三菱自動車工業が、CATIA環境をeVDI化し設計業務と働き方の改革を推進

三菱自動車工業株式会社 様

所在地:東京都港区芝浦三丁目1番21号 msb Tamachi 田町ステーションタワーS

URL:https://www.mitsubishi-motors.co.jp/

高性能HPE 3PAR StoreServオールフラッシュアレイを採用し、高速なエンジニアリングアプリケーション配信を実現

"HPE 3PARは、App Volumesによるアプリケーション配信を迅速に実行し、高速な起動を実現しました"

―三菱自動車工業株式会社
 グローバルIT本部
 エンジニアリングIT部
 河邉 誠也 氏

三菱自動車工業の技術開発の中核を担う岡崎技術センターに「新R&Dオフィスビル」が竣工した。この戦略拠点には、技術者同士のコミュニケーションを活性化させ、コンセントレーション(集中力やひらめき)を高めるための工夫が数多く盛り込まれている。HPE 3PAR StoreServオールフラッシュアレイが採用されたエンジニアリングVDI環境は、その柱の一つである。HPE 3PARは、優れたパフォーマンスと信頼性で設計のスピード化・効率化を支えるとともに、技術者の柔軟で快適な働き方の実現に寄与している。

 

業界

製造

 

目的

岡崎技術センター「新R&Dオフィスビル」の竣工に合わせたeVDI環境構築。デスク固定のワークステーションを撤廃し、ノート型端末と無線LAN環境を利用した柔軟な設計・開発スタイルを実現する。

 

アプローチ

200種を超えるアプリケーションの中から、ユーザーごとに組み合わせの異なる環境を自動配信する仕組みを整備。高負荷に耐える高性能オールフラッシュストレージを採用し、快適なレスポンスとユーザー体験を実現する。

 

ITの効果

・HPE 3PAR StoreServ 8450オールフラッシュアレイ(4コントローラー機)を採用し、30万IOPSを1ミリ秒以下のレイテンシで実現

・VMware Horizon/App Volumesによるアプリケーション配信を迅速化、高速起動を実現

・インライン重複排除および圧縮によりデータ量を1/8に削減(システム領域は約1/25)

・GPU搭載の高密度サーバーHPE Apollo 2000 Systemを採用し2Uサーバー比でスペースを1/2に

 

ビジネスの効果

・高性能のeVDI環境が場所を選ばず利用可能になり、新R&Dオフィスビル内のコラボレーションを活性化

・海外、国内各拠点、外出先、自宅等からセキュアに設計情報を参照可能になり、技術者の働き方改革に寄与

・1時間以上を要していた大規模設計データの参照を10分程度に短縮し、設計業務の効率化を推進

・物理ワークステーションを半減させ、セットアップや移設に要する工数を大幅に低減

ご導入製品

VMware Horizon

VMware App Volumes

HPE 3PAR StoreServ 8400 オールフラッシュアレイ

HPE Apollo 2000 Gen10 System


チャレンジ

新R&Dオフィスビルを竣工し技術者の働き方改革を推進

 

2018年10月、三菱自動車工業が岡崎技術センターに「新R&Dオフィスビル」を竣工させた。同社の技術開発の中核を担う新たな戦略拠点の誕生である。吹き抜けを備えた開放感あふれる空間は、新たな変革に挑む意思が反映されているという。グローバルIT本部 エンジニアリングIT部 マネージャーの東村義則氏は次のように紹介する。

「新R&Dオフィスビルには、新しい働き方を実現するための様々な工夫を盛り込みました。技術者同士のコミュニケーションを活性化させ、コンセントレーションを高めて新しいアイデアを具現化していくことが大きな目標です。多目的に利用できるコミュニケーションスペースやオープンテラスも用意し、リラクゼーションにも考慮しています」

クロスオーバーSUVとして人気を博している「エクリプス クロス」や、PHEV搭載のミッドサイズSUV「アウトランダー」は、岡崎技術センターに併設の岡崎製作所から送り出されている。「エクリプス クロス」は、2019年次のRJCカーオブザイヤーを受賞した。

「自動車業界は、100年に一度といわれる大きな変革期に突入しています。設計・開発の更なるスピード化と効率化を図り、クルマづくりの競争力を高めていかなければなりません。私たちは、新R&Dオフィスビルという環境でより大きなビジネスの成果を追求していくために、エンジニアリングVDI(eVDI)環境の強化に取り組んでいます」(東村氏)

