IoT分析戦略: クラウド、エッジ、またはその両方のどれを活用するのか

どのIoT戦略においても、生成される多種多様なデータの処理と分析を行う場所を見極めることが重要です。クラウド分析とエッジ分析のメリットとデメリット、およびハイブリッドアプローチが最善となる可能性がある理由をご確認ください。

モノのインターネット (IoT) 戦略を策定するにあたっては、その作業の1つとして分析を適用する方法と場所 (収集したデータを調べるプロセス)、および最大限のメリットを得るのに最適な分析を見極める必要があります。これについては、エッジでの分析が理にかなっている場合もあれば、状況によってクラウド、またはデータセンターでのデータ分析、さらにはハイブリッドアプローチが最も有益となる場合もあります。この記事では、どのタイミングでどの分析を行うべきなのかを明らかにしていきます。

まず、いくつかの定義について見ていきましょう。「エッジ分析」とは、データ処理の一部がセンサーの比較的近くで行われることを意味し、分析はセンサー、またはそのすぐ近くのゲートウェイで実行される場合があります。

小さいセンサー上、またはその近くでデータが収集されるため、エッジ分析と呼ばれるものでは常に少量のデータセットが対象になると思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限らず、一般的には、データ量が多すぎてリアルタイムでクラウドに転送できないことから分散コンピューティングシステムが使用されます。こうした状況ではリアルタイムであることがきわめて重要で、コンピューターは自動運転車の衝突を防止したり、ロボットが同じ場所で作業を行う人を傷つけないようにしたり、冷蔵装置によって移植のための臓器が輸送中に損傷してしまうのを防いだりする役割を果たします。このように、マシンがそれぞれの測定基準、環境センサーのデータ、または何らかの形でそれらを組み合わせた情報に基づいて即座に処理を行わなければならない場合は、エッジ分析が適切な選択肢となります。

 

レイテンシと接続に関する留意事項

一方、クラウドベース分析ではより多くの種類のデータを処理することが可能で、たとえば、ストリーミングデータに履歴データを追加したり、エッジ分析を使用するすべてのデバイスのあらゆる出力を分析したりできます。クラウド分析は、リアルタイムで行われる場合もあれば、ほぼリアルタイムで、または履歴データに基づいて行われる場合もあります。つまり、ネットワークのレイテンシやその他の接続の問題を考慮する必要のないデバイスの近くでのデータ処理ほどではないにしても、非常に高速で行うことが可能です。

これについて、コンテンツ配信ネットワークプロバイダーのLimelight Networks社でバイスプレジデントを務めるErsin Galioglu氏は、次のように述べています。「通常、特定のタスクで大量のデータが必要とされるか、そうしたタスクでプロセッサーが多用される場合は、中央のクラウドにデータを移行する際に非現実的と思えるほどのレイテンシとコストが生じるため、エッジコンピューティングの方が適しています。」

また同氏は、次のように付け加えています。「その一例としては、膨大な動画データや画像データを処理して石油パイプラインの漏出などの異常、または線路やその他のインフラの問題を検出して迅速にアラートを送信するといったことが挙げられますが、データがそれほど多くないかプロセッサーを多用しない場合は、クラウドの方が適しているかもしれません。たとえば、フリート管理が必要な企業は、車両の動きを追跡して最も効率的な経路を決定できます。」

Interarbor Solutions社の主席アナリストであるDana Gardner氏によると、データが増えればサプライチェーンの中断、作業効率の低下、およびセキュリティ侵害といった課題を解消できます。また、レトロスペクティブであれリアルタイムであれ、データの分析を行えば、問題を修正および予測する方法をより迅速に想定することが可能になり、センサーの導入コストをはるかに上回る大きな削減効果が得られる可能性があります。

IoTへの対応に向けた準備が進められているにもかかわらず、そうした変革による効果はまだほとんど現れていません。ITインフラストラクチャをIoTに対応させる方法をご確認ください。


