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2020年10月9日

オンプレミス型クラウドサービスへの移行に向けた5つのステップ

あらゆるアプリケーションをパブリッククラウド上で運用できるわけではありません。この記事ではクラウドを組織内に構築する方法をご紹介します。

コストの削減、スケーラビリティの向上、業務の効率化、アジリティの強化など、クラウドのメリットはすでに広く知られています。ただし、あらゆるエンタープライズアプリケーション、ワークロード、およびデータがクラウド環境に適しているわけではありません。コンプライアンスやセキュリティ上の理由により、あるいはアプリケーション間の複雑な依存関係が原因で、パブリッククラウドに移行できないアプリケーションも少なくありません。また財務的見地から、移行が不可能もしくは非現実的と判断されるケースもあります。

そこで注目されるのが、オンプレミスのアプリケーションを、オンプレミスの消費モデルに移行する手法です。これは組織内にクラウドを構築するようなもので、パブリッククラウドのあらゆるメリットを享受できます。このモデルを使用する場合、組織はパートナーとなる企業からすべてのニーズを満たすのに十分なオンプレミスのインフラストラクチャとサービスの提供を受け、実際に使用した分の料金のみを支払うことになります。このクラウド型の経済モデルは、組織の支出を資本投資モデルから運用経費モデルへとシフトさせ、ビジネスサイクルとインフラストラクチャ投資の足並みを揃えることを可能にします。

オンプレミス環境にクラウドサービスを実装するのは大変な作業のように思われがちですが、実際にはそれほどでもありません。以下でご紹介する5つのステップによりゴールに到達できます。

 

ステップ1: 移行すべきアプリケーションとデータを決定する

まず、どのアプリケーションとデータを新たな環境に移行すべきか、またどのアプリケーションは移行すべきでない、あるいは移行できないかを決定することから始めます。すべてのアプリケーションとデータを個々のニーズや要件とともに一覧にまとめたうえで、アプリケーションがどのハードウェア上で実行されているか、どのような手法で設計されているか、などを明らかにします。さらに各アプリケーションが他のアプリケーションとどのような方法および頻度で対話しているかといった、アプリケーション間の依存関係も確認してください。個々のアプリケーションとデータセットに関係する規制やセキュリティ要件もリストアップします。また1年の特定の時期に使用頻度が高まるアプリケーションがある場合は、季節性の問題も考慮する必要があります。

こうした作業を通じて、個々のアプリケーションやデータセットの重要度や、ビジネス戦略とインフラストラクチャを合致させるためにIT部門がすべきことなどを明らかにしていきます。重要度が低いアプリケーションやデータセットについては、新たなモデルに合わせて設計する際に、パフォーマンス面で妥協できる可能性があります。その一方で、重要度の高いものについては最高のパフォーマンスが求められます。たとえば高頻度取引を行う金融会社の場合、あるいは別の理由で低レイテンシが求められる場合は、パフォーマンス向上のための追加投資を検討する必要があります。

またこの段階で、アプリケーションポートフォリオ全体を見直して、重複、不要、または余分なアプリケーションがあれば廃止を検討します。一般的な経験則として、新しい最適な環境に移行する候補となるワークロードは全体の50%程度、現状のままにすべきワークロードは30%、廃止すべきワークロードは20%です。

こうした調査を通じて、どのアプリケーションを廃止し、どのアプリケーションを現状のままにし、どのアプリケーションをオンプレミスの消費モデルに移行するかの決定が可能になります。

 

ステップ2: 移行に向けたビジネスケースを作成する

次に、アプリケーションやデータをオンプレミスの消費モデルに移行することの妥当性を示すビジネスケースを作成します。ここで推奨されるのが、4象限マトリックスを使用して容易性と影響度を特定する手法です。一方の軸では各アプリケーションをオンプレミスモデルに移行する容易さを評価し、もう一方の軸では各アプリケーションを移行した場合のビジネス効果を評価します。

