2019年7月19日

イタリアで新たなコミュニティを生み出すためのテクノロジーと都市設計のアプローチ

イタリアで新しいスマートシティを開発するMilanosestoプロジェクトのゼネラルマネージャは、このプロセスによって地域のリーダーシップと共に「設計とテクノロジー」の融合がもたらされると説明します。

スマートコミュニティは世界中で増え続けており、その中でも最大級の多目的開発が北イタリアのミラノ郊外で進行中です。対象となる場所は製鋼業の工場の跡地です。
このプロジェクトはMilanosestoと呼ばれており、8,000棟の集合住宅、100万平方フィートの小売スペース、医療研究センターを備えた病院、国際的なスポーツスタジアムが計画されています。合計1,600万平方フィートにおよぶ新しいコミュニティの半分が緑地帯に使用され、10,000本の樹木が植えられて10マイルの遊歩道が整備される予定です。この開発はBizzi & Partners社によって進められています。
受賞歴のある建築家のRenzo Piano氏によって設計され、35億ドルの費用を見込んでいるMilanosestoの計画は、新しいスマートテクノロジーを導入するのに理想的だと考えられます。このようなテクノロジーには、自動運転の電気自動車や各種のIoTセンサー (浄水、建物環境、スマートパーキング、ごみの監視) などがあります。
最も優先度が高いのは、若い就労者にとって魅力的なコミュニティを設計することです。彼らの多くは医療研究者やサポートスタッフです。このような就労者が最も重視するのは、導入されるテクノロジーイノベーションの内容ですが、自動運転車のようなさまざまなイノベーションは、プロジェクトの初期段階である現時点でまだ評価中です。建設は今年中に開始されることになっており、第1段階は2022年までに完了する予定です。
建物を建てるだけでは十分ではありません。最初から設計とテクノロジーを組み合わせる必要があります。
Carlo Masseroli、Milanosestoプロジェクトのゼネラルマネージャ

 

最も重要な目標: クオリティ・オブ・ライフ

スマートテクノロジーを実際に採用する際の前提になるのは、就業者と居住者のクオリティ・オブ・ライフを高めるという最も重要な目標をテクノロジーがサポートすることだと、プロジェクトのゼネラルマネージャであるCarlo Masseroli氏は言います。
「Milanosestoにおけるスマートという考え方は、設計で最も重要な概念はクオリティ・オブ・ライフであるということであり、テクノロジーそのものではありません」とMasseroli氏は説明します。「公園、モビリティ、安全性、セキュリティ、モールについて言えば、それらを実現する手段としてテクノロジーを導入するのであって、テクノロジー自体が目的ではないのです」
「私たちが望んでいるのは、有能な人材を呼び込む機会を探し出すことです。そうすれば、優秀な人々が訪れてイノベーションが始まるでしょう。魅力的な場所であれば、このような人々はテクノロジーから新しい力を手に入れることができます」と彼は付け加えます。
「建物を建てるだけでは十分ではありません」とMasseroli氏は続けます。「最初から設計とテクノロジーを組み合わせる必要があります。人々を引き付ける1つの方法は、新しい雇用の基盤となるものを用意することです。私たちはテクノロジーをライフサイエンスと経済のために利用して、さまざまな体験を提供します。それらが元になり、人々が交流し、新しい仕事や雇用を生み出す方法を見つけ出すことを望んでいます」
テクノロジーイノベーターの多くは、テクノロジーの導入自体が目的となることを心配しています。彼らの中にはスマートコミュニティの関係者もいます。Milanosestoの対象となる地域は北イタリアにあり、中国やマレーシアではないため、その基盤となる都市開発設計では、伝統的なイタリアの美的感覚を考慮し、そしてもちろん、有名なイタリアの官僚主義的なレビュープロセスに対処することに優先順位が置かれることになるでしょう。

 

