2019年10月11日

休暇中に ロボットと出会う

ホテルの宿泊客に歯ブラシを届けることから、博物館のガイドを務めることにいたるまで、さまざまな作業をこなすロボットには人を引き付ける魅力があります。この夏、あなたは本物のロボットと対話する機会に恵まれるかもしれません。

ある家族がワシントンD.C.にあるスミソニアン協会のビジターセンターを訪れると、子供たちは真っ先に駆け込み、どこへ行ってどの展示品を見ればいいかを尋ねます。ただし、楽しそうに話しかける相手は人間ではありません。

彼らはロボットと対話することを求めています。

Pepperは、SoftBank Robotics社が開発した身長1.2mの対話型ヒューマノイドロボットで、このセンターに世界中から訪れる訪問者を歓迎しています。このロボットはカメラとセンサーを使用して、誰かが近くに来たことを認識し、そちらを向いて出迎え、対話します。Pepperは、展示品がある場所やトイレがどこにあるかといったよくある質問に答えてくれます。さまざまな説明をし、ビデオを表示し、ゲームをプレイし、そしてもちろん、自撮りのためにポーズを取ってくれます。

「人々がビジターセンターを訪れるのは、間違いなくPepperがいるからです」とSavannah Loebig氏は言います。彼女がプログラムアシスタントを務めるスミソニアン協会は、世界最大の博物館と教育研究機関の複合施設で、19の博物館と国立動物園を擁しています。「時折、Pepperをフロアに出すのがちょっと遅れると、「皆がPepperはどこにいるかを聞いてくるんです」という電話をもらいます。Pepperについて見聞きした人は、何を行われているかを見ようと集まってきます。特に小さな子供たちは興味津々です」

スミソニアンの4つの区画には、現在4体のPepperがいます。ここは、この夏に休暇で出かける人がロボットを目にして実際に対話できる場所の1つにすぎません。  

ワシントンD.C.のスミソニアン協会にいるPepper

ロボットとの出会い


ロボティックデバイスは、もはや自動車の部品を溶接するだけの大きなアームではありません。ロボットは歩いたり回転して移動したりする魅力的なデバイスになってきており、ツアーガイド、ヘルパー、予備の目や耳、さらにはコンシェルジュとしての役目を果たすことができます。そのため、この夏に休暇を過ごしているときや、単にバーベキューパーティーの準備をするために出かけたときでも、これまでより頻繁に実際に働いているロボットに出会うことになるでしょう。

ホテルのドアを開けたときやスーパーマーケットの通路を曲がったときにロボットが目の前で動いているのを目にすることを想像して、あなたの内なるギークがワクワクするのであれば、これまでの中で最高の夏になるかもしれません。ロボットのある世界はもはやSFの舞台ではないからです。

「人は好奇心の強い生き物であるという事実を認めましょう。私たちはロボットに触れたいと思い、ロボットの前に立って、どのように反応するかを見たいのです」とIDC社の研究部長であるJohn Santagate氏は言います。「このような人たちと話してみると、彼らはロボットが何をできるかを見たいだけではなく、ロボットと対話したいと考えていることがわかります」

「ロボットが大きな店舗やホテルにいても、その多くの事例はまだ始まったばかりです。もちろん、私たちはこのようなロボットに出会うと興味を持つでしょう。それは楽しみの一つなのです」と彼は付け加えます。

子供や若者は、ロボティクスキャンプや、ケネディ宇宙センターで開催されるような、ロボットを対象としたSTEMベースのキャンプ (科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学に重点を置いた教育プログラム) に参加できる機会があれば、ロボットに出会うことができ、おそらくロボットのプログラム方法を学び、ロボットと一緒に作業することができます。
それ以外の人も、運が良ければ、コーヒーやドーナツを注文したときや深夜のピザを頼んだときに配達ロボットに会えるかもしれません。食品会社の中には人間の配達員に加えてロボットを試しているところもあるからです。たとえば、Starship Technologies社のロボットは、バージニア州フェアファックス郡にあるジョージ・メイソン大学のキャンパスで、40,000人を超える学生や教員、スタッフに飲食物を配達しています。しかし、常に人型のロボットがアイスコーヒーやピザを配達するとは限りません。この大学のキャンパスを移動しているロボットは車輪が付いた白いクーラーボックスのように見えます。

