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2021年12月17日

テクノロジーで実現する新しいハイブリッドワークスペース

パンデミックによってオフィスに対する考え方が変わりました。新しい傾向はリモートワークにとどまりません。
世界的なパンデミックに直面したあまたの企業と同様に、Unisys社もビジネスの方法を大きく変えることを余儀なくされ、準備のための時間はほとんどありませんでした。

しかし、ペンシルベニア州ブルーベルに拠点を置くテクノロジー企業であるUnisys社は、1週間のうちに1万7,000人の従業員の95%をリモートワークに移行することに成功しました。その後の3か月間で、同社は3,100万ドル分の賃貸料を浮かせました。20億ドル規模の同社の社長兼最高業務執行責任者であるEric Hutto氏によれば、この新しい業務モデルを機能させるために、同社は組織構造全体を見直さなければなりませんでした。

「簡素化を進める必要がありました」とHutto氏は話します。「Zoomコールに1日19時間を費やしながら企業を経営することはできませんでした。何かを決定するために、リモート会議には12人いれば十分でした。70人も必要ありません。リモートファーストの世界ではそれまでの業務モデルが通用しないことに、すぐに気づきました」。

Hutto氏によれば、パンデミックが落ち着いた後もUnisys社は引き続きオフィスを持ちますが、使用頻度を少なくし、使い方も以前とは異なるようになると言います。主に、現場のチームとリモートチームのコラボレーションのために使用されます。

「全員がオフィスに戻ることを強制はしません」と同氏は言います。「リモート環境がより上手く機能する方法を模索することに力を注ぎたいと思っています」。

もちろん、このように考えているのはUnisys社だけではありません。IDC社による2021年4月の調査によれば、23%の企業が、2022年に従業員が主に自宅や他のリモートロケーションから勤務することを許可する予定です。この数字はパンデミック前から3%増加しています。最大の理由は、従業員の安全を守るため (62%)、従業員のエクスペリエンスを向上するため (61%)、また高い生産性を維持するため (52%) でした。

IDC社の調査では、ビジネスリーダーと従業員両方の4分の3以上が、リモートワーカーはオフィスで働く従業員と比べて、少なくとも同じくらい生産的だと回答しています。

場所を問わず仕事ができる柔軟性の高い職業に就いている人にとって、ハイブリッドワークは最適です。しかし、新しいワークプレイスは従来のオフィスとは大きく異なり、実現するにはIoT対応のスマートビルディングからAIベースの監視カメラまで、幅広い最新テクノロジーを必要とします。

「現在の流行語はデジタル平等性です。それを達成する鍵は、コミュニケーションとコラボレーションの技術的要件のさらに先を見据え、物理的ロケーションに関わらずすべての従業員に平等なエクスペリエンスを提供することです」。
IDC社Future of Workリサーチディレクター、AMY LOOMIS

様変わりするオフィスビル

シカゴループの中心に位置する、50階建ての壮麗な77 West Wackerビルでは、テナントはスマートホンを使用して、ビルへの入館、エレベーターの利用、バスルームの使用、ビルの共用設備の利用、室内の空気環境の確認ができ、注意が必要な問題が発生した時には管理人にアラートを送信することもできます。

米国中の33都市で商用ビルを管理する、Transwestern社のアセットサービス部門バイスプレジデントであるMyrna Coronado-Brookover氏によれば、パンデミックによって、ビルの正常性と安全に改めて焦点を当てる必要が生じました。そこで、2020年10月、同社はタッチレスなビル操作に向けたモバイルアプリケーションTranswesternHubをリリースしました。

「重要なのは透過性です」とCoronado-Brookover氏は言います。「従業員は、オフィスに戻ることが安全かどうか知りたがっています。そして、オフィスを安全にする最も効率的な方法はテクノロジーを利用することです」。

ただし、多くの従業員はミーティングや、同僚とのコラボレーションが必要なプロジェクトがある場合に、1週間または1か月に数日だけオフィスに通います。つまり、オフィスフロアの配置はこれまでとは変わり、個人のワークスペースが減って共有スペースが多くなります。

IDC社のエンタープライズアプリケーション部門リサーチマネージャーであるJuliana Beauvais氏によれば、一部の企業では今後いわゆるホットデスクが常識となります。オフィスに行く従業員は、前日の夜にCondecoやSpaceIQなどのワークスペーススケジュールアプリにサインインし、その日の業務や共同作業する同僚に基づいてデスクを割り当ててもらいます。ただし、定員に達しているためにデスクに空きがないと言われる場合もあります。

