2020年1月24日

数字で見るAI

AIのビジネスメリットについて詳しく検討したことがないのであれば、この記事に掲載されている最新の調査結果を参考にしてみてください。

人工知能(AI)は、長年にわたるハイプサイクルを経て主流のビジネスやコンピューティングに多大な影響をもたらしています。Amazon社やNetflix社などの企業は、AIを利用することで年間数十億ドルのコストを削減してきましたが、その市場は今後数年間で数兆ドルの規模にまで成長し、世界経済を後押しするようになると見られています。

ただしAIの利用には、一般的にセキュリティリスク、雇用や社会にもたらされる可能性がある偏見、基盤となるデータの質の低さに起因する誤った判断などの懸念が残されています。

この記事では、11の統計情報からAIの現在と将来を簡単に見ていきます。

PwC社の調査によると、AIの市場は14%成長し、その規模は現在の中国とインドの経済生産高の合計を超えると予想されていますが、その内訳は6.6兆ドルが生産性の向上に起因するもの、9.1兆ドルが利用の拡大によるものになると見られています。そして同社は、AIは「今日の目まぐるしく変化する経済の中で最大のビジネスチャンスである」と結論づけています。この市場では、中国と北米が最も大きな成功をつかむことになると見られており、中国のGDPは2030年までに最大26%、北米はそれに次いで14%増加すると予想されていますが、両者を合わせた規模は10.7兆ドルに達し、AIが全世界にもたらす経済効果の70%近くを占めることになります。またこのレポートでは、「AIは生産性と製品の品質を向上させ、消費の拡大を促すため」、業界別に見てみると、小売、金融サービス、および医療が最も大きな成功を収めることになると断定しています。

出典: 『Global Artificial Intelligence Study: Exploiting the AI Revolution』、PwC社

AIやロボットは、7,500万の雇用を奪うと予想されていますが、そうした雇用の喪失は、新たに生み出される1億3,300万の役割によって相殺されることになります。またそのときには、人間とAIやロボットの合計労働時間の比率が大きく変化しているものと思われます。このレポートによると、2018年の労働時間の割合は人間が71%、AIやマシンが29%でしたが、2022年までには、人間の労働時間の割合が全体の59%にまで低下する一方、AIやマシンの割合は41%まで増えると見られています。さらにこのレポートでは、2025年までにAIやロボットの労働時間が過半数を占めるようになり、人間の48%に対して52%になると予想しています。

出典: 『The Future of Jobs 2018』、世界経済フォーラム、20の先進国と新興国の12の業界の企業に属する最高人事責任者と戦略担当幹部を対象に実施した調査のデータに基づく

人間の報告書作成者が各四半期に作成できる収益報告書は、手作業で行う部分があるためわずか300件程度でしたが、AP通信、Yahoo、CNBCなどの報道機関が使用するAI搭載の記事作成ソフトウェアを販売するAutomated Insights社によると、同社のサービスでは1秒に2,000件の記事を書くことができます。他の報道機関もAIを利用して記事を書いており、Bloombergは、別のAI作成ソフトウェアであるCyborgで収益報告書を作成しています。また、Washington Postが社内で利用するロボットレポーターのHeliografは、2016年のオリンピックと2016年の大統領選挙に関する記事を執筆しました(なお今ご覧になっている記事は、AIによって書かれたものでも、AIを利用して書いたものでもありません)。

出典: Automated Insights社

現在では、自宅で1か月に1回以上音声アシスタンスを使用する人の数が4,700万人を大きく上回っています。またこの調査によると、米国の総成人人口2億5,200万人のうち、1億1,400万人超が車の音声アシスタンスを試したことがあります。

出典:『In-Car Voice Assistant Consumer Adoption Report 2019』、車の音声アシスタンスの使用状況と使用動向をより的確に把握するために、Voicebot Drivetime.fmとVoice of the Car Summitが米国の1,040人の成人を対象に実施した調査のデータを分析

偏りのあるデータや前提が使用されると、MLやAIに偏見が忍び込み、雇用、刑事司法制度、信用などの領域で不公平が生じてしまう可能性があります。この調査では、AIがもたらす偏見のチェックに役立つチュートリアルやトレーニング資料が増えつつあることから、そうしたチェックを行う企業の割合が増加するであろうと結論づけています。またこの調査では、プライバシーの問題をチェックしている人の割合が、すべての企業で43%であったのに対し、機械学習に関して豊富な経験を持つ企業では53%であったことが明らかになっています。

出典: 『The State of Machine Learning Adoption in the Enterprise』、O'Reilly Media社、2018年、1万1,400人以上の会議の出席者と同社のオンラインコンテンツチャネルの利用者を対象に実施した調査のデータに基づく