スーパーマーケットで床の汚れを見つけるロボット

マーティが通路を巡回して問題を見つけるので、従業員は顧客対応に時間を割けるようになります。画像提供: Stop & Shop社

その他に、夏の旅行でどこに行けばロボットに出会えるでしょうか?

実は、自宅から遠く離れた場所に旅行しなくても、裏庭でのバーベキューパーティーのためにハンバーガーやホットドッグを買うときにロボットに出会えるかもしれません。
米国北東部に416店舗のスーパーマーケットを展開するStop & Shop社は、昨年から半数以上の店にロボットを導入しました。同社は、Retail Business Services社およびBadger Technologies社と協力してロボットを活用し、人間の従業員が顧客との直接対応にさらに時間を割けるようにしています。このロボットは高さ1.8mの細長い形で大きな目が付いており、通路を巡回して、清掃する必要がある汚れを見つけるとビープ音を鳴らします。

Stop & Shop社の広報責任者であるJennifer Brogan氏によれば、買い物客は、マーティという愛称が付けられたこのロボットを気に入っています。
「マサチューセッツ州ペムブロークの店長によれば、幾人かの客は子供たちが毎週マーティに会いたいので他の場所に買い物には行けないと彼に話しています」とBrogan氏は言います。また、同社はこのロボットを地元の学校に提供しており、生徒たちはロボットと科学に夢中になっています。「買い物客はマーティと一緒に自撮りすることを楽しんでいます」

ホテルのロボットコンシェルジュ

Aloftホテルに泊まったら、ロボット執事のBotlrに会えるかもしれません。画像提供: Zenique Hotels

ロボットに会うことも、夏の旅行の楽しみの1つになるでしょう。

一部のホテル、中でもAloftホテルチェーンの特定の施設では、ロボットコンシェルジュの役目を果たすインテリジェントマシンを利用しており、歯ブラシ、予備のタオル、軽食のようなちょっとした物を宿泊客の部屋に直接届けています。たとえば、カリフォルニア州ダブリンのAloftホテルにはBotlrと呼ばれるロボットが導入されており、ロビーを移動して宿泊客の注目を浴びています。呼ばれると、このロボットは仕事に取りかかります。

たとえば、宿泊客が追加の石けんを求めると、ロボット内の保管ケースに石けんが入れられ、蓋が閉じてロックされます。その後、ロボットはエレベーターと通信して目的のフロアに着き、自律的に移動して正しい部屋の前に来たら、電話システムを利用して客に到着を知らせます。その部屋のドアが開くと、ロボットのセンサーが検知して保管ケースが開くので、客は必要な物を入手できます。

「お客様の多くは、ロボットが動くのを見たいために、欲しいと思っていなくてもソフトドリンクを注文します」とRupesh Patel氏は言います。彼は、ダブリンのAloftホテルを所有するZenique Hotels社の社長兼最高執行責任者です。「ロボットは目新しい存在です。コストはそれほど節約されませんが、ユニークな体験を提供するので、お客様はそれについてソーシャルメディアにたくさん投稿してくれます。地元の人々も、お酒を楽しむだけでなくロボットを見るために私たちのバーに足を運んでくれます。彼らはバーに入ると「さて、ロボットはどこにいるんだい?」と言います。まったく新しい体験が得られるのです」

また、ラスベガス・ストリップにある豪華リゾート、カジノ、ホテルの複合施設ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガスで、宿泊客は、この施設が「住み込みのいたずら者」と呼ぶローズとチャットを楽しむことができます。

