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2021年4月9日

危機管理フレームワークを確立する5つのルール

危機管理計画を立てないのは、混乱を自ら招くようなものです。そうした結末を迎えないために、次のルールに則って行動されることをお勧めします。

今年は、さまざまな事態に対する組織の危機管理能力が問われる年となりました。米国では、コロナ禍に加えて、西海岸での山火事、南部でのハリケーンの影響を受けて、ほぼすべての企業が世界規模での調整を余儀なくされました。健康上の被害と自然現象による被害だけでなく、組織的 (合併やリーダーの変更など)、経済的、政治的な面のほか、サイバーセキュリティ啓発月間への適合といったさまざまな面で、事業運営に大きな問題が生じる可能性があります。

企業にとってもそれ以外の組織にとっても、すべての問題を避けることは非現実的です。そのため、危機管理チームを配備して危機的状況に備え、それを克服し解決できるようにしておくことが不可欠です。私はこれまで仕事を通じてさまざまな事態への対応を主導してきましたが、紛れもない真実だとつくづく感じているのは、危機的状況でのコミュニケーションがいかに重要かということです。危機管理フレームワークをあらかじめ定義しておけば、コミュニケーション、対応、そしてイノベーションを行える機会にしっかりと目を向けることができます。

危機管理を行うリーダーは、さまざまな責任を負っていますが、何よりも重要な任務は、危機的状況が発生しているときにコミュニケーションを促すことです。

これまでとは異なる経験をした今年 (2020年) こそ、危機管理フレームワークを社内で確立するのによいタイミングです。すでにそのためのチームを配備しているなら、既存の危機管理フレームワークを見直して、改善の余地がないかを検討する機会になるでしょう。この記事では、それらを踏まえて、リーダーシップ、組織、頻度、コミュニケーション、新たな機会という、フレームワーク考察に重要な5つの点をまとめていきます。

リーダーの役割を設定し定義する

「実践を繰り返す」。事業継続と危機管理を相当する人たちはそれをスローガンに掲げていますが、まったくそのとおりです。危機管理リーダーがそうした任務を1人で負うことも、私がこれまで見てきたように、危機管理プロセスのトレーニングを受けたシニアリーダーがその役割を果たすこともできます。リーダーシップの構造は組織によって異なる傾向があります。いずれにしろ、有能な危機管理リーダー候補を確保するには、まず、役割に求められる任務を明確に定義し、その役割を実践に移します。

個人的にはこう考えています。危機管理を行うリーダーは、さまざまな責任を負っていますが、何よりも重要な任務は、危機的状況が発生しているときにコミュニケーションを促すことです。その例として、危機管理チームの会議を主導する、シニアリーダーと継続的なコミュニケーションを行う、最新情報を全社的に共有できるように調整する、取締役会が最新情報を得られるように支援するなどが挙げられます。私はこれまで、同僚とじっくり協力し合い、最終的には適切なメッセージだけをシニアリーダーに伝えてきました。ご存じのように、適切に伝達するには1人がタイピングし、別の数人が同時進行でその内容を推敲します。私にとって、誰かに見られながらタイピングするのは非常に難しいことですが、文脈を伝えるときには言葉の一つひとつが重要になります。そして、適切な文脈がわかるようになるには、実践を繰り返す必要があるのです。

私が強くお勧めするのは、現在の危機対応を、危機管理リーダーの候補者と一緒に行うことです。このセクションの初めに、有能なリーダーを確保するのがいかに重要かを述べましたが、その非常によい例を2007年に体験しました。私が危機対応を主導しているときに、入院が必要な緊急事態が発生したのです。しかし、同僚の1人がすぐに行動を起こし、問題なく対応を進めることができました。有能な危機管理リーダーを確保できれば、この例のように危機的状況で発生した緊急事態や、さらに長期的な事態にも対応できます。

チームを編成する

私が関わった多くの企業には専任の事業継続チームがあり、こうした企業の多くには危機管理を専任する従業員がいます。そのほかの事例でもよくあるように、モデルは組織の規模によって異なります。

企業の規模にかかわらず、危機管理チームのメンバーは組織全体から選任する必要があります。顧客と直に接する事業部門の担当者だけでなく、人事、IT、法務、内部と外部のコミュニケーション、監査、セキュリティ、設備部門などの主要なメンバーにも危機対応に参加してもらいます。さらに、危機管理会議のたびに専任の担当者が議事録を取るようにしましょう。

危機管理チームでは、どのメンバーもコミュニケーションを同じように重視しなければなりません。各メンバーは相互にコミュニケーションを行い、それぞれの事業部門への影響と部門の現在の状況を、チーム内で共有する必要があります。

最初の危機対応では、危機管理チームのメンバー全員に参加してもらうことを強くお勧めします。私は経験上、大規模な組織は複雑であり、危機的状況の影響をすべて把握するのは非常に難しいと考えています。最初にメンバー全員と連絡を取るようにすると、問題に発展しそうな点を見落としていないと確信できます。危機管理チームのメンバーは、特定の事態が自分の任務の範囲外であればチームから外れることもできます。

頻度を設定する

コミュニケーションの頻度は、事態そのものと、危機的対応の経験値によって異なります。危機的状況の発生直後には、多くの場合、危機管理チームのメンバーを集合させるためのコミュニケーションを1時間おきに行います。この1時間おきという形式を取ることで、メンバーはあらかじめ決められたアジェンダを基にチーム内で作業した後、それぞれの部門に戻って最新情報を交換できます。この形式を取れば、危機管理リーダーが主要な利害関係者に最新情報を定期的に提供でき、そうした状況に直接対応することがリーダーのスキルアップにもつながります。

