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2020年1月17日

ドローンの交通渋滞の回避: 航空交通管制は最終的に統合されるのか

空は混雑しつつあり、商用と娯楽用両方の無人航空機システムが簡単に入手できるようになったことから状況は悪化していますが、そうしたマシンの監視と管理を行うテクノロジーのおかげで空の安全が保たれています。このような状況の中、標準化されたプロトコルが問題の解決に大きく貢献する可能性があります。

50年前、アポロ11号の乗組員(Neil Armstrong、Buzz Aldrin、Michael Collins)が太平洋上に着水したとき、Mike Sanders氏は畏敬の念と期待を抱きながらその状況を見守っていました。

人類が月に上陸し、地球に安全に帰還したときに飛行の歴史は大きく変わりました。そして現在テキサスA&M大学コーパスクリスティ校のLone Star UAS Center of Excellence & Innovationを率いる、当時7歳だったSanders氏は大きな影響を受けました。

Sanders氏は当時を振り返り、自分自身がNASAと働く日が、ましてや飛行の歴史の新たな一歩に携わる日が来るとは思ってもみなかったと述べています。しかし今年、同氏は安全で効率的な無人航空機システム交通管制(UTM)プラットフォームを構築するという、今の時代の中で最も重要な航空プロジェクトの1つで中心的な役割を果たすことになりした。 

テキサスA&M大学コーパスクリスティ校のLone Star UAS Center of Excellence & Innovationとそのパートナーのメンバーは、8月にNASAの科学者やエンジニアと連携し、高層ビルが立ち並ぶコーパスクリティの5つのエリアで22機の小型のドローンとデジタルドローンを飛ばしました。この低高度テストにより、低高度ドローンの交通管制を担う全国規模のシステムの構築に何が必要なのかを明らかにするための5年間の取り組みが完了しました。

これについて、直近のテストフェーズの重圧から解放されたSanders氏は、次のように述べています。「私たちにとって、これはアポロが帰還したときのようでした。1969年7月24日にArmstrong、Aldrin、Collinsの乗るアポロが着水し、航空の新たな時代の幕開けが告げられましたが、それから50年が経ち、私たちはこれらの重要なテストで得た情報を基に今から次世代の無人飛行を推進していきます」。

 

未来を思い描く


ドローン向けの航空交通管制システムを構築する取り組みほどタイムリーなものはありません。私たちの多くは、世界中の戦場を飛び回る軍事用の無人航空機や自分たちが住む地域の上空を飛ぶ娯楽用のドローンを想像しますが、より有益な商業的応用のビジョンが公共の場で安全に使用できるドローンの開発に対する関心を高めています。

たとえば、Google社の親会社であるAlphabet社が所有するWing Aviation社は最近、連邦航空局(FAA)から消費財を定期的に配送するドローンの使用開始の許可を得ました。その一方、Amazon社は、「今後数か月以内に」ドローンによるオンライン注文品の配送を開始できると述べています。また、ドローンのように飛び回って作物授粉を支援したり、捜索救助活動や監視を行ったり、高解像度の天候、気候、環境モニタリング機能を提供したりするRoboBeeも話題になっています。さらにドローンは、風車のタービン翼などの超高層構造物の構成要素を短時間で検査するために使用されているほか、報道機関もヘリコプターに代わる安価な手段としてドローンを活用し、最新の交通状況、自然災害、警察活動などのあらゆる情報を発信しています。そして警察自体も犯罪現場の特定、令状の執行、危険性の高い車両の停止、緊急電話の対応などにドローンを活用しようとしています。

 

可能性はほぼ無限にありますが、これが、米国で使用登録される商用と娯楽用両方のドローンが早ければ来年に控えめに見ても数百万機に達すると一部のエキスパートが予測している理由の1つになっているのは明らかです。

ドローンが農業、金融サービス、医療、保険、製造、輸送などの業界で人が苦労することの多いさまざまな課題の解決に役立つようになる世界を思い描いている多くの人にとっては素晴らしい時代ですが、ドローンが増えると、ドローン同士が衝突したり、ドローンが落ちてきて屋根を突き破ったり、道を歩く人の頭に当たったり、下手をすれば旅客機の安全を脅かしたりしないかと思っている大多数のコンシューマーが頭を抱えることにもなります。

これについて、AirMap社(無人航空機向けの航空サービスプラットフォームを提供する米国のスタートアップ企業)の創設者であり、会長を務めるBen Marcus氏は、次のように述べています。「これは重要な問題です。ドローンの利用は急激に増えていますが、ドローンは有人航空機と同じ混雑した低高度の空域を飛行します。最近ドローンがガトウィック、ヒースロー、ニューアークといった世界中の空港に侵入して数百件のフライトのキャンセルや遅延を招き、数千人の乗客に影響をもたらした事件は、ドローンを領空域に安全に統合するためのソリューションの迅速な開発が不可欠であるということを示しています」。

FAAは、パイロット、市民、警察などから毎月無人航空機システム(UAS)に関する100件超の報告を受けていますが、その数はこの2年間で大幅に増加しました。

 

自動化が重要になる


ドローンの交通管制のための効率的なシステムを構築する方法について話し合った場合、民間航空機に指示を出すのと同じように、人間の管制官が管制塔でフライト中のパイロットと絶えずコミュニケーションを取りながらモニターを見守っているような場面を思い浮かべる人もいるのではないかと思います。ただしUTMの場合、常に上空を飛び回っているであろう商業目的と娯楽目的のドローンの数を考えると、システムはより一層自動化されたものになる可能性があります。

