2019年1月17日

IoTプロジェクトプランニング: 想定される4つの課題

企業はIoTによってビジネスを変革し、競合他社に大きく差をつけることができますが、失敗のリスクも見過ごせません。経営者は、技術的課題と管理上の課題を想定しておく必要があります。

企業はIoTについて、またIoTのどこに注力すべきかについて、まだ疑問を解決できていません。リーダーが把握しているのは、これまでは接続されていなかったものを接続することで、データ、情報、インサイトにアクセスし、ビジネスの円滑化とより優れた顧客体験の提供を実現できるということです。 

ただし、これらの企業はIoTソリューションに投資してデジタルトランスフォーメーションを推進する必要性を認識しているものの、資金、時間、その他のリソースを容易に無駄にしてしまう可能性があることも理解しています。Gartner社のレポートによれば、IoTプロジェクトの75%が実施に際して計画の2倍の時間がかかり、ローンチにすら漕ぎ着けられずに多くのプロジェクトが失敗しています。 

それでは、効果的なIoT戦略を打ち立てて実施し、リスクの削減、業務の変革、優れた成果の達成を可能にするために、リーダーは何をするべきでしょうか。 

 

IoTで価値を推進

IoTで重要なのは、より速く、適切かつ正確な方法で価値を推進できることです。データへのアクセスを可能にすることが鍵となりますが、単により多くの情報を取得できるということではありません。大切なのは、その情報を活用してよりインサイトに満ちた環境を構築するということであり、それらのインサイトに基づいて行動することです。また、ビジネスモデルを変更し、従来の業界だけでなく関連する業界にまで革新をもたらすことができます。つまり、広い視野を持つ企業にとって、IoTがビジネスの変革を促進する能力を秘めていることは明らかです。 

しかし、多くの場合、IoTから会話を始めることは適切ではありません。大企業の経営者と話をする際、彼らは「IoTソリューションが必要です」とは言いません。代わりに耳にするのは「製品ラインのパフォーマンスに関してより良いインサイトを得て、保守が必要な設備を障害が発生する前に特定したいと考えています」とか、「新しいQAプロセスを実装して、品質を改善して故障を減らしたいと考えています」といった話です。または、彼らは配信時間の短縮、トランザクションプロセスの高速化、サービス中断の軽減などを通して顧客体験を向上したいと考えています。 

言い換えれば、経営者は非常に具体的なビジネスの問題を解決する必要があるのです。HPE Pointnextチームは、このようなリクエストを実際のビジネスソリューションに変換するお手伝いをしてきました。IoTによって、ますますこのようなソリューションが可能となっています。精度を向上して問題により速く対応するためにIoT対応のQAシステムを使用する自動車部品製造業者や、IoTを活用して業務を改善し、サービスとしてのデータビジネスを新しく作成する最先端の精製所など、豊富な実例があります。 

 

最初の3つの課題: 実行までの時間、技術的負債、データの選択 

IoTで成果を出すには、ビジネスおよび技術に関する複雑な現実と折り合いをつける必要があります。企業がIoTに移行することを決断した場合、関係者が取り組むべき技術的課題がいくつかあります。 

1つ目は、「実行までの時間」または「インサイトまでの時間」です。企業は俊敏に、すばやく新しいテクノロジーに適応する必要があります。企業が実際にこれらのインサイトを得て、アクションを実行できるようにするために、技術的ソリューションをシームレスにすばやく、安全に構成するにはどうすればよいでしょうか? 

2つ目は「技術的負債」です。これは、デジタルトランスフォーメーションを実現し、優れたビジネスの成果を達成するために、組織は既存の技術的土台に対処する必要があることを意味します。多くの要素をモダナイズできますが、まったく変革できない部分もあります。技術的負債を分類する中で、チームは以下のような難しい問題に対応する必要があります。

  • どのレガシー機器またはアプリケーションを引き続き保有するか? 
  • どのプロセス、データ、アーキテクチャを変革する必要があるか?
  • IoTとその他の最新テクノロジーをどのように取り入れるか?

既存のERPやCRMなどのバックエンドシステムと新しいIoTソリューションを統合しようとしている企業について、考えてみてください。技術的決定の一部は、何十年も前に選択および実装されたレガシーのプラットフォームに基づいて下されます。レガシーのプラットフォームは組織の知恵の宝庫であり、これらの情報システムには高い価値があります。 

イノベーションを推進するために重要なのは、デジタルに対する学習、準備、導入を継続的に繰り返しながら、同時に基盤となる機能やレガシーのテクノロジーを活用することです。

計画段階で考慮する必要がある3つ目の課題は「データの選択」で、要約すると以下のようになります。組織がこれまで接続されていなかったものを接続し、何でも効果的にデジタル化できるとしたら、デジタル化の対象をどのように決定しますか? 