危機管理会議のアジェンダは、次の点を考慮して綿密に構造化することをお勧めします。

  • 会議の冒頭で危機管理リーダーが現在の状況を述べる。
  • 出欠を取る。その際に、危機管理チームの各メンバーが担当範囲の現在の状況 (サービスの指標も含む) を報告する。

 

問題解決は危機管理ミーティングの時間外に行わなければなりません。各参加者が責任を持って行うべきことは目の前のタスク、つまりコミュニケーションだからです。

危機対応の成熟度が増し、回避策 (事業継続計画) の展開が進むと、通常、問題解決の進捗に合わせてミーティングの頻度が低下します。

マスメディアを通じてコミュニケーションを行う

この記事の初めに、文脈がいかに重要か、また、主要な利害関係者に最新情報を伝えるために、私が同僚とともにどれほど時間をかけて適切な言葉遣いや表現を選んでいるかについて述べました。顧客、従業員、主要なベンダーとのコミュニケーションでは、そのように細部に注意を払うことがさらに重要になります。

マスメディアを通じて危機的状況に関する情報を発信する前に、危機管理チームでは次の段階を踏む必要があります。

  • すべてのコミュニケーションの問い合わせ対応を一元的に担当する人物またはチームを指定します。
  • 従業員をトレーニングして、問い合わせはすべて、指定された担当者またはチームに対して行うようにします。外部の報道機関が対応中の事態を認識することもあり、そうした機関から質問を受けた従業員がその質問を信頼できる情報筋に向けられるようにしなければなりません。
  • Webサイト、コールセンター、関係管理チーム向けにコミュニケーション計画を策定します。そうすることで、危機的状況の影響がサービスに及んだ場合に、顧客が事業の継続方法を詳しく知ることができます。
  • スクリプト、すぐに参照できる資料、FAQの一覧を作成します。こうした情報があれば絶えずメッセージを発信して、問題発生に対処できる徹底した計画があることを顧客に伝え、安心感を与えられます。
  • 多くの業界が、サービスが停止した場合のコミュニケーションに関する要件を定めているため、法務部門と時間をかけて会議を行います。
 
主要な関係者と顧客に対しては、プロアクティブなコミュニケーションを定期的に行うようにします。当然ながら、プロアクティブなコミュニケーションを行うには、こうした主要な関係者のために常に連絡先情報を更新し調整していなければなりません。 

イノベーションを目指す

どのような危機的状況にもチャンスがあると私は考えています。計画の見直しとブレインストームを行う最適なタイミングはおそらく危機的状況が始まったときと終わるときです。現在のコロナ禍のような危機的状況では、事態の発生中に顧客を支援できる新たな機会が訪れます。そうした事態が終わるころ、将来の危機的状況への対応を改善できる機会があるかもしれません。

危機管理チームにアイデアの発想を期待できるように、組織全体にも、新しいソリューションや優れたソリューションの提案を期待できます。たとえば、最前線の関係管理者と、コールセンターの従業員以上に顧客の影響と感情を理解している人たちはいません。

少なくとも、フィードバックループの確立にはじっくり取り組むようにします。時間があれば、ハッカソンを開催してスキルを磨いたり、これまでにない観念を持ちながら一歩踏み出して、顧客関係とビジネスモデルを向上させる新たなイノベーションの機会を見つけたりするとよいでしょう。

コミュニケーションを重視する組織は常に前進する

私がテクノロジーの分野に携わらなかったのは、公の場で話すのが非常に好きだったからです。課題が生じたときに特に重要になるのがこの能力だとも気が付きました。危機的な状況に対応するときも、必要に迫られた重大な変更を行うときにも、文脈を示し透明性のある明確なコミュニケーションを行えれば、信頼を築くことができます。

危機管理フレームワークをしっかりと定めていれば、信頼関係を築きながら問題解決に力を注ぐことができます。もう1つアドバイスしたいのは、そうした過程を実践することで一貫性のある対応を行えることです。問い合わせの電話が入るタイミングは誰にも予測できません。朝食のとき、夕食のとき、芝生を刈っているときや寝ているときでさえ、電話は容赦なくかかってきます。私は一晩中仕事をした後で、部門を越えたチームとの朝食を何度も楽しみました。

今年 (2020年) の終わりには、自分の組織に影響を及ぼした危機的状況について振り返ってみましょう。危機対応を改善する機会や、成果を得られそうなイノベーションのアイデアはなかったでしょうか。

変革戦略の構築支援に多くの時間を費やすなかで、HPE Pointnext Servicesに関わる多くの卓越したエキスパートと知り合うことができました。もし皆さんが、危機対応の改善、ソリューションの提供方法の刷新、革新的なアイデアの発見などを検討しているなら、HPE Pointnext Servicesの専門技術を利用することで、新しい観点を持ち、実践的な戦略を立てられます。

危機管理: リーダーへのアドバイス

  • 危機管理計画を繰り返し実践することで、危機的状況の発生前であれ発生中であれ、自信を持って対応できます。
  • 危機管理チームは会社全体から選ばれたメンバーで構成し、メンバー間で常に情報を共有する必要があります。
  • 危機管理計画を策定し実践することで、自社について多くを学ぶことができます。危機的状況の発生前に自社を知るには、それが最良の方法であることもわかります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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