完全に普及し、変化を遂げつつあるデータセンター

私たちこれまで、「次に起きること」についてのさまざまな予測を検証してきましたが、もうその必要はありません。データセンターは広く普及し、これからはサポートを必要とするサービス、そしてそれらのサービスとビジネスの統合方法が変化していくはずです。

新しい年を迎え、今後のデータセンターの動向に関する予測が世界中で行われてきましたが、それらは非常に曖昧なものから具体的なものまで幅広く、すべてに共通して見られるポイントはごくわずかしかありません。

私たちは、誰もが2018年のデータセンターで重要になると同意するテクノロジーを明らかにするために約50の予測を検証しましたが、その結果として、もはやすべてがクラウド、つまり他社のデータセンターに移行されることはないと見られていることがわかりました。大企業は固有のニーズに対応するために独自のクラウドを構築しており、それに関連するテクノロジーの増加は、データセンターが消え去るのではなく、更新と改善によって柔軟性を増しつつあるということを意味しています。

こうした情報を公開している主要な企業の予測は、一致している部分が驚くほどわずかしかなく、明確になっているカテゴリでは、データセンター事業者が今後もファシリティの最新化を継続するとの予測がなされている一方、事業者がファシリティの構築と最新化を進めると同時に必要な電源/冷却機能のモジュール化を目指すようになるといったように、それ関連する予測のいくつかはかなり具体的なものとなっています。

ただし、データセンターテクノロジーに関する主な予測は、以下に示すようにいくつかのカテゴリに分類されます。

 

データセンターセキュリティのために予算が再配分される

データセンターのITマネージャーにとってすでに最優先の問題であるはずのセキュリティは、事実上最大の懸念事項であり、今後ITスタッフのための追加のトレーニング、セキュリティスペシャリスト (場合によっては最高責任者レベル) の雇用、そしてさらには老朽化したコンピュート機器に固有の問題を緩和するための短期間でのハードウェアの交換に予算が振り向けられるようになる可能性が高いと思われます。

また、セキュリティがパフォーマンス、価値、適合性、そしてタスクに至るまでのあらゆる要素を評価するうえでの1つの基準となる中、オンプレミスとオフプレミス両方のソリューションを強い偏見の目で見てきた企業が現在のITモデルを慎重に再評価するようになることも考えられます。

このような継続的なセキュリティの自己評価がITプラクティスの標準となるのは理想的ですが、歴史が人間の行動のすべてを示しているのであれば、現在の危機を脱した時点で、次の大きな問題が発生するまで再びセキュリティ機能に対する関心が薄れるのではないかと思われます。

一部の企業は、最もセキュアなITプラクティスを維持し、そこに資金を投入することの価値を認識していますが、大多数の企業は信頼性の高いセキュアなIT環境より便宜やコストを優先させており、問題が見つかって修復、または緩和するときに、環境内のセキュリティホールに対するパッチの適用とセキュリティホールの修正を繰り返すという怠慢なアプローチを取っています。

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エッジコンピューティングが拡大を続け、ビジネスの成長と発展を後押しする

エッジコンピューティングは、コンピューティングとサービスの利用者の距離を縮め、エンドユーザーにサービスを提供するための帯域幅の要件を減らします。ストレージの管理に重点を置くエッジテクノロジーは、帯域幅を管理しやすくするだけでなく、ベンダーがリモートの拠点にデータ要求を送信する必要性を減らすと同時に、必要なデータを最も多く使用される場所で簡単に維持できるようにします。

エッジコンピューティングが普及すると、より多くのサポートが必要になります。こうした予測は特にエッジのモノのインターネットデバイスに当てはまり、多くの組織は、すべてを完備したデータセンターからより簡単に展開できるモジュール方式のデータセンタープロジェクトやマイクロデータセンタープロジェクトに至るまで、新たなデータセンターを含むエッジファシリティの構築に注目するようになると思われます。

エッジコンピューティングのデータセンターサポートが下流にもたらす効果としては、クラウドやストレージのセキュリティモデルの変化が挙げられます。これについて専門家は、管理者が単一のビューでプロセス全体を確認および制御できる管理ツールを一層重視する必要があると述べており、システム管理者がエッジから中央までのIT環境を制御し、管理ツールでその追跡と報告を行えるようにすることが目標となります。

また組織は、データの収集時にセキュリティ侵害を防止し、データが外部に漏れないようにする必要があります。欧州連合の一般データ保護規則 (GDPR) では、国際的なデータセンター事業者が今後対処しなければならない問題が重要視されており、(米国のHIPAAやドイツのBundesdatenschutzgesetzなどの地域的な問題と比較して) GDPRの適用範囲が広がる中、それが日常的な業務からコールドストレージへの複雑なデータ移行に至るまでのデータセンター運用の多くの側面に影響を与えるコンプライアンスの課題の最上位に位置付けられています。

一部の予測では、データセンターとその事業者が存続するために変えていかなければならないアプローチが取り上げられています。これには人工知能 (AI) や機械学習 (ML) などのテクノロジーが含まれ、こうしたテクノロジーを「適者生存」のカテゴリに位置付ける予測もあれば、その重要性と可能性の認識の高まりがデータセンターに影響を与えるとする予測もありますが、私の経験では、その間のどこかに現実があるのではないかと思われます。

