長きにわたって存続するスマートシティを構築する方法

長期間にわたる1回限りのスマートシティプロジェクトが計画されることはほとんどありません。今後数十年間成長を続けて市民をサポートする都市を構築するには、何が本当に重要なのかを見極め、そのビジョンを支える構造の枠組みを作成しなければなりません。

まず、今から20年後に目を覚まして窓を開け、自分が住む都市を見渡したときの光景を想像してみてください。そこに広がる光景は素晴らしいものになっているのではないかと思いますが、注目すべきは、私が「スマート」ではなく「素晴らしい」と言った点にあります。

私自身が考える2038年の窓からの光景には、ローマが見えます。ローマにはあらゆる場所に2000年の歴史が反映されていますが、私が思い描く未来のローマも物事が流れるように動いています。私はローマの素晴らしく壮大な光景に魅了されながらも現代的な生活を送っており、サービスや情報に簡単にアクセスできますが、スマートであるかどうかは重要ではないため、スマートなものとそうでないものを区別してはいません。私にとって本当に重要なのは、都市とサービスが私の必要としているものを必要な場所とタイミングで提供してくれることです。

私は、現在「スマート」と考えられているプロジェクトが何か別のものに変化し、都市自体が一連の「スマート」な機能を導入するのではなく、私を含むすべての市民のニーズに絶えず適合する流動的なエクスペリエンスを実現する中でシームレスに進化していくと見ています。また、このような機能によって都市がインフラを提供するというミッションをより確実に達成できるようになり、企業や個人間の関係が強化されることを期待しています。これらの機能は目立たないものの、私たちが現在電気に対して思っているのと同じように、生活の中で当たり前の存在になるはずです。

 

スマートの本当の意味

現在および将来のスマートプロジェクトをその周囲の環境と切り離すことはできません。たとえば、スマートパーキングは出入りする車の数を数えるだけでなく、ドライバーが空いている駐車スペースを見つけられるようサポートします。 実際のスマートパーキングは、車の出入りを認識したり、インテリジェントな交通システムとやり取りを行って待ち行列を減らしたり、レストランに予約客が車で向かっていることを知らせたり、自動運転車を操作して一番近くの空いている駐車スペースまでドライバーを案内したり、ドライバーに代わってクレジットカードで支払いを行って車のシステムにその情報を送信したります。また、エリア内でリアルタイムの情報を提供し、車の運転動作やセキュリティを改善します。

さらに、どの都市も独自性を持っているため、スマートプロジェクトはそれぞれに異なり、各地域の志向、ニーズ、優先事項と固有のレガシーインフラストラクチャやサービス、組織、および規制が組み合わさって、各都市/コミュニティに固有のスマートプロジェクトの意味が定義されています。そして最近では、スマートシティが (持続可能性と居住性を明確な目標に定めているシンガポールのように) コンセプトになっていたり、(世界で最も幸せな都市を目指すドバイのように) 野心的な目標になっていたりすることもあります。また、特定の問題を解決したり、公共サービスの効率とエクスペリエンスを向上させたりするための手段となっているケースも見られます。

スマートシティには数多くの機会があり、今後5G、ブロックチェーン、人工知能などの新たなテクノロジーによってさらに多くのことが可能になると思われますが、こうしたテクノロジーは、従来の企業、テクノロジープロバイダー、およびイノベーターを包含し、潜在的に無限の組み合わせで各都市に固有の問題を解決する、活気ある多次元のエコシステムに支えられています。

テクノロジーはこうした変革の推進で中心的な役割を果たしますが、それだけで「スマート化」を進めることはできません。大量のセンサーからより多くのデジタル情報を収集することでサービスに関する有益な情報をさらに取得したり、公共サービスへのデジタルアクセスを実現することで関係を広げたりするのは難しくありませんが、「スマート」という言葉は、水や電力の損失を大幅に減らしたり、安全でないエリアを家族向けの公共の広場に変えたり、身障者のアクセシビリティを向上させたりなど、テクノロジーによって根本的な変化をもたらすことができる場合にのみ使用すべきです。適切なビジョンを掲げることにより、都市は効率と持続可能性を向上させることが可能となり、それに伴って市民の日々のエクスペリエンスも向上するものと思われます。

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スマートプロジェクトが失敗または終了してしまう理由

私たちは誰もが、かつて強い影響を与えていたテクノロジーが消え去ってしまった例を思い浮かべることができます。これと同じように、2038年まで存続するスマートシティプロジェクトはどれだけあるのでしょうか。スマートシティに関しては、データを収集する交通監視システムで効果が得られなかったり、CCTVのセキュリティネットワークで会場のセキュリティが強化されなかったり、公共のWi-Fiシステムが結局使用されなくなったりなど、私は数多くのプロジェクトが終了するのを目の当たりにしてきました  (皆さんの経験もぜひ聞かせてください)。

もちろん、特定の問題に対処するためにプロジェクトを計画することが間違っているわけではありませんが、その実施には通常1~2年、またはそれ以上の時間が必要です。そしてその後、テクノロジーが時代遅れになるか都市のニーズの進化に伴ってどこかに投資が必要になるまで、1~2年間にわたって問題を解決するための取り組みが続けられます。これはテクノロジーの機能だけに関する話ですが、ムーアの法則を適用すれば、今から20年間、そしてさらに10年以上にわたって少なくとも4世代のテクノロジーが使用されることになると思われます。また、都市計画家の障害となるその他の要素として都市の人口、経済、および人口統計の変化があり、こうした変化に伴って規制も進化します。

