2020年4月3日

クラウド導入を成功へと導く方法: 7つのベストプラクティス

クラウドへの移行は多くのメリットをもたらしますが、オンプレミスからハイブリッドクラウドベースのIT環境への移行にあたっては、テクノロジー面にとどまらない知識が求められるため、適切なガイドラインとベストプラクティスに沿って計画を進めることが大切です。以下ではクラウド移行計画の開始にあたって役立つヒントをご紹介します。

 

1: クラウドの定義を明確化する

まず第1に、あなた自身とあなたの組織にとってクラウドとは何を意味しますか。

これは簡単な質問のように思われますが、人それぞれに答えが異なることが少なくありません。クラウドの意味を明確に定義することは、広範囲にわたる影響を組織に及ぼします。ユーザーから要求された仮想マシンをすばやく提供できることから、クラウドはオンプレミスでの仮想化を自動化したものと考える人もいれば、ビジネスの強化に役立つサービスとしてのソフトウェア (SaaS) と捉える人もいます。またクラウドとはAmazon Web Services (AWS) などのパブリッククラウドプロバイダーが提供するネイティブ機能を利用することと考える人もいます。さらにクラウドとは到達すべき目的地ではなく、価値実現を促進するIT運用手法であると主張する人もいます。

実のところクラウドは目的地ではなく、新たなエクスペリエンスです。クラウドは「従来とは異なる新たなIT運用モデル」であり、このモデルの下では、インフラストラクチャがコードになり、機能が完全に自動化され、インフラストラクチャコードとアプリケーションコードの両方をリリースウィンドウに制約されることなく迅速に本稼働させることが可能です。またクラウドは、正しく実装および構成した場合には、人的ミスや非効率性を事実上根絶できる環境でもあります。

クラウドの推進に着手する前に、組織にとってクラウドとは何を意味するのかを明確化し、その定義と組織の目標との整合化を図ることが必要です。

クラウド移行計画は正しい道筋に沿って進めることが大切です。この新しいレポートでは、移行プロセスにおいて留意すべき事項を専門家が解説しています。ぜひお読みください。

 

2: クラウドがニーズに合っているかどうかを判断する

次の質問は「なぜクラウドなのか」です。Simon Sinek氏はその著書『Start with Why』(邦題: WHYから始めよ!) で、「人々はあなたが何をしているかではなく、なぜそれをしているのかを評価する」と述べています。クラウドエクスペリエンスは既存のビジネス運用方法を大きく変えるものであり、その変化は人、プロセス、およびテクノロジーに影響を及ぼしますが、とりわけ厄介で、かつ影響が最も大きいのが人的側面です。この変革に対する内部の支持を得るためには、変革が必要な「理由 (なぜ)」に賛同してもらう必要があります。

クラウドイニシアチブの開始に先立ってクラウド導入ワークショップを実施すると、潜在的な問題についてオープンに議論し、不安に向き合い、目指すべき成果についての理解および (大筋での) 合意を図り、「理由」に関して足並みを揃えることが可能になります。こうしたワークショップを通じて確立されるコンセンサスと共有ビジョンは、クラウド導入の過程で発生するであろうさまざまな課題の克服を容易にします。

たとえば一般的に発生しがちな課題として、セキュリティグループやガバナンスグループを計画に関与させるタイミングが遅れることが挙げられます。そうした場合に、これらのチームが自己防衛に走り、「我々には関係ない。今さら言われても困る」といった態度をとることがあり、そうなると当然進捗に悪影響が生じます。彼らは協力する気がないわけではなく、取り組みへの参加を最初から要請される代わりに、いきなり難題を突きつけられて命令されることに反発しているのであり、早期にコンセンサスを得ることでこうした事態を回避できます。

コンセンサスを得て、変革が必要な理由を明確化することの最大の利点は、解決すべき課題について深く考察する機会を得られることです。クラウドには多くのメリットがあるとは言え、あらゆる課題に最適なわけではありません。

下の図に示す、おなじみの人、プロセス、およびテクノロジーの交差をご覧ください。

人、プロセス、およびテクノロジーは、クラウドの導入を含むあらゆる変革の「何を」にあたる要素であり、「なぜ」ではありません。さまざまな「なぜ」が特定される可能性がありますが、クラウドの導入を促進する3つの主な要因は、以下のとおりです。

