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2021年9月28日

工場で生じるワイヤレスネットワークの課題

工場において強固なWi-Fiネットワークが構築できないのは、電波雑音と、金属の塊といえる大型機械ですが、それらは、原因のほんの一部に過ぎません。
ワイヤレスネットワークを構築すること自体、簡単ではありませんが、工場ほどそうしたネットワークの構築が常に難しい環境は他にはないでしょう。

産業用Wi-Fiとは、高温多湿なエリアのある製紙工場から、配管と導管が迷路のように張り巡らされた石油/ガスプラントまで、製造現場で使用されるあらゆる形態のワイヤレス通信を指します。工場の空間は、問題を克服するのが特に難しい環境です。

工場でのオペレーションを最適化し、ダウンタイムを最小化するには、エキスパートによる専門サービスが必要となります。この記事では、産業用Wi-Fiを構築するときの相違点、よくある課題、それらの解決策を紹介します。

機械が信号を妨げる

一般的な屋内施設の環境には、さまざまな機械がぎっしりと並んでいます。そのほとんどが、その現場のありとあらゆる製造物向けに設計されています。これらはどれも、金属や鋼鉄でできており、圧力で動くものもあれば、電気を使って動くものもあります。これが、ワイヤレス通信にとって非常に厄介な環境を生み出します。

こうしたあらゆる金属、反射性、回折、ワイヤレスシグナルの散乱によって複雑な問題が生じます。残念なことに、これらの問題は通常、NetAlly社のAirMagnetやEkahau社のSurvey Proなどのツールを使用して標準のパッシブスキャンで評価しても検出できません。

ここで、よくある誤った認識を指摘したいと思います。産業用ワイヤレスと聞くと、多くの人が、倉庫や、いく列も並んだ巨大な棚、その間を動き回るフォークリフトなどを思い浮かべます。これは倉庫向けWi-Fiと呼ばれるものです。倉庫向けWi-Fiは、それ固有の課題や特徴を持つものの、産業用Wi-Fiとは異なります。製造工場と倉庫の倉庫に類似点があるとすれば、それはその2つを形作っている建物です。その点が最も似ています。

産業環境では、機械によって生じる、Wi-Fiとは関係のない干渉が非常に複雑な状況を生み出します。さまざまな機械によって、いずれの通信プロトコルでも構造化されない、無線周波数 (RF) の電磁波などが発生する可能性があるのです。これは、実質的に、無線周波数スペクトルにおけるノイズでしかありません。

こう考えてみましょう。近所同士の2人が家のそばでおしゃべりをしていたとします。いつもどおりの声の大きさで話し、十分に意思疎通ができています。そのとき、別の隣人が乗った芝刈り機が近づいてきました。その音が非常に大きかったので、2人は互いの声が聞こえず、スムーズな会話ができなくなりました。2人の声をかき消している芝刈り機の音は、意思疎通ができるような構造でも、意思疎通に価値を与えるものでもありません。この例では何が干渉源かは明らかですが、その追跡と特定が難しい場合も少なくありません。これが、産業/製造業の現場の空間にワイヤレスネットワークを展開するうえで新たな課題となるのです。

その他の一般的なワイヤレスネットワークの展開と同じように、Wi-Fiによる干渉もかなり発生する可能性があります。残念ながら、多くの機器ベンダーが、機械を工場に設置したときに自社の無線アクセスポイントも設置して、そのことを新しいオーナーに報告しません。ベンダーによっては、複数の機器用に拡張されたワイヤレスネットワークを導入する場合もあり、それらの存在が顧客に報告されることもあればされないこともあります。

制御室などに設置されたプリンターは、Wi-Fiがデフォルトでオンのままになっています。しかし、ユーザーの機械とはUSBケーブルで接続されるので、オンになっていることが忘れられてしまいます。また、現場の従業員が使用するパーソナルデバイスでは、Wi-Fiホットスポットが常に実行されています。以前製紙工場で行ったある調査を思い出します。工場の敷地のほぼ真ん中に立ってスマートフォンでシンプルなWi-Fiスキャナーを開くと、40以上の一意のService Set Identifier (SSID) やシグナル名が表示されたのです。通常のオフィスの設定では、IT担当者がネットワーキングに関する意思決定を行うことが当然のように思われます。しかし、工場の場合には、それが当てはまらないことが少なくありません。

