2019年4月16日

AIと高度な分析を活用して世界中の都市を救う方法

多くの都市は、新たなスマートテクノロジーやより効率的なプロセスを活用して、住みたいと思ってもらえる魅力的な街づくりを進める方法を検討しています。

世界の未来は都市に委ねられています。最近発表された国際連合のレポートによると、都市部に居住する全世界の人口の割合は、2050年までに現在の55%から68%にまで上昇すると予想されており、これを数で見てみると、わずか30年で25億人が増加することになります。またこのレポートは、多くの都市が人口の増加に伴う住居、交通、エネルギー、インフラストラクチャ、雇用、そして医療や教育といった基本的なサービスに対するニーズへの対応で大きな困難に直面することになると警告しています。

現在、非常に多くの都市が公害に苦しみ、居住者の最も差し迫ったニーズに対応できていない状況を考えた場合、世界がこのような大規模な人口の変化を乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。

その答えは明確であり、都市は、問題を解決するためにビッグデータ、クラウドコンピューティング、高度な分析、およびAIに救いを求めなければなりません。都市には、将来も存続し続けるためにスマート化を図るだけでなく、輝きを放つことが求められるのです。 

幸いなことに、多くの都市ではすでにAI、さらにはエッジ、IoT、およびクラウドから得られる膨大なデータの活用が進められています。この記事では、そうした手法の仕組みとともに、それらを活用して都市部が直面する困難な問題の解決に役立つ運用に関する有益な情報を入手する方法について説明します。

 

 

すべてはデータから始まる

多くの都市がスマート化を進めている主な理由としては、データ収集能力が劇的に向上したことが挙げられます。都市では、これまでより簡単に、かつ低コストでセンサーを設置して接続するとともに、データを保存し、マイニングによって有益な情報を得られるデータセンターにデータを送信できるようになりつつあります。センサーは、もうすぐそのコストが1桁台にまで下がり、耐用年数の長いバッテリから電力が供給されるようになるうえ、5Gネットワークで通信を行うようになります。また、これまでは不可能だった多くの場所に設置されるようになります。これはつまり、新たなデータソースからさらに多くのデータが収集されるようになることを意味し、たとえば公共事業部門は、公共の場所にあるゴミ箱からデータを収集して、それぞれのゴミ箱にどれだけゴミが入っているのかをいつでも監視できます。

また、コンピューターとストレージの価格も下がりつつあるため、都市はこれまで得られなかった新しいデータを活用して「学習し、そこから有益な情報を入手することが可能です」。

AIに関しては、それを支える多数のアルゴリズムがかなり前(場合によっては40年以上前)から存在しますが、現在に至るまで、AIや機械学習を実行できるだけでのコスト効率の高いコンピューター、膨大なデータ、またはオープンソースのアルゴリズムやモデルはありませんでした。

都市の居住者の生活をより快適なものにできるテクノロジーの活用を推進する要因は他にもあります。その一例として、テクノロジーに精通した市民が増えて都市化が進み、スマートデバイスやインテリジェントワークプレイスによる接続が増加する中、多くの都市は企業のような取り組みを開始しており、市民を顧客のように扱って生活の質を向上させることで市民により魅力を感じてもらう方法を検討しています。また、業務の効率化に取り組んでいる都市もあり、Tier 2またはTier 3都市と呼ばれることが多い小規模都市の多くが、住みたいと思ってもらえる魅力的な街づくりを進めるとともに、新たなスマートテクノロジーやより効率的なプロセスを活用することで、大規模な確立されたTier 1都市に対抗する方法を検討しています。

 

各都市で異なるプラットフォーム

都市がそれぞれに異なるように、そこで使用されるプラットフォームもそれぞれがスマート化しつつあります。どのプラットフォームが最善であるのかということについて、正しい答えも間違った答えもありませんが、一般的にはどのプラットフォームも基本的なアーキテクチャーは同じです。すでに説明したように、スマート化においては設置したセンサーが起点となり、通信チャネルを通じてセンサーからデータセンターにデータが送信されます。データセンターにはストレージが設置されており、コンピューターがデータを探索して、そこから特定のユースケースを作成します。これ以外にもソフトウェアがあり、オープンソースのソフトウェアからPythonライブラリ、市販の製品に至るまでのあらゆるものが含まれます。そして最後に、データを活用できるように分析の結果を示す手段があります。

