2019年7月19日
マニアックなプログラマのための9つのAPI
確かにAPIは外部のデータソース内の情報にアクセスするための便利な手法です。しかしながら、趣味のパーソナルプロジェクトに取り組んでいるような、マニアックな文化に関わる人々が利用可能な専門的リソースは数多く存在しています。それだけでは不十分なのでしょうか。
本格的なエンタープライズアプリケーションを設計する場合から、外部データをGoogleスプレッドシートに取り込むだけの場合まで、APIはプログラミングに多くの価値をもたらします。APIはアプリケーション間の対話を統制し、プログラム間での情報の移動を容易にします。
大多数のプログラマはAPIについて、Googleマップ、Mastercardの決済システム、各種開発ツール、クラウドストレージなどのように、標準的なビジネス機能を提供してくれるものと認識しています。しかしながらAPIの機能はそれだけにとどまりません。APIは専門的なデータや特定文化に関するデータなど、思いもかけないような膨大なデータへ容易にアクセスできるようにします。
以下では、皆様にインスピレーション (と少々のスマイル) をお届けするために、思いがけないデータへのアクセスを提供する9つのAPIをご紹介します。ご紹介するAPIは、皆様の今後のプロジェクトに役立つ可能性のある実用的なものから、単なるお遊び的なものまでさまざまです。
Sunrise Sunset
日の出と日の入りの時刻を知りたいと思ったことはありませんか。これらはごく基本的ながら、非常に有益な情報です。
Sunrise-sunset.orgの創設者であるJose Florido氏は、自身が提供しているAPIの用途をいくらでも挙げることができます。「私たちのデータはさまざまなIoT製品で活用されています」とFlorido氏は説明します。「朝になると自動で開くスマートブラインドからスマート灌漑システムに至るまで、その範囲は多岐にわたっています」。
このAPIは、与えられた経度と緯度に応じて日の出と日の入りの時刻を返すもので、ハードウェアで使用される以外にも、さまざまな場面で活用されています。その一例が写真撮影で、このAPIを使用することで撮影に最適な「ゴールデンアワー」を特定できます。「ロンドンの高層ビルThe Shardでは、最上階に観光客向けの展望台を設けていますが、このAPIを使用することで日の出と日の入りの時刻を提供しています。そのため観光客は、都市の壮大な風景を撮影するのに最適な時刻に展望台を訪問できます」とFlorido氏は説明します。「また数多くのカメラマン向けアプリでも、任意の場所におけるゴールデンアワーの計算にこのAPIが使用されています」。
HazardHub
新しい家に引っ越す際は誰でも、電気器具やリビングルームの家具の配置を気にかけます。その一方で、新居から消火栓や沿岸地域までの距離を気にする人はあまりいないでしょう。しかしながら保険会社にとって、これらは重要な事項です。
HazardHubは、さまざまなデータポイントを集約することにより、資産リスクアセスメントを容易にする目的で創設されました。「HazardHubの立ち上げにあたり私たちが重視したのが、保険ファネルにおける脆弱箇所の強化、すなわち事前のデータ収集の支援です」と、HazardHubの創設者であるJohn Siegman氏は説明します。「私たちが目指しているのは、資産ハザード情報のためのワンストップショップです」。このAPIは、与えられた住所から消火栓や最寄りの消防署までの距離など、米国内の資産に関連する550を超える情報を加入者に提供します。
Siegman氏が説明するように、HazardHubのデータセットは継続的に更新されています。「私たちは25を超える独自のデータベースを構築することで、他の誰も答えられない質問にも回答できます」と同氏は述べています。「次回のデータリリースでは、過去100年間および500年間に洪水が発生した地域までの距離も提供可能になる予定です」。気候変動の影響で洪水が増加している今日、これは価値あるデータポイントです。
Beer Mapping Project
大多数の人にとってビールは、最寄りのガソリンスタンドや食料品店で簡単に見つけられるものです。その一方で、ビールバーや醸造所を見つけるのは、それほど簡単ではありません。そこで役に立つのがBeer Mapping Projectです。Beer Mapping ProjectのAPIを使用すると、近隣に存在するあらゆる種類のビール関連事業についての情報をまとめて入手できます。
Beer Mapping Projectは立ち上げから14年近くが経ちますが、プロジェクトの最高地図作成責任者であるJonathan Surratt氏は常勤ではありません。同氏は、同じくビール関連事業であるCicerone Certification ProgramのWebディレクターも務めています。「このAPIに関して私が近年知り得た最もクールな事実は、このAPIを使用するアプリの利用が増加していること、そして大学の授業でも使用されているということです」と同氏は述べています。「この件に関してこれまで関係者に連絡をとったりしたことはありませんが、1週間かそこらの間に大量のAPI登録が発生することがしばしばあり、その多くが同じ.eduアドレスです。その理由としては、どこかのクールなコンピューターサイエンス教授が、Beer Mapping Project APIを学生に勧めたとしか考えられません」。Beer Mapping Project APIは授業で使用されているだけでなく、ポスターサイズの紙の地図を作成するためにも使用されています。
OMDb API
インターネットムービーデータベース (IMDb) は、映画に関する情報を入手するための優れたリソースです。しかしながら、映画関連データを自分のアプリケーションに取り込みたい場合はどうすればよいでしょうか。こうした場合に役立つのが、Brian Fritz氏のOpen Movie Database (OMDb) APIです。このAPIを使用すると、プロットからキャスト、クルー、受賞歴、興行成績に至るまで、映画に関するさまざまな情報を入手できます。さらに映画ポスターに特化したAPIも存在します。
