2020年4月3日

イノベーションのカギを握るリスクとリーダーシップ

何もしなければ、大きな代償を払うことになり、安全な方法を採れば、得られるものがありません。イノベーション文化を築く唯一の方法は、トップダウンでその取り組みを推進することです。

以前は「IBM製品を購入したことで解雇された者はいない」とよく言われたものです。この数年間の変化を好まない風潮から、そのフレーズは「品質の良いものを買えば安全」から「リスクを避けたことで解雇された者はいない」に変わりました。

ある社員がリスクを避け、それが報われても、会社そのものが打撃を受けては元も子もありません。また、上手にリスクを取ったことが報われても、そのリスクが長期的に見て妥当なものでなければ、会社の株の暴落につながるかもしれません。

どのような指針があれば、企業はチャンスをつかみ、その際に、社員を支援できるでしょうか。一方で、どうすれば、妥当なリスクとそうでないリスクを区別できるでしょうか。

多くのリスクの専門家に、リスクの定義、心理的なメカニズムの理解、望ましいリスクと望ましくないリスクの区別のほか、妥当なリスクテイクを奨励しながら、リスクを取る社員を守る企業文化を構築する方法を尋ねました。その答えを紹介します。

 

イノベーションはリスクそのもの

イノベーションの本質は、新しい何かを行うことではありません。その本質とはリスクです。

「真のイノベーションは、予測可能な成果の達成よりもはるかに破壊的です」と、Craig Partridgeは語ります。Craigは、HPE Pointnextサービスで、アドバイザリとトランスフォーメーションプラクティスのワールドワイドシニアディレクターを務めています。「成果を予測できるようなイノベーションは、真のイノベーションではなく、誰かがすでに達成していることの二番煎じです。そのような取り組みは、何らかの方法で報われることが実証済みであるため、イノベーションではなく模倣と言うべきです」。

模倣自体は悪いことではありません。重要なのは効果を得られることであり、特定の状況では模倣によって成果を得られます。しかし、イノベーションが求められる状況ではそうはいきません。既存の顧客ベースを守るための投資はどのようなタイミングで決断しますか。次の新たな取り組みに投資する時期についてはどう判断しますか。

イノベーションを行う場合の問題の1つは「優先順位付けの危機」です。リスクを取らずに、すでにうまくいっているものを採用すれば、問題なさそうに思えます。しかし、そのような優先順位付けによって「組織の中で行き詰まってしまう」とCraigは指摘します。

これは常に言えることですが、岐路に立たされたときに何を選択したかにかかわらず、イノベーションの新たな取り組みに投資していない組織は、今提供できている製品やサービスを自らむしばんでいます。

Craigは、多くの例を示してくれました。Blockbuster社は、ストリーミング配信の優位性を見抜けずNetflix社に取って代わられ、Kodak社は、デジタル写真の台頭を予測できず事業が悪化しました。

 

リスクテイクの意欲はトップダウンで示す

Joel Peterson氏は、成長の機会としてリスクを取る企業は、失敗を、ソリューションにつながる出来事と捉えている、と述べています。同氏は、スタンフォード大学経営大学院のRobert L. Joss経営学非常勤教授であり、フーヴァー研究所の監督員長でもあります。「そうした企業とそのリーダーは、不確かさ、変化、成長を喜ぶことで、物事を学ぶ傾向があります」。

つまり、こうしたリーダーは、リスクを受け入れるビジョンを持ち、そのビジョンは非常に優れている、とRobert Christiansenは述べています。Robertは、ヒューレット・パッカード エンタープライズのStrategy HIT Office of the CTOで、VPを務めています。

「組織に効果をもたらす物語を作り、同じ目的の下に社員を結集させる必要があります」とRobertは語ります。「行うべきことが分からなければ、何も行えません」。

結集の際に力強いかけ声が聞かれなくても構いません。かけ声を上げる必要があるのは経営陣です。

Robertはこう続けました。「リーダーが主導する必要があります。リーダーがその物語を率先して作り、社員を支援する方法を詳細にしなければなりません。物語は重心のような役割を果たし、取り組みの目的を全社に示します。社員が安全な部屋に閉じこもるのは、ミッションに信念を持てないからです。大きなミッションであれば、誰もが行動を起こします」。