都市が収集するデータは、場合によっては誰もが利用できるようになっています。たとえば、マドリードでは1時間に1回大気質のデータが提供されており、誰もがそれをダウンロードしてあらゆる用途に活用することが可能です。一方、ドバイなどの一部の都市は、データに金銭的価値があると考え、データへのアクセスを有料化しています。このようなケースでは、都市はAPIゲートウェイやデータセットのダウンロードといった決済ゲートウェイとデータアクセスゲートウェイを構築する必要があります。

 

AIとデータ分析を活用した大気汚染の低減

では、実際のところこれらすべてはどのように機能するのでしょうか。ここからは、世界で最も解決困難な問題の1つである自動車による汚染の低減に取り組むうえで、都市がAIと高度な分析をどのように活用できるのかを見ていきましょう。

都市はインテリジェントに交通量を管理して汚染を低減する必要があり、都市に入ってくるすべての車の50%を独裁的に締め出してはなりません。その代わりに、都市は駐車データ、交通データ、大気質データ、および気象データを組み合わせることにより、交通量の削減でどれだけ汚染物質を許容可能なレベルにまで低減できるのかを予測したうえで、交通量を削減するためのさまざまな方法をモデル化して、どれが最も効果的であるのかを判断することが可能です。

これを可能にするのが正しく構築されたプロセスです。まず、記述的分析で履歴データを使用して長期間にわたる大気質を調査してから、診断によって正常値と異常値(このケースでは、正常な大気質、高品質と低品質のしきい値、天候や都市を走る車の台数などのデータとの関連)を探します。このようにして、都市はさまざまなシナリオで大気質にどのような影響が及ぶのかを把握できます。

その後、AIと機械学習を活用した予測分析により、車の台数を特定のレベルにまで減らした場合の大気質への影響を予測することが可能になりますが、このプロセスは想像以上に複雑です。たとえば、今都市から車を締め出したとしても、それがすぐ汚染物質の低減につながるわけではなく、大気質が改善され始めるまでには時間がかかります。

天候も大きな影響を与える要因であり、たとえば、ドイツのシュトゥットガルトは窪地にあるため、汚染物質が消えるまでの時間に天候が大きく影響します。こうした地形では、雲に覆われていると汚染物質の行き場がなくなり、都市に入ってくる車の台数が大幅に減ったとしても、汚染物質は引き続きそこに留まることになります。

さまざまなシナリオで何が起きるのかを予測するモデルを構築した都市は、機械学習を活用して問題の解決方法をモデル化し、それによってどれだけ効果が得られるのかを予測できます。では、都市に入ってくる車の台数を制限して汚染を低減するには、どのような方法を取るのが最善なのでしょうか。ロンドンのように、特定の日時に車で都市に入ってくる人に混雑課金を適用すればよいのでしょうか。またはマドリードのように、大気汚染がひどい日に運転できる車を偶数のナンバープレートと奇数のナンバープレートを基準に規制すればよいのでしょうか。その答えはそれぞれの都市で異なり、そこで役に立つのがセンサー、予測分析、AI、機械学習なのです。

私たちはまだ、都市が直面する大気汚染などの問題の解決に高度な分析とAIを役立て始めたところですが、これは未来の手法であり、世界中の人々の健康と幸福はこうした手法に委ねられています。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

誰でもわかるディープラーニングを読む

enterprise.nxt

ITプロフェッショナルの皆様へ価値あるインサイトをご提供する Enterprise.nxt へようこそ。

ハイブリッド IT、エッジコンピューティング、データセンター変革、新しいコンピューティングパラダイムに関する分析、リサーチ、実践的アドバイスを業界の第一人者からご提供します。