2018年7月30日

ブロックチェーンイニシアチブによる価値実現を迅速化する方法

企業による今年のブロックチェーン投資額は20億ドルを超えると予想されている一方で、多くのユースケースが未だ本稼働に至っていません。期待されるビジネス成果を迅速に達成するために、各企業はブロックチェーンイニシアチブを加速する触媒を見出す必要があります。

エンタープライズグレードのブロックチェーンソリューションは、今年のトレンドトピックの1つとなっています。認知度が急速に高まり、メリットが喧伝されるなか、ブロックチェーンはあらゆる課題を解決できるかのような印象を与えています。しかしながらコンセプトとしてのブロックチェーンが、さまざまなユースケースや業界の効率化に役立つ可能性を秘めている一方で、多くの企業がユースケースを試験運用から本稼働へと進展させられずにいます。

ブロックチェーンが真に持続可能な価値を生み出す潜在力を有していることは疑いありません。他の一過性のテクノロジートレンドとは異なり、ブロックチェーンは確かなビジネス成果を持続的に支えることが可能です。

以下では、より現実的な観点からブロックチェーンのメリットを明らかにするとともに、ブロックチェーンのユースケースを本稼働段階へと進展させて、持続可能な真のビジネス価値を生み出すために何が必要であるかを考察します。

 

エンタープライズ向けブロックチェーンソリューションの実現要件

ブロックチェーンの価値については活発な議論がなされている一方で、その大半は現実的なビジネス成果ではなく、理論上の可能性に焦点を当てた観念的な議論に陥っており、エンタープライズグレードのブロックチェーンソリューションを実現するための要件はほとんどまたは全く考慮されていません。

一般的な認識とは異なり、ブロックチェーンそのものは革新的なテクノロジーではありません。ブロックチェーンは基盤となるプラットフォームとして、既存のビジネスモデルの変革と新たなビジネスモデルの構築の両面から価値実現を支えることが可能です。

この2年間でブロックチェーンに対する投資額は劇的に増加している一方で、出だしでつまずいている組織も少なくありません。しかしながら、こうした努力は決して無駄ではなく、イノベーションの基盤としてのブロックチェーンの進化を巡る状況は、材料科学、内燃機関、コンピューターテクノロジー、ネットワーキングなどの分野における過去のイノベーションで見られた状況に類似しています。こうした変革において最も難しいのが、広く利用されている高価値の本稼働用ソリューションをサポートできるように、イノベーションの基盤を進化させることです。

ただしこれまでのイノベーションとは異なり、デジタル化の拡大に伴い、従来存在していた障壁の多くが消失しつつあります。さらにデジタル化によるビジネスアジリティの向上により、今日の企業はよりスピーディな変革を実現できます。そのためブロックチェーンイニシアチブについても、迅速な価値実現が期待されています。高度に接続されたデジタルワールドでは、「複雑性」が克服すべき新たな障壁の1つとして浮上しており、サプライヤーやソリューションプロバイダーを包含するコラボレーティブなエコシステムを構築する必要性が高まっています。ブロックチェーンは、こうしたエコシステムの構築を支える技術的な基盤を提供できます。

 

ブロックチェーンの導入障壁

ブロックチェーンの導入にあたって大きな障壁となるのは、ビジネスおよび運用に関する側面です。イノベーションの基盤としてのブロックチェーンの価値を最大限に引き出すためには、そのメリットを活かせるようにビジネスプロセスを変革する必要があります。その結果として、既存のビジネスモデルのROIを向上させるとともに、新たなビジネスモデルを通じた価値の創出も可能になります。ビジネスプロセスを変革しなければ、ブロックチェーンを導入しても、TCOの削減程度のメリットしか期待できません。