Peterson氏も同意見です。

「文化の形成はトップ次第です」と同氏は語ります。「経営陣は、リスクテイクに報いるべきであり、それを罰してはなりません。つまり、失敗とは、ブランドと文化を築き、イノベーションの達成力を強化する方法を見つけながら成功にたどり着くまでの通過点と考えるのです。性格や努力に関するものを除き、失敗は致命的なことではありません」。

Robertは、ある重機メーカーの例を挙げました。この会社の誰もが、その重機を引き続き販売することを望んでいました。

「意見を異にする一部の社員が、重機にIoTデバイスを取り付けたいと考えました。GPSを搭載させたかったのです。しかし、ほとんどの社員が興味を示しませんでした」。

一方で、この会社の重機を使用して建設現場を管理している顧客は、人の操作を必要とせず、あらゆる技術イノベーションの機能を備えた重機の採用を望んでいました。

「顧客は、自社で使用している30万ドルのブルドーザーが世界中のどこにあるのかに加えて、その動作状況、任意の時点での走行距離、タイヤの交換が必要な時期などを把握したいと考えていました」とRobertは語ります。現状維持のビジョンは、何もしないことの代償がいかに大きいかをよく示しています。これでは、競合他社に、そうしたブルドーザーを提供する機会を与えることにしかなりません。「安全」を選択した会社は、その顧客を失う可能性があります。その場合の最良のシナリオは、現状維持のためだけに、競合他社を追いかけることです。ただし、本当に現状維持できるという保証はありません。

 

信頼関係が深まる文化を築く

「リスクに対処する場合、信頼関係が深まる文化は、最も価値ある組織の資産です」とPeterson氏は述べています。「支援や、自分への思いやりを感じられると、社員は、リスクテイクに積極的になれます。同僚、とりわけリーダーとの信頼関係が深まれば、情報共有を進んで行います。また、組織が官僚的でなくなるため、意思決定の迅速化、容易な調整、コスト削減が可能になります。そうした環境でリスクが受け入れられるのは、リスクテイクのコストがかからないからです」。

信頼関係を深め、リスクを受け入れる文化は、偶然出来上がるものでも、一夜にして出来上がるものでもありません。意図的に築かれるのです。そこでのリーダーは、意志決定ごと、アクションごとに会話し、信頼関係を深めます。突き詰めると、企業として賢明なリスクテイクの意志を高めるには、まずリーダーがリスクを取らなければなりません。

「官僚的な組織、貴族的な組織、自己満足。これらが結び付くと変化が妨げられます」とPeterson氏は指摘します。「リスクテイクによってリーダーが罰せられ、現状維持によって報われることになると、リスクは忌み嫌われます。従業員だけでなく経営陣も、評価され、報われるものに反応を示すようになります。多くの場合、公開会社では、結果が予測可能であれば見返りが与えられ、リスクを取ろうとすると抑止されます」。

命令によって、イノベーションに専念させようとすれば、確実に失敗します。社員は、何が自分の損得に結び付くかを知っています。他人を非難しがちな経営者がリスクテイクを命じても、経験のある社員なら誰もそれに従いません。模範を示して指導する必要があります。

イノベーションを実現可能な企業になる唯一の方法は、自ら先頭に立って指揮を執ることです。

 

リスクに求められるリーダーシップ リーダーのためのアドバイス

  • 安全なイノベーションなどありません。本質的に、イノベーションにはリスクがつきものです。
  • イノベーションを奨励するには、まずリーダーがリスクを取る必要があります。また、困難を乗り越えたことが報われる文化を築くようにします。
  • 信頼関係が深まる文化を築くとともに、先頭に立って指揮を執ります。従業員に見返りを与えてイノベーションを推進します。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

enterprise.nxt

ITプロフェッショナルの皆様へ価値あるインサイトをご提供する Enterprise.nxt へようこそ。

ハイブリッド IT、エッジコンピューティング、データセンター変革、新しいコンピューティングパラダイムに関する分析、リサーチ、実践的アドバイスを業界の第一人者からご提供します。

enterprise.nxt
ニュースレターのご登録

enterprise.nxtから最新のニュースをメールで配信します。