2020年1月24日

内発的ディスラプションによって生まれ変わったKronos

ワークフォースマネジメントのサービスを世界規模で提供するKronos社は、これまでの成長軌道を今後も維持できるよう、ビジネスを抜本的に変革するために社内スタートアップを設立しました。

Microsoft、Google、IBMなどとは違って、Kronosはソフトウェア業界では有名な名前ではありません。それでも、同社のソリューションは3万5000もの組織によって導入され、毎日100か国以上の4000万人を超えるユーザーによって使用されています。

1977年に創業されたKronosは、コンピューター式のタイムレコーダーを初めて提供した企業です。以来、同社はワークフォースマネジメントソリューションのグローバルリーダーへと成長しました。スケジュール、時間と労働力の管理、そしてもちろんタイムレコーダーに関連するイノベーションを起こし、企業が従業員に関する複雑な課題を解決できるように支援しています。

しかし、数年前、CEOのAron Ainは懸念を口にし始めました。会社は数十億ドルの収益を上げており、満足度の高い熱心な顧客と従業員がいて、相当な規模のオンプレミスのユーザーベースをシングルテナントのクラウド環境へと着実に移行しながら成長を続けていました。それでも、Aronは不安だと言い続けていました。

すべての肯定的な要素にもかかわらず、彼は将来を心配していたのです。彼は、起業家精神にあふれたスタートアップがワークフォースマネジメントの市場に参入し、Kronosを支えている土台を破壊してしまうという可能性について考えていました。Kodak、Xerox、Blockbusterなどは昨今のお決まりの例ですが、これらの企業は長い間それぞれの分野でのリーダーでした。いずれも、ビジネスとテクノロジーのトレンドの激変に対応することができず、経営破綻するか市場シェアを失いました。

しばらく慎重に検討した後、Aronと社内のリーダーたちはある決定を下しました。それは、新興のライバルに圧倒される前に、自らKronosをディスラプト (破壊) しようというものでした。この挑戦は、Kronosの将来をさらに40年保証する機会を生むものでしたが、ワークフォースマネジメントの未来を作り変えるものでもありました。

 

10億ドル規模のスタートアップ: プロジェクトファルコン


プロジェクトのいくつかの面は明確でした。私たちは最新のワークフォースマネジメントソリューションを構築することに焦点を当て、まったく新しい方向に進むことは考えていませんでした。しかし、その他の面はかなり曖昧でした。

どのように実行に移すのか。どのようなタイプのテクノロジーを組み込むのか。どうすれば以前よりも豊かな製品体験を提供できるのか。これらの質問への答えを見つけるために、Kronosはファルコンプロジェクトという社内スタートアップを設立しました。

最初は少人数ながら多様なスタッフで発足しました。経験を積んだKronosの社員もいれば、大学を出たばかりの人材もいました。エンタープライズソフトウェアの深い知識を持った者もいれば、消費者の世界からやってきた者もいました。チームがこのように構成されたのは、間違っても典型的なKronosのソリューションを構築しないようにするためでした。既存のサービスと比較してユニークで、革新的なものを開発したかったのです。

また、余分な物のない、必要最低限の環境でこのチームを設立しました。マサチューセッツ州のKronosの本社から20マイルほど離れた特徴のないオフィスパークにある、小さな事務所でした。このプロジェクトチームには電話回線すらありませんでした。各自の携帯電話を使っていたのです。私たちは、最も成功したスタートアップに浸透している起業家精神を可能な限り模倣したいと考えました。ただし、例外が1つありました。このスタートアップには、ディスラプトという任務を与えた大元である数十億ドル規模の企業のバックアップがついていたのです。

 

組織の内側からディスラプションを起こす


Kronosの経営陣は、自社のビジネスをディスラプトするという決断と、そのために必要な外部のパートナーシップについて次のように説明しています。

 

将来に向けた4つの要因


プロジェクトファルコンの成功はまったく保証されていませんでした。Kronosをディスラプトするという任務を与えられていたものの、チームはAronとKronosのリーダーシップチームの信頼を得ることができる新しいソリューションのフレームワークを提示する必要がありました。

しばらくして、そのフレームワークが見えてきました。私たちは、成功に欠かせない4つの要因を特定しました。

最初に、最新のテクノロジーをソリューションに組み込むことで、前の時代に利用可能だったツールでは達成が不可能だった機能を構築できることに気が付きました。そのテクノロジーとは、人工知能と機械学習、リアルタイム分析とデータ解析、重要な決定を下す必要があるときにリアルタイムの情報をユーザーに届ける機能などです。

2つ目に、クラウドネイティブなプラットフォームをゼロから作り上げるときが来たと判断しました。Kronosが最後にテクノロジーの更新を行って以来、非常に多くのリソースがパブリッククラウドを通じて利用可能になりました。それらのリソースは、サービス提供、DevOps、クラウドスケーリング、パフォーマンス、クラウドサービスなどの面で、チームと顧客にメリットをもたらします。

