2020年10月16日

COVID-19によってハイブリッドクラウドへの移行が加速

パンデミックの影響でビジネスに起こった変化により、ビジネスのアジリティと柔軟性は、デジタルトランスフォーメーションのプロセスに欠かせない最も重要な要素になっています。1つのソリューションだけでは、急速に変化し続けるビジネスの状況に柔軟に対応することはできません。

IT部門の多くは、たとえ具体的な取り組みをまだ始めていなくても、新型コロナウイルスが原因で、マルチクラウドアーキテクチャーへの移行を早める必要があると気付いています。

実際、IDC社は、2022年までに世界中の90%を超える企業が、自社のインフラストラクチャのニーズに応えるために、オンプレミスや専用のプライベートクラウド、複数のパブリッククラウド、そしてレガシープラットフォームを組み合わせて利用するようになると述べています。また、企業が今後の混乱を軽減するために柔軟性、アジャイル、耐障害性をさらに求めるようになっていることから、2021年が「マルチクラウドの年」になるだろうと予測しています。

「新型コロナウイルスの流行によって、企業がクラウドに注目して導入する動きが早まっています」とIDC社のリサーチディレクターであるDeepak Mohan氏は言います。「この状況で最もよく耳にする言葉は耐障害性です。クラウド環境を活用しているIT組織は、現在の危機にうまく対応することができています。彼らは環境のスケールや移行を簡単に行うことができ、サービスを提供し続けることができるからです。一方で、より制約の多い環境を使用していた組織は、さまざまな課題に直面することになりました」

これまで、企業や組織がオンプレミス展開を選んでから、パブリッククラウドに多額の投資を行うようになり、最終的に両者を組み合わせて利用するようになるまでには数十年かかっていますが、新型コロナウイルスによる現在の混乱した状況によって、この変革が早まっていると彼は指摘します。ただし、Mohan氏の考えでは、企業が緊急の課題として捉えているのは、自らの資産を一箇所に集めずに、リスクを分散して単一障害点をなくすことです。このため、IT組織はマルチクラウドなどのより多様な手法を採用するようになっています。

 

あらゆる場所にクラウドが普及

「私たちは2021年が転換点になると考えています。組織はクラウドファーストだけにとどまらず、あらゆる場所でクラウドを利用することを目指すようになるでしょう」とMohan氏は言います。「広範なクラウド戦略を作り上げて、将来にわたって柔軟性と耐障害性を高めることが主な取り組みになると考えられます」

もちろん、Mohan氏や業界の専門家が指摘するとおり、アプリケーションをオンプレミスのアーキテクチャーから複数のパブリッククラウドやプライベートクラウドに移行することは、安価でも簡単でもありません。小規模な組織の中には、このプロセスに必要な時間とコストをかけられないところもあるでしょう。景気が低迷していればなおさらです。しかし、現在の状況では、この投資の正当性を主張しやすくなっています。

分散クラウドサービスに特化したスタートアップ企業のVolterra社が最近行った、世界各国の400人を超えるITエグゼクティブを対象とした調査によれば、ほぼ全員 (97%) が自社のワークロードを複数のクラウドに分散させることを計画しており、回答者の大半が、マルチクラウドやエッジの展開をサポートしてそのセキュリティを保つために奮闘しています。

「AI、機械学習、IoTといったテクノロジーの展開が増えるにつれて、アプリやデータを複数のクラウドやエッジサイトに分散させる動きが活発になっています」と、Volterra社のCEO兼創業者であるAnkur Singla氏は言います。「私たちのレポートによれば、ITリーダーの98%は、エッジ、パブリッククラウド、プライベートクラウドの間で一貫した運用環境を用意することが非常に重要だと考えています。しかし、その目標を妨げる大きな障害があることが示されています。具体的には、プロバイダー間にセキュアで信頼性の高い接続を確立する、さまざまな支援やコンサルティング作業をやり遂げる、多種多様なプラットフォームサービスを連携させるといった作業です」

 

「新たなエコノミー」に備える

Brian Solis氏は、Salesforce社でグローバルイノベーションのエヴァンジェリストを努めており、デジタルトランスフォーメーションとイノベーションの分野の第一人者でベストセラーの著者です。彼によれば、こうした困難な作業があるため、多くの組織はクラウドやマルチクラウドへの移行を、より大きなデジタルトランスフォーメーションという取り組みの一環として行おうとしています。しかし、これらの取り組みの多くは、現在の世界的なパンデミックによって行き詰まっているか、目標の変更を余儀なくされていると彼は言います。