また、最先端のプロバイダーは自社が提供するAIやMLの機能で差別化を図る可能性がありますが、多くの種類のファシリティでは、顧客から最先端の機能を求められることはほとんどないでしょう。

 

サーバーレスコンピューティングも拡大を続ける

サーバーレスコンピューティングは、多くの予測で最上位かそれに近い順位に位置しています。これは、同じく上位に位置する従量制のITモデルと対になっており、コンシューマーにクラウドをベースとするオンデマンドのサーバーレスモデルを提供することが可能な企業のIT部門は、成長し続けることができると思われます。また、従来のデータセンターがサーバーレスモデルのバックエンドに対応できるという事実は、今後もデータセンターが役に立つということを示しています。私は、多くの事業部門が独自に開発を行えるようになりたいと考えているものの、これまでは従来の中央のIT環境を経由しなければならなかったということに気付きましたが、こうした事実から、サーバーレスコンピューティングをサポートすることに注目が集まっています。

 

マルチクラウドコンピューティングが標準となり、管理およびセキュリティテクノロジーに影響を与える

マルチクラウド環境は拡大を続け、いずれ標準になると思われますが、これは管理とセキュリティの課題が増えることを意味します。こうしたテクノロジーでセキュリティと管理の行き届いたマルチクラウド環境を構築できるようにするツールについての具体的な提言はなされていませんが、マルチクラウドの管理とセキュリティの確保を可能にするツールがなければ、長期間にわたるマルチクラウドの有用性が制限されることになるのは明らかです。

また、マルチクラウド環境とサーバーレス環境を制御することにより、IT部門はシャドーITの拡大に起因する問題により的確に対処することが可能になります。ビジネスユーザーに同じ機能を提供して従来のIT環境を経由しなくて済むようにし、中央のIT部門の支援の下でそれらの機能を管理できるようになれば、ITおよびビジネスオペレーションの効率が向上します。

 

企業のIT環境でハイブリッドITの存在感が増す

クラウドは企業のIT環境の最終形であり、中央のIT環境に終わりを告げるものであると主張する人は多いかもしれませんが、そのような主張を展開する人は、「私の訃報は大いなる誇張だ」というMark Twain氏の言葉について考えてみるべきです。実際のところ、ハイブリッドITは企業のIT環境で強力な存在感を示しており、すべての企業のIT環境の70%に導入されていることが多くの調査でわかっています。さらに、それらの調査から大企業の60~70%がハイブリッドITに対する投資を継続、または拡大する予定であることもわかっており、データセンターにおけるハイブリッドITの重要性を軽視できないことは明らかです。

ソフトウェア・デファインド・データセンターは、今もなお未来のデータセンターモデルであるとみなされており、その結果として、ハイブリッドITが2018年のデータセンターに最も大きな影響を与えるテクノロジーのほぼ最上位に位置しているのは当然と言えます。ストレージテクノロジー、コンポーザブル・インフラストラクチャ、AI、ML、そしてハイパフォーマンスコンピューティングなどの領域で進歩が見られる中、オンプレミスとオフプレミスの機能を融合したテクノロジーの実現が今後データセンター事業者にとっての大きな懸念事項になるであろうことは誰の目にも明らかです。

 

従量制のITモデルがIT部門の投資のプロセスに変化をもたらす

オンプレミスとオフプレミスのクラウドだけでなく、オンプレミスの機器にも従量制のITモデルを容易に適用できるという突然浮上してきたかのような認識は、2018年の流れを大きく変える可能性があります。多くのベンダーは、従来のITハードウェアの購入サイクルより自社の機器のサイクルを大幅に短縮する必要があることを認識しているため、イノベーションのペースは加速し続けると思われます。そして企業は、より効果的かつ効率的にビジネスの問題を解決する新しいテクノロジーへの移行を阻害する要因としてテクノロジーのサンクコストを挙げなくなるでしょう。

 

常に人員が重要

データセンターに関する多くの予測では、基本的な人員の問題に対する認識が示されており、クラウドおよびセキュリティテクノロジーのエキスパートを見つけることが、依然として多くの企業の課題となっています。また、長期間にわたって成功を収めるには、データセンターがユーザーに提供するサービスとテクノロジーを組み合わせ、常に一歩先を行くことがきわめて重要です。

クラウドの導入を成功させるのに必要なあらゆる要素を検討するにあたっては、オンプレミスであるかオフプレミスであるか、またはコンサルタント、ベンダー、あるいはクラウドサービスプロバイダーから提供されるものであるかどうかにかかわらず、セキュリティについて理解することが常に重要となります。

 

2018年に注目すべきデータセンターテクノロジーの6大トレンド

  1. データセンターセキュリティのために予算が再配分される。
  2. エッジコンピューティング (インテリジェントエッジとIoT) が拡大を続け、ビジネスの成長と発展を後押しする。
  3. サーバーレスコンピューティングも拡大を続ける。
  4. マルチクラウドコンピューティングが標準として認知され、管理およびセキュリティテクノロジーの開発を促進する。
  5. 企業のIT環境でハイブリッドITの存在感が増す。
  6. 従量制のITモデルがIT部門の投資のプロセスに変化をもたらす。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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