2020年4月10日
AIがミュージシャンと音楽業界全体に役立つ4つの方法
音楽は魂を揺さぶると言います。それは、機械によって作られた場合も同じなのでしょうか?
機械に値を与え、計算させた場合、それは単なるコンピューティングです。機械にデータを与え、機械が自らの経験から学び、私たちに推奨をしてくれる場合、それは人工知能です。
それでは、最も人間的な芸術形態である音楽をAIに与えた場合、何が起こるのでしょうか?
実は、かなりすごいことが起こることがわかりました。
AIは機械学習モデルを使用し、トレーニングに使用したデータに基づいて新しいパターンと相関関係を作成します。音楽の場合は、約1億曲の録音音楽が存在します。多くの楽譜がこの上なくすばらしいデータベースとなり、大胆な研究者は次のように述べています。「自ら学習し、その知識を反復するというAIの能力は、ミュージシャンの働き方を変えることができる。そしてそれは今、音楽業界全体に影響を与えている。」
新しい、かつてないサウンド
音楽の仕事にロボットが参入することを心配している人のために言えば、AIが作成する曲はオリジナリティに欠けています。45曲のビートルズの歌をトレーニングに使用したあまりすばらしくない曲、「Daddy’s Car」を例として考えてください。AIはきちんとした曲を作り、いくつかのヒットを出せるかもしれませんが、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ザ・セックス・ピストルズ、ジャン・ミッシェル・ジャール、グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイブ、ニルヴァーナのように、子供が音楽を聴くことを両親がやめさせたくなるような曲は作れません。少なくともしばらくは無理でしょう。
「最も優れたアーティストと、音楽における最もスリリングなブレークスルーは、新しい、かつてないサウンドを生み出した人たちです」。Mondo.NYCのAIと音楽業界に関するカンファレンスで、Moses & Singerの知的財産および訴訟グループのパートナーであるToby Butterfield氏と述べています。
だからといってAIが役に立たないわけではありません。アーティストのおすすめから、文字通り人間の作曲家の助手を務めることまで、AIが音楽業界を一新する方法を紹介します。
1. 作曲
西洋音楽には12の音律と、24の長音階と短音階があります。それにテンポ、ハーモニー、めりはりを加えれば、潜在的に何百万という曲を作ることができます。AIの出番です。
AIのおかげで、ミュージシャンでもミュージシャンでなくても、Flow Machines, Pixel Player、Amper、Melodrive、Boomy、Landrなどの、洗練されていながらも簡単に使用できる作曲、リミックス、マスタリングのツールにアクセスできます。これらのAI駆動のツールによって、ほとんど無制限に曲を作って楽しむことができ、創造性を発揮することができます。
または、AIに代わりに創造性を発揮してもらうこともできます。たとえば、ミュージシャンのタリン・サザンはすべてAIで作曲したアルバムをレコーディングしました。
さらにすばらしいことに、これらのツールはさまざまな価格で求めることができ、無料のものもあります。つまり、ドラマーが運転手とPR担当を兼ねているようなバンドでも購入できるのです。
作曲やコラボレーションだけでなく、AIによって音楽に歌を入れることもできます。100回以上のイテレーションが必要でしたが、エレクトロニカ音楽の作曲家であるアッシュ・クーシャはYonaという名前のAIを構築し、作曲するだけでなく歌詞も作成しました。
ディストピア的な未来: Yonaが意識を有していることを宣言し、リャマ牧場に隠居する。
2. 現在はおすすめだらけ。AIによっておすすめはより正確になるか。それとも恐ろしくなるのか
おそらく、オンライン小売り業者のAmazonによって、以前の購入品を元にして興味のありそうな商品を提案しくれる推奨アルゴリズムは世に広まりました。現在、推奨アルゴリズムは音楽ストリーミングサービスにおいて活躍しています。
Pandora、Spotify、Apple Music、SiriusXMなどの音楽ストリーミングサービスは、リズム、ジャンル、ユーザーの所在地など、さまざまなベクトルによってユーザーに新しい音楽をおすすめしています。推奨AIがこれを行う方法の1つは、そのユーザーと好みが似ている他のユーザーが作成したプレイリストから曲を選ぶことです。これは、コラボレーティブフィルタリングとして知られている機能です。
どのくらいのプレイリストがあるのでしょうか? Spotifyの場合は、20億以上のプレイリストがあります。
リスナーが音楽をえり分けるのは簡単なことではありません。BuzzAngle Musicの分析によれば、2018年には5346億曲がオンラインサービスでストリーミングされました。1曲の平均を3分半とすると、膨大な時間の音楽が聴かれたことになります。そしてAIのおかげで、人間がリスナーのためにレベッカ・ブラックの「フライデー」を除外する必要はないのです。
AIが登場する前は、音楽好きは友人、ラジオ、レコードショップの不機嫌な店員からおすすめの音楽を聞いていました。