Gardner氏は、次のように述べています。「IoTを活用する中でネットワーク上のノードが大幅に増え、ネットワークの価値が高まりつつあります。また、データを活用することでもたらされるメリットの重要性も増していますが、今ではそうしたデータを管理できるだけの容量があります。」 同氏によると、データの処理速度が向上し、生成や分析が可能なデータの種類も増えているため、私たちはこれまでよりはるかに多くのデータポイントを活用できます。そしてこれが、データを活用するネットワークの能力の向上という次の大きな一歩となるわけですが、これについて同氏は、「クラウドにはすでにそうしたデータを管理したり、取得したり、そこから非常に有意義な予測結果や分析結果を得たりできる手段が用意されている」と付け加えています。

一般的に、2つの分析の違いは実際的な距離あり、たとえばこれをテニスの試合で考えてみると、コーチが予測を立ててプレーヤーにボールを打つ場所を大声で伝えるより、ボールに最も近いプレーヤーが予測を立てた場合の方がボールに反応して相手コートに打ち返せる確率が高くなります。

ただし、コーチには多くのテニスプレーヤーやボールの打ち方を分析できるというメリットがあるため、コーチはコート外であっても特定のプレーヤーのパフォーマンスを的確に分析し、改善策を提案することが可能です。

 

両者の融合

テニスの例が示すように、企業ではメリットが大きくなる場合は必ず、エッジとクラウドで分析が使用されます。ただし、多くの場合に処理の一部だけがエッジで行われているため、クラウドとエッジの両方を活用しなければなりません。

エッジで分析が行われる最も一般的な理由は、迅速に結果を取得して、自動運転車の安全なハンドル操作や適切なブレーキ操作などの状況に即した対応をリアルタイムで行える点にあります。

これについて、Red Hat社のIoT担当設計主任であるJames Kirkland氏は、「自動化された製造プロセスについて考えてみればわかりやすい」と述べています。マシンで問題が発生すると、どこに問題があるのかを特定したうえで、運転速度や温度を調整するといった事前に定義したルールに従って迅速に処理を行うことがきわめて重要となりますが、こうした処理は、素早い対応が可能という理由からエッジで行われています。

また、Kirkland氏は次のように付け加えています。「その後、同じようなあらゆるマシンのデータフィードをクラウドに送信して分析を行えば、機械学習の基盤となる、マシンの構成方法を最適化してパフォーマンスを最大限まで高める目的で使用することが可能なパターンや傾向が明らかになります。」

クラウドとエッジで分析を使用するもう1つの理由は、クラウドに転送されることになるデータの量が少なくなる点にあります。(数百万台のデバイスが絶え間なく使用されている環境では一般的なサイズである) 膨大な数のデータセットはサイズが大きすぎるため、データの価値が失われる前にクラウドに転送することができません  (現在では、時間がかかりすぎると車同士が衝突してしまいます)。また、今日ではストレージのコストが低下しているにもかかわらず、特に着実に増加を続けている場合は、このようなサイズのデータセットを保存するのに膨大なコストがかかります。そのため多くの企業では、エッジで情報の一部を処理し、さらなる分析や保存の対象となる最終的な出力のみをクラウドに送信するのが適切な方法となっています。

最後に、クラウドにデータを転送する際の帯域幅に関する懸念の問題があります。たとえば、世界中の農村地域に多数の農地があり、そのそれぞれにさまざまなセンサーを設置している場合、膨大なデータ (また場合によってはストリーミングデータ) の送信に適した、信頼性の高いインターネットへの常時接続を確保することが大きな課題となりますが、ここでも、通常は情報の一部をエッジで処理し、rawデータの出力または限られた部分のみをクラウドに送信することがより現実的となります。

これについてGalioglu氏は、「クラウドとエッジコンピューティングに適した分析と意思決定に関するビジネスニーズはそれぞれ異なりますが、最適化されたビジネスオペレーションではその両方が活用されているのが実情です」と述べています。

 

