スマートIoTは規制の適用方法にどのような変革をもたらすのか

スマートシティのITシステムは、政策を伝えるとともにコンプライアンスの強化をサポートするデータを活用して柔軟性とアジリティを高めることを目指しています。しかし規制当局は「ディスラプション」という言葉を使用したがらず、政策が目まぐるしく変化する世界は、大部分の企業が望んでいる将来像ではありません。また今日では、データ主導の政策のディスラプションをめぐるさまざまな論争が巻き起こっています。

データ分析機能を活用して政府サービスを向上させる都市分析はまったく新しいものではなく、たとえば、スマート租税システムは、税務コンプライアンスや徴税の改善に貢献しています。分析は、マネーロンダリングや税金詐欺などの金融犯罪の取り締まりに役立てられており、他の政府システムでも福利と雇用、公安、交通、および経済開発のために都市分析が利用されています。

ただし、これらは最初のステップにすぎず、McKinsey & Company社のレポートによると、「政府のデータイニシアチブは証拠に基づく政策立案への移行を促進しており、データイネーブルメントは、政府機関がすべての活動にわたる公共政策の成果管理を大きく変えることを可能にすると同時に、効率、効果、および透明性を高めるのに必要な手段を提供します。」

公共政策の成果管理で期待される変化の1つとして、AIを活用した段階的なコンプライアンスの強化が挙げられますが、このレポートによると、たとえば信号と経路の決定を制御して混雑を緩和するスマート交通システムでは、以下を行うことも可能です。

  • 道路交通法や大気汚染防止法に従わないドライバーに違反切符を切る。
  • 過去の交通違反切符や駐車違反切符の支払いを済ませていないドライバーが車両を運転できないようにする。
  • 道路のくぼみに関する情報を道路整備員に提供するとともに今後の道路の損傷を予測する。システムを活用することにより、道路を補修するだけでなく、要件を満たしていないベンダーに罰金を科すことができます。
  • ドライバー、車両、および道路の実績データに基づいて立法者に規制の変更を提案する。

 

最終的に、AIではコンプライアンスの強化と規制の変更によって結果を最適化するだけでなく、実際に規制を作るためにモノのインターネット (IoT) やその他のデータと分析が使用されるようになると思われます。

研究者によると、「政府機関は何よりも、政策の成果を評価して定量的データと定性的データを照合し、政策の立案と実行のアプローチを継続的に改善できるようにすることに重点を置いたデータイニシアチブに着手する必要があります。」

Google社のAIは、すでに人間の開発者より優れた機械学習コードを作成できるレベルに達していますが、マシンが成果を向上させるのに必要なコードを見極められるレベルになっているのであれば、AIが人間の成果や状況を改善するための規制を作ることができるというのは、あながちありえない話ではありません。

AIが政策を作成できる能力の範囲は限られていると主張する人もいますが、すでに効率を向上させて納税者のコストを削減するために規制制度の中でデータと分析を使用している都市は複数存在します。また、意思決定においてデータが中心的な役割を果たすようになる中、現職議員の保護だけでなく、政策立案に対するこれまでの党員のアプローチの多くが過去のものとなりつつあります。

AIベースの自動化によって仕事が奪われ、実際の規制の多くが作られるようになるだけでなく、データの変更に合わせて既存の規制の調整や微調整が行われるようになるのは、もう時間の問題であるように思われますが、現在都市でデータと分析がどのように活用されているのか、そしてAIがどれだけ容易にそれらのプロセスを担うことができるのかということを考えれば、そうした状況になることは想像に難くありません。

これについて、Stephen Goldsmith氏はHarvard Kennedy Schoolの記事で次のように報告しています。「ちょうど先月、ニューヨーク市は安全衛生に関係する召喚の件数がきわめて少なく、小規模企業に科される罰金が減少していることを発表しました。またシカゴでは、(たとえば食品検査官がさらなる監視の必要な施設を優先させることができるよう) データを分析して問題のある当事者を特定し、その当事者に注意を向ける革新的なプロジェクトにより、企業とコンシューマーに提供するサービスの質を高めています。」

市民を中心としたデジタル世界における未来の公共部門の姿をご覧ください。

ハーバード大学が発表した市民データのユースケースの一覧には、現在データ主導で進められている都市運営の強化策が列挙されています。運営のメインカテゴリには、保健福祉サービス、インフラ、公安、規制適用の4つがあり、「スマートシティ」の特徴を備えているかどうかにかかわらず、現在ではほぼすべての都市の運営で市民向けのサービスをサポートするために分析が多用されています。

