2022年6月24日

データの価値をどのように測定するか

エンタープライズ情報の有用性を判断する方法に唯一の正解はなく、さまざまな側面からのアプローチが可能です。

リーダーのためのアドバイス

  • データの価値を測定する最も簡単な方法は、収益への貢献度に基づく判断です。
  • データは通常、そのデータ固有のリスクレベルに基づいて評価でき、リスクが高いほど高価値です。
  • スマートエンタープライズは、今後発生するであろう膨大なデータ分析を必要とする質問に備えて、ツールや戦術に先行投資する必要があります。

データに価値があることは間違いのない事実であり、多くの企業がデータの活用に力を入れています。しかしながらデータにどの程度の価値があり、その価値をどのように測定するかは、判断の難しい問題です。有用なデータとそうでないデータをどのように見分けていますか。

HPE GreenLakeのアドバイザリおよびソリューション担当シニアディレクターを務めるStuart Stent氏は、この問題について、誰もが知っている「マックリブ」を例に挙げて解説します。

企業がマックリブのような期間限定商品を販売する際は、データがフル活用されます。情報筋によると、あの有名なフェイクリブサンドイッチは、豚肉の価格が十分に低く採算が見込める場合にのみ販売されています。これはマクドナルド社が商品の販売にあたり、非常に価値が高いことが明らかな情報源の1つである生産・販売データの分析から開始していることを意味します。

次にマクドナルド社はさらに難しい判断を迫られます。すなわち供給量が限られる中で、冷凍ポークパティやバーベキューソースをどこに優先的に納入するかを決定しなければなりません。マックリブはカルト的な人気があり、マックリブを提供している最寄りの店舗をリアルタイムで調べられるマックリブ検索サイトがあるほどです。「マクドナルド社は全米の店舗を調査して、マックリブがどこでよく売れており、どのような地域需要が存在するかなど、価値を最大化するためのスイートスポットを探る必要があります」 とStent氏は言います。

各店舗におけるマックリブの売り上げを予測するためには、過去の販売データから天候やソーシャルメディア上の話題まで、さまざまな要素を考慮した複雑な分析が必要なことは明らかです。こうした意味で、あらゆるデータの相対的な価値は、究極的には企業利益への貢献という観点から測定できると言えます。

未知の質問にどのように回答するか

実のところ、前述のような分析はごく初歩的なものに過ぎません。監視カメラの映像、Facebookの投稿、センサーのログデータなど、定量的でない非構造化データが対象の場合は、価値の算出がより複雑になります。

「データは従来の資産とは異なる特徴を有します」と、社名を冠したデータ可視化ツールで知られるTableau社のテクニカルエバンジェリストであるAndy Cotgreave氏は指摘します。「リアルタイムアプリケーションの場合、データは短時間しか価値を持たない一方で、膨大なデータ内にマイニングする必要がある貴重な知見が潜んでいる可能性があります。こうした特性がデータの価値の測定を難しくしています。最高データ責任者やリーダーが分析への支出を正当化するためには、その価値が十分に理解されていなければなりません」。

Cotgreave氏は、データの価値を測定するためのアプローチの1つとして、組織におけるデータのさまざまな使われ方を数値化することを挙げています。データは、収集、分析、保管などにコストを要しますが、収益化されたり意思決定に使用されたりすることで価値を生み出します。またデータの価値は時間の経過とともに失われていく可能性があります。

「データリーダーは、効果的なデータ戦略には2つのポイントがあることを理解しなければなりません」とCotgreave氏は言います。「まず第1にリーダーは、総売上高、従業員の定着率、顧客解約率といった、組織が追跡すべきKPIを把握している必要があります」。これらの測定基準に直結するデータは価値が高いことが明白です。

戦略の第2のポイントは予期せぬ質問への対応です。「データリーダーは、ビジネスに関する新たな質問に 日々対応する必要があります」 とCotgreave氏は言います。どのような質問が生じるかはわからないため、こうした新たな質問に対応したデータ主導型ダッシュボードを構築することは不可能です。Cotgreave氏はその解決策として「データサイクルのあらゆる領域に投資する」ことを推奨しています。例えば、すべての従業員にデータアクセステクノロジーを提供する、データを的確に分析して理解するためのスキルに投資する、より高度な分析に先立ち情報をリアルタイムで素早く分析できるアドホックツールに投資する、といったことが挙げられます。

「どのデータが将来的に価値を生むかを確実に知ることはできません」とCotgreave氏は言います。「そのため、重要性の高いデータや知見を必要に応じて取り出せるよう、柔軟性と弾力性を備えたシステムを構築することが肝要です」。

リスクの問題

HPEのStent氏は、もう1つの (補完的な) データ評価手法として、リスクに基づくアプローチを提唱しています。(これは同氏が提唱するデータを削除するタイミングを決定するための方法論と似ています。)

「セキュリティの側面では、多くの組織で脅威リスクアセスメントが行われています」とStent氏は言います。「財務的、政治的、その他あらゆる種類のリスクが調べられ、次にそのリスクを軽減する方法があるかどうかが検討されます」。例えば、すべての米国民の社会保障番号と氏名、住所が紐付けられたデータベースが、暗号化されていないプレーンテキストの形で保存されているとします。万一ハッキングされた場合、財務面でも評判の面でも、組織が被る損害は甚大であるため、このデータセットのリスクは非常に大きいと言えます。その一方でリスクの大きさは、このデータが相応の価値を持つことを意味しています。

なおStent氏が注意を促しているように、その逆は必ずしも真ではなく、有益なデータがすべて高リスクとは限りません。「ある企業が月あたりのコンテナ出荷数に関するデータを持っているとします。この企業にとってコンテナ数のデータは非常に重要な情報ですが、このデータが盗まれたとしても、競合他社にとってはたいして使い道がなく、また訴訟を起こされる恐れもないため、外的リスクは高くありません」。一方で、このデータが失われると、財務報告書の作成、生産計画、人員配置の決定などに支障が生じるため、企業にとってのリスクは比較的高いと言えます。リスクは必ずしも外部からの攻撃を伴いません。

スナック菓子の最適化

あらゆる問題がデータに関連していることを示す好例として、さまざまなスナック菓子のオンライン販売を行っているSnackMagic社が先頃実施したデータ主導の取り組みを見ていきましょう。SnackMagic社は在庫スペースが限られており、補充が最適化されていなかったために、在庫切れが発生しがちでした。同社CEOのShaunak Amin氏によると顧客の需要は流動的で、特にホリデーシーズンは変化が大きいため、どの商品の補充を急ぐ必要があるかを事前に直感的に把握するのは困難でした。

「私たちはデータを徹底分析することで、すぐに完売する商品と動きの遅い商品を特定しました」とAmin氏は振り返ります。「この作業に時間をかけたおかげで、商品ごとの在庫回転率をより正確に把握して、需要予測を改善し、安全在庫の精度を向上させることができました」。

こうした取り組みの結果、同社の倉庫では「トップオフ戦略」が新たに導入されて、各シフトの開始時に在庫が計測され、シフトの終了時に補充注文が出されるようになりました。「1日のうち特定のタイミングで在庫を補充することで、オーダーピッカー用の在庫レベルを適正に維持できることがわかりました」と同氏は言います。

ポップコーンであれマックリブサンドであれ、「データから得られる価値、データの管理にかかるコスト、そしてデータを保有するリスクと保有しないリスクのバランスを考える必要があります」とStent氏は言います。「この3つのバランスをとることで、組織にとって有用性が高いデータを判断するためのモデルを構築できるはずです」。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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