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2018年6月5日

デジタルエコノミーを支える電力効率に優れたテクノロジー

将来にわたってITインフラストラクチャに必要な電力を供給し続けるためには、クリーンな電力システムへの移行に加えて、より効率的なITアーキテクチャーの実現が欠かせません。

電力効率の問題にビットコインは一見無関係のように思われますが、暗号通貨への関心が急速に高まるなかで、こうした先進的なテクノロジーが世界の電力供給に過度の負担をかけることが懸念され始めています。

今日では、全世界で数千台もの専用コンピューターがビットコインの発行 (マイニング)、およびその過程における取引の承認やシステムの保護に使用されています。こうしたマイニング事業は今や巨大な産業となり、メガワット規模の電力を消費しています。事実、ビットコインのマイニングは膨大な電力を消費しており、暗号通貨追跡WebサイトのDigiconomistによると、その推定消費電力はチェコ共和国の消費電力にほぼ一致します。

この半年で暗号通貨のマイニングブームも若干落ち着いてきましたが、ビットコインが消費する膨大な電力は、テクノロジーの進歩に伴う課題を如実に示しています。新たなテクノロジーは、世界中のさまざまな重大問題を劇的に解決したり、新たな経済機会を創出したりする一方で、その運用には膨大な電力が必要です。

AI、自動運転車、あるいは前述のブロックチェーンテクノロジーのような新興のデータ主導型テクノロジーの利用が拡大するなか、現行のITインフラストラクチャのままでは、将来的に電力不足に陥ることは明らかです。これらのテクノロジーの運用には膨大な電力が必要であり、現在の主な発電源が依然として化石燃料であることを考えると、深刻な環境問題に発展することも危惧されます。将来にわたってITインフラストラクチャに必要な電力を供給し続けるためには、クリーンな電力システムへの移行に加えて、より効率的なITアーキテクチャーの実現が欠かせません。

 

必須の課題: 消費電力の少ない新たなテクノロジーの開発

コンピューティングインフラストラクチャの電力効率を漸進的に改善することは、この問題への短中期的な対策としては有効ですが、より長期的な観点からは、消費電力がはるかに少ない新たなテクノロジーの開発が求められます。

この数十年間、私たちは時間の経過とともにマイクロプロセッサーの小型化が進み、コンピューターがより安価にかつ強力になり、電力効率も向上することを当たり前のように捉えてきました。1965年にインテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏が、集積回路上の1平方インチあたりのトランジスタ数が、集積回路の発明以来、毎年2倍に増加していることに気付き、この傾向が当面は継続するであろうと予測しました。しかしながら今日、プロセッサー中心の高出力コンピューティングアーキテクチャーは物理的な限界に近づきつつあり、ムーアの法則の確実性が揺らぎ始めています。コンピューティングの継続的な効率化はもはや保証された未来ではありません。こうした状況の一方で、増え続けるネットワークデバイス、5Gセルラーネットワーク、あるいはAIなどの新興テクノロジーにより、データ処理能力に対するニーズは劇的に増加しています。

今日のITインフラストラクチャは、1960年代に最初に開発されたテクノロジーを基盤に改善を重ねてきたものであり、こうしたモデルでは、時計、家電、車など、文字どおりあらゆるモノがコンピューティングを行う時代には適応できなくなりつつあります。国際エネルギー機関 (IEA) の試算によると、2017年には約84億台であったコネクテッドIoTデバイスの数が、2020年には200億台以上に増大すると見込まれます。今後数年間でこれらのデバイスがネットにつながり始めるのに伴って、とりわけデータセンターやネットワークサービスにおいて、電力需要が急増することは明らかです。

 

電力消費予測

IEAによると、全世界のデータセンターが現在消費している電力は、世界の総電力需要の約1%に相当し、2020年までにデータセンターのワークロードが3倍になると予想されているのに対して、継続的な効率化の努力によって、関連する電力需要の増加は3%程度に留まる見通しです。一方、データネットワークの電力需要については予測がより困難です。デジタルワールドに欠かせないこれらのネットワークの現時点における消費電力は、総電力需要の1%程度で、その約3分の2をモバイルネットワークが占めているとIEAでは見ています。2021年の時点におけるデータネットワークの電力消費量は、どの程度の効率化が達成されるかによって大きく変動し、最大70%増加する可能性もあれば、最大15%減少する可能性もあります。

こうした今後3~5年の見通しのさらにその先を予測するのは困難ですが、データの爆発的な増加が続くなか、現行のITアーキテクチャーの効率性を漸進的に高めるだけでは、電力需要問題を解決できないことは明らかです。そのため業界をリードするテクノロジー企業各社はその責務として、パラダイムを刷新する革新的なソリューションの開発を求められています。

短期的な対策として、HPEなどの大手テクノロジー企業は、既存のITアーキテクチャーの効率化に取り組む一方で、より持続可能な電力供給源への移行を進めています。HPEの場合は2025年までに、製品ポートフォリオの電力効率を大きく改善 (2015年のベースラインから30倍効率化) するとともに、消費電力の50%を再生可能エネルギー源から調達することを目指しています。また他の大手テクノロジー企業も同様のイニシアチブを発表しています。

 