三菱自動車では、2017年に京都および岡山拠点にeVDI環境を導入。2018年に着手したプロジェクトでは、岡崎技術センター 新R&Dオフィスビル向けにeVDIの拡張を実施した。グローバルIT本部 エンジニアリングIT部 主任の平塚教之氏は次のように話す。

「CATIAを中心に200種類を超えるエンジニアリングアプリケーションを利用しています。eVDI環境において、部門やチーム、ユーザーごとに異なるアプリケーション構成を瞬時にセットアップするために、『VMware App Volumes』を採用しました。この環境で快適なレスポンスとユーザー体験を実現するために必須なのが、高性能のオールフラッシュストレージでした」

エンジニアリング分野におけるApp Volumesの適用事例は世界的に見ても数少なく、三菱自動車のチャレンジは「国内初」を争う先進的な取り組みとなった。新たに採用されたのは、4コントローラー搭載のHPE 3PAR StoreServ 8450オールフラッシュアレイである。エンジニアリング系システムに精通したアルゴグラフィックスが、新たなeVDI環境の構築プロジェクトを全面的にサポートした。

三菱自動車工業株式会社

グローバルIT本部
エンジニアリングIT部 マネージャー
兼 システム基盤部 担当マネージャー
東村 義則 氏

三菱自動車工業株式会社

グローバルIT本部
エンジニアリングIT部
主任 平塚 教之 氏

三菱自動車工業株式会社

グローバルIT本部
エンジニアリングIT部
河邉 誠也 氏

ソリューション

高性能HPE 3PAR StoreServ 8450オールフラッシュアレイを採用

 

三菱自動車が採用した「HPE 3PAR StoreServ 8450オールフラッシュアレイ」は、eVDI環境で豊富な実績を持つ高性能ストレージである。HPE独自の「フルメッシュアーキテクチャー」を採用し、4つのコントローラーを同時に稼働させて高いIOPSを実現。障害発生時にはコントローラー間で瞬時にフェイルオーバーを実行し、パフォーマンス影響を最小に抑えながら3台のコントローラーが処理を継続できる。本システムを提案したアルゴグラフィックスの矢野真弘氏は次のように話す。

「eVDI環境ではギガバイト単位の設計データを扱うことは珍しくありません。さらに、VMware App Volumesによるアプリケーション配信では非常に大きなIOPSを消費します。これに対してHPE 3PAR StoreServ 8450は、30万IOPS以上の性能を1ミリ秒未満のレイテンシで実現し、私たちが提示した20万IOPSという性能要件を大きく超えました。また、私たちがこれまでの経験も含めて高く評価しているのは、HPE 3PARが『多重度処理に強い』という事実です」

本環境では、App Volumesの利用時にストレージに対して100ユーザー規模の同時アクセスが発生することが予想されたため、「多重度処理に強い」ことは必須だった。

「また、本環境でリンククローンの再設定を行うと10万IOPS以上のストレージリソースを消費します。HPE 3PARではこの再構成処理を『HPE 3PAR ASIC』にオフロードするため、コントローラーCPUへの負荷を抑えることができます。これは大きな安心材料でした」(矢野氏)

さらに、コントローラー障害が発生してもパフォーマンスを落とさないことも必須の要件だった。4コントローラー搭載のHPE 3PARは、「1台のコントローラーを停止させても性能影響はほとんどない」(矢野氏)という評価を得た。同社の安井義博氏は次のように続ける。

「バージョン違いを含め400種以上のアプリケーションを扱います。私たちはApp Volumesとの適合性検証を慎重に進め、eVDI環境の構築に臨みました。1ユーザーあたりのリソースは既存の物理ワークステーションを基準に算出し、実運用で評価しながら最適化していく方法を提案しました」

2018年10月、新R&Dオフィスビルの竣工とともに新たなeVDI環境の活用が始まった。

「技術者の働き方」とともに「運用管理」も変えたeVDI環境

 

岡崎技術センターでは、多数の物理ワークステーションを利用してきたが、eVDI環境への移行によってその半数を削減したという。平塚氏が次のように話す。

「多くの技術者が、設計開発用のワークステーションとオフィスアプリケーションを使うノートPCの『2台持ち』だったのです。新R&Dオフィスビルへの移転に際して、ノートPCからeVDIのエンジニアリングアプリケーションを利用するスタイルに一新しました。3DモデリングやBOM参照などを快適に行えるよう、技術者のデスクには24インチの外付モニターを用意しました」

