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2021年12月10日

導入が進むAR: エッジでの活用

離れた場所から迅速に問題を解決したり、従業員に複雑なシステムのトレーニングを行ったりする必要がある場合、拡張現実が必ず役に立ちます。
魅力ある拡張現実アプリケーションは、デジタル環境と物理環境を結びつけるのに有効な手段であることが実証されており、没入型の買い物体験の一部として、リビングルームにバーチャルソファを置くことや、リアルタイムデータとオーバーレイに表示される詳細かつ視覚的な指示に基づいた予測メンテナンスを実現することが、可能になっています。

しかし、ARテクノロジーの複雑さと一部の初期アプリケーションの制限などから、今日の多くの企業が求めているのは、リモートの同僚や顧客と、各地のエキスパートを迅速につなぐ方法である、という単純なことが誤って伝わっている可能性があります。企業の目標は、よく調整されたセキュアなワークフローの中で、こうした両者が、相手の目に映るものを自分も見られるようにすることです。具体的には、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスをビジュアルコラボレーションプラットフォームと組み合わせることでトレーニングを再構築し、製品のエキスパートが離れた場所から支援できるようにします。展開した製品のリモート点検、修復、メンテナンスを効果的に実施することが目標なのです。

現地に集まることなく、人の肩越しに見てコラボレーションを行ったり、トレーニングを受けたりするようなものと考えてみてください。こうした転換を図ることで、移動時間や経費を大幅に削減できる可能性があります。また、この方法なら、ダウンタイムを最小化するとともに、現在私たちが置かれているような移動が困難な状況でも、事業継続性を確保することが可能です。

継続的にイノベーションが行われ、アクセスしやすい製品が提供されていることを背景に、業界のエキスパートは、コンシューマー向けとビジネス向けの両方の市場でARに大きな期待を寄せています。Grand View Researchのレポートによると、小売、製造、医療、教育などの多くの業界で、ARテクノロジーの導入が急速に進んでいます。その市場規模は1年でおよそ44%拡大し、2028年までに3,400億ドルを突破すると予測されています。

ARの導入では、ほとんどの企業が初期段階にあります。IDCの調査、『Worldwide CIO Agenda Predictions 2021』によると、45%が導入の初期段階または試行段階にあり、一部導入済みの中期段階、または完全に導入済みと回答した企業はわずか18%でした。ARの利用状況を見てみると、リモートサポートが最も多く、43%がそうしたユースケースを挙げています。その後に従業員トレーニング (39%) と知識の獲得 (33%) が続きます。

大きなアイデアを小規模に実践して投資を回収

高度なエンタープライズARアプリケーションの開発と展開には、課題もあります。その1つが、Microsoft HoloLens、Google Glass Enterprise Edition、RealWear HMT-1などのハンズフリーのヘッドマウントデバイスが、AR体験を利用して実際のビジネスの問題をどのように解決できるか示すことでした。これまで、コンシューマー向けの仮想現実アプリケーションやARアプリケーションにより、没入型のユーザーエクスペリエンスに対する要求レベルが上がる一方で、開発には多額のコストがかかっていました。パッケージ化されたARプラットフォームやAR製品に加え、多くの人がDIY ARアプリケーションの構築に使用するUnityのオープンソースゲーミングエンジンがあるとはいえ、AI/ARモデルの開発と更新には多額のコストがかかります。

製造や航空宇宙などの業界では、多くの企業がARの可能性に大きな期待を寄せていますが、知的財産などの企業の重要な情報をクラウドに送ることには懸念を抱いています。しかし、リアルタイムデータとビデオAIモデルを駆使する多くのARアプリケーションで、こうしたデータ送信が前提条件となっています。そのため、パフォーマンス上とセキュリティ上の理由から、多くの企業が、ARソリューション向けのエッジコンピューティングを検討しています。

導入の初期段階にある多くのテクノロジーと同様に、早期に投資効果を実証するクイックウィンプロジェクトが、より大規模な導入に向けて重要となります。ARは、次のように、複数の分野で実証可能なメリットをもたらしています。

