2019年1月17日
ビッグデータを食品業界でおいしくいただく6つの方法
ビッグデータとともに食卓を囲む。
食べ物には驚くほどの力があります。進化という側面から考えると、私たちはおいしいものに惹かれるようプログラミングされています。正しく扱えば、食べ物は、私たちが進化の過程で求めてきたその他のものとほぼ同じ価値を持つようになります。
実はもう、食べ物の扱い方は向上しつつあります。それを可能にしたのが、ビッグデータです。
ビッグデータとは、手に負えないほどの膨大な量の情報をまとめ上げ、管理するのにちょうどよいサイズの情報にする科学です。これにより、あらゆる業界で驚くべき情報が明らかになっています。市場の動向の見極めや詐欺行為の特定から、行方不明になった航空機の捜索に至るまで、さまざまな状況でそうした分析が行われています。
そのような例は、食品産業と農産業では氷山の一角です。これから述べるように、ビッグデータによって、食品産業と農産業のほとんどの領域が最適化され、その価値は世界中で8兆1,000億ドルにも上ります。
こつこつと集められた分析情報のおかげで、私たちはおいしいものを効率よく食べることができています。こうした情報の発見によって、食品と農産品の業界が8兆1,000億ドルもの莫大な価値の業界に変わるかもしれないのです。
ビッグデータが皆さんの食卓に新たな情報を運ぶ6つの方法を紹介します。
レストランの価格設定を最適化する
ステーキの値段が上昇したとします。レストランではどう対応すべきでしょうか。
解決策の1つは値上げです。しかし、レストランのPOSシステム、ロイヤルティプログラム、予約などから収集したデータを活用して予測分析を行うことで、レストランのオーナーが、チキン料理を値上げした方がよい場合もあることを把握できます。
ステーキを注文する顧客に影響を与えずにチキン料理を値上げして、ステーキの価格上昇分を相殺することができます。そう語るのは、レストランに関するインテリジェンスをクラウドベースで提供する企業、Marketing Vitals社のCEO、Rom Krupp氏です。ステーキの顧客は値上げをあまり受け入れない、と同氏は指摘します。「ですから、値上げすれば顧客を失います。当社には、すべての顧客の行動を把握し、変化に対する顧客の反応を予測できる機械学習システムがあります」。
同氏はこう続けます。「POSデータには、顧客の考えを示す情報が含まれています」。サラダにブリトーを注文する人がいれば、それは、その人がレストランの経営者にフラワートルティーヤを求めていないということを示しています。グルテンフリーを望んでいるのか炭水化物を拒絶しているのかは明確ではなくても、そこがデータポイントになります。「データにはまだ利用されていない顧客の意見が隠れています。私たちはそうした情報を活用しています」。
活用すべき情報が数多くあります。2017年のレストラン業界は、アメリカだけでも7,990億ドルと評価されていました。
では、活用の場をビールサーバーに移しましょう。
バーの経営維持を支援する
2017年のアメリカのビール市場は、1,114億ドルと評価され、ビール会社やパブのオーナーを歓喜させました。その一方でこの業界は、バーテンダーがお酒を無料で振る舞う、必要以上に注ぐ、ストックのお酒を飲んでしまうなどの問題を抱えています。バーテンダーとは関係のないその他の問題も考えられます。この業界を救うのがビッグデータを活用するWeissbeerger社です。
Weissbeerger社は、ビッグデータとIoTによるサービスを、ビール会社、ソフトドリンク製造業者、バーに提供しており、データサイエンティストや機械技術者だけでなく、「業界のエキスパート」(バーテンダーは穏やかになっているとして) を雇い、バーやビール業界の効率化を実現しています。また、「消費を分析し、バーとビール会社に正確な在庫予測と発注案を提供する包括的な予測モデル」の確立を約束しています。これにより、売り上げを最大化できると同社は伝えています。
Weissbeerger社は、NFCとQRの技術を組み込んだグラスを製造するGlassify社とも協力しています。この技術は、飲酒に関する行動を把握して、ターゲットにすべき人を判断します。バー経営者にとって頼もしい技術です。
スナック食品のトレンドを予測する
新しいスナック食品の開発を目指す企業は、現在人々が食べている食品や風味を把握しようと、LatentView Analytics社のようなデータ分析の企業に関心を寄せています。同社の消費者向け商品担当ディレクター兼責任者である、通称Shalabh氏は、こう語ります。ビッグデータがあれば「食品のトレンドが今後どう変化するかを把握できます」。
食品のトレンドは、レストラン、テレビ番組、食品関連のブログなどのそれぞれに影響を受けます。LatentView社は、オンラインメニュー、新聞のレビュー、食品関連のブログ、GrubHubやYelpの高評価などの利用可能なデータによってトレンドを判定しています。
そのときこそ企業が新たなスナック食品を投入すべきときです。Shalabh氏はこう指摘します。「人は、気に入ったものを食べるときに好みの味を意識しています。そのような味の食品を発売すれば、すでに販売している新しい風味のスナックよりも受け入れられる傾向があります。食品業界のエコシステム全体に目を向けた、そうした点にこそ価値があります」。
Shalabh氏は続けます。データを安価に取り出せる一方で、「AIと機械学習を使用して、明確なトレンドとなる一連の出来事を把握できるという大きな価値を得られます」。同氏はまた、現在ヒマラヤ岩塩がポップコーンの味付けに使われているが、LatentView社が6年前にこれを見事に予測したとも語りました。
ビッグデータによって特定できるのは、ありふれたベーコンとアボカドの斬新なレシピといった食品トレンドだけではありません。材料の新たな組み合わせも特定できます。これにより、Shalabh氏の次の重要な予測である、豆を原料とし乳成分を含まないヨーグルトに合う食材がわかります。