従量制ITモデルとエッジコンピューティングによる効率化

テクノロジー企業各社は、IT運用の効率化に役立つサービスの提供も始めています。今日では多くの組織でハイブリッドITの導入が進められており、レガシーなIT、クラウドベースのIT、オンプレミスシステムなどが混在する広範なITインフラストラクチャが構築されています。IT部門にとって、こうしたハイブリッド環境を運用しながら、新たなデジタルイニシアチブの立ち上げを支援するのは決して容易なことではありません。そこで注目されているのが従量制アプローチの活用です。従量制モデルの場合は、実際に消費したITサービスやリソース分の料金しか支払う必要がなく、さらにバックアップなどの日常業務をITサービスプロバイダーに委ねることができ、またコストや時間のかかるIT機器関連の設備投資も不要になります。

このアプローチは、今日の企業が抱えている、電力、設備、およびリソースの効率化に関する課題を大きく軽減することが可能です。一例として、天然資源保護協議会 (Natural Resources Defense Council) の報告によると、大多数のサーバー (80%以上) が十分に活用されておらず、何の作業も行っていない間にもかなりの電力を消費しています。IDC社の調査によると、信頼できるITパートナーを利用してインフラストラクチャ構成を最適化することで、IT部門は平均7万5,800ドルのコストを削減できます。

同様に、エッジコンピューティングも電力/冷却要件の軽減に貢献します。エッジコンピューティングは、膨大なマシンベースのデータをデータソースに近い場所で実用的なインテリジェンスに変換することにより、IoTデバイスによるデジタルトランスフォーメーションを加速します。エッジコンピューティングを活用すれば、比較的低速の接続を介してデータをデータセンターに送信して処理し、結果を現場に送り返す必要がなくなります。

これらの新しいIoTテクノロジーは、さまざまな業界にわたって、新たなレベルの効率化を追求する機会も提供します。一例として、今日では多くの製造集約型企業がビッグデータ分析を行うことで、重要な機械や設備の周辺に設置されたセンサーから生成される絶え間ないデータストリームを有効活用しています。こうした分析を通じてメンテナンスの必要性を正確に予測することで、ダウンタイムの防止や運用コストの削減が可能になります。同様に多くの都市でも、配電網や建造物の効率性や信頼性の向上を目的として、自動制御と測定テクノロジーによるモダナイズが推進されています。

こうしたデータを多用するテクノロジーの普及に伴って、膨大なデータを処理し有益な情報を得るための、より高度なテクノロジーへのニーズも高まっています。将来的には、データの真の価値を引き出すためにエクサスケールのパフォーマンス (毎秒1,000兆回の演算能力) が要求され、現在最速のスーパーコンピューターの100倍高速で電力効率にも優れたマシンが必要になると予想されます。

現在、米国、中国、EU、日本などで多くの企業がエクサスケールのテクノロジーの開発に取り組んでいます。こうしたイノベーションの1つであるHPEのメモリ主導型コンピューティングは、プロセッサーではなくメモリをコンピューティングプラットフォームの中心に据えることで、これまでにないレベルのパフォーマンス、効率性、および柔軟性の実現を可能にします。  一例として、HPEの研究プロジェクトであるThe Machineは、気候科学、癌研究、AIなどの分野における複雑なプロセスに対応できる高い処理性能を備えている一方で、消費電力は現在達成可能な演算処理あたり消費電力の1%程度に抑制される見通しです。

 

注目の研究開発

現在多くの企業が、コンピューティングアーキテクチャーやプロセスの見直しに取り組んでおり、実際の作業量に比例して電力を消費する、従来のものとは抜本的に異なるテクノロジーの開発が進められています。こうした目的で進行中の主な研究開発には、以下のようなものがあります。

不揮発性メモリ (NVM): 磁気抵抗RAM (MRAM) などの先進的なテクノロジーは、アイドル時には電力を一切消費せず、現在ほとんどのコンピューターアプリケーションで使用されているメモリであるダイナミックRAM (DRAM) よりもはるかに電力効率に優れています。DRAMは揮発性メモリであるため、電力障害に対して脆弱で、電力がなければ内部に格納されている情報を保持できません。そのためDRAM上のデータを保護するために膨大な電力が消費されています。これに対してMRAMは不揮発性であるため、電力障害に影響されることがありません。
 
フォトニクス: 電子 (電気的リンク) ではなく光子を使用するこのテクノロジーは、微小レーザーを使用することで、光ファイバーを介して従来の数百倍のデータを送信できます。このテクノロジーを採用することで銅線が不要になり、システムの電力/冷却要件が大幅に軽減されます。またこれらのファイバーは非常に細いためスペース効率にも優れており、物理的な設置も容易になります。
 
Gen-Z: コンピューティングに関するこの新しいオープンエコシステムは、コンピューティングアーキテクチャーに制約されることなく、アプリケーションのニーズに応じて、コンピューティングリソースとメモリリソースを個別に拡張することを可能にします。そのため、例えばより多くのメモリ容量を搭載するためだけにCPUをシステムに追加する必要がなくなり、余分なコンポーネントによる電力消費を回避できます。

現在、さまざまな経歴を持つ技術者や問題解決者が力を合わせて、新たな次元のパフォーマンスと効率性の実現を目指して、コンピューティングアーキテクチャーの再構築に取り組んでいます。将来的にはワークロードの処理時間が大幅に短縮されて、AIやビッグデータ分析などのイノベーションの利用がより一層拡大すると予想されます。コンピューティングパワーの増大はIT業界自身の変革をも促し、疾病の診断や気候変動の緩和といった、より複雑な課題への取り組みも促進されると思われます。こうした理由により、我々は全力を挙げて新たなテクノロジーの実現に取り組んでいます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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