リモートからのトラブルシューティング: IDCの調査によると、メーカーでは、見つからない情報を従業員が探したり再作成したりすることが原因で、1週間に14時間以上が無駄になっています。ARを利用すれば、工場、風力発電所、石油掘削装置などの作業員が、離れた場所にいるエキスパートにリモートで質問することで、複雑な手順を実行したり、潜在的な問題のトラブルシューティングを行ったりできます。たとえば、スマートグラスとビデオコラボレーションプラットフォームを利用している大手エネルギー企業では、技術者と工場のオペレーターが二人一組になって故障した機器を検査し、リアルタイムのリモートサポートと具体的なフィードバックを提供しています。AR対応のリモートサポートは、工場のダウンタイムを最小化してスムーズな運用を維持するうえで不可欠となっていました。

リモートサポートを活用していたその他の組織でも、大きな投資効果が報告されています。複数名で確認すれば、問題に関して同じ認識に達するまでの時間を、大幅に短縮できます。

リモートからの品質保証検査と組み立て支援: 石油掘削装置などの工業資産で働くオペレーターが、ハンズフリーのヘッドアップディスプレイまたはタブレットを装着すれば、ARを利用して仕事場で直接トレーニングが受けられるため、教室での対面のトレーニングに参加する必要がなくなります。また、AR機能を使用することで、エンジニアや工場オペレーターは、生産されたものと当初の設計仕様を比較し、正しい部品が適切に組み立てられていることを確認し、検査に問題がないことを確かめたうえで、品質問題が発生する可能性について警告することができます。

トレーニングと教育: メーカーでは、コロナ禍後を考慮して再編成が行われるため、リモートの専門知識を (ARを活用して) 幅広く利用できるようにすることが今後も重要になります。具体的に言えば、こうしたARの実用的なユースケースは、仕事の内容が絶えず変化し、リモートの要件にも継続的に対応する中で、企業が運用と顧客サポートの継続性を維持するのに役立ちます。

また、ARを通じて、コスト効率に優れた方法で、希少な専門知識を離れた場所にいる従業員にも提供したり、貴重な組織の知識や技術知識を現場にいる作業員や各製品グループと共有したりできます。特定のサポートの問題に関する有益な情報をエンジニアグループに送る場合 (有益な情報が戻ってくるとして)、通常は、多くの引き継ぎが必要となります。ARを利用すれば、リモートエンジニアチームが問題を直接体験し、スナップショット、録画、進行中の作業の写真にアクセスすることができます。それにより、システムの修正を迅速に行えるようになり、その後の製品設計にも反映させることができます。

エッジの近くでARを活用

ARで飛躍を遂げる準備ができている企業の多くがそれを実現できないのは、クラウドでデータを共有する能力が制限されているためです。こうした企業は、ZoomやMicrosoft Teamsなどのビジュアルコラボレーションツールを使用できますが、トレーニング、メンテナンス、リモートサポートなどの機密情報にあたるエンタープライズワークフローでは、データプライバシーやデータ主権への懸念から、同じクラウドベースのテクノロジーを使用することができません。

クラウドベースのコラボレーションツールを使用するARアプリケーションでは、パフォーマンスの問題も生じます。たとえば、リアルタイムビデオ/画像分析などの高度なアプリケーションは、レイテンシの問題によってパフォーマンスが低下する可能性があります。

エッジコンピューティングリソースを活用するARシステムを利用すると、データプライバシー、データ主権、パフォーマンスの問題に対処できます。こうしたシステムでは、ファイアウォールの内側、かつアクセスポイント近くにある、ワークロードに最適化されたコンピューティングリソースを活用できます。これにより、セキュリティとデータプライバシー保護の両方を強化できます。

企業が3か年計画を策定する際は、テクノロジーの要素がすべて揃うまで待つのではなく、ARのメリットを取り入れることを検討すべきです。ARを利用している企業は、すでに、今日のリモートコラボレーションの問題を解決し、ARのない時代には実現できなかった方法でメリットを享受できています。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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