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2019年4月16日

ブロックチェーンはサプライチェーンのEDIを置き換えることができるか?

ブロックチェーンがB2Bの世界に居場所を見つけるようになると、電子データ交換に使えると考える人がでてきました。

これまでに、ブロックチェーンと同じように喧伝されたテクノロジーはいくつかありました。しかし、熱狂の最中にある分散型台帳テクノロジーへの関心は本物であり、ブロックチェーンの最もよく知られた領域である暗号通貨をはるかに超えて、さまざまな業界で多数の実用例に目が向けられています。

「誰もがブロックチェーンについて検討し、試験的なプロセスを行っています」とMatthias Roese氏は言います。彼はヒューレット・パッカード エンタープライズの製造、自動車、およびIoTに関する主任技術者です。この興味は、ブロックチェーンテクノロジーに対して計画された支出に反映されています。この額は81%の複合年間成長率で成長を続けており、IDCのブロックチェーン戦略の研究部長であるBill Fearnley氏によれば、2021年には全世界で100億ドルに達すると見積もられています。

ブロックチェーンがインパクトを与える可能性が高い領域の1つはサプライチェーンです。特に電子データ交換 (EDI) に代わって関係者の間で迅速かつシームレスに契約情報を送信できるようになる可能性があると考えられています。Fearnley氏は「サプライチェーンは決定的な使用事例」であると、ボストンで開催されたIDC Directions 2018カンファレンスで述べています。

 

リスクを減らし、可視性を高める

一度記録されたブロックチェーンのトランザクションの変更に対する不変性は、サプライチェーンのイベントの完全性を保証します。これは製造企業にとって重要なメリットです。製造プロセス中に何が起こったのかを正確に記録することで、製品の品質問題のトラブルシューティングを行う際に大きなメリットが得られます。さらに、不正や窃盗を防止する効果的なツールを手にすることもできるでしょう。  

「ブロックチェーンがあれば、買い手と売り手の双方で、出荷から受領までのプロセスを視覚化して管理することが容易になり、最終的に不正のリスクを減らすことができます」とSAP Ariba社の最高デジタル責任者であるMarcell Vollmer氏は言います。同氏によれば、ブロックチェーンによる完全性の保証は、原料の供給源に関する知識が不可欠な業界のサプライチェーンで役割を果たすことになります。「商品の来歴について透明性と可視性を得ることができます。消費者は自分が購入しようとするものについて知りたいと考えているのです」と彼は言います。

商品の来歴は、ダイヤモンドの採掘やパーム油の生産など、異なる業界で重要な役割を果たすとVollmer氏は説明します。商品にパーム油を使用する多くの会社では、材料が年少者の労働ではなくフェアトレードを通じて持続可能な方法で生産されたことを確認したいと思っています。パーム油を生産農場から追跡することで、ブロックチェーンテクノロジーは、パーム油を含む商品の消費者に対して道徳的な保証という重要な情報を追加できると彼は説明します。   

同様に、ダイヤモンド産業では、一部の宝石は、環境や雇用に関する法律に違反した鉱山で生産されています。Vollmer氏によれば、合法的な鉱山で生産されたダイヤモンドに肉眼で見えない番号を付けて、ブロックチェーンの分散型台帳に記録することで、鉱山から宝飾品に至るまでの宝石の来歴を確立できます。

ブロックチェーンの基盤となる完全性は、他の領域でもメリットを得られる可能性があります。「データを改善すると分析結果も向上します」とFearnley氏は言います。「それに加えて、AI、機械学習、不正分析を取り入れることができます」。企業の不正管理など、分析に重点を置く分野では、今後数年のうちにブロックチェーンテクノロジーの採用が進むことが考えられます。

 

コストに関する考察

ブロックチェーンのもう一つの有利な点は、接続の確立と情報の移動をすばやく実行できることです。現在のB2B統合では、2つの当事者がEDIを実行する前に関係を確立する必要がありますが、ブロックチェーンでは事前に関係を確立する必要はありません。「B2B統合にブロックチェーンを使用すると、アジリティを高めることができます。現在、B2B統合では、否認防止や承認といった問題の解決方法を提供するために、少なくとも技術レベルで両当事者が互いを認識することが求められます」とForrester Research社の主席アナリストであるHenry Peyret氏は『The Future of B2B Integration (B2B統合の未来)』というレポート (2017年9月29日発行) に書いています。「Forrester社の予測によれば、今後3~5年で、ブロックチェーンテクノロジーは動的なエコシステムの構築時にアジリティを高めるために使用される可能性があります」。

