2018年6月20日

製造プロセスに変革をもたらす拡張現実とIoT

多くの製造業者が、競争力を強化するために、ARやIoTセンサーなどのスマートエンジニアリングテクノロジーの調査、または導入を積極的に進めています。

ラピッドプロトタイピングと拡張現実テクノロジーにより、製品を市場に投入するまでの時間を大幅に短縮できるようになった製造業者も増えつつあります。

Hewlett Packard EnterpriseのスマートエンジニアリングコンサルタントであるAlfred Pargfrieder氏によると、多くの製造業者が、競争力を強化するために、拡張現実(AR)やIoTセンサーなどのスマートエンジニアリングテクノロジーの調査、または導入を進めています。

ラスベガスで開催されたHPE DiscoverイベントでARとリンクさせたスマートエンジニアリグプロセスのデモを行ったPargfrieder氏は、製造業者が競争力を維持するには、「エンジニアリングプロセスを短縮することが重要である」と述べています。企業が新たな製品を設計するにあたっては、HPE独自の予測メンテナンス製品スイートをはじめとする最新のツールが役に立ちますが、同氏によると、ThingWorx産業用IoTプラットフォームなどの製品も機械に必要なメンテナンスを明らかにするうえで大きな効果を発揮します。また、ARシステムやIoT接続センサーといった、製品のプロトタイプを作成するときに使用する同じようなツールの多くも、製造業者に固有の機器の予測メンテナンスに役立てることができます。

同氏によると、いくつかの製造業者は、スマートエンジニアリングテクノロジーによって製造に必要な時間を大幅に短縮しており、ある自動車メーカーは、3~4年かかっていた新しいモデルの設計を1年で行えるようになりました。また、ある航空機メーカーは、飛行機1機にかかる設計期間を2~4年短縮することに成功しています。

IDC社によると、多くのアナリストが今後数年でスマートエンジニアリングプロセスの一部が大きく進化し、ARとそれに関連する仮想現実(VR)の市場が拡大すると見ています。そして今年、VRとARに対する支出の総額は、2017年の約91億ドルから178億ドルにまで増加すると予想されています。

IDC社は、VRとARに対する全世界の支出が2021年まで年平均成長率98.8%で推移すると予測しています。

今後短期的には、VR関連のゲームがこの数字を押し上げる要因になると思われますが、IDC社が実施した別の調査では、VRおよびARシステムに対する民間支出が2021年まで3桁のペースで増加するとの予測がなされています。そして多くの研究者は、VRとARに対する今年の支出額が最も多くなると予想される民間部門として、流通とサービスおよび製造と天然資源の2つを挙げています。

スマートエンジニアリングプロセスにより、製造業者は製品を出荷するまでの時間を短縮するとともに、製品の出荷前に潜在的な不具合を特定することでかなりのコストを削減できる、と同氏は述べています。また、ARとIoTセンサーを使用することにより、エンジニアは製品の「内部で何が起きているのかをコンピューター上で確認できる」と付け加えています。

スマートエンジニアリングプロセスは、コンピューター支援設計から始まり、その後コンピューター支援エンジニアリングによる応力シミュレーションに移行します。そしてそれが完了すると、製造業者は3Dプリンターを使用してプロトタイプを作成し、ARでプロトタイプを検査してから、IoTセンサーでテストを行うことができます。

Pargfrieder氏は、HPE Discover イベントで自転車のプロトタイプの作成とテストに使用するテクノロジーのデモを行いました。自転車に取り付けられた一連のセンサーは、サドル、ハンドル、車輪などの部品の性能と安定性をテストすることを念頭に置いた設計となっており、エンジニアは、Epson社などのベンダーのARヘッドセットを使用して自転車にデジタル画像を重ね合わせ、顧客に自転車を出荷する前に修正すべき応力点などの問題を確認できます。

タブレットなどのハンドヘルドデバイスを使用する場合と比較して、ARグラスによる製品の検査にはいくつかのメリットがあり、設計またはメンテナンスエンジニアは、手で直接製品や機械に触れ、グラスから送られる動画を見ているチームのメンバーに潜在的な問題がある部分を伝えることができます。

Pargfrieder氏は、ARとラピッドプロトタイピングが未来の製造を象徴するテクノロジーになると予想するとともに、ARグラスが小型化されて使いやすくなり、目に入れるコンタクトのようなレンズが開発されることを期待しています。

そして同氏は、「多くの領域でARが活用されるようになる」と述べています。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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