1. 「文化の変化」は人とプロセスが交差する領域で発生します。今日の企業は、既存の体制からの脱却を求められており、「我々はこの方法でこれまで問題なくやってきた」という考え方を改めることが必要です。

2. 「価値実現時間の短縮」は、プロセスとテクノロジーを最大限活用することで実現されます。ソフトウェアの展開を自動化するだけでなく、バリューチェーン全体を改善することが求められています。

3. 「イノベーション」は、人々がテクノロジーを活用して新たなアイデアを実現することで推進されます。クラウドの導入が、企業における実験とイノベーションを大幅に加速させることは間違いありません。

変革に着手する前に、クラウドの導入を目指す理由を明確にしておくことが大切です。

3: タイミングが適切かどうかを見極める

人間は習慣の生き物であり、変化を嫌う傾向にあります。「今は変化のときではない」と常に考える人も少なからず存在し、多くの組織でいわゆる分析麻痺と呼ばれる状況が発生しています。その一方で、クラウドの導入が正解であったとしても、「今すぐ」に行うことが正しいとは限りません。

たとえば、データセンタープロバイダーと長期契約を結んでおり、契約期間がまだ数年残っているような場合、今はクラウドに移行すべきタイミングではない可能性があります。あるいはオンプレミス インフラストラクチャに多額の投資を行ったばかりであれば、新たな投資が可能になるまで数年待つ必要があるかもしれません。

しかしながら今が好機とは言えない最大の理由は、往々にして変化の受け入れ準備の問題です。たとえば、すでにいくつもの変化 (買収、再編、新しいERPシステムの実装など) が推進中であるような場合は、さらなる構造変化に対応する余力がない可能性があります。クラウド トランスフォーメーションには組織一丸となって、万全の体制で取り組む必要があります。単純な「大丈夫、いざとなれば何とかなる」といったアプローチではうまくいきません。待ち受ける課題に立ち向かう準備を真に整えることが必要です。

変化への備えは万全か、また関係者全員の足並みが揃っているかどうかを確認してください。

 

4: クラウドビジネスオフィスを設ける

クラウドの導入は企業に多大な影響を及ぼし、数十年間ほとんど変更されてこなかったプロセスを進化させます。この新たな環境では、開発者が必要なインフラストラクチャの構築や変更をソフトウェアによって行うことが可能になりますが、このような強力な機能は多大なメリットと同時に多大なリスクをもたらします。

これまでソフトウェア開発は、変更管理に基づく静的な世界で行われており、ビジネスへの影響が重大であるという性質から、厳格な制御プロセスと長期間の承認サイクルが構築されてきました。こうした役割を新たに担うのがクラウドビジネスオフィス (CBO) です。

組織の内外でクラウドプログラムに関する意思決定とコミュニケーションの中核となるCBOは、クラウドのためのCoE (Center of Excellence) にとどまらず、最初の実装から継続的運用に至るまで、クラウドプログラムのあらゆる側面を主導する恒久的な運用/管理組織です。

CBOのメンバーは常勤と非常勤の2つのカテゴリに分類され、常勤のCBOメンバーは、組織におけるクラウドの導入、実装、管理の成功に日常的に責任を負うリーダーで構成されます。主なメンバーは、以下のとおりです。

  • クラウドプログラムリーダー
  • 技術運用リーダー
  • チーフアーキテクト
  • セキュリティ運用リーダー

 

一方非常勤のCBOメンバーは、クラウドプログラムの成功に強い関心を持つリーダーたちで、プロセスを監視する役割を担います。主なメンバーは、以下のとおりです。

  • 法務およびリスクリーダー
  • HRリーダー
  • 購買担当
  • IT財務担当
  • アプリケーションオーナーと事業部門 (事業部門はオンボーディングプロセス中に短期間、常勤メンバーの役割を担う場合があります)