大量のデータを非常に大規模に利用可能にし、インサイトを得てすばらしいビジネスの価値を実現できる可能性があります。ただし、不適切なものを接続して、不正確な情報に基づいて誤った決断を下してしまうというリスクもあります。これによって企業は資金を無駄にしてしまうだけでなく、最終的にビジネスに取り返しのつかない損害を与えるような決断を下してしまうかもしれません。

 

4つ目の課題: IoTの関係者を1つにまとめる

ここまでに、一部のIoTプロジェクトが失敗する理由を示してきました。企業が十分にアジャイルでなく、概念実証の泥沼にはまってしまうため、実際のビジネスを見失ってしまうのです。組織は技術的刷新のニーズに対応することができず、レガシーのシステムを活用することもできません。チームはデータに関して適切な判断を下すことができず、間違った方向に導くインサイトを生成することになります。 

しかし、これらのIoTソリューションの多くが失敗する理由は他にもあります。これは、マネジメントのダイナミクスに関連する4つ目の課題です。つまり、従業員が1つにならないのです。コラボレーションが有効でないサイロ化した組織や、運用グループと技術チームが分裂している組織では、ITとビジネスの間の協力関係が根本的に欠けています。

従来型のビジネスモデルにはエグゼクティブチームが設定する要件があり、それが運用モデルからインフラストラクチャにまで浸透していました。誰かがITチームに何かを構築するよう命令し、ITチームはそのとおりに従っていました。 

これまでよりもずっとデジタルに対応した世界に移行するにつれて、テクノロジーの存在感はかつてないほど高まり、ITを含むすべてのビジネス分野から多くのイノベーションが巻き起こっています。 

組織中から革新的なアイデアが生まれるのはすばらしいことです。しかし、不均衡が発生する大きなリスクもあります。ビジネスが一方で要件を設定し、各事業分野とITが別の方向からイノベーションを進め、それが中間で出会うことがないのです。 

これには簡単な解決策はありませんが、以下に挙げるいくつかのベストプラクティスによって、IoTプロジェクトに乗り出すITチームとビジネスチームの協力を強化できます。

  • テクノロジーの選択に関してビジネスの焦点を適切に当て、適切な価値提案をするために、意思決定者は同じ部屋で一丸となって仕事をする。 
  • 新しいテクノロジーソリューションに基づく、理想的な顧客の成果と体験を検討する。
  • 広い視野を持つ。IoTで重要なのは単なる手頃なユースケースだけではなく、ビジネスを変革して競争相手に大きな差をつける機会です。
  • 分散型IoTインフラストラクチャの設計、実装、保護、スケーリングに関する課題を理解している、信頼できるパートナーと協力する。

適切なマネジメントのプラクティスに関しては、前述した最先端の精製所であるTexmark社が好例です。石油化学製品の製造業者であるTexmark社は、一方的に工場にIoTを実装して従業員を強制的に巻き込むようなことはしませんでした。それでは失敗していた可能性があります。そうではなく、リーダーたちは調査、ビジョン作成、計画の段階ですべての従業員を同じ部屋に集め、潜在的な可能性を確認し、テクノロジーによってどのように業務を改善してビジネスの成果を向上できるかを話し合ったのです。従業員たちは喜んで参加してインサイトを共有し、センサー対応のポンプやスケーラブルなIoTアーキテクチャの統合方法を協力して計画しました。Texmark社は、現在複数のIoTイニシアチブを実施中です。 

将来IoTを活用したいと考えている企業にとって、行動を開始する最適なタイミングは今です。ビジネスの仕組みにIoTを取り入れることで、新しいインサイトの獲得と顧客体験の再定義につながり、最終的には競争に勝ち抜いて成功を収めることができます。 

 

IoTプロジェクトの計画: リーダーへの教訓

  • IoTによってデジタルトランスフォーメーションを推進できますが、時間や労力を浪費し、完全に失敗してしまう深刻なリスクもあります。実行/インサイトまでの時間、技術的刷新の必要性、データの選択に関連する課題を時間をかけて把握してください。 
  • IoTそのものを目的とはしないでください。そうではなく、ビジネス上の問題の解決とデジタルトランスフォーメーションの実現に焦点を当てて議論を開始してください。 
  • ITとビジネスの足並みがそろっていない場合、失敗につながる可能性があります。関係者を同室に集めて顧客の成果やビジネスの変革の可能性について考えることは効果がありますが、豊富なIoTの経験を持つパートナーのインサイトを活用することも検討してください。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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