また各都市は、グループとして地域で定期的に競い合っているため、データの共有や共同での分析を通じた都市間、さらには州全体の連携が進む可能性が高く、こうした動きが国全体に広がっていくものと思われます。

これは必ずしも政府の代表者がAIに取って代わられるということを意味するわけではなく、実際には、人間の出来事に対するAIの管轄権のどこにどのタイミングで制限を設けるのかについてかなりの議論が行われています。

それでもMcKinsey & Company社は、近いうちに起きる可能性は低いものの、スマートシティが州 (そしてその延長線上にある国) の運営を完全に変えるであろうと予測しています。

そしてそれどころか、政府機関はより少ない労力でさらなる成果を実現するために都市分析とスマートシティのデータを使用するようになると思われます。

同社のもう1つのレポートでは、次のように述べられています。「当局は統制が失われることを警戒していますが、優れた都市のリーダーは、情報サービスから公園の維持管理に至るまでのすべてのサービスを政府の担当者が直接提供しなければならないわけではないことを受け入れるとともに、政府の任務が少しずつ変化するということを認識しています」

 

臨機応変に学習する

大部分の進化と同じように、都市のダイナミクスはそれほど規則的に変化するわけではありませんが、「破壊的」と言われる非常に多くのテクノロジーと同様、スマートシティは急速に進化しています。

つまり、人とマシンはいずれも臨機応変に学習しています。

ここで、最新のケーススタディとしてドローンを取り上げます。『Establishing a Safe and Secure Municipal Drone Program (安全かつセキュアな地方自治体のドローンプログラムの確立)』というレポートの共同執筆者であり、Cloud Security AllianceのIoT作業部会の議長を務めるBrian Russell氏は、ある声明の中で、米国の都市が多くの都市機能をサポートするために大規模なドローンプログラムの実施に積極的に取り組んでいると述べています。こうした地方自治体のドローンは、医療、輸送、農業、危機管理、インフラ保護といった幅広い領域で活用されています。

ただし、スマートシティで活用されているドローンは都市のドローンだけではなく、商用 (Amazon Prime Airやピザの宅配) とコンシューマークラス (大人の愛好家向けのマシンから小さい子供のクリスマスプレゼントに至るまでのあらゆるもの) の両方でも民間部門のドローンが導入されています。後者に関しては、最近カリフォルニアで山火事が起きたときに消防士の命に関わる可能性のある妨害行為があったように、市民サービスを困難にする可能性があるため、スマートシティのドローンネットワークには、商業輸送、都市や国家の安全、緊急対応、インフラの維持管理といったサブネットワークを含めなければなりません。

これについてRussell氏は、次のように警告しています。「ドローンは空、海、地上といったあらゆる場面で活用されていますが、私たちの準備は整っているのでしょうか。都市が大規模にドローンを導入すれば、ネットワークに接続されたプログラム可能な数千台のモバイルデバイスが路上だけなく、その上や下でも使用されることになります。」

こうしたドローンのすべてを安全に共存および動作させるには、規制や法律が必要なうえ、そうした規制や法律はこのような流動的な環境に柔軟に対応できるものでなければなりません。しかし幸いなことに、ドローンやその他のスマートシティのデバイスからリアルタイムで収集されるデータは、公共政策に活用するとともに、その実施に役立てることが可能です。

これについて、Cloud Security Allianceの調査担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJ.R. Santos氏は、次のように述べています。「ドローンプログラムだけでなく、あらゆるユースケースが規制の制定に役立つ可能性があります。ネットワークに接続された環境は急速に変化しているため、今もなおあらゆるものが新しく輝きを放っています。規制を制定する唯一の方法は、失敗と成功から学ぶことです」

 

データ、専門領域と知識、そして意向

理論的には、ドローン、自動運転車、インフラロボット、およびその他のスマートシティのIoTのデータから収集したデータによる継続的な学習が簡単に行えなければなりません。さらに、こうしたソースのそれぞれから得られた知識は、それらの単独での使用、および大規模なシステムの構成要素としての使用を規制するための効率的な手段に関する非常に有益な情報となります。

