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2021年1月15日

「どこでもクラウド」のビジョンを達成する8つのステップ

現在の企業のIT環境を描いた小説があるとすれば、『二都物語』ならぬ『2つのクラウド物語』というタイトルになるでしょう。

業界では、2022年までに、全データベースの75%がクラウドプラットフォームに展開または移行されると予測されています。しかし、それが実際に何を意味するのかは、議論の余地があります。パブリックとプライベート両方のクラウドを利用するインフラストラクチャに時間と費用が投じられているのは明らかとはいえ、その両方に等しく投資されているわけではありません。HPEが7月に開催したDiscover Virtual Experienceで、HPEのCEO、Antonio Neriが述べた内容によると、企業が保有するアプリケーションとデータの70%以上が、今でもパブリッククラウド以外で運用されています。

何が移行を妨げているのでしょうか。プライベート環境とパブリック環境を、チャールズ・ディケンズの1859年の小説『二都物語』で描かれたフランス革命前のロンドンとパリに例えると、その問題が見えてきます。この2つの環境は、これまでの発展の仕方が大きく異なっているのです。プライベートクラウドでは、オンプレミスのレガシーインフラストラクチャと人的リソースを利用します。パブリッククラウドでは、サービスプロバイダーと最新の技術を利用して、デジタルコンテンツのホスティングと共有を行います。

この「二都」を活用すれば、最終的にメリットを得られるという認識が企業にはあります。しかも、そうした企業のほとんどが、「クラウドファースト」の考え方を超える環境を実現できる日を夢見ながら、それを達成する以前に、「どこでもクラウド」の考え方を現実化しようとしています。この環境なら、データとアプリケーションが存在するサイロの問題について議論しなくてもよく、順調に稼働するハイブリッドクラウドをどのように利用すれば、顧客、パートナー、従業員に、革新的なエクスペリエンスを提供できるかをじっくり考えることができます。

これを一晩で実現できないのは明らかです。そこにたどり着くまでに、ビジネス、人、プロセス、技術などのさまざまな点で、非常に多くの克服すべき課題が生じます。とはいえ、このブログでは、目の前の課題に取り組み、「どこでもクラウド」のビジョンを実現する8つのステップをご紹介します。

 

1. セキュリティを最優先する

サイバーセキュリティは、非常に多くの企業のIT部門で、克服すべき課題の1つとして認識されていながら、実際の対応はプロジェクトの終了間際まで先延ばしされます。そのため、この記事では、最初のステップとしてサイバーセキュリティを挙げ、それをハイブリッドクラウドの最優先課題にすることをお勧めしています。

Sophos社の調査、『State of Cloud Security 2020』によると、4分の3 (70%) 近くの組織が、前年までにパブリッククラウドのセキュリティインシデントを経験しています。また、同じ割合のITリーダーが、「セキュリティの懸念がパブリッククラウドへの移行を妨げている」と、予想どおりの回答を寄せています。

HPEのクラウドデリバリ担当ディレクター、Sean Foleyは、その難しさの要因として、多くの企業で、プライベートクラウドが最初に利用される点を指摘しています。この場合、セキュリティ対策の方法には最小限の変更が加えられます。しかし、ワークロードをパブリッククラウドプロバイダーに移行する場合は、状況がさらに複雑になります。データファイル移行のための自動化がますます必要になるため、セキュリティ対策の方法を全体的に調整しなければなりません。

Seanによると、成否は、セキュリティに関する次の4つの領域を改善できるかどうかにかかっています。

1. IDとアクセス制御を強力に管理して、ネットワークに接続できるユーザーや機器を規定する。

2. すべてのネットワーク活動のログ取得と監視によって、通常のネットワークトラフィックを把握し、修復の必要な異常やセキュリティインシデントを検出する。

3. 常に暗号化を導入し、非公開データや、機密性の高いデータのセキュリティを強化する。

4. 対応を自動化する仕組みを確立して、セキュリティイベントを抑制し、それらの拡大を防ぐ。

 

2. 経済状況を把握する

クラウドコンピューティングがもたらす非常に大きなメリットは、スピード、俊敏性、そして何よりも、適切に導入した場合のコスト削減です。しかし調査によると、クラウド環境の費用に対して継続的な厳しい管理が行われていないため、結果的に過剰な支出が発生しています。

