2019年4月16日

ブロックチェーンエコシステムビジネスモデル: 適応するのか成り行きに任せるのか

ブロックチェーンテクノロジーの登場に伴って新しいエコシステムビジネスモデルが生まれています。パートナー、競合企業、および顧客との迅速かつ反復的な統合がビジネスにどのように役立つのかをご確認ください。

新たなテクノロジーが登場すると、その結果の1つとして障壁が取り除かれ、競争環境が根本から変化しますが、今日では、ブロックチェーンによってエコシステムビジネスモデルに不可欠な新しいビジネスが生み出されています。このような新しいモデルでは、参加者が顧客、パートナー、または競合企業のいずれであるかどうかにかかわらず、特定のビジネス成果に重点を置く共生コミュティを顧客ごとに(そしてさらにはトランザクションごとに)緊密に統合したり、分割したりすることが可能です。

エッジからクラウドまでのハイブリッド運用モデルでこうしたことが行える機能(エコシステム全体を完全に可視化してコミュニティを思いのままに、迅速かつ反復的に変えることができる機能)は、まさに垂直統合されたグローバル企業の基本的なビジネスプロセスのためにあります。

Ronald Coase氏は、1937年に「The Nature of the Firm」というタイトルの論文を発表しました。同氏はその中で、企業が何らかの物を自社で生産するのか市場から調達するのかを決定する際に検討する経済的要因について説明していますが、この論文の発表から数十年にわたり、テクノロジーはこうした決定に対する影響力を強めてきました。

そして現在では、ブロックチェーンテクノロジーが登場し、企業や個人などのグループが短期間のうちに世界規模のコンソーシアムを形成して、共通の事実に基づく情報を共有することが可能になりました。

 

管理医療の観点から考える

ではこれは、「企業の本質」をどのように変えるのでしょうか。ここでは、私が偶然にも医師だったあるイノベーターとお酒を飲みながら交わした会話を紹介しましょう。

この医師は、1,100万人以上の医療保険加入者と20万人の職員を抱え、広範な地域で700億ドル超の事業収益を上げている、アメリカ最大級の統合管理ケアコンソーシアムで働いています。この医師との会話では、全体的なアプローチとして予防的ケアの観点から、広範な地域の1,100万人以上の加入者の生涯にわたってどのようにケアを提供するのか、どのようなサービスを提供する必要があるのか、市場から何を調達する必要があるのか、このコンソーシアムはどのように形成されているのか、どれだけのコストがかかるのか、といった質問を投げかけました。

ITの観点から見てみると、この管理ケアコンソーシアムは賭けに出ており、今までに記録システム、エンゲージメントシステム、標準化されたデータシステム、サプライチェーン、ERP、およびその他の統合システムに数百億ドルの資金を投じています。参入障壁についてじっくり考えると、すべてが生涯にわたるケアを実現して市場を支配するための情報の共有を可能にすることを念頭に置いて設計された、巨大な統合システムの集まりほど手ごわいものはありません。

しかし、私がブロックチェーンベースのビジネスモデルについて説明したところ、その医師はすぐにビジネスモデルを改善できる可能性があることを理解し、次のように考えました。コンソーシアムの大規模なITインフラストラクチャに(多数の)プロバイダーを統合するには、かなりの時間と資金が必要ですが、管理ケアコンソーシアムが、エコシステムビジネスモデルに低コストで迅速にパートナー、競合企業、および患者を統合できればメリットがもたらされ、新たなプロバイダーやサービスをより短時間でコストをかけずに売り込むことが可能になります。

 

サプライチェーンエコシステムに目を向けて業界全体を見渡す

このような変化は、複数の業界で顕著に見られます。サプライチェーンは、最も広く普及しているブロックチェーンのユースケースの1つですが、ベンダーがサプライチェーンのエコシステムによって短時間で新たなサプライヤー、顧客、ベンダーを追加できた場合のメリットについて考えてみてください。柔軟性を高めるとともに、チェーンだけでなく、貿易金融システムに至るまでをリアルタイムで可視化できれば、プロセス全体を円滑に進めて高い競争力を獲得し、コストの削減、より緊密な統合、顧客満足度の向上といった成果を得られます。

これは、ブロックチェーンのビジネスの側面を重視する人にとって魅力的であるというだけでなく、新しいサプライチェーンのすべてに関して概念実証を行えるようになることを意味します。たとえば、金融サービス業界では、かなり前から既存のビジネスモデルに大きな変革をもたらすブロックチェーンとその機能の価値が認識されており、ある推計によると、この業界のブロックチェーンに対する投資は最も多く、全世界で数十億ドルに達します。また、ベンチャー投資家と銀行は、金融テクノロジー関連の投資全体の40%をブロックチェーンの新興企業に割り当てています。

 

ブロックチェーンの未来は予測できないものの魅力にあふれている

とはいえ、一般的にブロックチェーンテクノロジーはまだ初期段階にあり、すべての概念実証環境の約80%で使用されている現在の一連のブロックチェーンプラットフォーム(Ethereum、Hyperledger、R3 Corda)が、将来主力のプラットフォームになるのか、それとも新しい何かが登場するのかどうかは誰にもわかりません。このような不確実性と規制要件がまだ定められておらず、本番グレードのすぐに展開可能なブロックチェーンアプリケーションのライブラリがないという事実が、将来を魅力的であると同時に予測できないものにしています。

私たちがビジネススクールで教わったように、テクノロジー戦略はビジネス戦略に従うという事実がある一方、テクノロジーはこれまで、非常に短期間のうちに変化したり、企業の競争に大きな影響を与えたりすることがなかったというのも事実です。私は、電話が電報に取って代わった時代を生きてはいませんが、1990年台の初めにグローバルな戦略コンサルティング企業のCIOとして、「Web」と呼ばれる新しいものが生み出されるのを目の当たりにしました。その当時、グローバルソーシングを活用するグローバルに統合された企業は珍しく、その将来性は実証されていませんでしたが、インターネットが活用されている現在では、すべての新興企業の事実上の標準モデルとなっています。

25年経った今では、非常に画期的なブロックチェーンテクノロジーがコンソーシアムを取り巻いており、それが競争やビジネスにどのような変化をもたらすのかは未知数ですが、物事は進化します。ブロックチェーンは大きなエネルギーを秘めており、新たなコンソーシアムが形成されては消え、再び作り出されています。ブロックチェーンテクノロジーはこれまでにないスピードで普及しつつあるため、ビジネスモデルを破壊して日常的なビジネスの中で再構築することが必要です。

 

ブロックチェーンビジネスモデル: リーダーのためのアドバイス

  • ブロックチェーンは、サプライチェーンの管理に根本的な影響を与えます。
  • このテクノロジーは、大規模エンタープライズ環境における新しい機能の統合方法に変化をもたらします。

このような変化を取り入れれば、ビジネスの競争力が向上します。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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