クラウドはITの使用および運用の方法を抜本的に変えます。アジャイルな性質を持つクラウドテクノロジーは、企業に多大なメリットをもたらすとともに、ほぼすべての部門に影響を及ぼします。さらにクラウド環境では、管理と運用に必要な人員がオンプレミスの環境に比べてはるかに少なくて済むため、より緊密に連携するチームを編成してサイロを解消する必要があります。また、運用、開発、インフラストラクチャ、リスク、財務などの業務の集約化が進むため、中核となる一連のプロセスが必要です (以下の図を参照)。その主な内容は、以下のとおりです。

  • プロジェクト管理
  • 技術面の意思決定
  • アプリケーションオーナーのオンボーディング
  • 技術トレーニング
  • リスク/セキュリティに関する意思決定
  • 組織的な変更管理とトレーニング
  • 財務管理
  • オペレーショナルサービスおよびガバナンス
  • ベンダー管理

5: クラウドの経済性を理解する

クラウド導入の経済性を明確化することは、考えるまでもないベストプラクティスのように思われますが、実際には50%を超える企業が、クラウドへの移行に関するビジネスケースの作成を省略しています。これはクラウドへの移行がメリットをもたらすことが「すでにわかっている」ためだと思われます。しかしながら、ビジネスケースを作成してクラウドの経済性を明確化することで、多くの有益な情報が得られます。

クラウドの経済性は、いずれも非常に価値のある2つのカテゴリに大きく分類できます。1つ目は、直線的な総所有コスト (TCO) 分析とハードコストの節減です。TCOの比較では、オンプレミスサービスの各要素をそのままクラウドサービスで置き換えることを前提としているため、現在のコストを判定する際には、単にサーバー同士を比較するのではなく、環境全体を見る必要があります。ここで検討すべきコストは、以下のとおりです。

  • ハードウェアとネットワーキングのコスト
  • ダウンタイムのコスト (計画的および計画外)
  • アップグレードのコスト
  • ディザスタリカバリ/事業継続のコスト
  • サービス内容合意書の違約金
  • 展開のコスト
  • 運用サポートのコスト (日々の運用)
  • パフォーマンスのコスト
  • ベンダーソフトウェアの選択に関するコスト
  • 要件分析のコスト
  • 開発者、管理者、およびエンドユーザーのトレーニングのコスト
  • 他のシステムとの統合に関するコスト
  • 品質、ユーザー側の受け入れ、およびその他のテストのコスト
  • アプリケーションの機能強化とバグフィックスのコスト
  • 物理的なセキュリティのコスト
  • 法務、MSA、および契約のコスト
  • 交換および引取のコスト
  • その他のリスクに関するコスト (セキュリティ侵害など)

 

クラウドの経済性の2つ目のカテゴリは、アジリティおよびその他の目に見えないコストです。ただし、非常にフレキシブルかつアジャイルなクラウドネイティブ インフラストラクチャがもたらすメリットや、プロビジョニングに必要な時間が数か月から数時間に短縮された場合のコスト面の効果など、クラウドが企業にもたらす目に見えないメリットを数値化するのは、容易ではありません。ここでは、以下のような質問について考えてみてください。

  • 生産性 (人日) に関する効果をどのように測定しますか。
  • アプリケーションの開発期間の短縮によって得られる利益の総額はどの程度になりますか。
  • ソフトウェアのライフサイクルの短縮によって得られる効果をどのように測定しますか。
  • 「フェイルファスト」モデルをどのように評価しますか。
  • ヒューマンエラーや機能停止が起きると、組織にどの程度の損害が生じますか。

 

これらの質問に対する確かな答えを得るのは容易ではありませんが、多くの企業が目に見えるメリットを得ています。たとえば、ある金融サービス企業では、Amazon Web Services (AWS) への移行後にソフトウェア開発の生産性が10%向上しました。7億ドルの予算を設定しているこの企業にとって、生産性向上のメリットは非常に大きく、クラウドネイティブの取り組みに関するビジネスケースの作成に役立っています。

そして最後に、クラウドプログラムの策定にあたっては、ベストプラクティスとして財務面のKPIを追跡することが推奨されます。クラウド経済モデルの有効性は、時間の経過とともにユースケースが増えることで、より改善されていきます。