食事宅配サービス業界を充実させる
ダイエット業界のサービスだった食事宅配サービスが、夕飯に直接利用されるようになり、企業同士の顧客獲得競争が激化しています。Mr. Meal Delivery社の共同創設者、Janet Gianetti氏は、こうした企業が1,000社以上に上り、そのほとんどが主要都市に集中していると評価しています。
「ビッグデータは、こうした全国的な食事宅配サービスの、契約者の獲得、受注管理、サプライチェーンマネジメントで重要な役割を果たします」。Gianetti氏はそう語ります。「配送センターからの平均配達時間を、賞味期限を含めて計算し記録すると、さまざまな統計上の問題が常に発生します。これを最適化できるのはビッグデータだけです」。
それと同じ情報が食材の宅配ビジネスでも不可欠です。このサービスでは、箱詰めされた材料が届き、それを自分で調理できるようになっています。この食材セットで、「スタートレック」のレプリケーターや「宇宙家族ジェットソン」のFoodarackacycleのように、押しボタンや音声入力による驚くべき調理が可能になるわけではありません。しかし、食材宅配は食べ物を複製できないものの、収益を倍増させます。2017年に、22億ドルのグローバルビジネスと評価されており、今後10年間で、50億ドルの市場に成長する可能性があるのです。
ハイドロポニックスを向上させる
ハイドロポニックスとは、土の代わりに栄養分を含んだ水で植物を育てる技術です。ずいぶん前から続く技術ですが遅くとも2013年頃から投資家に注目されています。ハイドロポニックスが、生育期の縛りからの解放と、確実な地球温暖化の抑制につながっても不思議ではありません。
ビッグデータによって少なくとも1つのハイドロポニックスビジネスが実を結びました。Freight Farms社のCOO、Jon Friedman氏は、150以上の農場で、水のpHレベル、湿度、気温、気流などの変化する値を追跡していると言います。「一貫性を効率化につなげようと、種まきから販売まであらゆるものを追跡しています。それをさらにルール化と自動化につなげています」。
Friedman氏によると、Freight Farms社は、そうしたデータをパフォーマンスと結び付けているとのこと。収集したデータを利用して農業従事者のネットワークを追跡し、バジルなどの特定の作物を栽培している人だけでなく、栽培している条件も把握しています。「収穫高が増大している理由が、現地で入力される情報や、農場の運営状況からわかります」と同氏は語ります。また、同社は、収集したデータに基づいて提案も行っています。
従来の農場経営では、ビッグデータを採り入れる準備が始まったばかりですが、アメリカの農業における純利益が634億ドルであることを考えると、採用を急ぐべきです。世界中の人の食を支えるために、ビッグデータの最善の実践方法が強く求められています。
インフラストラクチャ全体を構築する
西洋では鶏よりたまごが先といいますが、中国では始祖鳥よりもデータが先です。西洋とは違い「最初にビッグデータありき。インフラストラクチャはその後です」。そう語るのは、上海を拠点とするThe Silk Initiative社のシニアクライアントマネージャー、Joel Bacall氏です。
「ここではビッグデータがインフラストラクチャを築いています」とBacall氏は続けます。「(食品製造会社は) そうしたデータを見て、中国のこの都市で牛肉の販売が上向いているので、この規模の工場、この数の冷凍庫、これほど多くの作業が必要になる、と結論できます。その規模を特定の農村地域で実現できていないが需要はあるとなれば、それが倉庫または流通センターを建てる正当な理由になります。インフラストラクチャの構築はビッグデータにかかっているのです」。
とは言え、情報を購入したりスクレーピングしたりできる西洋とは違い、中国で第三者がデータを入手するのは簡単ではありません。Bacall氏は、顧客による評価など、企業が頼りにするデータポイントの大部分が、2つの大手e-コマースプラットフォームによってコントロールされていると語ります。
それでも、安定した大企業はそうしたデータを取得し、それを明確な指針にすることができる、とBacall氏は続けます。「人々はデータによって町づくりを進めています。データは自ら語りかけます。それがデータの大きなメリットなのです」。
データが語りかけるとしたら、こう言うでしょう。「私に町を作ってください。出来上がったら、ごはんにしましょう」。
食品業界のビッグデータ: リーダーへの教訓
- ビッグデータによって、Instagramのユーザーに話題のアイテムが知れ渡るのと同じくらい、あるいはそれよりも早く、トレンドが明らかになっています。たとえば、職人技のブリスケットが、近々グルメの間で大評判になることを疑うなら、牛肉に先行投資してみましょう。そうすれば、実際に食べる頃に元を取ることができます。
- 中国の人たちはデータを基に都市全体を築いています。あなたは今日、人生を築く一日をどう過ごしましたか。
- ビッグデータ、AI、機械学習の連携によって、実際に食品業界のイノベーションが進んでいます。これにより、事実を原動力にした成果を得られますが、そのためにはデータとデータサイエンティストが必要です。
- これは、インハウスにおけるデータ操作の域を超えています。食品業界における生産から消費までのさまざまな領域に影響を与えるエッジテクノロジーがこれを可能にしています。
この記事/コンテンツは、記載されている個人の著者が執筆したものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

Carol Pinchefsky
フリーの寄稿者、15件の記事
Carol Pinchefsky氏は、ニューヨーク市在住のフリーランスライターで、本に囲まれて夫と暮らしています。執筆では、テクノロジーとギーク文化の接点をよく取り上げています。
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