移行が非常に容易なアプリケーションも存在します。たとえば通常、レガシーなハードウェア上の仮想マシンで実行されているアプリケーションは、オンプレミスの新しいハードウェア上に簡単に移行できます。その一方で、アプリケーションの再設計が必要になるなど、移行がはるかに難しいケースも存在します。

両方の軸に沿ってすべてのアプリケーションを評価することで、移行が容易で、かつ移行によるビジネス効果が大きいアプリケーションを明確に把握できます。そのためには、個々のアプリケーションについて財務モデリングを行って、アプリケーションを現状のままにした場合と移行した場合のコストを比較する必要があります。最初に現状のままにした場合のコストを明らかにします。レガシーなハードウェア上で実行しているアプリケーションの場合は、稼働と冷却に必要な電力、データセンターのスペース使用量、管理者の作業時間、必要なライセンスなどをすべて洗い出し、これらのコストを合算することで、レガシーなハードウェア上でアプリケーションを運用する場合の年間コストを算出できます。

次に従量制の料金に基づいて、オンプレミスモデルに移行した場合のコストを予測し、先ほど算出したコストと比較します。これにより個々のアプリケーションについて、移行の投資収益率を正確に予測できます。

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ステップ3: アプリケーションとワークロードの運用環境のサイジングを行う

移行するアプリケーションを決定したら、次に実際のビジネスニーズに応じて契約する容量を決定します。そのためにはアプリケーションとワークロードの移行先となる環境のサイジングを行う必要があります。

たとえばある企業が50個のアプリケーションをオンプレミスの消費モデルに移行することを決定したとします。これらのアプリケーションを一度に移行することは現実的でなく、通常は段階的に移行を進めることになります。こうした手法は環境の適正規模の見極めにも役立ちます。一般的に50ものアプリケーション全体で必要とされる容量を事前に見積もるのは困難です。これに対してアプリケーションを段階的に移行する場合は、段階ごとに新たな環境を少しずつ拡張する形になるため、最終的に適正規模の環境を構築できます。

 

ステップ4: 適切なツールを選択する

オンプレミスの消費モデルへのアプリケーションの移行が完了しても、それで終わりではなく、むしろここからが本番です。エンドユーザーとITスタッフに生産的なas-a-Service環境を提供するためには、アプリケーションや環境を管理するための適切なツールが必要です。

必要なツールの種類は職種によって異なります。開発者は、VMやコンテナーを簡単かつ迅速にプロビジョニングできるツールを必要とします。とりわけ優れたツールは自動化機能を備えており、開発者はボタンをクリックするだけでマシンサイズ、ネットワーク接続、ディスクのサイズとタイプ、バックアップスケジュールなどを構成できます。

ITチームは、パフォーマンスとコストの監視、環境のプロビジョニング、ライフサイクルの管理、バックアップの実行、コンプライアンス問題への対処など、管理とトラブルシューティングに関する重要なタスクのためのツールを必要とします。またデータサイエンティストは、プロビジョニングなどのバックエンドタスクを考慮することなく、機械学習やAIをすぐに使用可能なツールを必要とします。

 

ステップ5: 最適なパートナーを選定する

オンプレミス型のクラウドサービスを実装するためには、必要なインフラストラクチャ、サービス、およびツールを迅速に提供可能なパートナーを選定しなければなりません。今日の企業環境は大半がハイブリッド型で、画一的なソリューションで対応するのは不可能であり、パートナーの選定にあたってはこの点を認識している企業を選ぶことが大切です。

理想的なパートナーとは、オンプレミス、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、およびSaaSモデルのすべてに対応でき、さまざまなテクノロジーについて豊富な経験を有する企業です。ワークロード、アプリケーション、ビジネスなどの要件に基づいて、テクノロジーの最適な組み合わせを見出すための支援が可能で、強固なサービス/サポートチームを擁するパートナーを慎重に探すことをお勧めします。

ここに示した5つのステップに従って、オンプレミス型のクラウドサービスに移行することで、大幅なコストの削減と運用の改善が期待されます。適正な移行を行った場合、CAPEXを約30%削減する一方で、プロジェクトの展開に要する時間を65%短縮することが可能です。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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