2019年4月16日

人工知能: 焦点は導入と新しいユースケース

多くの企業にとって、AI戦略の入り口は引き続きインテリジェントチャットボットとなるはずです。ただし、その他のAIのユースケースも、さまざまなチームと業界によって模索されるでしょう。ここでは、2019年にAIの分野で注目すべき変化を紹介します。

企業による人工知能の使用は、向こう1年で大きく前進するはずです。AIと、機械学習などの関連テクノロジーの導入が急速に進むことが予想されます。また、さまざまな部署や業界で実験が行われるでしょう。  

「企業は、幅広い設定とユースケースでAIの実験を行うはずです」。ヒューレット・パッカード ラボのシニアリサーチマネージャーであるNatalia Vassilievaはそう話します。ただし、多くの試行錯誤を必要とするため、テクノロジーの活用は簡単ではないことも予測されます。「しかし、最後には成功するでしょう」。Vassilievaは言います。

私たちは、さまざまなAIの専門家に2019年の予測を聞きました。以下に、その内容を紹介します。

 

成長率と支出

大半のリサーチアナリストは、AI業界の成長を見込んでいます。Gartner社の予測では、AIによるグローバルな事業価値 (カスタマーエクスペリエンスの価値、新しい収益、コスト削減を含む) は2019年に1.9兆ドルに上り、今年の1.2兆ドル、2017年の6千920億ドルから上昇しています。2019年以降は成長が鈍るものの、Gartner社によれば、グローバルな価値は2022年に3.9兆ドルに上る見込みです。

一方IDCは、AI関連の収益のみで、年間成長率が2022年まで37%を超えると予測し、それまでにグローバルな収益は770億ドルを超えると見込んでいます。

これは財務的な面でも労働力の面でも大きな投資です。ビジネスはこれまで、AIの資金を何に使ってきたのでしょうか? IDCによれば、2018年の企業は自動顧客サービスエージェントまたはチャットボットに最も多くの資金を使い、次に自動脅威インテリジェンスおよび防止システム、営業プロセスの推奨および自動化と続いています。

 

導入と実験

この1年で、企業は業界固有の方法でAIを使用しようとするはずです。IDCの顧客インサイトおよび分析グループのコグニティブシステムリサーチマネージャーであるMarianne D’Aquila氏によれば、AI駆動のIT自動化も主要な成長分野になります。これは、ほとんどすべての企業がメリットを得ることができるためです。「万能のAIというものはありません」。D’Aquila氏は言います。「現在私たちが目にしているのは、AIが幅広い異なるユースケースに、さまざまな形で増殖しているという現象です」

Vassilievaはさらに、ビデオ監視、不正利用検出、製造における品質管理など、簡単に複製できるAIのユースケースに焦点が当てられることになると話しています。

 

チャットボットの会話の増加

まだチャットボットと会話をしたことがないとしても、今後はすることになるでしょう。

D’Aquila氏によれば、企業は顧客サービススタッフの補完または代わりとしてチャットボットを使用するため、チャットボットは引き続きAIシステムの最も一般的なユースケースとなります。

専門家によれば、次の1年で、より多くの知識労働者や営業担当者が結果を改善するためにAIなどの自動化ツールを使用し始めます。

「仮想アシスタントは人間に置き換わるのではなく、営業担当者を補助して、電話のスケジュール設定、見込み客の絞り込み、フォローアップ、さらには反対意見への対応など、マニュアル的、反復的で、エラーが発生しやすいタスクの重荷から解放してくれるでしょう」。AI駆動の営業開発製品を提供するExceed.aiのCEOであるIlan Kasan氏はそう言います。「営業担当者は見込み客が絞り込まれたらすぐに顧客に取り組みます。契約の締結には人間の力が必要です」。Kasan氏によれば、機械学習によって、AI駆動の営業アシスタントは人間から学ぶことでさらに賢くなります。

会話型AIベンダーであるArtificial Solutionsのマーケティングおよび戦略部門チーフオフィサー、Andy Peart氏によれば、インテリジェントチャットボットは外部の顧客からの一般的な質問に回答できるように、人事部門からの質問にも回答できます。例えば、大手企業の人事担当チームは、毎年膨大な数の問い合わせに対応します。「情報と回答はすでにそろっています。多忙な従業員がそれにアクセスすることが難しいだけなのです」。Peart氏は言います。

会話型AIチャットボットは「従業員が同じ質問をする複数の言い回しを理解し、関連するコンテンツをすぐに見つけ出し、必要に応じてバックエンドシステムにアクセスして一貫性のある回答を出します」。Peart氏はそう言います。スマート人事チャットボットは、「今年の有給休暇は何日残っていますか?」のような質問にも答えることができます。

 

インテリジェンスには成長の余地がある

AI業界はこの1年で、深層学習モデルのトレーニングのフレームワークにおける進化を目の当たりにするでしょう。

「ほとんどのAIは、まだ弱いAIです。つまり、モデルが特定のタスクを実行することに焦点を当てているということです」。AIベースの画像認識ベンダーであるChooch Intelligence TechnologiesのCEO、Emrah Gultekin氏はそう言います。「強いAIとは、さまざまなニューラルネットワークとモデルが連携を開始し、これらのシステムをどのような環境でも運用できることを指します」

