアムアの発見者を含む他の研究者は宇宙人という考えを否定しているものの、そのような議論は科学のプロセスの重要な一部であると話しています。かつて宇宙人の存在は完全なるSFだったかもしれませんが、Loeb氏は、地球以外にも生物がいるという証拠が増えていることを指摘しています。「宇宙の恒星の4分の1には、親星の生命居住可能領域内に惑星があることが分かっています。そのため、私には、きっと他の場所にも生命があるはずだと思えるのです」とLoeb氏は言います。
他の場所に生命があることを示唆するのは、Loeb氏の話だけではありません。科学者は、近年でたった2度しか検出されていない、高速電波バースト (FRB) として知られるエネルギーの噴出について考えを巡らせています。ブリティッシュコロンビア州のカナダ水素強度マッピング実験 (CHIME) で新型電波望遠鏡を扱う天文学者たちは、去年そのパルスを記録し、発見について『ネイチャー』誌に記事を公開しました。研究者たちは、そのようなパルスは結局私たちの宇宙の通常の現象なのではないかと考えています。しかし、そのような高エネルギーのパルスは、地球人とコンタクトを取ろうとしている宇宙人のグループが使用する別世界の送信機から来ているのではないかという考えもあります。
人工知能が宇宙の生命の発見に与える影響が拡大
- NASAの探査機のいくつかが生成する膨大なデータを整理するうえで、AIが果たす役割はますます大きくなっています。例えば、AIと機械学習テクノロジーは、地球から2,545光年離れた太陽に似た恒星であるケプラー90を観測するNASAのケプラー宇宙望遠鏡からのデータをふるいにかけるために役立っています。
- SETI協会は、アレン・テレスコープ・アレイ電波望遠鏡によって捕捉された2000万個を超えるシグナルを分析するためにAIアルゴリズムを使用しています。また、通常とは異なる興味深い宇宙のシグナルを特定し、詳細な調査のためにフラグ付けする方法が、機械学習を使用することにより劇的に進歩しました。
- 欧州宇宙機関には、宇宙探査機の設計の自動化、新しい学習アルゴリズムの開発、および自然言語処理に向けて、AIの使用を研究するグループがあります。
宇宙の生命: リーダーへの教訓
- 多くの太陽系外惑星に私たちの太陽系と似た居住可能環境がありますが、そのいずれかで生命を見つけた人は「まだ」いません。
- 他の惑星の生命は、私たちが何を「生命」と考えるかという点で、認識できない可能性もあります。宇宙生命学者が「私たちの知らない」生命について考えているのはそのためです。
- NASAなどの機関が木星のエウロパ、土星のエンケラドゥス、火星に探査機を打ち上げているため、いつか私たちの太陽系で生命が見つかるかもしれません。
この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

Michael Cooney
3件の記事
Michael Cooney氏はフリーランスのデジタルジャーナリストであり、25年以上にわたりIT業界についての記事を執筆しています。
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