「従業員は自社のオフィスでもビジターのような扱いになるでしょう」とBeauvais氏は言います。「従業員がオフィスにいる頻度が減ると同時に、以前よりさまざまな場所が使用されるようになります。つまり、たくさんの人が道に迷うことになるはずです」。

屋内測位による道案内

従業員が出社したら、その日、自分がどこで働くのかを知る必要があります。従業員は、デジタルレセプションでワークスペースまでの道を案内してもらうか、SteerpathまたはCXAppなどの道順表示アプリを使用して、最適なルートを案内してもらいます。これによって、他の従業員との接触を最小限にできます。

オフィス内に約6メートルごとに設置されたBluetoothビーコンによって、CXAppは目的地までの詳細な道順を示すことができます。CXApp社の創設者であるLeon Papkoff氏によれば、これはGoogleマップの屋内バージョンのようなものです。同社は最近Inpixon社によって買収されました。

Papkoff氏によれば、新型コロナウイルスの流行後、屋内ロケーションサービスは、あれば便利な機能から必需品へと変わりました。パンデミックの最中に従業員を採用し、新しい職場に足を踏み入れてもらう必要がある組織にとっては特に重要です。Inpixon社のテクノロジーは、Arubaなどのエンタープライズクラスのワイヤレスアクセスポイントで使用される解析および位置情報エンジンとも併用されています。

従業員が感染者と接触した場合や、菌が蔓延する場所に侵入した場合には、接触者追跡のためにも使用できるとPapkoff氏はつけ加えます。さらに、ビル内のどのスペースが使用されたかや、毎日何人の従業員がそこにいたかといった解析情報も収集できます。これは、商用不動産への投資規模を最適化したいと考えている組織にとっては不可欠な情報です。

企業が従業員のためにどのくらいのスペースを必要とするかという問題は、以前は比較的単純だったとBeauvais氏は言います。プロジェクトの人員数に各従業員が必要とする面積をかけ、その分のスペースを借りればよかったのです。それは今では通用しません。

「多くの企業が、従業員に仕事をしてもらうためにどのくらいのオフィス面積が必要かまったく分からないという状況にいます」とBeauvais氏は言います。「現在、企業は施設を分析し、データを集約することに時間をかけ、変動が落ち着いたら不動産に関する決定を下します。この作業には5年から7年もかかる場合があります」。

HPEフェローでありIoTチーフテクノロジストであるLin Neaseは、ベンダーは顧客と向き合う方法を見直す必要があると指摘しています。これらのワークスペースの変化が影響を及ぼすのはIT部門だけでないというのです。「人事、不動産、ITが同時に関わることは滅多にありません」とNeaseは言い、万全の準備を整えることが重要だと加えます。

「非常に多くのお客様がワークスペース戦略を見直そうとしているため、そのための議論をより適切に体系化し、あらゆる機会を逃さないようにするために、共通のアドバイザリーツール、つまりワークスペーストランスフォーメーションワークショップを立ち上げる必要がありました」とNeaseは話します。組織の業務にとってテクノロジーパートナーが切り離せない存在だとしたら、認識を揃えるのは当然です。

従業員はいつオフィスに戻るのか

デジタルビジネスのインプリメンターであるEvotek社のチーフ・イノベーション・オフィサー、Mark Campbell氏は、1年以上リモートワークをしていた従業員をフルタイムでオフィスに戻すことは難しくなっていると言います。

「彼らは通勤時間がかからないことや、いつでもコーヒーを飲めることに満足しています」とCampbell氏は言います。「多くの人が、オフィスに通勤することを強制する一流企業よりも、リモートワークをさせてくれる中小企業を選ぶでしょう。いわば、ランプの魔人を元に戻すことができない状態です」。

パンデミックの前、Evotek社はデンバーに新しいオフィスを借りようとしていたとCampbell氏は話します。現在、同社のコロラド州の従業員は完全にリモートで、対面でのミーティングが必要な場合には一時的にスペースを利用します。

ロックダウンが始まり、至急全従業員にビデオ会議とVPNを使用できるようにした後、企業は、リモートの従業員がオフィスの従業員と同じテクノロジーリソースにアクセスできるように取り組んでいます。

「現在の流行語はデジタル平等性です」と、IDC社Future of Workリサーチディレクター、Amy Loomis氏は話します。「それを達成する鍵は、コミュニケーションとコラボレーションの技術的要件のさらに先を見据え、物理的ロケーションに関わらず、すべての従業員に平等なエクスペリエンスを提供することです」。