その一方で都市のインフラ、サービス、トポロジ、および人口が10年以上にわたって変化し続ける可能性があるため、導入するイノベーションも同じ期間存続させる必要があります。

ここで都市のサービスの観点から、都市の変化に伴ってそれらがどのように変化する可能性があるのか、たとえば、スマートガーデンがどのようなものになるのかを考えてみてください。今日では、あらゆる場所にWi-Fiアクセスポイントを設置して優れたモバイルアプリケーションを実装したり、数年間にわたる段階的な進化を想定してスマートガーデンのエクスペリエンスを変革し、それを生活に組み込んで、より没入型のパーソナルかつ関連性の高いものにしたりすることが可能です。

またさらに一歩踏み込んで、よりパーソナルな住宅について考えてみてください。住宅は都市と類似点が多く、そこに住む人やその人が求めているエクスペリエンスを反映するように設計されます。持続可能なだけでなく継続的に進化し、私的なものとして夢、志向、およびニーズが反映される住宅は生きています。家具が変わったり、一部が壊れて交換したり、家族が増えたり減ったりする住宅は、住む人の変化に合わせて変化することが予想されますが、住宅がどのように進化しているのかに注意を向けなければ、面倒な事態に直面して失望することになります。

今ではこれが都市のレベルにまで広がっていますが、このような状況は今後20年間にわたって続くものと思われます。

この他に、住宅をビジョンに合致させるための対策を講じることも可能で、これに関しては、すべての構成要素と制限事項を考慮しながら成果に目を向け、場合によっては最初のアイデアの枠を超えて (または自らのアイデアに基づいて) アイデアからプロジェクトを策定できる設計者を関与させます。また、さらなる成果をもたらすであろう全面的なリノベーションではなく、短期間でマイナーアップデートを行った場合のメリットを検討することも考えられますが、こうした対策は都市のレベルでも行うべきです。

住宅と都市のモダナイゼーションにおいては、歴史、都市計画、構造といった特定の制限事項についても考える必要があり、産業考古学の要素、たとえばローマではコロッセオの存在によって決定を強いられる場合があるといったことを考慮しなければならないケースもあります。都市の設計者はこうした問題に対処しなければなりませんが、ドバイに実在するシムシティのような環境では、ほぼすべてを完全に自由に変えることができる場合があります。また、都市の管理者が先導する多くの専門分野にわたるアプローチでもこうした問題に対処する必要があります。

 

スマートシティの成功要因

成功を収めているスマートシティプロジェクトには、共通して見られる3つの重要成功要因があります。

まず、それぞれに固有の戦略を策定することです。世界のどの都市も同じではないため、(スマートトラフィック、スマート信号機、スマートウォーターといった) 同じような定義を定めたとしても、スマートプロジェクトまたはサービスが同じになることはなく、少し見ただけで、目標、制限事項、プロセス、テクノロジーが異なることがわかります。そのため、都市の機運によって変革が制限される中で10~20年にわたって変わらないであろう枠組みを作ることが重要です。

次に、適切な構成要素が必要です。特別なソリューションや安価なソリューションを含む手っ取り早い方法は、中期的に見て役に立ちませんが、この数十年間にあらゆる都市のインフラで示されてきたように、オープン標準は大きな効果をもたらします。テクノロジーは重要であるため、短命に終わる可能性がある独自仕様の機能ではなく、標準の進化を活かしてスマート化を進め、投資を保護することが重要です。

そして最後に、スマートな都市、または素晴らしい都市では成果が認識されています。この概念について、私のお客様の1人は、「あなたをサポートしてくれるものであるなら、その都市はスマートです」とまとめています。構成要素やテクノロジーを変えることで都市がさらにスマートになることはなく、自分1人で都市の成果のすべてを実現できる人など存在しません。

 

2038年の光景を素晴らしいものにしたのは何か

ここでもう一度、未来の窓から2038年の素晴らしい都市の光景を見渡してみれば、何がその実現につながったのかがわかります。明らかなパターンの進化によってすべての関係者に体系的に変化がもたらされて共通の設計が実現し、ローカルコミュニティは最新化されたインフラとサービスがもたらす発展の機会を活かすことで繁栄しました。都市全体の効率化が進むことは明らかで、あなたの住む都市は単にスマートなだけでなく、素晴らしい場所となります。

 

スマートシティ: リーダーのためのアドバイス

  • あなたが住む都市において、今後2、5、10、20、30年間で本当に何が重要になるのかを見極めます。
  • あなたが住む都市の独自の枠組みとその未来がどのようなものであるべきなのかを把握します。
  • 中長期的な進化につながる短期的な成功を実現します。
  • 都市の問題を解決したり都市のサービスを強化したりするために適切なパートナーのエコシステムを関与させます。

 

   明確な構造の枠組みを作成し、戦略的かつ論理的にオープン標準のテクノロジーを導入します。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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