環境上の課題

製造業の環境の物理的な状況も、ワイヤレスネットワークの展開で発生する課題に影響を与えます。温度が管理され、比較的清潔に保たれている施設もありますが、ほとんどの施設はそうではありません。常に高温の現場も多く見られます。暑いうえに、埃や湿気がきわめて多い現場もあります。つまりそこでは、湿度が非常に高くなっています。軽度の腐食性を持つガスや液体がある環境もあり、そのせいで、ケーブルやケースが徐々に劣化します。こうした状況はすべて、敏感な電子機器に悪影響を及ばします。

環境のそうしたさまざまな要因を考えると、標準のワイヤレスアクセスポイントなどの無線機器が長持ちしないことも不思議ではありません。状況によっては、他の環境と同様に、標準の機器を屋外で使用できます。しかし、それよりもはるかに厳しい状況では、無線機器をNEMA規格の筺体に入れたり、耐久性のある特別な用具を使用したりする必要があります。

耐久性のある無線機器は、標準のものよりも高価になりがちですが、そうした過酷な環境に耐えられるように設計されています。たとえば、ケーシングが金属や耐熱プラスチックでできており、継ぎ目、アンテナ接続、データポートのどれもが、密閉によって湿気や埃から保護されます。また、こうした耐久性のある機器では、IP (Ingress Protection) 規格のIP66やIP67を満たすことで、このような厳しい要因による影響を完全に遮断しています。

工場での優先順位

ワイヤレス通信がオペレーションテクノロジーに不可欠な場合、標準的なIPネットワークのルールに従う必要はありません。ITの分野では、CIA (Confidentiality、Integrity、Availability) と呼ばれる、機密性、完全性、可用性の三本柱を基にネットワークが運用され、これらがデータ保護と実行可能性確保の最優先事項と見なされます。

そのため、多くの場合エンドユーザーへの警告なしに、必要に応じてワイヤレスシステムの再起動や変更を行えます。しかし、OTでは、SRP (Safety、Reliability、Productivity) と呼ばれる安全性、信頼性、生産性が優先されます。つまり誰かがファームウェアのアップグレードや、メンテナンスに必要な再起動を実施したくても、機器を停止できません。どのようなときも、処理や生産の過程を妨げてはならないのです。経済面だけでなく安全性を重視してそのような対応が取られます。ワイヤレス通信が不可欠となった生産工程で無線機器が突然オフラインになると、機器類が適切にシャットダウンされないおそれがあります。これによって、機械が破損したり、作業者の安全が脅かされたりすることもあります。もちろん、こうしたルールは、セキュリティアップデートをすぐに適用するなどのベストプラクティスとはまったく異なります。

この記事では、産業環境向けワイヤレスネットワークの設計と導入を行う場合の相違点について、概要を述べたに過ぎません。環境は現場ごとに異なり、産業向けワイヤレスネットワークでは、倉庫やオフィスのWi-Fiには一般に見られない特別な標準規格が使用されます。産業向け環境のワイヤレスネットワークを担当しているなら、ここで述べた独特の課題を意識して、それらを調査することを強くお勧めします。

リーダーへのアドバイス

  • 産業環境では、オペレーションテクノロジーとして、ワイヤレスネットワークも導入されるようになりました。こうしたネットワークではアクセシビリティと信頼性が確保されなければなりません。
  • 産業環境では、さまざまな機械によって、無線周波数の電磁波などが発生します。これは、実質的に周波数スペクトルにおけるノイズでしかありません。
  • 産業用Wi-Fiは専門分野であり、従来のWi-Fiエクスペリエンスでは十分に適応できない可能性があります。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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