100万人を超える人々がenterprise.nxtを購読しています。ご登録はもうお済みですか。

ACM Transactions on Management Information Systemsで公開された『The Netflix Recommender System: Algorithms, Business Value, and Innovation』において、Netflix社のエグゼクティブと研究者は、サービスの顧客満足度が向上し、サブスクリプションを解約する会員の数が減ったことでMLによるコスト削減効果が得られていると述べています。このドキュメントによると、会員が視聴するビデオは、検索によるものがわずか20%である一方、Netflixで薦められたものが80%に達しています。また同書では、Netflixの会員は60~90秒を過ぎるとビデオを検索するのが嫌になり、その間に「興味のあるものが見つからなければ、サービスを利用しなくなるリスクが大幅に上昇する」と述べられています。このように短時間で目的のビデオを見つけられるようサポートすることにより、会員がNetflixを解約する可能性は低くなるのです。

出典: 『The Netflix Recommender System: Algorithms, Business Value, and Innovation』、Netflix社、2015年

この調査によると、運用コストが20%減る一方で在庫量は50%増加しています。この調査結果が公表されてから、Amazon社は注文から数時間以内に家庭に生活必需品を届けるPrime Nowサービスを強化すべく技術の改良に取り組んできました。National Public Radioのレポートによると、このアルゴリズムは特定の商品が注文される可能性が高い地理的位置を予測し、その場所の倉庫に事前に商品を補充するだけでなく、効率を最大限まで高めるために倉庫内のどこに商品を置いておくのかまでを決定します。

出典: 『Artificial Intelligence: The Next Digital Frontier?』、McKinsey Global Institute、2017年、世界中のAIに対する意識の高い3,000超の企業を対象に実施した調査(「How artificial intelligence can deliver real value to companies」)のデータに基づく

同社の調査では、この1年でAIの導入数が3倍になったこともわかりました。また同社は、「2019年にAIはアーリーアダプターからアーリーマジョリティに『移行する』」と予測しており、こうした理由から、AIのスキルを持つ人材に対する需要が急増し、多くの企業がその確保に苦労していると結論づけています。AIのエキスパートを雇用している経済セクターは、金融サービスとテクノロジーの2つが最も多く、その両方が占める割合はAIのスキルを持つ人材の60%に達します。

出典: 『The State of AI: Divergence 2019』、MMC Ventures社

この調査会社は、ビジョンと言語をベースとするディープラーニングテクノロジーが成長を後押しすると述べ、そのレポートの中で「全世界のAI市場は、ハイプから現実へとシフトする新たなフェーズに突入しつつある」と結論づけています。

出典: 『Artificial Intelligence Market Forecasts』、Tractica社、2019年

ただし、ビジネスリーダーが直面しているAI関連の問題は他にもあり、同社は、AIを利用する企業の3分の2がAIのスキルを持つ人材の雇用で深刻な問題を抱えるとともに、83%が既存のAIエキスパートの保持に苦労していると述べています。

出典: 『Predictions 2019: Artificial Intelligence』、Forrester Research社、2018年11月6日

セキュリティリスクは最も多く挙げられる懸念事項であり、それに続いてAIに基づく誤った戦略的意思決定(16%)、ミッションクリティカルな状況や生死に関わる状況でのAIシステムのエラー(13%)などがあります。このレポートでは、サイバーセキュリティのリスクとして、ハッキングされたデータを使用することでAIが誤った判断を下したり、生体認証システムをバイパスしたりするといったケースが挙げられています。調査対象の企業のうち、32%はこの2年間でAIイニシアチブに関連するサイバーセキュリティの侵害を経験したと述べているうえ、30%はサイバーセキュリティの問題に対処するためにAIイニシアチブを遅らせたと回答しています。また、サイバーセキュリティに関する懸念からAIイニシアチブを開始しないことを決定した企業と進行中のAIイニシアチブを中断した企業の割合は、それぞれ20%と16%に達しています。

出典: 「State of AI in the Enterprise, 2nd Edition」、Deloitte社、2018年、米国に拠点を置く企業の1,100人のITおよび事業部門のエグゼクティブを対象に実施した調査のデータに基づく

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

enterprise.nxt

ITプロフェッショナルの皆様へ価値あるインサイトをご提供する Enterprise.nxt へようこそ。

ハイブリッド IT、エッジコンピューティング、データセンター変革、新しいコンピューティングパラダイムに関する分析、リサーチ、実践的アドバイスを業界の第一人者からご提供します。

enterprise.nxt
ニュースレターのご登録

enterprise.nxtから最新のニュースをメールで配信します。