たとえば、室内にいる人を自動的に特定するAI駆動のカメラがあれば、在宅ワークの従業員は、オフィスの同僚と実際につながっているように感じることができます。Microsoft Vivaなどの従業員エクスペリエンスプラットフォームも、リモートワーカーとオンサイトワーカーの壁を取り払うために役立ちます。

Evotek社は、従業員の自宅のワークステーションにデュアルフラットスクリーンのモニター、高品質のAV機器、高度な両方向ノイズキャンセリングテクノロジーを配備しました。このノイズキャンセリング機能は、赤ん坊の泣き声や犬の鳴き声を自動的に消すことができるとCampbell氏は言います。

「世界のお客様とお話していると、背後で鶏が鳴いていることもあります」と彼は言います。「この最新のテクノロジーは、AIを使用して鶏の声などの背景ノイズを排除します」。

Campbell氏によれば、ネットワーク境界が従業員の自宅にある場合、難しいのはセキュリティを確保することです。機密データや私有データが外部に漏洩することを恐れる組織は、従来型の仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI) テクノロジーと、そのクラウド版ともいえるサービスとしてのデスクトップ (DaaS) を導入しています。

VDIとDaaSはリモートコンピュータに対してスクリーンショットしか送信しないため、データ自体は決して組織を離れることがなく、漏洩、損失、盗難のリスクを軽減できます。

このテクノロジーと、セキュリティをエンドユーザーに近づけるクラウドベースのサイバーセキュリティスイートである、セキュアアクセスサービスエッジ (SASE) を組み合わせることで、主要なセキュリティ問題の多くを緩和できるとCampbell氏は言います。

AIによる監視

ただし、金融サービス企業など、規制要件を満たす必要がある組織には、リモートワーカーに向けたより高度なソリューションが必要です。たとえば、Theta Lake社は、業界をリードするコラボレーションプラットフォームと統合し、ビデオ、音声、チャット、文書を共有時にフィルタリングして、セキュリティ違反の可能性があるものをその後のレビューのためにフラグ付けします。

Theta Lake社は、スプレッドシート形式の個人の特定につながる情報、オンラインチャットの侮辱的または性差別的発言、Zoomコールの背景に映る思想的な旗などの問題のあるコンテンツをAIを使用して特定し、是正のためにコンプライアンスチームに送信します。

Theta Lake社のチーフプロダクトオフィサーであるDan Nadir氏によれば、毎日何千というビデオミーティングが行われる大企業には、すべてのやり取りを監視してポリシー違反を見つけるためのリソースはありません。また、同社の監視テクノロジーに対する関心は、パンデミックの間に急激に高まったといいます。

現在、テクノロジーでフラグ付けできるのは違反が起こった後だけです。将来は、リアルタイムで検出して対応できるようにする必要があります。

「誰かをミーティングから退出させたり、カメラをオフにしたり、誰かが不適切な発言をしたら録音を開始したりする機能は、まだプラットフォームによってサポートされていません」とNadir氏はつけ加えます。「しかし、今後確実にその機能が搭載されますし、企業もそれを待ち望んでいます」。

リモートワークからFOMO (取り残されることへの恐れ) を排除

しかし、平等性とは、従業員が企業の本社にいても、自宅の仕事部屋から勤務していても、モンタナ州の山小屋からログインしていても、同じ会話や機会に参加して地位を向上できることも意味します。

Hutto氏によれば、リモートワークをすることで従業員が機会を損失しているという不安にかられる場合、ハイブリッドワークのスキームは長続きしないといいます。そこで、組織は新しいテクノロジーを導入するだけでなく、企業文化を適合させることも必要です。

「Zoomで同僚とミーティングをしてから、オフィスの同僚と別のミーティングをして素晴らしいアイデアが生まれるといったようなことがあった場合は注意が必要です」とHutto氏は言います。「その内容を保持し、Zoomで通話を終えた同僚に情報を伝え、不利な状況に置かないようにする必要があります。そうしなければ、システムを信頼してもらえないでしょう」。

最終的には、実際のロケーションに関わらず仕事が行われる場所として「オフィス」を再定義する必要があります。

「未来のオフィスとはスターバックスであり、ビーチであり、カントリークラブのバーです。そこでCEOは、ゴルフコースを回った後にラップトップで仕事をするのです」とHutto氏は言います。「私たちは、それを実現し、それが当然だと思えるようにする必要があります」。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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