2019年1月17日

失敗したビッグデータプロジェクトの7つの教訓

ビッグデータイニシアチブの目標を達成できなかったとしても、すべてが無駄になるわけではありません。このガイドラインでは、失敗を分析し、成功につながる重要なヒントを見つける方法をアドバイスします。

Gartner社のアナリスト、Nick Heudecker氏によると、85%近くのビッグデータプロジェクトが失敗に終わっています。非常に高い割合ですが悲観することはありません。ビッグデータイニシアチブが崩れ去ったとしても、次回は誰もが成功を得られるような価値ある教訓を引き出すことができます。
「大多数のビッグデータイニシアチブが、適切に調査されず、期待した将来性につながっていません」と、DNA Behavior International社でマネージングディレクターを務めるLeon Morales氏は語ります。行動科学を専門とする同社では、企業が情報に基づく決断を行えるように支援しています。ビッグデータイニシアチブが実験段階から先に進まず放棄される共通の理由は、人員、テクノロジー、過剰な期待、不十分な計画にある、と同氏は続けます。「多くが素晴らしいアイデアで開始されますが、結果として、すでに忙しい人が、別のプロジェクトをさらに担当するような状況が生まれています」。
目標を達成できないビッグデータイニシアチブを終了させたり、凍結したりするのは決して好ましいことではありません。しかし、よい面もあります。次のチャンスにはビッグデータイニシアチブを成功できるように、本稿では、失敗したイニシアチブの7つの教訓を紹介します。

