2020年9月25日

危機的状況から勇気に満ちた新しい世界へ

「ニューノーマルを生きる」は、今や誰もが口にする合言葉となりました。しかし、それは何を意味するのでしょうか。何を残し、何を捨て去り、何を再構築するかは、人、プロセス、テクノロジーを合わせて見ることで決定する必要があります。

嵐がようやく弱まり、あらゆることが、現状にとどまるのではなく未来に向けて針路を定めるべきだと示唆しています。

人のなすことにはすべて潮時というものがある。
うまくあげ潮に乗れば幸運の港に達しようが……
その満潮にわれらは今いるのだ、
だからいま上げ潮に乗るのだ、
さもなければ一切を失うだろう。

―ウィリアム・シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』より

最大の逆境からは最大のチャンスが生まれる。歴史家や劇作家はそのように書いています。危機的状況に対処する過程で、組織は力ずくの手段や大量のアドレナリンによって問題を解決し、急速に変化を続ける状況に対応してきました。状況が落ち着き、ひとまず安定すると、強力なリーダーたちは以下を行いました。

  • マネジメントを信じて先へ進みながら、組織を安定させる。
  • 一歩引いて深呼吸し、将来について体系的に考える。
     

危機的状況が落ち着くにつれてリアルタイムのデータが大量に発生しています。それは、災難の結果として文字どおりにも比喩的にも世界を席巻している革命的な変化を予告しています。企業のリーダーがそのデータからどのようなインサイトを導き出し、どのような方向を選び、どのようなアクションを取るかによって、未来が決定します。ひとつの組織の未来ではありません。より広範囲のコミュニティの未来です。新しい世界は「勇気に満ちて」いるでしょうか。

危機的状況の影響を広い視野で捉えることで、組織のリーダーは以下の誘導的な質問を自問します。

  • 市場と顧客ベースに見られた影響に基づいて、今後自社のプロセスと価値のどのような面を保持するべきか?
  • どのような面を放棄するべきか?
  • 保持するか放棄するかを問わず、我々は以前の働き方に戻るべきか?
  • 業界の状況が変わったことで、抜本的な改革が必要か?
     

世界的な危機は、組織とその業界、顧客、従業員のあらゆる側面に幅広く根深い影響を及ぼすことを示唆しています。それによって「変わり続ける未来でどのような企業になるべきか」という最も広範な問題が生まれます。

また、「新しいインサイトと知識を使って組織はどの程度まで未来に貢献することを望むべきか」というより難しい問題もあります。
後者の問題に対する回答がリーダーとして確約すべきことだとすれば、前者への回答は将来へのビジョンです。リーダーとなるためには、過去の成功は勇気に満ちた新しい世界における成功の基準ではないという視点から、従業員、プロセス、テクノロジーの足並みを揃える必要があります。

エンタープライズエンジニアリングは、企業とそのプロセスおよびシステムを構築または変更するための、包括的な一連の規範です。その目的は、人間とテクノロジーを組み合わせて最大の効率性を達成し、あらゆるレベルで変化を起こすことです。

 

従業員と文化の進歩

危機的状況の中で、ビジネスチームとITチームは通常の連携のパターンとは異なる方法で協力して仕事を行ったことでしょう。その結果、問題や課題に正確に対応して以前よりすばやく解決できたのであれば、すばらしいことです。緊急性、高い危機感、より明確なコミュニケーション、理解の共有、共通の目標が、方法は1つしかないという以前の概念を取り払いました。鍵となる質問が2つあります。

  • 組織は、ビジネスとITの両方の面でこのメンタルモデルの変化を活用できるか?
  • データ、顧客への聞き取り、市場の観察からどのようなインサイトを得たか?
     

ベストプラクティス: 価値に焦点を当てた文化を構築し、従業員がエンドツーエンドで考えられるようにする

より大きな価値を生み出せる組織 (つまり、競合他社よりも収益や利益の割合が大きい組織) は、バリューストリームの集合体として構築されています。バリューストリームは個別のエンドツーエンドのアクティビティ群で、それらの組み合わせによってお客様に対する価値を生み出します。

バリューストリームチームは、結果を出して期待値を満たすことを可能にするアクティビティとリソースに最初から最後まで関わります。

バリューストリームの設計者は、スピード、コスト、品質、サービスなどの重要な基準で「際立った」改善を達成する方法を模索します。

どちらのチームも、外部の顧客と恒久的な市場を念頭に置いて、アウトサイドインに焦点を当てます。ビジネスの知識とデジタル情報テクノロジーの専門知識を統合して最高の設計を生み出し、それを提供するための最適なプロセス (ワークフロー) を決定します。

パンデミックの間、ある顧客はちょうどそのようなパートナーシップによって活動していました。バリューストリームを構築してビジネスを継続していたのです。このスタイルの協力関係は、バウンダリーレスネス (境界線がないこと) として知られています。これには危機的状況の制約の中で仕事をすることと同様に、異なるマインドが必要となります。開放性とコラボレーションの文化の中でのみ持続させることができます。危機的状況の中でバウンダリーレスに業務を進めてきた組織の課題は、垣根がなくなったことを活用する方法を見つけ、新しいメンタルモデルを採用し、新しい考え方をする組織へと改変する方法を生み出すことです。