イタリアの官僚主義に対処

「イタリアは官僚主義的なので、新しいテクノロジーを使用するにはまったく新しいアプローチが必要になります」とMasseroli氏は言います。「新しいテクノロジーのビジネスモデルを構築することから始める必要があるのです。イタリアで新しい開発を始める場合、計画立案の費用を支払わなくてはなりません。さらに、公共のインフラストラクチャは通常、革新的なテクノロジーよりも低コストで済むコモディティ化されたテクノロジーを使って構築されます」。このため、新しいソリューションやサービスを十分に活用できると考えられる場合であっても、開発業者は設計段階でそれらを導入することを妨げられるか、少なくとも制限されることになります。
「AIやセンサーのような新しいテクノロジーを使用する場合、普通税よりも多くの税金を支払う必要があります」と彼は付け加えます。今のところ、Milanosestoの開発業者は、利用できる建築プロセスのソフトウェアモデルを使用してプロジェクトのニーズを満たすように計画を立てる適切な方法を見つけることができていません。「私たちはそのモデルに基づいて革新を進める必要があります」とMasseroli氏は言います。
すなわち、Milanosestoでは、スマートテクノロジーを活用して新しいコミュニティを構築するだけでなく、そのような大規模な環境をイタリアで構築するための方法を提示することになるのです。
Masseroli氏は、イタリアでの建設事業と革新のために国際的なテクノロジー大企業を誘致する点で、プロジェクトが「いくらかの困難」に直面していると認めています。「彼らは、イタリアは新しいテクノロジーやイノベーションを導入する必要がある場所ではないと考えています」と彼は言います。それでも、Milanosestoプロジェクトは、ヒューレット・パッカード エンタープライズやエリクソンのようなテクノロジー大企業の誘致にも成功しています。
都市の指導者たちは徐々に、スマートシティ戦略の目的がインテリジェントなシステムとインフラストラクチャを実現するテクノロジーの選択にあるのではなく、むしろ持続可能なクオリティ・オブ・ライフ、住民同士のコラボレーション、知識交換への投資にあると理解するようになっています。
Bettina Tratz-Ryan、ガートナー社のアナリスト
「不幸なことに、既存のガイドラインはイノベーションの自由をいくらか制限する可能性があります」とLorenzo Gonzales氏は言います。彼はイタリアを拠点として活動するHPEのストラテジストで、Milanosestoプロジェクトの関係者の1人です。「具体的なアーキテクチャーを考え出して、それが公開入札にかけられると、いくつかのコモディティ化された標準が適用されます。たとえば、テクノロジーを活用したスマートなものでなく、標準的な由緒ある電柱を使用するように言われるかもしれません」
そのような場合でも、「優れたイタリアの創造性」から由緒ある外観とデジタルテクノロジーの興味深い融合物が生まれ、ビジネスモデルの中でうまく機能するかもしれないと、Gonzales氏は付け加えます。
Gonzales氏によれば、Milanosestoの用地の周囲では通信環境の発展が遅れているため、テクノロジーベンダーの課題の1つは、最適な組み合わせのワイヤレス接続をゼロからプロジェクトに導入することです。そのような接続には、Wi-Fi、5G、または都市で機能するほかの選択肢が考えられます。
スマートテクノロジーで実現するイノベーションの多くは、少なくとも今後6か月の間に詳細が決定されることはないでしょう。自動運転の電気自動車とスマートパーキングのようなテクノロジーの導入については、すでに強い興味が寄せられています。雨水は集められてリサイクルされ、散水設備で使用され、さらに飲み水に使用される可能性もあります。建物はエネルギー効率を最大限に高めるスマートな構造になり、メンテナンスし易いことも重視されます。
緑地帯にはビデオ監視が導入され、安全性を確保し、ゴミのポイ捨てを防ぎます。
個人のプライバシーを尊重するテクノロジー
「テクノロジーを使用するときは、プライバシーに配慮しなければなりません」とMasseroli氏は言います。「人は管理されることを望んでいません。公園は、安全に訪れることができる魅力的な場所になるでしょう。そこで使用されるテクノロジーにはインテリジェントな管理機能があります。具体的には、インテリジェントなコアを備えたカメラや、照明など、安全のためのさまざまなサービスです」
Masseroli氏と彼の開発チームはテクノロジーベンダーと協力することで、数え切れない都市やコミュニティが直面した問題に立ち向かうことになるでしょう。すなわち、すばらしい建築設計と魅力的な土地利用をテクノロジーがどのように改善できるかを評価するのです。

 

アナリストによるMilanosestoの評価

「都市の指導者たちは徐々に、スマートシティ戦略の目的がインテリジェントなシステムとインフラストラクチャを実現するテクノロジーの選択にあるのではなく、むしろ持続可能なクオリティ・オブ・ライフ、住民同士のコラボレーション、知識交換への投資にあると理解するようになっています」とガートナー社のアナリストであるBettina Tratz-Ryan氏は言います。「Milanosestoでは、そのような高い目標を達成するためにテクノロジーソリューションを活用しています。テクノロジーは、トリガーではなくイネーブラーです。テクノロジーから得られるデータによって、住民の好み、ライフスタイル、望みに基づき、都市自体のパーソナリティを発展させることができます」
この先、Milanosestoではさまざまなサードパーティとのデータ交換に取り組むことになり、それは他のスマートシティ戦略の発展に役立つことになるだろうとTratz-Ryan氏は言います。「私たちは、住民やイベントに適したサービスを構築するために、センサー、場所、移動経路から得られるリアルタイムのデータを必要としています」と彼女は付け加えます。「このようなデータ共有の取り組みは、都市のエコシステムでイノベーションを起こすための推進力になります。オープンなデータは、業界、大学、起業家にとって価値があり、ビジネスチャンスを創出するので、イノベーションだけではなく、スキルやトレーニングへの投資にもつながります」
彼女は、オープンなデータの共有は、Milanosestoへの投資を検討している多くの組織にとって「魅力的な差別化要因」になるだろうと予想しています。
別のアナリストは、Milanosestoがコミュニティとクオリティ・オブ・ライフを最優先に考えることは理にかなっていると考えています。「テクノロジーの導入自体が目的となるのはナンセンスです」とJ. Gold Associates社のアナリストであるJack Gold氏は言います。「ユーザーの生活を改善しないのであれば、取り組む価値があるでしょうか? 物事を改善し、より安価なものにして、快適さを高め、ストレスを減らすことができなければ、テクノロジーを導入すべきではありません」
Gold氏は付け加えます。「Milanosestoのような未開発地域/再開発用地の開発で第一のルールは「どのようなものを導入すれば今あるものを改善できるか?」ということです。単なるコスト削減ではありません。それは後から費用便益分析としてもたらされます。重要なのは「これを行えば改善するか?」という点です」
そのアプローチは、Masseroli氏と彼のチームにとって最優先の事項であるようです。つまり、設計、テクノロジー、そしてイタリアの活気を速やかに融合させるのです。  

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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