次に私たちは、数十年にわたるワークフォースマネジメント分野の経験に、より明瞭な焦点を当てたいと考えました。顧客がスケジュールを管理し、時間を作り、コンプライアンスを監視し、レポーティングを実施し、全般的な意味で従業員と関わる方法についての発想を変えたかったのです。まったく新しいドメインモデルが必要でした。そのためには、データの取得、管理、レポート、計算の方法を作り直さなければなりませんでした。

最後に、モバイルの普遍性が今後もユーザーの好みに影響を与えることが分かっていました。Kronos製品の既存の外観や使用感に微調整を加え、それを簡潔なモバイルアプリケーション向けにスケールダウンするよりも、最初に、モバイルに最適となるようにユーザーエクスペリエンス全体を再設計し、次に、レスポンシブデザインによってスケールアップしました。これには、たとえば休暇の申請などの数百のプロセスを1、2回のクリックだけで実行できるように作り直す必要がありました。

 

パブリッククラウドへの移行


現在では明白かもしれませんが、プロジェクトファルコンが最初に立ち上げられた6、7年前には、パブリッククラウドは明白な目的地ではありませんでした。ただし、時間が経つにつれて私たちの初期の懸念は薄れ、パブリッククラウドがKronosにも、顧客にも利点となることに気が付きました。

パブリッククラウドによって、Kronosはハードウェアを調達し、サーバーを管理するという仕事から解放されました。さらに、同社のパブリッククラウドパートナー (現在はGoogle Cloud Platform) によるセキュリティやインフラストラクチャなどの分野への継続的な投資から利益を得ることができました。新しいスタック全体をほんの数時間で展開するなど、よりすばやく拡張し、柔軟性の高い行動を取ることができるようになりました。

そこから、まずはIaaS、PaaS、SaaS機能など、残りのクラウドインフラストラクチャを構築しました。さらにシングルサインオンやIDサービスなど、顧客およびテナント全体で使用できる共有サービスを構築しました。それに加えて、複数のテナントを大規模に管理するためにクラウド管理システムを導入しました。また、テナントのプロビジョニング、テナント、レポート、ライセンスの管理、資格の付与のために、監視および管理インフラストラクチャを一から構築しました。

私たちは、スタックのあらゆる層を最新のテクノロジーによって再構築し、それによって顧客のために有益なビジネス成果を達成したいと考えました。

クラウドの導入のために、私たちはいくつもの段階でHPE Pointnextサービスの助けを借りました。チームにはプロジェクトの向かう先についての明確なビジョンがありましたが、いくつかの想定を検証するために専門家が必要でした。

私たちがホスティングオプションを検討していた初期の段階で、HPEチームは、構築および継続的な最適化フェーズのプランを定義することを支援してくれました。また、HPEは、カスタマーエクスペリエンスの問題、継続的な改善の実践方法、売上総利益を増加する方法について相談役を務めてくれました。クラウド移行プロセスの早期に、特にDevOpsの分野で基礎を構築し、改善のためのロードマップを作成してくれました。

 

次世代のワークフォースマネジメントを提供する


自らKronosをディスラプトするソリューションの開発というAronのチャレンジは、約25人の小さなチームから始まりました。5年の間に、500人を超える世界クラスのエンジニアと製品マネージャーが参加するプロジェクトに成長しました。

まったく新しいソリューションの構築に加え、Kronosは、同じ5年間をプロフェッショナルサービスやカスタマーサポートから財務、マーケティング、そしてその間にあるすべてのビジネス分野までの再構築に投資し、組織が現在市場でWorkforce Dimensionsとして知られるサービスをサポートするための態勢を整えました。

Workforce Dimensionsは、今までに前例のない次世代のワークフォースマネジメントソリューションです。このソリューションは、革新的な従業員体験とこれまでにないレベルの業務上の洞察を提供します。組み込みの分析とパーソナライズされた可視化によって、コンプライアンスと従業員の状態に対してリアルタイムの可視性を得ることができます。人工知能と機械学習が、最適な推奨と意思決定のガイドを提供します。テクノロジーインフラストラクチャが、オープンAPIによって強力なプラットフォーム拡張性を提供するため、変化するビジネスのニーズに簡単に適応できます。

Kronosは、Microsoft、Google、IBM、SAPのようなテクノロジーをけん引する企業と重要なパートナーシップを結びました。これらの企業は、すべて何らかの方法でWorkforce Dimensionsを使用し、従業員による職場でのテクノロジーの活用方法を劇的に変えています。

このような重大なプロジェクトに参加することは、頻繁にはありません。多くの人にとっては、生涯のキャリアの中で一度あるかないかでしょう。次の春には、最初の顧客がWorkforce Dimensionsを実際に使用し始めてから1周年を迎えます。私たちは、市場における最初の1年の顧客の需要が企業の目標を50%上回っていることを誇りに思っています。私たちの旅は終わったように見えますが、数千という顧客を移行し、新しい顧客を導入し、Workforce Dimensionsを継続的に改善して常に顧客のニーズの先回りをするという本当の仕事は、まだ始まったばかりです。

この記事はCloud Technology Partnersチームの発行物である『The Doppler』に掲載されていたものであり、許可を得てこのページに再掲載しています。


この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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