「COVID-19以前に作られたデジタルトランスフォーメーションのロードマップは、現在は中断しているか、無期限に延期されているか、方向転換されています」とSolis氏は説明します。「私たちは今や「新たなエコノミー」と呼べる時期に入りつつあります。そこでは、まずは生き延びて、次に生き残りを賭けて争い、最後に成功を目指すという3つの段階があります。現在、ほとんどの企業はいまだに生き延びようとしている段階にあり、ITスタッフは部門を超えてビジネスオーナーたちと話し合い「今絶対に必要なものは何ですか?」と尋ねています。私たちがこの危機を脱すると、クラウドやマルチクラウドへの投資が加速するのを目にすることになりますが、これらの投資は、当面の限られたニーズに関係したものになるでしょう」

Solis氏によれば、この理由は、現在の危機によって突然デジタルトランスフォーメーション自体が「デジタルディスラプション」によって解体されてしまったことにあります。これまでのIT投資では、運用効率を改善したり競争力を高めたりする見込みがあればあらゆるものが対象になる傾向がありましたが、現在の危機の下ではビジネスの支援と継続性の優先度が高くなっています。

「私たちはデジタルトランスフォーメーションを再検討し、これまでよりはっきりとした目的を持ってクラウドとマルチクラウドに向かって進む必要があるのです」とSolis氏は言います。「より統合されたデジタル戦略、ビジョン、リーダーシップ、そして目的が求められるようになるでしょう」

 

マルチクラウドの戦略がさらに重要に

Alexey Gerasimovはヒューレット・パッカード エンタープライズ (HPE) のグローバルクラウドデリバリ部門のバイスプレジデントです。クラウド戦略を立てる際には、現在や今後の経済状況に応じた会社の目標に合わせることが不可欠だと彼は言います。そのことは、COVID-19によってさらに明白になりました。

「パブリッククラウドやプライベートクラウドの話を別にしても、まずはビジネス全体の戦略を練ることから始めて、その後、目標達成に必要なIT戦略を検討する必要があります」と彼は言います。「COVID-19によってクラウドへの移行が加速するかどうかは確信を持てませんが、確かなことは、ITをより効率的に運用する必要性と機会に注意が払われるようになり、クラウド展開とオンプレミス展開の間で最適なバランスを取ることが求められるということです。クラウドのみでビジネスを運用している組織はほとんどありません。主要なパブリッククラウドのプロバイダーでもそうです。したがって経済が行き詰まるにつれて、コストを削減してアジリティを高め、収益を生み出すために、ローカルに処理すべきものとパブリッククラウドで処理できるものを検討することが一層重要になっていきます。

Gerasimovによれば、クラウドへの移行は、必要な資金や人材が足りない企業にとっては困難なものになるでしょう。

「当然ですが、Staples社の赤い「easy」ボタン (押すと「楽勝だぜ!」と喋るおもちゃ) を押すだけで自動的に移行できるわけではありません」と彼は言います。「実際には、そんなに簡単にはいきません。データセンター間の移行作業でさえ難しい場合があります。ベンダーは、クラウドにより多くのものを配置すればコストを削減できますと言うでしょうが、そのためにはまずお金が必要です」

 

サードパーティが提供するサービスの価値

多くの組織がまったく持っていない専門知識も必要になると専門家たちは指摘します。実際に、新型コロナウイルスの隔離措置が取られる前に行われたFlexera社による広範な調査によれば、大企業とSMBの回答者の77%が、クラウドに関する最も大きな懸念事項の1つはリソースと専門知識の不足だと答えています。主な課題として、セキュリティ (81%)、クラウド支出の管理 (79%)、ガバナンス (77%) が挙げられています。

「従業員が在宅勤務するようになり、ビジネス上のやり取りの多くがデジタル化されるようになったこの状況で、企業の回答者の半数以上が (私たちの調査によれば) パンデミックによってクラウドの使用率は年頭に計画していたものより高くなるだろうと答えています」とFlexera社のCEOであるJim Ryan氏は同社の声明の中で述べています。「企業はさらに多くのサービスをクラウドに移行することを計画していますが、必要なコストはクラウド向けの予算を上回っています。彼らは移行時に、ワークロードの最適化だけでなく、コスト管理やガバナンスに取り組んで運用効率を確保する必要があるでしょう」

HPEのGerasimovは、取り組みをどこから始めればいいかわからない場合や、目の前のデジタルトランスフォーメーションの課題に圧倒されている場合は、社外に助けを求めることができると指摘します。

「予算が限られている中で、オンプレミスとクラウドの間の運用バランスを改善したり、マルチクラウドを利用してワークロードを合理化したりすることが重要だと感じている場合は、今こそ社外の専門家に助けを求めるときです」と彼は言います。「さまざまな選択肢があります。たとえば、最適なテクノロジーとアプリケーションの組み合わせを構築するために支援してくれる専門家を雇ったり、オンプレミスとクラウドの展開を監視、管理、最適化するのに役立つ従量制のITサービスを導入したりすることができるでしょう」

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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