6: 適切に実行する

物事を適切に実行するためには、自分がしていることを理解していなければならず、これは「なぜ」「何を」「どのように」の三本柱のうち、「何を」と「どのように」にあたる部分です。組織にとってのクラウドの意味と、クラウドの導入が必要な理由を明確化し、導入に向けた準備も整ったら、焦点を当てるべき事項および具体的な実行方法についての検討を開始します。

「何を」

多くの企業が、エンドカスタマーに提供する価値の向上を目的に、クラウドの導入を進めています。これらの企業は運用環境を成熟させて、より迅速かつコスト効率よく価値を提供することで、競争力を強化することを望んでいます。適切なクラウドイニシアチブは、ビジネス運用方法の抜本的変革を可能にしますが、その過程は必ずしも容易ではありません。クラウド トランスフォーメーションのコアコンポーネント (以下の図を参照) に集中的に取り組むうえで役立つのが、確立されたクラウド トランスフォーメーション成熟度アプローチです。

これらの成熟度領域はすべて互いに関連しており、クラウドの導入を真に成功させるためには、すべての領域に取り組むことが必要です。とは言え、すべての領域に今すぐ取り組む必要も、すべての領域に同等の力を注ぐ必要もありません。ただし、最初にすべての領域の現在の成熟度を明らかにし、目標とする最終状態を決定して、たどるべき道筋を明らかにしておくことは絶対に必要です。変革は時間を要するものであり、今すぐめざましい成果を挙げようと焦る必要はありません。まずは少数の領域に絞って取り組みを開始することをお勧めします。一般的な候補となるのは戦略やセキュリティの領域です。

「どのように」

クラウドを導入しようとしている大企業の技術系スタッフの多くは、必要なスキルを有していないか、あるいは (より深刻な問題として) 新たなイニシアチブに取り組む時間を有していません。多くの場合、彼らはミッションクリティカルなアプリケーションのサポートに日々忙しく、新たな課題に取り組む時間は残されていません。そのため、ほとんどの企業が変革のためのパートナーを選んで、クラウド トランスフォーメーションを加速するとともに、ITスタッフが将来的にはクラウドを自身で管理できるようにするための支援を得ています。

内部のITスタッフのみですべての業務をこなすことも不可能ではないものの、今すぐには無理であり、必要な体制を早急に確立するためにもパートナーの支援が必要です。場合によっては、パートナーと社内IT部門の間に多少の健全な緊張が生まれることもあるでしょうが、IT部門がパートナーと同じ作業を同じ品質、同じ期間で行えると主張してきたとしても鵜呑みにしてはなりません。能力的には可能だとしても、通常のIT業務は誰がやるのでしょうか。

ここで覚えておいていただきたいのは、内部と外部で仕事を奪い合う必要はないということです。双方が担うべき仕事は豊富に存在しています。プロジェクトを成功へと導くためには、計画に関わる主要関係者をすべて洗い出し、早い段階からその賛同と関与を求めることが必要です。肝心なのは変革を促進して関係者にメリットをもたらすことであり、単独ですべてを行うよりも適切なパートナーの支援を得る方が、目標をはるかに容易に達成できます。

 

7: 学び続ける

すでに述べたように、クラウドは目的地ではなく、アジリティの向上、蓄積された知識の活用、さらなる改善を可能にするビジネス運用方法です。最終的にどのアプリケーション、オペレーション、またはサービスをクラウドに移行するにせよ、クラウドを最大限に活用し続けるためには、継続的改善の文化を組織内に育むことが重要になります。具体的には、支出を常時監視し、セキュリティとコンプライアンスの体制を確立し、得られたフィードバックに基づいて改革を進める、といった取り組みが必要です。また失敗を罰するのではなく、イノベーション、創造性、およびフィードバックを奨励することも大切です。フィードバックループの短縮は、ソフトウェアの改善、顧客が求める機能の迅速な展開、運用の効率化、問題発生の抑制、コストの削減、価値の向上などのメリットを促進します。

クラウド移行計画は正しい道筋に沿って進めることが大切です。この新しいレポートでは、移行プロセスにおいて留意すべき事項を専門家が解説しています。ぜひお読みください。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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