実際に、Flexera社による最近の『2020 State of the Cloud Report』では、「クラウドの費用が今年は50%近く増加する見込みだが、正確な予測をいまだに行えていない」との回答が、ITの実務担当者から寄せられています。また、クラウドの費用が限度額を平均23%上回っている一方で、クラウドの予算の30%が浪費されています。

こうした傾向は今に始まったことではありません。経済状況の把握の難しさは、ハイブリッドクラウドが注目されたときから続いています。しかし、「どこでもクラウド」を実現するには、パブリックとプライベート両方のインフラストラクチャに対して、コストの監視、分析、課題解決を包括的に行うプログラム、プロセス、技術的な手段を確立することが非常に重要です。さらに、それらを可能な限り自動化する必要もあります。自動化できなければ、どんなに優れたハイブリッドクラウドプログラムであっても、その真価を発揮できなくなります。

 

3. データを十分に把握する

IDC社の調査によると、2025年には、世界規模で見たデータ量が175ゼタバイトにまで増加します。ゼタバイトとはどれほど大きな単位なのか見当もつかないかもしれませんが、その一部は自社のデータです。では、その量はどれくらいでしょうか。データはどこにあるのでしょう。データの用途は何ですか。どうすればすべてのデータを安全に管理できるのでしょうか。

データを効果的に管理するには、パブリックとプライベート両方のネットワークを検索できるシステムを最初に配備するとよいでしょう。また、定期的な監査によって、デジタル環境の状況を把握するとともに、レポートを発行し、IT、業務、財務、営業、マーケティング、人事、法務部門に至るまで、組織の全従業員に継続的な情報提供を行う必要があります。

 

4. スキル不足の従業員を気にかける

IT技術者なら、ハイブリッド環境の技術面に注目することは簡単です。しかし、人とプロセスの観点からも同じように対処していないと、深刻な事態を招く可能性があります。

具体的には、従業員が、プライベートとパブリッククラウドインフラストラクチャの両方で、統合、管理、セキュリティ対策を効果的かつコスト効率良く行うには何が必要かを熟知できるようにしなければなりません。これは既存の従業員と新しい従業員のどちらにも言えることです。しかし、残念ながら多くの場合、詳しい分野はどれか1つに限られています。

実際に、Wakefield ResearchとLogicworks両社が実施した最近の調査によると、対象者の86%が、「エンジニアのスキル不足によって、今年のクラウドプロジェクトの進捗が遅れた」と報告し、また63%が、有能なエンジニアを見つけるのは未確認動物のビッグフットを発見することよりも難しいと、冗談ではなく真剣に回答しています。

「どこでもクラウド」を目指すには、プライベート環境とパブリック環境のすべてを知り尽くした有能なIT技術者の獲得に全力を尽くさなければなりません。これは単なる雇用の問題ではなく、既存の従業員のトレーニングに投資して、ハイブリッドクラウド業務を行えるスキルを習得させることが不可欠です。チームメンバーの半数が俊敏になり、パブリッククラウド業務に持ち込めたとしても、残りの半数がレガシーシステムの対応で身動き取れない状況では、成功は見込めません。俊敏になりたければ、それを徹底するようにします。Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、オンプレミス環境は、技術と、それで得られる成果が異なっていても、概念は同じです。

 

5. 環境を一元的に把握できるようにする

かつてソフトウェアベンダーが、プラットフォームを1つにすれば、その環境のメリットをすべて享受できるようになる、という考え方を広めました。しばらくは受け入れられましたが、そうした統合型のアプローチよりも、多面的なアプローチが主流になりつつあります。

IT部門の72%が、複数のパブリッククラウドを1つのプラットフォームですべて管理せずに、入り混じったパブリッククラウドを複数のプラットフォームで管理しています (451 Research社による、2020年1月のレポート『Public cloud lock-in concerns incongruent with successes seen in multicloud deployments』)。どのプラットフォームでも、独自の監視手段によって環境内の状況を把握できますが、プラットフォーム同士を十分に連携させることはできません。しかも、こうしたプラットフォームには、データウェアハウスやネットワークエッジから、情報やアプリケーションを表示できる機能がありません。