ブロックチェーンの概念実証 (PoC) は、ITアーキテクチャーや運用に関するクリティカルマスが達成されていないことが原因で停滞しています。PoCから次の段階へとイニシアチブを進展させるためには、何らかの触媒が必要です。組織内のユースケースが増加するなか、この問題は深刻さを増しています。ブロックチェーンの利用が拡大して、そのビジネス価値が持続可能なものとなる転換点に到達するためには、組織の戦略的ITアーキテクチャーおよび運用モデルにブロックチェーンを組み込むことが欠かせません。

 

PoCから次の段階に進むために必要な触媒

ここで問題となるのが、その触媒の特定です。私は触媒として、個々のブロックチェーンユースケースについて、価値実証 (PoV) とサービスクラス (CoS) という2つのコンセプトを明確化することを推奨しています。

PoVとは、個々のユースケースに期待される定量化可能なビジネス成果を検証するためのワーキングモデルの構築を意味します。またCoSとは、個々のユースケースにおけるビジネス成果の達成に適したブロックチェーンプラットフォーム、必要なITアーキテクチャー、および運用モデルを決定するために、一連の技術的な特性、ビジネス依存関係、ガバナンスモデルなどを明らかにすることを意味します。触媒を構成するこの2つのコンセプトは相互に依存しており、真のビジネス価値の実現を加速します。

一例として、金融サービス業界におけるブロックチェーンの理想的なユースケースとして、即時グロス決済 (RTGS) が挙げられます。RTGSの実現には、高い耐障害性、迅速な決済ファイナリティ、トランザクション量の大幅な変動への対応、非ブロックチェーンベースのデータレイクとの統合などが必要です。こうした要件を明らかにすることで、コンポーザブルアーキテクチャーをベースとする柔軟性の高いインフラストラクチャを使用して、非中央集権的な決定性コンセンサスアルゴリズムに基づくフォールトトレランスをサポート可能なアーキテクチャーを構築する必要があるとの結論が導き出されます。

 

ブロックチェーンに関する今後の見通し

2018年後半から2019年初頭にかけてはPoCが継続され、本稼働段階に進むユースケースはあってもごくわずかであると思われます。実際のエコシステム内を流れる実際のトランザクションによる実証も行われるものの、その範囲や規模はごく限定的なものになると予想されます。

初期の本稼働ユースケースによる小中規模のビジネス成果が達成され始めるのは、早くても2019年中頃になる見通しです。その後2020年にかけて、ブロックチェーンのユースケースが拡大し始め、より複雑なユースケースが本番環境に展開されるようになると予想されます。こうしたユースケースの例としては、複雑なビジネスモデルに関係するユースケース、法規制の対象となるユースケース、ハイブリッドITモデルによってサポートされる本稼動システムのエコシステムなどが挙げられます。

2018年および2019年はブロックチェーンにとって黎明期となります。しかしながら今後18~24ヶ月以内に、エンタープライズ規模のユースケースをサポートできるように、ブロックチェーンプラットフォームの機能強化に加えて、複数プラットフォーム間の集約が進行すると予想されます。この道程は、(現時点で見られるような) 複数の競合プラットフォームが存在する状況から、プラットフォーム間の相互運用性の向上を経て、最終的には市場原理によって業界の標準化へと進展すると思われます。その段階に至って、ブロックチェーンを基盤とするソリューションの真価がようやく発揮され始めますが、そのときに備えて今のうちから、さまざまなブロックチェーンプラットフォームにわたるソリューションの移植可能性に配慮することが必要です。

 

ブロックチェーンイニシアチブによる価値実現を迅速化: リーダーへの教訓

  • ブロックチェーンは真に持続可能な価値を生み出す可能性を秘めています。
  • 個々のブロックチェーンユースケースについて、価値実証とサービスクラスの2つのコンセプトで構成される触媒が必要です。
  • 今後18~24ヶ月以内に、エンタープライズ規模のユースケースをサポートできるように、ブロックチェーンプラットフォームの機能強化に加えて、複数プラットフォーム間の集約が進行すると予想されます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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