Vassilievaによれば、ほとんどのAIチャットボットのシステムはまだ非常にシンプルで、より会話を洗練させるために「成長の余地が大いにある」ということです。

Peart氏もこれに同意しています。会話型AIは、これまで多くの企業が導入してきた比較的会話が下手な顧客サービスチャットボットよりもずっと多くのことに対応できます。将来を見据えた企業は、会話型スマートAIを大量の内部データに接続し、より賢く洗練されるようにトレーニングを施すでしょう。

スマートボットがより賢くになるにつれて、顧客との会話中により多くのデータを取得できるようになり、企業に豊富な情報を提供できます。「いつでも消費者グループによる調査を実施できるようなものです」。Peart氏は言います。

しかし、チャットボットの成長には潜在的な短所もあります。セキュリティベンダーであるWatchGuardのCTO、Corey Nachreiner氏によれば、向こう1年でサイバー犯罪者は悪意のあるチャットボットを開発し、ソーシャルエンジニアリングを使用して被害者を騙し、リンクをクリックさせたり、ファイルをダウンロードさせたり、個人情報を共有したりすると考えられます。

チャットAIは非常に便利ですが、「人間のようなAIチャットボットは、ハッカーにとっての新しい攻撃経路となります」。Nachreiner氏はそう付け加えます。「ハイジャックされたチャットボットは、被害者を正規のリンクではなく悪意のあるリンクに誘導する可能性があります。攻撃者は正規のウェブサイトのウェブアプリケーションの穴を利用して、本来はチャットボットのないサイトに悪意のあるチャットボットを埋め込むこともできます」

 

増殖するその他のユースケース

多くの企業が、内部の自動化プロジェクトを進めています。最近では、サイバーセキュリティベンダーがAI駆動型のツールを実験的に使用して攻撃とマルウェアを追跡しています。また、医療提供者はAIツールを使用して病気を診断し、スキャンを分析しています。

多くのAIの専門家がこれらのユースケースでテクノロジーが成長すると予測していますが、商品取引などの他の分野でもAIが拡大すると見込んでいます。分析ソフトウェアベンダーであるDecisionNextの営業部門バイスプレジデント、Janette Barnard氏によれば、AIは企業による農産物や採掘された鉱物の取引に役立ちます。

「これらの業界の企業は、商品の市場価格変動の予測に基づいて何十億ドルという金額を投資します。しかし、最も熟練した市場のエキスパートでさえ、限定されたツールで商品価格を予測し、結果を出せないこともあります」。Barnard氏は言います。「変動が激しく、周期が強力で、利益率の少ない市場では、機械学習と人工知能を適用して商品の市場価格を予測することで、強力な競争上の利点になります」

機械学習によって、これらの商品取引企業は市場情報を定量的な予測モデルと統合して、「人間と機械の最高の要素を合わせてより良い結果を出す」ことができるとBarnard氏は話します。

IDCのD’Aquila氏によれば、内部の品質管理とシステムメンテナンスに向けてAIを使用することも、成長分野の1つです。そして、IDCは今年になって、企業がAIを使用して新しい製品のモデル化または新しい製造ラインの設計、さらには工場全体の設計をするという新しいユースケースを目にし始めました。AIを使用することで、企業は「時間が経つほど製造ラインを改善していくことができます」。Aquila氏はそう言います。

Vassilievaは、たとえ2019年でなくても、近い将来にやってくるAIハードウェアのブレークスルーを楽しみにしています。複数のハードウェア企業が、より大規模なAI業務に対応したり、その効率性を高めたりできる製品に取り組んでいます。深層学習専用に設計されたハードウェアの成長によって、AIシステムも大きく前進します。

 

躍進する

一部の専門家はAIの利点がすべて実現するのはまだ何年も先だとしている一方で、たとえ初期段階であっても多くの企業がこのテクノロジーから利点を得ることができると示唆している専門家もいます。AIベースの企業コンテンツ管理ソフトウェアプロバイダーであるIntelliChiefのコンテンツマーケティングマネージャー、Faith Kubicki氏によれば、次の1年でまだAIを導入していない多くの企業がこのテクノロジーを導入し、すでに導入している企業はAIへの投資を拡大するはずです。

Kubicki氏によれば、企業が1つか2つのプロセスの自動化を超えてAIの活用を開始した際に、最も大きな効果が出ます。場合によっては、企業はAIへの投資を1年で回収できることもあります。

「会計、商品開発、人事、ロジスティクスなど、企業が複数の部署にかけてAIを使用すると、大きな変革が訪れる傾向にあります」。Kubicki氏はそう言います。「2019年が近づいている現在、AIはもはやSF映画のような突飛なアイデアではありません」

 

人工知能のトレンド: リーダーのためのアドバイス

  • 専門家は、2019年にAI導入の大きな増加を予測しています。
  • 多くの企業にとって、インテリジェントチャットボットは引き続きAIのエントリーポイントです。
  • チャットボットの使用の増加によって、サイバー犯罪者によって不正なAIが起動される懸念が生まれます。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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