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2019年1月17日

テクノロジーが支える都市型農業

従来型の農業は、都市部から豊かな土地が残る地方へとその舞台を移しました。一方今日では、先進的なテクノロジーに支えられた新たな都市型農業が広がりを見せています。

農家は私たちの暮らしに欠かせない存在であり、言うまでもなく農業はあらゆる文明の礎です。新石器時代の人類は、種子、土壌、先の尖った棒、そして雨乞いの踊りに頼って、人口と知識を爆発的に増加させました。
こうした古代の方法は21世紀のテクノロジーに取って代わられ、尖った棒や雨乞いの踊りはもはや必要ありません。さらに今では土壌さえも不要になりつつあります。
世界人口の半数が都市部に住んでいる今日、先進的な農家は消費者が存在する場所で農業を営むようになっています。こうした新しいタイプの農家が希少な土地から最大限の収益を得るために活用しているのが、水耕栽培 (培養液で作物を育成) や垂直農業 (棚や垂直面で作物を育成) などの手法です。
しかしながら、従来型の農法にせよ、都市の屋上を利用する農法にせよ、効率性を高めるにはさまざまな課題を克服する必要があります。以下では、より豊かな食材を生産するために農家が重ねてきた工夫をご紹介します。
なお都市型農業の「都市」の部分に関しては、Farmbox Greens創設者のDan Albert氏の言葉を引用しておく必要があるでしょう。「都市の境界の少し外側に出ることには大きな意味があります。都市から10マイル程度離れることで、都市または流通拠点まで収穫物を満載したトラックを数マイル余分に走らせる必要があるかもしれないにせよ、
都市部に比べて安い地代で、持続可能な食糧生産目標を達成できます」と同氏は指摘しています。
「農場から食卓まで」の距離は必ずしも問題でなく、また「食品の流通拠点が都市の中心部にあるとも限りません」とAlbert氏は指摘します。「大切なのは自分の顧客が存在している場所を把握し、それに合わせることです」。


従来の都市型農場を支える太陽光発電

多くの人は「パサデナ」を、「ロサンゼルス郡の都市」、あるいはドラマ「ビッグバンセオリー」の舞台として認識しているのではないでしょうか。パサデナと聞いて「わずか10分の1エーカーの土地で年間2,000〜7,000ポンドもの作物を生産している農場」を思い浮かべる人はまずいないはずです。しかしながらパサデナのDervaes family farmは、(「ビッグバンセオリー」の主人公たちが暮らすこの街で) まさにこれを実現しています。
Anais Dervaes氏は農場の生産物を販売するために週1回の農産物宅配サービスを運用しています。言うまでもなく、このサービスの運用には収穫した作物を新鮮に保つための冷蔵設備が欠かせません。しかしながら冷蔵設備には膨大な電気代がかかります。そこで同農場が活用しているのがソーラーパネルです。
「私たちは2つの巨大なステンレス製冷蔵庫を保有しており、12個のソーラーパネルから電気を供給しています」とDervaes氏は説明します。「またソーラーパネルだけでは電力が足りない場合は、パサデナのグリーンエネルギープログラムから提供される環境に優しい電気を使用します」。このように太陽光が不足している場合には風力を利用することで、この農場は100%グリーンエネルギーで運用されています。
また週1の農産物宅配サービスに関しては、そのためのアプリケーションが存在しています。Dervaes氏の農場では、LocalHarvest.orgから提供される中小規模の集団営農向けアプリケーションを利用しています。


屋内の垂直型農場の成長を加速させるLED照明

Farmbox Greensはシアトルに拠点を置く、マイクログリーンを専門とする垂直型農場です。そしてこの一文からもお分かりのとおり、時代の最先端を行っています。同農場のような都市型農家はLEDに大きく依存しており、Farmbox GreensのAlbert氏は 「(都市型農業において) とりわけ重要なテクノロジーの1つがLED照明です」と述べています。
当初のLED照明は赤と緑だけでしたが、青色LEDが発明されたことで、より多くの光をより効率的に提供できるようになりました。Albert氏のような屋内型農家は、植物の生育に最適な赤や青の光を与えるために「特定のスペクトルのみ」を使用しています。またAlbert氏が指摘するように「(LEDは) 従来の屋内栽培用照明に比べて発熱量が小さい」ため、冷暖房空調 (HVAC) コストも抑制できます。
そして何よりもありがたいことに「LEDテクノロジーは進化を続けている一方で、その製品価格は下がり続けています」とAlbert氏は指摘します。
青色LEDの価値を高く評価しているのはAlbert氏だけではありません。青色LEDは2014年にノーベル物理学賞を受賞しています。