  1. 失敗につながった原因を把握する
    まず、事後のレビューを行うようにとMorales氏はアドバイスします。「このレビューではチームのメンバー全員が、何に成功し何に失敗したのか、また、何を絶対に行うべきではなかったかについて報告できます」と同氏は続けます。
    「これまで担当したどの職場環境でも、そうしたフィードバックを必ず行うようにしました」とMorales氏は語ります。「お互いの違いを尊重する方法とともに、プロジェクトを実施段階に進める方法が分かります」。
  2. リーダーの意欲を確認する
    どの企業データプログラムも課題にぶつかります。深刻な場合は、リーダーがそれをサポートし擁護しなければなりません。「チームメンバー全員が、成功する上で重要な役割を果たします」とMorales氏は指摘します。コールセンターに特化した5,000万ドルのビッグデータイニシアチブを思い出し、こう続けます。「支援を受け資金調達もできていました。しかし、責任を持ってプログラムを最後まで仕切る運営委員会がありませんでした」。
    その1年前、Morales氏は、別の5,000万ドルプログラムを担当しました。このプログラムでは目標どおりの成果をすべて得られ、期限と予算の要件も満たすことができました。「その違いは、有力な運営委員会があったことと、チームメンバーと話し合ってプログラムの妨げとなる障壁をなくしたことにありました」と同氏は報告します。
  3. スタッフの承諾を得る
    ビッグデータプロジェクトで経営者レベルのサポートを完全に得られても、下位の従業員の承諾や協力がなければ、プロジェクトの失敗がすぐに決定的になります。
    「多くのプロジェクトで、影響を受けるスタッフから反対意見が返ってきます。仕事が奪われるのではないかと心配になるのです」とIntelligencia社のマネージングディレクターを務めるAndrew Pearson氏は指摘します。ソフトウェアコンサルタントを手がける同社は、カジノ、ホスピタリティ、エンターテインメント、eスポーツ、スポーツくじの業界にサービスを提供しています。従業員の不安を軽減するには、教育とトレーニングが不可欠です。同氏は続けます。「仕事が確保できることと、その仕事が意義深いものになることを示す必要があります。単にデータを収集するのではなく、データを分析し本当のビジネス価値を生む仕事であることを伝えるのです。そうすれば、従業員は反発せず、協力的になってくれます」。
  4. プロジェクトの目標を企業の目標に合わせる
    ビッグデータプロジェクトの実施は、理解しづらく、困難になることがあります。そのため、その目標を主要な企業目標と一致させることが、どのビッグデータプロジェクトでも重要になります。「プランニングプロセスではそうした目標の不一致がよく起こります」とBriana Brownell氏は考察します。同氏は、AIベースで意思決定をサポートする技術のプロバイダー、Pure Strategy社で創設者兼CEOを務めています。
    「顧客の維持や販売促進などのビジネスに重要な事項で、プロジェクトの効果を得られないことがあります」とBrownell氏は語ります。「そうなると、そのプロジェクトは失敗するか、棚上げになってしまいます。それよりも重要なプロジェクトに注意を払えなくなるからです」。また、ビッグデータプロジェクトを企業の目標と一致させることで、従業員が、許可がなくても結果に従って行動できるようになります。「彼らは、その目標が、自分の役割の目標と同じであることがすでに分かっています」と同氏は補足します。
  5. 高品質のデータを使用する
    不正確で、形式に不備のあるデータや、信頼できないソースから取得したデータを使用すると、入念に計画したビッグデータプロジェクトであっても失敗に終わります。ソースを検証できる標準化されたデータが、ビッグデータイニシアチブの成功の鍵を握ります。
    Pearson氏は具体例を挙げます。「当社が連携している、ある国のカジノでは、来店時に連邦政府が発行したIDを提示する必要があります。これにより、顧客は来店客を一元的に把握できます。複数の国のIDを使用する、その他の一部の顧客よりはるかに簡単に一元化できています」。同氏はこう続けます。1つの信頼できるソースから取得したクリーンデータによって顧客を支援し「来店客が費やす金額をきわめて正確に取得できるようにしています。つまり、当社は、正確なマーケティングのために必要なコンポーネントである、顧客の生涯価値などについて、信頼できる数字を取得できます」。
  6. 優れたソフトウェアを探す
    分析ソフトウェアの市場は、急速に進歩し、拡大を続けています。有意義または正確な分析情報を得られなかったことが原因でビッグデータプロジェクトが失敗した場合は、その他にどのようなソフトウェアを利用できるかを確認するとよいでしょう。
    「あるビッグデータプロジェクトで、問題の一部が、当社が販売したソフトウェアが古く、期待した処理を行えないことにあることが分かりました」とPearson氏は回想します。「その企業には、プロジェクトにより適した別のソフトウェア製品があることを発見できたため、方向転換しました。その後しばらくして、契約どおりの成果物を提供できたのです」。
  7. 継続かやり直しかを判断する
    失敗したプロジェクトは、終了させるべきでしょうか。または再設計と改善を行うべきでしょうか。それは場合による、とMorales氏は語り、こう続けます。「その技術が実証されていなければ、取りやめる価値があります」。その一方で、イニシアチブの指導、計画、構築を行っている人が、技術力が高く、自身の失敗から学べる場合は、行き詰まったプロジェクトを復活させる意味があります。
    Morales氏は、ビッグデータプロジェクトは、人員、プロセス、テクノロジーの3つの主要な領域に絞り込めると言います。「これにより、何がプロジェクトの妨げになっているのか、また、それをどのように修正したり取り除いたりするのかを特定できます」。行き詰まったプロジェクトをあらためて開始するには、異なるレベルでの検討や自由な意見交換が必要になることもあります。「個人とつながることで得られる力を過小評価してはなりません」と同氏は語ります。「そうした個人の行動の違いを尊重すれば、プログラムを前進させる貴重なアイデアが見つかります」。


結論

本稿のアイデアはどれも、各チームメンバーの行動の違いを心から尊重するリーダーがいれば、簡単に実行に移せると、Morales氏は考えています。「関係性と結果には、私たちが会社内でどのように周りを捉えているかが反映されます」と同氏は語ります。「成功するにはどちらの要素も必要ですが、プランニングの際には、必ずしも、関係性にこだわることをプロジェクトマネージャーに求める必要はありません」。

この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

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