これについて、Marcus氏は次のように述べています。「パイロットと航空交通管制官の役割は統合されつつあります。航空交通管制の進歩で大きな役割を果たしたのはレーダーでしたが、ドローンの場合は自動化システムが重要になるでしょう。必要な処理の量は人間には対応できないほど膨大になると予想されるため、空域を飛ぶ機体の数を安全に増やすための高度に自動化された航空交通管制システムが必要です」。

ドローンに関連する自動化の研究は、現在その多くが官民一体で進められており、今後NASAとFAAが一般的な安全指針の定義で中心的な役割を果たすようになる一方、UTMの構築に関わる実際の作業の大部分は、この分野で競争を繰り広げる革新的な企業に委ねられることになります。

 

実現技術


ドローンの研究と投資は当初、人間がほとんど、またはまったく介入することなく、スマートなマシンがお互いやそれぞれのコントローラーとやり取りし、状況を把握してルートを進めるようにするキーコンポーネントの提供で新興企業と既存の企業が競い合っている、自動運転車の状況に酷似していました。

自動運転車と同様、ドローンにも地上のオペレーターとの通信を可能にする内蔵メカニズムだけでなく、飛行経路での他の航空機や障害物(鳥)との衝突を避けるのに役立つセンサーなどの検知テクノロジーが必要です。また、データを送信したり交換したりするときには、それぞれを識別するコードも必要になります。さらに、ドローンを監視して支援し、指定された航空路と政府が許可した高度でドローンを飛ばし続けるための基盤となる人工知能や機械学習も必要です。

エキスパートは、通信速度の向上とレイテンシの問題の解消に貢献するであろう5G通信の登場により、こうした機能の多くが進化していくと述べています。また、クリティカルなデータやアプリケーションの保存と処理が、リモートデータセンターではなくローカルのサーバーで行われるエッジコンピューティングにより、UTMシステムがさらに効率化される可能性もあると指摘しています。

この分野の権威のほとんどは、いずれ業界で効率的な航空交通管制を可能にするクリティカルシステムが提供されるようになると考える一方、今もなお進歩を妨げたり遅らせたりする企業間の競争に頭を悩ませています。

 

オープン標準の役割とは


PX4のオープンソースソフトウェアをベースとするドローンのオペレーティングシステムを提供する、スイスに拠点を置くスタートアップ企業のAuterion社の共同創設者であるKevin Sartori氏は、独自仕様のテクノロジーを有する多くの企業が新たな1,000億ドル規模のドローン市場のシェアを争うようになり、その問題として、すべての部品技術で同じ通信プロトコルが使用されない可能性があると述べています。

そしてこれについて、同氏は「数十のドローンメーカーが登場し、この領域は大きく分断される可能性がある」と警告したうえで次のように語っています。「ドローンから地上への通信プロトコル、そしてUTMシステムが互換性を持つよう、同じ言語でやり取りするUTMシステム間の通信プロトコルを実装することが課題です。オープンソースは誰かが所有するものではないため、いずれグローバルなコミュニティでUTMシステムのパフォーマンスを最大限まで高められるようになると私たちは考えています」。

またAuterion社とGE Aviation社は、商業用のドローンを適切に運用できるようにしたいと考えているドローンメーカーやドローンオペレーター向けのハードウェアおよびオープンソースソフトウェアソリューションを共同で売り出すことを最近発表しました。そしてそれとは別に、Auterion社は最近、ドローン業界におけるPX4のエコシステムと互換性標準のイノベーションを推進すべく、米国国防総省のある部門と200万ドルの契約を締結しました。

興味深いことに、Auterion社が生まれた国であり、中立性で知られるスイスも主にオープン標準を中心としたUTMのイノベーションの促進で他国の一歩先を行っています。また今年、AirMap社と航空航法サービスプロバイダーのSkyguide社は、200人のオペレーターを現在開発中のドローン向けのSwiss U-space飛行情報管理システムのテストに参加させました。なおこのシステムは、2020年の前半に導入される予定です。

 

官民の連携の必要性


米国では、FAAがある声明において、複雑な運用に必要とされる安全要件を満たす「強力かつ柔軟な」規定、そして安全な無人機の運用の実現にも寄与するシステムインフラストラクチャの機能と要件の2つの要因が高度なドローンの普及に貢献すると指摘しています。

規定の観点からは、FAAは「ビルディングブロックのアプローチ」を追求し、長期間にわたる規則の制定やポリシーに関連するアクティビティに必要な情報を提供するために、コーパスクリスティやそれ以前のネバダ州リノでのテストのような研究を進めていくと述べていますが、その一方で実際の作業は企業に委ねています。

これについてFAAは、「このアプローチは小規模なUASの迅速な導入、さらにはこのような新しい航空機を特殊な通信要件のある従来の航空機のように扱うことで利用の拡大やイノベーションを妨げたくないという大規模なコミュニティの要望に合ったものになっている」と語っています。

AirMap社のMarcus氏は、無人航空機交通管制システムの開発に必要なテクノロジーの多くは、すでに航空業界や通信インフラストラクチャ内に存在すると述べています。

そしてこれについて、同氏は次のように語っています。「国のUASレジストリやリモートID機能などの基本的なUTM機能を従来の(航空交通管制)システムに統合する標準を策定するために、政府と業界が調整を図らなければなりません。私たちは、官民の連携がその実現につながる正しい道筋であると考えています」。

 

ドローンの交通管制: リーダーのためのアドバイス

 

  • ドローンは登場したばかりのものではなく、近いうちにあらゆる場所で利用されるようになり、交通が問題になってきます。
  • 民間のテクノロジー企業は、FAAが決定を下す前に先頭に立って航空交通の問題の解決策を見出さなければなりません。
  • すべての関係者から同意を得ることが重要です。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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