これを可能にすべきかどうかについての議論には、頻繁な規制の変更によって企業や市民が強いられる可能性がある負担に対する懸念の増大が含まれますが、多くの支持者は、規制の進化に対応するためにAIによって市民向けの業務が自動的に調整されるようになるため、潜在的なメリットと比較して負担はわずかで、それだけの価値があると述べています。一方反対派は、AIに人間のような直感力がないためその判断が現実的ではなく、実際には負担が大きくなる可能性があると述べています。

どのケースでも、規制はデータに基づいて平等に適用する必要があります。結局のところ、高度なアルゴリズムを作成すれば自動的かつ簡単にコンプライアンスの状況を判断できますが、新しいアルゴリズムと古いアルゴリズムの機能には大きな違いがあります。

これについて、出版社のFast FutureでCEOを務めるRohit Talwar氏は、「たとえばスマートビルディングを構築して廃棄物管理システムを実装した場合、あらかじめ規制を定めてそれらをシステムにハードコードするという柔軟性のないアプローチを取ることになる」と説明しています。

また同氏は、次のように付け加えています。「一方、学習アプローチでは使用パターン、廃棄レベル、エネルギー消費量、大気環境、および排気に関して蓄積されたデータを使用して許容限界を超えていないかどうかを判断するとともに、達成可能なベストプラクティスを特定します。そしてその後、ユーザーをベストプラクティスへと導くために少しずつ規制の調整が行われます。」

しかし残念ながら、現実はそれほど論理的ではなく、系統的でもありません。

これついて、Santos氏は次のように述べています。「人々はあらゆるユースケースから学ぶことができますが、デバイスによって規制機関が異なることもあるため、各分野のデバイスを個別に処理しなければならない場合があります。たとえば、FAAがドローンプログラムに関心を示す一方、FHWAはコネクテッドカーに関心を持っているといったことが考えられます」

つまり、すべてのケースにおいてどの機関が管轄権を持っているのかが明確でない場合があり、いずれかのシナリオで近いうちに専門領域の保護が問題となる可能性があります。また別のケースでは、予算と人材が不足している政府機関が他の機関に問題の解決を委ねることを選択するといったことが考えられます。

どのような場合でも、立法者はテクノロジーへの対応に関して実績が乏しいうえ、スマートシティを活用することより現状を維持することに関心を持っている可能性があり、昔からの特定の利益団体によるロビー活動や抵抗の問題が障害になるかもしれません。

これについて、SmartEdge Law Groupの弁護士であるRichard Santalesa氏は、次のように述べています。「結局のところデータはデータです。それをどのようにしてどのようなペースで解釈し、結果として誰が損害を被るのかということは別の問題であり、不当に扱われていると感じるグループは、対応する立法や機関のイニシアチブにすぐさま反応を示します」

また同氏は、次のように付け加えています。「機関のレベルでアクションが行われた場合は必ず、規制を制定するために一般に必要とされるパブリックコメントと更新の期間が設けられます。それに加え、IoTのイニシアチブの大部分はプライバシーに大きく関係する可能性があり、開始までにかなりの時間を要する連邦/州政府の契約プロセスを経なければならないため、ゼウスの頭からアテナが生まれたように、新しく素晴らしいスマートシティのIoT環境が次々と完成することはないと見ています」

そして最後には、政府予算の縮小と人口の増大により、変更に対する抵抗がなくなる可能性があります。有権者が政府サービスの大幅な縮小につながるような選択肢を受け入れるとは考えられません。かつての巨大企業や政治に大きな影響力を持つ人物から異議が唱えられたとしても、スマートシティはあらゆるディスラプターと同じようにすべてを変えていくものと思われます。

 

スマートな法規制の遵守: リーダーのためのアドバイス

  • 法規制遵守のために既存の分析が活用され、機械学習とAIの導入が加速度的に進むことが予想されます。この種の分析により、全世界の政府機関で行われている規制の変更に容易に対応できるようになるため、遵守に必要な時間が短縮されます。スマートシティが増加し、立法者がそのメリットを得て活用しようとする中で、こうした分析の重要性はさらに増すと思われます。
  • 都市が新たな規制や変更された規制に対応するのに必要な分析でIoTのデータを使用できるようにすることで、自社のIoTから得たデータをさらに収益化できるかどうかを検討します。

 

スマートシティのデータを商業目的で利用し続けられるよう積極的に取り組みを進めます。こうしたデータは、自社の運用に必要な情報を得てAIを強化し、進化を続ける規制環境の変化を予測するのに役立つ場合があります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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