「ルノー・日産・三菱アライアンス」の一翼を担う三菱自動車では、技術者の海外出張の機会が年々増加しているという。

「eVDIは、エンドユーザー固有のデスクトップ環境をどこでも再現でき、場所や端末を選ばない柔軟な働き方を実現しました。海外からのアクセスも実用レベルに達しており、出張に際して設計データを持ち運ぶ必要がなくなったので、ユーザーの利便性向上とセキュリティ強化という両面でメリットを生み出しています」と東村氏も評価する。

eVDIがもたらした成果はエンドユーザー環境にとどまらない。グローバルIT本部 エンジニアリングIT部の河邉誠也氏は次のように話す。

「運用の視点では、物理端末の管理から解放されたことが極めて大きいですね。これまで、組織変更などに伴うユーザー端末の移設作業が1年間で全ワークステーションの半数という規模で発生していましたが、eVDI化によって移設工数は大幅に削減されました。ワークステーションの台数を1割程度まで削減したため、新R&Dオフィスビルへの移転に際しての移設を週末の2日間で完了できました」

「物理端末管理の効率化に長年にわたり取り組んできましたが、人手による工夫は限界が近づいています。端末の設置や設定、アプリケーション導入といった付加価値の低い作業から、ITエンジニアリング部のスタッフを解放したいという思いも強くありました。eVDIとアプリケーション配信の仕組みは、まさにこの課題を解決に導くものです」(東村氏)

株式会社アルゴグラフィックス

中部・西日本S&S統括本部
中部IT部
第一システムソリューション室
室長 矢野 真弘 氏

株式会社アルゴグラフィックス

中部・西日本S&S統括本部
中部営業統括部
第三営業部
主任 安井 義博 氏

ベネフィット

申請されたアプリケーションをユーザーへ即日提供可能に

 

2019年5月、eVDI環境が全設計者に拡張された。ユーザーの集約度を高めた狙いはどこにあったのか。平塚氏が次のように説明する。

「多くの技術者からの『場所を選ばず設計データを扱えるようにしたい』『海外出張に際して安全に設計データを参照したい』という要求に応えるものです。2018年10月に利用を開始したeVDI環境に対し、実際の運用を通してリソースの使用状況や負荷傾向を分析したところ、一部のヘビーユーザーを除いてサイジングに余裕があることが明らかになったのです」

変更作業は、Windows 10へのアップデートとともに大型連休中に実施された。HPE 3PARは、大規模な再構成処理をわずか2時間で完了させ、高い性能を改めて証明したという。

「HPE 3PARは、App Volumesによるアプリケーション配信を迅速に実行し、高速な起動を実現しました。また、ユーザーから申請を受けたアプリケーションを即日で提供できるようになったことも大きいですね。従来は、事前の調整作業や物理的なインストールに数週間を要していましたから」と河邉氏は笑顔を見せる。

さらに、HPE 3PARのインライン重複排除・圧縮によって、データ量は実に1/8にまで削減されているという。HPE 3PARでは、運用中の負荷状況を見ながら重複排除・圧縮機能をオン/オフできる。アルゴグラフィックスの矢野氏は次のように期待を話す。

「サービスの安定的な提供を担う立場からは、HPE InfoSightによる高度な予測分析機能への期待が大きいですね。ストレージだけでなく仮想マシンまで網羅して問題の予兆を検知し、障害発生前に適切に対処できるメリットは他にない優れたものです」

新R&Dオフィスビルでは、技術者が自席を離れて業務を進める機会が増えているという。

「高速無線LANとオープンなスペースを活用した、新しいスタイルのコラボレーションが始まっています。固定電話が携帯電話に変わった時のような大きな変化です。CATIAの3Dモデルを大画面で見ながら皆で議論する風景は珍しくなくなりました。さらに、自由な発想がここから産まれてくることを期待しています」(平塚氏)

最後に、東村氏が次のように語って締めくくった。

「技術者同士のコミュニケーションが密になることで、設計・開発の品質は確実に向上します。グローバル拠点を含む全社のeVDI化を視野に、今後も取り組みを強化していく考えです。国内初を争うApp Volumesを利用したeVDI環境の導入に、アルゴグラフィックスとHPEの支援を得られたことは大きな収穫でした。これからも、確かな技術力・製品力で私たちのビジネス目標の達成をサポートしてもらいたいと思っています」

 


ご導入製品情報

HPE 3PAR StoreServストレージ

耐障害性、データサービスおよびデータ移動性を犠牲にすることなく、フラッシュ向けに最適化された専用アーキテクチャーならではのパフォーマンスを提供する業界唯一のストレージアレイです。


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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導入ハードウェア・サービス

VMware Horizon
VMware App Volumes

HPE Apollo 2000 Gen10 System