こうしたことがすべて原因となり、ハイブリッド環境全体での活動を正確に把握できなくなっています。そのため、従量制のIT環境を、一元的に把握する方法を見つけることが重要です。たとえば、その選択肢として、ハイブリッドクラウド全体を把握して管理するための重要な静的データを表示可能なユーザーインターフェイスが挙げられます。利用状況の分析、規制コンプライアンスの継続的な監視、迅速なプロビジョニングなど、統合的なダッシュボードや機能を備えたサービスやソリューションを探すとよいでしょう。

 

6. SLAとCLAを念頭に置く

自社のプライベートクラウドを完全に制御できていれば、高品質のサービスレベルを維持するのは非常に簡単です。何と言っても、それは独自の環境であり、運用を外部に頼る必要はありません。しかし、外部のプロバイダーと結んだサービスレベルアグリーメント (SLA) またはクラウドサービスアグリーメント (CLA) に依存していると、そうした運用に、かなりの時間と費用がかかる可能性があります。

これらの契約では、同調と調整を十分に行い、従業員にとっても顧客にとっても最善のユーザーエクスペリエンスを実現しなければなりません。少なくとも、アグリーメントを継続的に監視する担当者の特定や、交渉できる項目の把握に時間をかけるようにしましょう。また、必要であれば自社のために、これまでの関係にとらわれない代替手段を用意するようにします。

繰り返しますが、こうした責任を軽減するという選択肢もあるのです。今日では、SLAとCLAに特化したさまざまなサービスがあります。それを利用すれば、優先度の高い業務に貴重な時間を注ぐことができます。

 

7. 自動化によって、高可用性とフェイルオーバーを実現する

Amazon社 のWerner Vogels氏が、ご自身のヨギイズムを働かせて述べた、「Everything fails all the time (どのようなものにも、どのようなときにも、障害は起こるものだ)」という機知に富んだ一言があります。

IT技術者であれば、ハイブリッド環境を設計するときに真剣にそう考えますが、常に肝に銘じているわけではありません。理想的な環境では、あらゆるシステムが、障害から自動復旧できるように構築されています。直接の対応はほぼ不要です。しかし実際には、そのように難なく復旧できるとは限りません。

オンプレミス環境では、物理サーバーを利用して、バックアップ、冗長化、フェイルオーバーが行われています。パブリッククラウドでは、ソフトウェアによる自動復旧が活用されます。単独なら、それらは正常に動作します。しかし、ハイブリッド環境で障害が発生すると、一貫性のない2つのシステムが原因で、サービスを効率的に提供できなくなる可能性があります。

このため、オンプレミスの運用から、クラウドを取り入れた運用に方向転換することで、調整を行い、マイクロサービス、自動化、最新のプロセスやアプリケーションによって、可用性とフェイルオーバーを管理する必要があります。

 

8. 外部に頼る

あらゆる問題を解決できる「どこでもクラウド」の実現は、簡単ではありません。これには、時間、努力、専門知識が求められます。

この3つを自社で揃えられるなら、それは素晴らしいことです。しかし、それができない、または、ハイブリッド環境でのワークロードの構築、展開、管理、自動化を計画する長期的な業務に、リソースを確保できない場合、アウトソーシングを利用するのが合理的です。

外部のアドバイザリサービスを利用すると、クラウドを迅速に導入できます。一般に、コンサルタントのグローバルチームが、ビジネスに適したハイブリッドクラウドを構築できるように支援してくれます。このサービスによって社内チームの文化を育成し、スキルを向上させることもできます。パブリッククラウドとプライベートクラウドの統合業務のほとんどを、コンサルタントチームに対応してもらえるため、今日最も一般的に発生している課題の多くを避けることができます。

「どこでもクラウド」のビジョンは、ほとんどの組織で実現可能です。しかし、それを達成するには、確かな計画、それを実現しようという意欲、外部コンサルタントへの委託を検討する意志が必要です。この3つが可能な組織なら、ITスタッフが、『2つのクラウド物語』を無事に読み終え、優れたエクスペリエンスを生み出すことができます。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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