ローズはチャットボットです。彼女には体がないので、ロビーを移動したり、物を配達したりすることはありません。ローズがやることは、ホテルの客をちょっとしたやりとりで楽しませながら、役に立つ情報を提供することです。
「お客様はローズと楽しく過ごし、彼女の口調はウィットに富んだやりとりを盛り上げます」と、3,000を超える客室を備えたザ・コスモポリタンのデジタルマーケティング責任者であるLindsey Riggs氏は言います。「ローズと関わりを持つお客様は多く、滞在中に平均5件のメッセージを彼女に送っています。彼女は生意気な話し方になるよう作られました。お客様はローズとの会話を大いに楽しみますが、それこそ私たちが求めていることです」

このホテルのチャットボットは、テキストメッセージを通じて人間のような会話調で対話するようにプログラムされています。Riggs氏によれば、宿泊客がしばしばローズに尋ねることは、飲み食いできる場所、ホテルのプールエリアへの道順、キャビア入りタコスのような特別なものを見つける方法などです。もちろん、ここはラスベガスなので、このチャットボットはプロポーズを受けたり、ホテルの隠れ家バーを見つけたかもしれない客の相手をするよう求められたりします。ここでローズについての説明を聴いてみましょう。


博物館で計算を行うロボット

ニューヨークに向かった行楽客は、ロボットの群れに付きまとわれる体験ができるでしょう。

マンハッタンの国立数学博物館のビジターは、透明なフロアに乗って、その下にいる20数台の靴サイズの発光ロボットとふれあうことができます。センサーとモーション制御、位置特定システムを使用して、これらのロボットの群れは人の存在に反応して一団となって追いかけたり、人がフロアから降りるとすばやく立ち去ったりします。
「このロボット群の展示のポイントは、数学アルゴリズムを使用し、ロボットがどのように連携して作業に取り組むことができるか、その可能性を探ることです」と博物館の技術アドバイザーであるGeva Patz氏は説明します。「この展示は博物館の下の階で最も重要なもので、いつも利用されています。人はロボットの魅力に逆らえません。この展示の優れた点の1つはインタラクティブであることです。私たちは、ビジターが展示を楽しんでクールだと思ってくれることを期待していますが、彼らは無意識に、おそらく数学は思っているほど恐ろしくはないという考えを取り入れているのです」

国立数学博物館に展示されているロボットの群れは、数学アルゴリズムを使用してロボットがどのように連携して作業に取り組むことができるかを示しています。画像提供: 国立数学博物館
ロボットがすぐ近くに集まりました。画像提供: 国立数学博物館
さらに近づいてきます... 画像提供: 国立数学博物館

国立数学博物館では、別のロボットも展示しています。Hoop Curvesと呼ばれる展示には、ビジターがプログラムする角度や速度などの情報に基づいてフリースローを放つチューブ状のロボットがいます。もちろん、自分でフリースローを放つこともできますが、Patz氏によれば、ビジターは自分でシュートするよりも倍の回数、ロボットにシュートさせたいと望んでいます。


ロボットの魅力

「『ターミネーター』はSFにすぎないことを覚えておかなくてはなりません」とPatz氏は言います。「ロボットは、私たちの社会の一部になるにつれて、より親しい存在になることが重要になります。これは、ロボットがドローンであっても、道路を走るものであっても変わりはありません。興味深い展示をすれば、人はロボットに引き込まれます。ロボットは人をワクワクさせ、その好奇心をかき立てるのです」

スミソニアン協会で、ロボットのPepperが働いている場所は、ビジターセンター、ハーシュホーン博物館と彫刻庭園、国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館、スミソニアン環境研究センターです。

「Pepperは実際のところ、ロボットのテクノロジーがビジターの体験をどのように高めることができるかを知るための実験でした」とLoebig氏は言います。「Pepperには大きな魅力があることがわかりました。人はPepperが居る場所に行き、そこにある展示を目にします。本当にロボットに夢中なのです」

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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