文化人類学者の研究によれば、文化が変わるのは物語が変わるためです。危機的状況によって物語が変わります。未来は物語を変えながら進んでいくはずです。そして、リーダーは物語の進行に積極的に貢献し、好ましい未来に影響を与えることができます。

 

変化するプロセスの統制

バリューストリームはプロセスではありません。1つのバリューストリームは一連のアクティビティから成り、外部顧客の期待値を満たす製品またはサービスを提供するという明確な目標に向けて、連動して機能します。バリューストリームにはビジネスの成果が伴います。

プロセスという言葉は誤解を生む原因となります。ビジネスは、買掛金のプロセス、受注のプロセス、請求書を作成するプロセスなどに言及します。ITプロフェッショナルはデータフローの図や手順のランブックを作成し、それをプロセスと呼びます。これらのアクティビティが重要でないという意味ではありません。何をプロセスと考えるかを明確に理解することは、未来に向けて自らを変革しようとしている組織にとって非常に重要です。バリューストリーム文化を活用する未来志向の企業にとって、ワークフローというラベルを追加することで明確性を向上できます。

体系的に定義されるワークフロー (プロセス) は、作業手順をまとめるための標準的な手法です。プロセス/ワークフローによって、バリューストリームのアウトプット (サービスまたは製品) の品質を最大化する時間を最短にできることが理想的です。品質は、常に顧客による外部からの期待値によって定義されます。バリューストリーム内で見た場合に、プロセスは不要な業務を排除し、グループ間の引継ぎを推進するのではなく控える役割を果たす必要があります。

ベストプラクティス: バリューストリームにプロセス思考を適用する

最近、受賞歴のあるサービスプロバイダーが、自社のポートフォリオにクラウドサービスを追加する過程でバリューストリームの概念を取り入れました。提案するサービスに向けてバリューストリームを設計することと、需要 (顧客) とサプライヤーの両方の側からワークフローを考えることを同時に行うことで、予測していなかった利益を上げることができました。顧客が称賛している既存のデリバリーモデルに新しいプラットフォームを追加することを考えていたリーダーたちは、そうではなくデリバリーモデルの変更を実現できたことに驚きました。このサービスプロバイダーの顧客は、予期せず既存のサービスの品質がさらに向上したことに驚きました。

 

デジタルテクノロジーの進歩

デジタルテクノロジーの能力、機能、ビジネスへの導入率が過去数十年で高まっていますが、繰り返し実施される調査によって、単に新しいテクノロジーを導入するだけではビジネスの価値を生み出すことができないという単純な事実が分かっています。ここで伝えたいメッセージは、バリューストリームを明確に定義することなくテクノロジーを導入しないでくださいということです。また、エンドツーエンドのバリューストリームに関わるプロセスを完全に再設計するまでは、オートメーションを導入しないでください。

MITは、多大な価値を達成した組織 (直近の競合他社に収益と利益の割合で大きな差をつけた組織) をデジタルマスターと称しています。

ベストプラクティス: バリューストリームを適切に自動化することを目的とした、テクノロジーの最適な組み合わせを見つける

組織のベストプラクティス:

  • 人間とテクノロジーのパートナーシップを確立する
  • 高速で、流動的で、柔軟なバリューストリームを構築する
  • オートメーションツールを使用して以下を実行する
  • 効果的で体系的なバリューストリームのリソースを設計および構築する
  • バリューストリームに関わる従業員に最適な情報を提供する
     

中小企業だからといって、業界において先陣を切らなくてもいいというわけではありません。ある中規模企業のIT組織は、老朽化するテクノロジーを動的な新しいデジタルプラットフォームに置き換えることに大きな可能性を見出しました。IT部門がビジネスプロセスとワークフローを再定義してバリューストリームに導入し、老朽化したテクノロジーが原因の予期しないダウンタイムのコストを伝えるまで、ビジネスは何の対応もしませんでした。

 

目標: 危機的状況から勇気に満ちた新しい世界へと移行する

リーダーは、進化する新しい環境に適切に対応できるように組織を再構築すると同時に、長期的な機会を最大化するためのビジョンを持ち、アーキテクチャを設計する必要があります。業界におけるリーダーの位置を維持または獲得するために、組織は目まぐるしく変化する環境に対して最適な対応を取り、新しい物語を語ること、価値を再構築すること、デジタルに対する振るまいを習得することに戦略的に習熟する必要があります。

未来のテーマ

  • 根本的な不安定性
  • 働き方の劇的な変化
  • デジタルランドスケープ (テクノロジー) の爆発的な変化
  • 人間性の再注目
  • 加速し続ける変化のスピード
     

勇気に満ちた世界を創るための課題に向き合う準備はできていますか。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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