OMDb APIの創設者であるFritz氏は、自身のプロジェクトに対する反響の大きさに驚いています。「このAPIはここ数年で急成長を遂げ、ピーク時にはリクエスト数が1日10億件を超えたため、ホスティングプロバイダーですぐに問題視されることとなりました」と同氏は振り返ります。「これらのトラフィックの80%以上を処理していたCloudflare社にとって、これは決して歓迎すべき状況ではありませんでした。同社からはエンタープライズプランへのアップグレードを提案されましたが、そのプランは開始価格が月額5,000ドルと高額でした」。その後Fritz氏は一部のアクセスをPatreonペイウォールに移動することで、トラフィック負荷を1日9,000万~1億5,000万リクエスト程度に抑え、サーバーコストを節減することに成功しました。同氏は今や2,000人以上のパトロンを有しています (なお私もその1人です)。Fritz氏はAPIを継続的にアップグレードしており、データの追加、バグの修正、メールへの返信などの作業に毎週かなりの時間を費やしています。
ISBNdb
書籍とインターネットと言われて、多くの人が真っ先に連想するのはAmazonでしょう。Amazonは多くのAPIを提供していますが、Amazon以外にも2,000万冊以上の書籍に関する情報を提供しているAPIが存在します。それがISBNdbです。
国際標準図書番号 (ISBN: International Standard Book Numbers) は、書籍に割り当てられる一意の識別番号です。このAPIは、指定された書籍について、その概要、デューイ十進分類番号、出版社、フォーマットなどのさまざまな情報を提供します。ISBNdb運用マネージャーのGeorge Lopez氏によると、より多くのISBNを取り込むためのプロセスが現在進行中です。「私たちが目指しているのは、インターネット上で最大の書籍データベースを構築し、低料金で提供することです。私たちは、データベースにまだ登録されていないISBNをインターネット上で探して追加するクローラーを保有しています。ISBNが割り当てられている書籍であれば、言語やフォーマットを問わず、すべて収集の対象となります」。
このAPIの機能はAmazonの最重要製品と重複していますが、Lopez氏はAmazonを競争相手とは捉えていません。「私たちのサービスは、Amazonとは異なり、書籍データベースと検索APIサービスを月額料金で提供するものです。その意味で、私たちの競争相手となるのはむしろ、小規模企業にとっては料金が高すぎる各種の書籍データベースサービスです。私たちは、書籍の値段をユーザーがリアルタイムで比べることができる価格比較サービスも提供しており、実のところAmazonは私たちのパートナー企業の1つです」。
Unsplash API
インターネットが普及する以前、ストックフォトを探すのは面倒で時間のかかる作業でした。今日、オンライン上には多数の優れたストック画像が存在しており、さらに素晴らしいことにその多くが無償で利用可能です。その一例としてUnsplashでは、90万を超える画像を (商用利用か非商用利用かを問わず) 無償で提供しています。このAPIはリクエスト数の制限なしに無償で利用できるため、サイトに寄せられる月間リクエスト数が14億に達していることも驚くには当たりません。APIはストックフォトカタログに目を通すよりもはるかに効率的です。
Star Trek API
「スタートレック」はインターネットの文化的試金石の1つであるため、Star Trek APIが存在することに不思議はありません。STAPIは広範囲をカバーしており、キャラクター、場所、トレーディングカードのセット、食べ物、宇宙船、さらにはコミックストリップに至るまで、57,000を超えるエンティティが網羅されています。そしてこれはメンテナーであるCezary Kluczyński氏の好みを反映したものに他なりません。
「Star Trek APIは基本的な方針として、さまざまなWebサイト上のデータを統合できる場所を提供することを目的とし、提供元のWebサイトの情報は正しいものと想定します」とKluczyński氏は説明します。「そのため、Memory Alphaコミュニティで受け入れられた漫画、ビデオゲーム、職業などは、Star Trek APIでもそのまま受け入れられます」。
Kluczyński氏によると、STAPIは多くの創造者や探索者に活用されています。「その用途はいくつかのタイプに分類されます。まず、このAPIは (個別の、またはブートキャンプにおける) 自己学習プロジェクトで活用されています。また新しいテクノロジーの試験運用でも使用されています。通常こうしたペットプロジェクトの実施には何らかのデータソースが必要ですが、一般的にこうしたプロジェクトの寿命は短期間で、終了後は破棄されます。さらにSTAPIは統計分析の情報源としても活用されています」。
メトロポリタン美術館
通常、美術館には写真撮影を禁じる注意書きが貼られており、芸術作品は館内でしか楽しめません。これに対して、Metropolitan Museum of Artでは、APIを介して40万以上の画像を利用することが可能です。さらに素晴らしいことに、すべての画像がCC0クリエイティブコモンズライセンスのもとで公開されています。そのため、このAPIに高い関心が寄せられていることに不思議はありません。さらにMetが発表した新しいサービスには、MetとGoogle Arts & Cultureの統合も含まれています。
Kanye Rest
カニエ・ウェストのファンでなくても、彼の発言がしばしば注目されることはご存知でしょう。Andrew Jazbec氏は、ラッパーやプロデューサーとして名高いカニエ・ウェストの発言をランダムに引用するJSON APIであるKanye Restを開発しました。フロントページには引用例 (「俺はピンポンが得意だ」) が表示されています。さらにJazbec氏は、その発言が注目されることの多いもう1人の有名人、イーロン・マスク用のアプリも開発しています。Kanye Restと同様に、イーロン・マスクの引用アプリも無償で提供される予定です。
インターネット上の情報量が増加するのに合わせて、APIの数も増え続けています。そしてインターネットならではの性質により、どれほど特殊なAPIであっても、一定のユーザーベースを獲得できる可能性があります。
この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

Tara Calishain
Tara Calishainは、1996年から検索エンジンとオンライン情報収集に関する執筆を続けています。Taraは単独または共同で多数の書籍を発表しており、プロのディスコミュージシャンでもあります。
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