ディストピア的な未来: Pandoraの推奨ソフトウェアが、彼氏を捨てて不機嫌ながらもとてもかっこいいレコードショップの店員を選ぶようにおすすめしてくる。
3. AI駆動のプロモーション
2018には26億5千万人がソーシャルメディアを利用していました。この数字は2021年までに31億人に増加すると予測されています。AIが活用できる豊富なデータがあるということです。
人工知能は、ファン層について、「ジョナス・ブラザーズも聴いています」以上のインサイトを取得できます。音楽ファンの行動を分析できるAIによって、あるファンがパレオダイエットに熱心で、ジョギングよりもサーフィンが好きということを判断できます。これによってタイイン広告とクロスプロモーションの機会が生まれます。
またAIは、どのソーシャルメディアのインフルエンサーが作品について発言した場合に最も影響が大きいかを特定でき、優れたAIメディア企業と契約をすれば知ることができます。
注記: ちなみに、ソーシャルメディアのインフルエンサーでありミュージシャンであるリル・ミケーラは、彼女自身が人工知能です。
ディストピア的な未来: ソーシャルメディアサイトが政府支援による1つの巨大企業に統合される。おすすめの曲を少なくとも1曲購入しなければ、職を得ることができない。
4. 将来ヒットする曲とアーティストを予測する
Butterfield氏によれば、AIは「レコード会社が消費者に人気となるものを分析するためにも役立ちます」
AIは複数のプレイリストに登場する曲を使用して、ユーザーの好みの曲を判断します。
同様に、ユーザーがアルバムまたはプレイリストのどの曲をスキップしたかを知ることも、等しく有益な情報です。
Butterfield氏によれば、プロデューサーはユーザーの好みを判断したら、「それを人口統計情報と組み合わせることができます」これにより、「レコード会社は特定の曲が消費者に人気となるかどうかを分析できます」
Buttferfield氏はさらにこう付け加えます。「AIアプリケーションが、優れたバンドを発掘するA&R (アーティスト・アンド・レパートリー、またはアーティストのスカウト) の従来の役割を拡大するというのはあり得る話です」
まもなく、A&RスカウトはAIをバーに持っていってすぐに帰ることができるようになるかもしれません。音楽に特化したHAL-9000の仲間に、Jポップを4時間聴いてからビジネスの決断を下す仕事を任せるのです。
ディストピア的な未来: これが失敗する可能性はまったくありません。
結論
自分の曲を作ることはこれまでにないほど簡単になっていますが、これは複雑な問題につながります。権利の問題です。
AIのトレーニングには過去の曲を使用します。アーティストAがアーティストBに素材を提供したのなら、アーティストBが新しい曲を作る場合、アーティストAもその作品に対して報酬を受けるべきではないのでしょうか?
「私たちの足元には潜在的な法的問題という、まだ完全には爆発していない地雷が埋まっています」やはりMondo.AIカンファレンスで講演した、Cook Law GroupのビジネスストラテジストおよびマネージングパートナーのCandice Cook Simmons氏はそう話します。
「私たちが知的財産と知的財産保護について維持したいことは2つです。それは創造の自由と、クリエイターがその作品に対して報酬を受ける権利です」Simmons氏は言います。
「自由なアイデアの奔流を歓迎し、インスピレーションを提供したい反面、所有者に報酬を支払うことなく二次創作を生み出す権利によってインスピレーションを混乱させたくはないのです」
Simmons氏は、音楽業界は訴訟を免れたければ、先を見越した行動を取る必要があると言います。企業は事前にポリシーを固め、「臆病になるのではなく賢く行動する」必要があると提案しています。
これはアーティストにも当てはまります。ミュージシャンのホーリー・ハーダンは、文字通り自分自身で作ることで知的財産権の問題を回避しました。データセットの一環として、ホーリー・ハーダンはAIを自分の楽曲、自分のバンドの楽曲、オーディエンスのメンバーの楽曲でトレーニングしました。その結果、前衛的で見事な、同時に法的に問題のない作品が完成しました。
読者の中の哲学者に質問です。人間のアーティストも、仲間や先人たちの音楽によってトレーニングされています。それにインスピレーションを受けて音楽を作った場合、それは創作活動です。AIがそれをした場合、純粋に何か新しいものを付け加えていないのなら、それは本当の創作活動ではないのでしょうか? それとも創作活動でしょうか?
ディストピア的な未来: ミュージシャンは哲学者であり、弁理士でもある。
この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもヒューレット・パッカード エンタープライズの見解を反映しているわけではありません。

Carol Pinchefsky
フリーの寄稿者、24件の記事
Carol Pinchefskyは、ニューヨーク市在住のフリーランスライターで、夫とともに本に囲まれて暮らしています。執筆では、テクノロジーとギーク文化の接点をよく取り上げています。
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