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2021年9月10日

Nestlé社における自律テクノロジーの活用事例

Q&A: Nestlé社のRalf Hagen氏は、ドイツに展開する複数の自社工場とサプライチェーンのデジタルトランスフォーメーションを記録的な速さで進めており、そのスピードを今後も維持する考えです。
スイスの多国籍食品飲料メーカーであるNestlé社は、150年以上の歴史を持つ老舗でありながら、過去の実績にとらわれることなく製造プロセスの改革を積極的に推進しています。

事実、多くの大手製造業者が従来の自動システムに固執しがちなのに対して、Nestlé社は製造およびサプライチェーンのデジタルトランスフォーメーションを着々と進めています。その目的は、データ、人工知能 (AI)、および予測分析の活用による競争力の強化です。同社の工場の多くで、リモートセンシングテクノロジーを搭載したIoTコネクテッドデバイスに加えて、自律走行車や協働ロボットの展開が進んでいます。

以前は完了までに2年以上を要していた多くのことが、この6~7ヶ月で達成されました。私たちはこの変革スピードを今後も維持したいと考えています。
同社はデジタル化によって、業務を効率化し、俊敏性を高め、成長のための新たなプラットフォームを構築できると確信しています。ただし、これらをすべて実現するためには、システムそのものだけでは不十分です。未来の工場を真に実現するためには、基盤となるインテリジェンスとローカル/エッジコンピューティングが不可欠で、これにより接続されたエンドポイントが増加しても、すべてを自律的に動作させることが可能になります。

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Nestlé Deutschland社でエンジニアリングマネージャを務めるRalf Hagen氏率いるチームは、5年前からドイツ国内の複数の自社工場を自動システムから自律システムに移行する取り組みを進めています。以下ではプログラムの進捗状況と今後の展望についての同氏のコメントをご紹介します。

Nestlé社が自律テクノロジーの導入を進めている理由をお聞かせください。

私たちは自律テクノロジーの活用により、当社が直面しているさまざまな課題を、これまでよりも信頼性の高い方法でローカルに解決できるようになると考えています。

多くの製造企業と同様、当社においても自動システムは何十年もの間、事業の基盤となってきました。ビジネスを支えているのは従来型のクライアント/サーバー構造です。しかしながらデジタルテクノロジーが広く行き渡るにつれて、工場から離れた場所にあるサーバーファームに依存するこうしたアプローチは限界に達しつつあります。集中型のコンピューティングアプローチでは、もはや当社のニーズを満たせません。

一例として、先頃当社のあるサーバーファームでハードディスクアレイが故障し、監視 (システム) が機能していなかったために、マウントされていた全デバイスが次々に機能停止するという事態が発生しました。すべてを復旧させるためには、コンピューターやソフトウェアのベンダーの支援を得る必要があり、30時間ものダウンタイムが発生しました。幸いこの事案が発生したのは金曜日の午後で、日曜までに復旧作業を終えることができました。とは言え、このような事態が生じたことは大問題で、もしも週の初めに発生していたら工場全体がより深刻な状況に陥っていました。この事案によって私たちはこれらのシステムの依存関係に気付かされ、また自律テクノロジーによる問題解決の重要性を認識しました。

自律テクノロジーを導入すると、自動システムや集中型システムへの全面依存から解放されます。ディスクアレイが故障したような場合でも、システムや運用に関するコンテキストデータが失われることがなくなります。自律テクノロジーは、コンテキストデータを (サーバーファームに) 集約してそこから直線的に前方や上方に送る代わりに、広く分散させることを可能にします。さらに万一ハッキングされた場合でも、運用継続性が高まることが期待されます。同時に、例えばPO (製造指示) を修正する都度シャットダウンが必要になるといった無駄も回避できるようになります。

運用継続性の向上は、停止時に発生する無駄や機械の損耗を防ぐことにもつながります。このレベルの自律性を達成するためには、工場の運用データが生成される場所の近くにテクノロジーとコンピューティングパワーを移動させることが必要です。コンピューティングパワーの重要性に変わりはありませんが、ハードウェアは専用の部屋に集中配備される代わりに、マシン近くのキャビネット内に配備されます。私たちはこうした状態を目指して、適切な場所へのコンピューティングパワーの移行を進めています。

サーバーファームから工場へのコンピューティングパワーの移行は完了していますか。

現時点では、物理的ではなく、論理的な移行のみが完了しています。しかしながら私たちは自律システムの独立がもたらす進化に期待しています。

一例として、OT (運用テクノロジー) セキュリティには、その基盤として強固なITセキュリティポリシーが欠かせませんが、問題はITセキュリティがパフォーマンスを低下させる可能性があることです。パフォーマンスはエネルギーや 時間を必要とし、システムを保護する必要性とのバランスを考慮しなければなりません。私たちは自律テクノロジーを活用することで、人的な介入なしにバックグラウンドでこのバランス調整を行うことを目指しています。

御社にとって、その点が自律システムの主な魅力の1つですか。

そのとおりです。製造企業である当社では、こうした作業を行うのに十分な数の熟練したシステム管理者を確保することはできません。当社はIT企業でも インフラストラクチャ企業でもなく、食品メーカーです。私たちが求めているのはiPhoneのようなシステム、すなわち誰もがその仕組みを特に考えることなく、必要な機能を手軽に利用できるシステムです。産業界でもこうした消費者エクスペリエンスが求められており、複雑性の軽減が必要とされています。複雑性は何らのメリットももたらしません。私たちが求めているのはこのような自律的な状態です。

こうした理由から、私たちは (運用の) 再構築に取り組んでいます。その1つが機能性に応じたネットワークレイヤーの再構築です。これはデータの生成と共有の多くが、他ならぬ工場の現場で行われることを意味しています。

少し前に「センサーからクラウドへ」ということがしきりに言われましたが、これは私にとっては全く無意味です。望ましいのはセンサーから直接リアルタイムのレポートを得ることであり、データをクラウドに送信して5分後に結果が送り返されてくるのでは、情報がすでにタイムリーでなくなっている可能性があります。自律システムの場合、センサー (の情報) は現場に保持され、何らかの理由で本当に必要な情報のみがクラウドに送られます。

自律型システムは、例えばチョコバーの原材料配合の調整やラベルの印刷といった、生産品質の管理に役立つと伺っています。これは正しいですか。

そのとおりです。これを実現するためには、原材料から最終製品への変化を追跡および記録するMES (製造実行システム) が、そうした改善に必要な情報にアクセスできなければなりません。必要な情報をモノリシックな中央のサーバーに置く代わりに、ローカルシステムを強化して、POを自律的に完了するために必要なあらゆるパラメーターをローカルに、あるいはSAPやERPなどのデータベースから取得できるようにすることを、私たちは目指しています。

COVID-19はNestlé社における自律システム実装の取り組みに影響を与えましたか。

COVID-19により当社のデジタル化の取り組みは加速しました。パンデミックの発生を受けて、(自律テクノロジーを提供するという) この取り組みは、単なる優先課題ではなく、すでに後れを取っている緊急課題となりました。以前は完了までに2年以上を要していた多くのことが、この6~7ヶ月で達成されました。私たちはこの変革スピードを今後も維持したいと考えています。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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