2018年7月31日

テクノロジー企業による国際宇宙ステーションの4つのクールな活用事例

シリコンバレー発の次のイノベーションは、宇宙を舞台に推進されるとの噂は本当でしょうか。先頃開催された国際宇宙ステーション (ISS) 研究開発会議のパネリストたちの答えはイエスです。

3Dプリンター、オンボーディング用のスーパーコンピューター、小型衛星、高耐久サーバーなどを製造しているテクノロジー企業の多くが、こうしたハードウェアが過酷な環境下でどのように動作し、どのような課題が残されているかを明らかにする目的で、自社製品を宇宙に送るチャンスを狙っています。以下では、サンフランシスコで開催されたISS研究開発会議のパネルディスカッションで、こうしたベンダーから説明があった、ISS上で行われている実証実験およびその意義について簡単にご紹介します。

 

必要なモノを宇宙で製造

社名が示すとおり、Made in Space社は宇宙空間での製造を専門とする企業で、世界初の無重力3Dプリンターの展開などのプロジェクトにISSを活用しています。現時点ではまだ、同社の3Dプリンターは宇宙飛行士が必要なモノを何でも製造できる段階にはなく、さまざまなミッションで3Dプリンティングを活用するための実証実験が続けられています。初期のプリントアウトはごく基本的なもので、「キャリブレーション用サンプル」など、プリンターが適正に動作することを確認するためのテストオブジェクトが製造されています。この実証実験では、3Dプリンティングにおける初の試みとして、あるアウトプット (ラチェットの製造) 用の設計コードが地球から宇宙ステーションにアップリンクされました。

ISS conference

パネリスト (左から右へ): Loren Grush (The Verge、科学担当記者)、Andrew Rush (Made In Space社、社長兼CEO)、Nick Allain (Spire Global社、ブランディング担当ディレクター)、Mark Fernandez (HPE、Spaceborne Computerペイロード開発者)、以上敬称略。イメージクレジット: David Needle

Made In Space社CEOのAndrew Rush氏によると、これまでのところISS上でプリントアウトされたオブジェクトに特段の問題は発生していません。今後は、これらのオブジェクトが地球に送り返された後、地上でプリントアウトされた同一オブジェクトとの詳細な比較分析が実施される予定になっています。

Rush氏が指摘するように、宇宙ステーションにおける3Dプリンティングは、宇宙飛行士の生存と活動を支える強力なツールとなります。「私たちは基盤となるテクノロジーとして、必要なモノを製造できるメタツールの開発から着手しました」と同氏は述べています。「これはアメリカの西部開拓時代に、人々が町の建設に必要な道具を携えて永住の地に入植したのと同じことです」。

 

宇宙空間のスーパーコンピューター

HPEがSpaceborneスーパーコンピューターをISSに配備する計画を進めてきたのは、ある顧客からの要望によるものです。その顧客であるNASA Ames (シリコンバレーに拠点を置くNASA研究センター) では、HPE製の高性能SGIスーパーコンピューターが活用されています。

「NASA Amesは火星探査ミッションにあたり、コンピューターリソースをロケットに積み込み、1年以上を要する火星までの道程でハイパフォーマンスコンピューティングを活用することを計画しています」と、HPE Spaceborne Computerペイロード開発者のMark Fernandez博士は説明します。

「私たちは一般的なデータセンターで使用されている標準サーバーを、特段の堅牢化などを行うことなく、昨年8月に打ち上げました」とFernandez博士は振り返ります。「このサーバーは、機能しないかすぐに故障するだろうとの大方の予想に反して、現在も稼働し続けています」。

危機的な状況も幾度か発生しました。一度はISSで火災警報が誤作動したことで、Spaceborneへの電力供給が自動的に遮断されました。「Linuxサーバーのプラグが抜かれるのは最悪の事態であり、私たちはSpaceborneが二度と起動しないのではないかと危惧しました。しかしながら、すべてが再接続された後にヘルスチェックを実施したところ、Spaceborneは問題なく動作を再開していました」とFernandez博士は説明します。

さらに数ヶ月後には、ある宇宙飛行士が誤ってリセット電源ボタンを押してシステムを再起動させてしまいました。Spaceborneはこの試練も無事に切り抜けることができました。

「この宇宙飛行士は自分のミスをひどく悔やんでいました」とFernandez博士は振り返ります。「しかしながら私たちは、これは現実において起こり得る、シミュレートできないタイプの事故であり、この思わぬミスから有益な情報が得られたことを彼に伝えました」。

 

洋上の不正行為を発見

コンピューター業界において、効率化を目的として、コンピューターの小型化とモバイル化が推進されているのと同様に、衛星もより小さくより強力なものへと進化しています。データ分析会社のSpire Global社は宇宙空間に61個の衛星を保有しており、海洋を航行する船舶の追跡から天気の傾向の把握まで、さまざまな業務に活用しています。

「当社の打ち上げの約45%はISSを経由しています」とSpire Global社でブランディング担当ディレクターを務めるNick Allain氏は説明します。「ISSからは最高の画像と映像を入手できます。これは宇宙に進出するうえで、信頼性と安定性に非常に優れたやり方です」。

Spire Global社のある顧客は、特定海域における魚の乱獲を監視するために衛星データを利用しています。「海賊や密漁は重大な問題であるため、こうした活用事例は高い注目を集めています」とAllain氏は指摘します。

一例として、衛星画像を調べることで、一部の漁船が割当漁獲量に達したにもかかわらず、獲った魚を洋上で冷蔵庫を改造したボートに積み替えたうえで、再び割当量いっぱいの魚を獲ってから帰港していたことが判明しました。彼らは2度目の漁獲量のみを申告していたのです。

「当社が提供した写真に基づきインドネシア政府は不正漁船を爆破処理し、それらの証拠写真を不正行為に対する警告として使用しています」とAllain氏は述べています。「海賊船は人身売買にもかかわっているため、こうした行為には厳しく対処することが重要です」。

 

サーバーとソフトウェアの信頼性の向上

現時点では、HPE Spaceborne Computerは、ISSの日常業務にはまだ活用されていません。ISSに配備されて以降の350日以上にわたり、Spaceborne上では動作確認のための一連のシミュレーションと試験運用が行われています。

「いずれはこの汎用のLinuxコンピューター上で、ミッションをサポートするためにNASAが開発したさまざまなソフトウェアが運用されるようになるはずです」とFernandez博士は説明します。「例えば、宇宙空間でCAD/CAM設計を行って必要なパーツを製造することも可能になります」。

HPEはその強みを生かして、Spaceborneの信頼性とセキュリティを高めるために、ソフトウェアの「堅牢化」にも取り組んでいます。Fernandez博士によると、HPEの特許協議会では、特許を取得できる可能性がある7つの領域について調査が進められています。

Spaceborneが今後も宇宙空間で順調に動作し続け、地球帰還後に実施される試験にも合格すれば、HPEはこの実証実験から得られた知見を地球上の課題にも応用できるとFernandez博士は考えています。例えば、こうした知見を活用することで、北極での調査や海底探査など、地球上の過酷な環境下で運用されるコンピューターシステムの改善も可能になるはずです。

この記事/コンテンツは、記載されている特定の著者によって書かれたものであり、必ずしもHewlett Packard Enterpriseの見解を反映しているとは限りません。

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