EDIでは、追跡記録を20年間にわたって構築しているという信頼性がありますが、古くからあるこのテクノロジーの主な弱点はコストです。「テクノロジーが置き換えられる論理的な根拠があるとすれば、まさにブロックチェーンがより安価であるということでしょう」とFearnley氏は言います。

しかし、EDIからブロックチェーンへの移行が決まっていると誰もが言っているわけではありません。「長年にわたって、EDIを倒すための数多くの競合テクノロジーが現れましたが、そのすべてが失敗に終わりました。EDIでは求められることをかなりうまく処理できるからです」とSimon Ellis氏は言います。彼はIDCのサプライチェーン戦略のプログラムバイスプレジデントです。ただし、「物事をこれまで以上に安全かつ迅速に行うことができれば、全員がメリットを得られます」と彼は付け加えます。

これについて、SAP Aribaでは2016年に、ロンドンを拠点とした金融テクノロジー企業であるEverledger社とのパートナーシップを通じてブロックチェーン戦略を実装し、ブロックチェーンの機能を同社のAriba Networkに拡張しました。ただし、Vollmer氏によれば、ブロックチェーンテクノロジーがなくても、Ariba NetworkでEDIを置き換えることができます。Ariba Networkには一回の登録で済むというメリットがあり、その後は数百万ものビジネスパートナーとつながることができるからです。これはeBayのようなB2Cプラットフォームと似ています。そこでは、一度登録すればプラットフォーム上の誰とでも売買を行うことができます。Vollmer氏によれば、このような仕組みは、取引する企業が互いにつながるための新たな発展段階ですが、より重要な点は、ビジネスパートナーを見つけて連携し、ビジネスネットワークで新しいチャンスを共同で創出できることです。「EDIはブロックチェーンが普及する前に衰退していく可能性があります。セキュアなトランザクションはすでにあるため、ビジネスネットワークは非常に強力な役割を担うようになるでしょう」とVollmer氏は言います。

ブロックチェーンテクノロジーは、EDIを置き換えないとしても、EDIテクノロジーを機能の面で改善し、より経済的なものにする可能性があります。「EDIは消えることはないでしょうが、アジリティを高めるために発展する必要があります。さらに、増加し続けるボリュームによるライセンスや運用のコストを減らしていく必要があります」とForrester社のPeyret氏は語っています。

 

ブロックチェーンの発展

IDCでは、2021年におけるブロックチェーンの採用率を以下のように予測しています。

  • ファイナンシャルサービス: 35% 
  • 流通およびサービス: 25% 
  • 製造業および資源: 20% 
  • 公共機関: 10% 

出典: IDC

 

適切なブロックチェーンパートナーを見つける: リーダーのためのアドバイス

あらゆるプロジェクトと同様に、ブロックチェーンの実装には、固有のテクノロジーと統合の要件があります。「最初の段階は、試験的なプロセスを通じてテクノロジーの理解を深め、管理された環境下でどのように動作するかを確認することです」とHPEのRoese氏は言います。ブロックチェーンの採用を目指す組織は、基盤となるインフラストラクチャとブロックチェーンテクノロジー自体についてのアドバイスを提供できるパートナーを見つけなくてはいけません。Roese氏によれば、パートナーとの関係構築は即応性評価から始めるべきで、以下の要素についての対話が不可欠です。

  • インフラストラクチャ: これには、従来型のITインフラストラクチャ、プライベートのクラウドインフラストラクチャ、パブリックのクラウドインフラストラクチャの組み合わせが含まれます。 
  • 設計、構築、および実行: エキスパートとパートナーからのアドバイスを受けることが鍵となります。
  • 継続的な戦略的パートナーシップ: ソフトウェアとプラットフォームのプロバイダー、アドバイザリやシステムインテグレーターが重要な役割を果たします。

編集者注: IDCのBill Fearnley氏はこのインタビューの後に逝去されました。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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