コンテナー農業を支えるIoT

Jon Friedman氏はあからさまな表現を避けていますが、ニューイングランドは気候に恵まれていません。「冬場は、運が良ければ、3~6時間程度の「それなりの」日照が得られます」と同氏は説明します。
しかしながら大多数の人が季節性情動障害の誘因としか見ていないものを、Friedman氏はチャンスと捉えています。同氏はコンテナー農場の1つであるFreight FarmsのCOOで、輸送コンテナーを40×9フィートの農場に変えて、気候や場所に制約されることなく産直の農作物を提供しています。
Freight Farmsの成功の秘訣が、独自のIoTプラットフォームであるfarmhandで、このプラットフォーム上でデータ収集センサーから得られる情報に基づき、温度、湿度、二酸化炭素レベル、水の流れなど、農場のさまざまな側面を監視および制御することが可能です。このIoTならぬIoP (Internet of Plants) を支えているのがデータであり、農家はソフトウェアを介して農場をリアルタイムでインタラクティブに管理でき、スマートフォンから制御することも可能です。
Friedman氏が述べているように、このアプリは世界中のどこからでも使用でき、例えば日没を模して午後7時に農場の照明を暗くするといったことも容易です。


自動化によるコオロギ養殖の効率化

Ovipost社はサンフランシスコに拠点を置く企業で、昆虫養殖用の自動化設備を保有しています。同社が生産しているコオロギの一部は家畜の餌として消費されていますが、同社CTOのJames Ricci氏によると「売上の大半を占めるのは人間向けの商品です」。
不気味な姿の昆虫を食べることには拒絶反応を示す人が少なくありません。しかしながら昆虫は優れた食材として注目されています。The New York Timesによると、「全世界の人為的な温室効果ガス排出量の14.5~18%が家畜に由来します」。これに対して昆虫は、温室効果ガスの排出量が少ないタンパク質供給源です。さらにコオロギは、オメガ3脂肪酸、食物繊維、および鉄分を豊富に含んでいます。
Ovipost社はコオロギの卵を分けて数える際に役立つ機器を保有しており、コオロギの飼育容器に卵をすばやく植え付けて養殖農家に効率よく出荷できます。「産卵に関する作業を自動化しただけで、従来のコオロギ養殖方法に比べて労力を30%も削減し、作業時間を20分の1に短縮できました」とRicci氏は述べています。「当社は環境データを記録して作業チームに送信するためにSensorPush社のデバイスを使用しており、また爬虫類業界で広く使用されている自動培養器サーモスタットで温度と湿度を制御しています」。
「当社は大規模な養殖に役立つテクノロジーの開発に取り組んでいます」とRicci氏は述べています。例えばOvipost社では、コオロギの産卵数を数えるための非公開の手法を開発しており、これは世界でも同社だけが保有する技術です (「当社のエンジニアリング担当VPは流体工学のバックグラウンドを有します」と同氏は付け加えています)。
しかしながら、Ovipost社による自動化のすべてがテクノロジーベースというわけではありません。実際、同社における最大の成果は昔ながらの作業工程の改善によるものです。コオロギ養殖場の継続的な経費の80%を人件費が占めており、作業工程の合理化による節減が可能であるとRicci氏は指摘します。
経費がかかる最大の要因は監視と回収です。すなわち野菜農園とは異なり、コオロギの養殖場では商品が逃げ出すことが悩みの種となっています。従来のコオロギ養殖場ではコオロギを容器の中で飼育しており、コオロギはそこから這い出ることが可能です。脱走を防止するため、養殖業者は容器の上部に梱包テープをぐるりと貼っていますが (テープに触れたコオロギは容器内に滑り落ちます)、このテープは月に1度の貼り直しが必要です。これに対してOvipost社では、より滑りやすい「食品安全基準を満たしたエポキシ樹脂」を容器内に吹き付けており、この作業は年1回で済むとRicci氏は説明します。こうした手法による世話の簡素化は、時間と経費の節減に大いに貢献しています。
このように、「オッカムの剃刀」理論としても知られるように、時には無駄をそぎ落とすことが効率化の最善の手段となります。


都市型農業: リーダーへの教訓

  • 都市型農場では人口密集地で農産物が育てられています。そのため使用できるスペースは限られますが、創造性やテクノロジーに制約はありません。
  • 都市型農場を支えるテクノロジーは年ごとにより強力になり、その一方で価格は下がり続けています。
  • 食卓にコオロギが上る日もそう遠くないかもしれません。コオロギはパリパリとした食感でケチャップがよく合います。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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