次第に融合されつつある機械学習と分析

IoTセンサーでは、ほぼ常に多数のデータが収集されているため、こうしたデータセットに機械学習と人工知能 (AI) を適用することにはメリットがあり、これらの高度なアルゴリズムを活用すれば、人が簡単に検出できないほど大きい、または微細なパターンを見出すことが可能です。ただし、AIと機械学習は現在すでに非常に有益なツールとなっているものの、業界は成熟とは程遠い状況にあります。

また、マシンの学習には時間がかかるうえ、マシンは分け隔てなく物事を学習するため、提供する情報の管理が非常に重要です。たとえば、Microsoft社のAIベースのチャットボットは、Twitterのユーザーから口汚く罵る方法を教え込まれました。一部のTwitterユーザーはこれに面白みを感じましたが、人の会話に適切に対応する方法をマシンに教え込むのは非常に難しく、多くの研究者はツールに対する正しいトレーニングがいかに重要であるのかを知ることとなりました。

現在では、クラウドでのIoT分析でAIと機械学習が利用されることが増えつつありますが、その理由は、テクノロジー (そして場合によっては教える側) が未熟で学習に時間がかかり、正しい結論を導き出すために人による細かい管理が必要とされる点にあります。自動車事故が発生しそうになったときにAIが口汚く罵るのを面白いと感じることもあるかもしれませんが、大部分の自動運転車のユーザーは、AIが瞬時に正しい判断を下して事故を回避し、そうした発言をまったくしないことを望むでしょう。

これまでの安全性の低いIoTデバイスを考えると、セキュリティの問題も残されています。今日の犯罪者はデータを盗み出すのではなく操作しようとしており、エッジでのデータ分析が操作されると、車が衝突したり、ペースメーカーが爆発したり、信号機が正常に動作しなくなったり、ドローンが保護ではなく攻撃に転じたりする可能性があります。

これについて、Securing Smart Citiesの役員であるMohamad Amin Hasbini氏は記者会見の声明で、「セキュリティの観点から考えると、災害対策のために使用しているいくつかのドローンシステム、またはソフトウェアのいずれかがウイルスに感染するか操作された場合、災害が起きる可能性があることがわかった」と述べています。

Bain & Company社が実施した調査では、米国の回答者にIoTと分析の導入の障壁になっていると考える要因について尋ねたところ、回答者からは主な導入の課題として、適切なセキュリティ、現在のシステムとの統合、投資収益率の達成といったものが挙げられました。

 

実装における最大の障壁

  • セキュリティに対する懸念
  • 価格が高い、または経済的なメリットが不明確
  • IT環境と運用テクノロジーの統合が困難
  • 組織内に実装と運用に必要な技術的専門知識がない
  • デバイスとシステムに互換性がない
  • ベンダーロックイン、またはオープン標準の欠如
  • データのポータビリティとオーナーシップ

 

今すぐ両方を導入することが重要である理由

現在、多くの企業がIoTのビジネスケースを試行していますが、すでにその使用によってもたらされる競争上のメリットが明らかとなっています。

Gartner社は、2017年末までに、全世界で使用されているインターネット接続デバイスの数が2016年から31%増の84億台になったと見積もっています。また多くの研究者は、この数が2020年までに204億台に達すると見込んでおり、2018年にはエンドポイントとサービスに対する支出の総額がほぼ2兆ドルになると述べています。Gartner社によると、IoTは「運用テクノロジーと情報テクノロジーを融合したもの」であり、そうだとすれば、分析はIoTの心臓部となってエッジからクラウドに至るまでのあらゆる部分で使用されることになります。

分析を適用する方法と場所: リーダーのためのアドバイス

  • クラウドベースの分析では、さまざまなデータを処理できます。
  • エッジ分析を使用する最も一般的な理由は、より迅速に結果を取得できることにあります。
  • 選択は一般的に実際的な距離に基づいて行うことになります (スピードを重視する場合は (センサー上、またはセンサーの近くの) エッジを、さまざまなデータを分析する場合はクラウドを選択します)。

 

大部分の組織は、それぞれの強みを活かすために両方を組み合わせて使用しています。 

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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