グローバル一体経営を加速させる日ア・欧・米OAシステム統合
AGC株式会社 様
所在地:〒100-8405 東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
URL:https://www.agc.com/
AGCがOAシステムのグローバル統合プロジェクトを完遂、全社レベルでセキュリティ強化を図るとともに世界40,000ユーザーの共通コミュニケーション基盤を確立
AGCが、日本とアジア、欧州、米国のオフィス系システムを統合した。およそ40,000ユーザーが利用する統合的なコミュニケーション基盤の実現は、グローバル一体経営を推進するAGCの悲願とも言えるものだ。本システムには世界共通のセキュリティが実装され、ユーザーは働く場所を意識することなく、セキュアでシームレスなコミュニケーションが可能になる。HPE Pointnextのアドバイザリー&プロフェッショナルチームが、多くの困難が伴う本プロジェクトを完遂に導いた。
業界
製造
ビジョン
独自の素材・ソリューションを提供し、継続的に成長・進化するグローバル総合素材メーカーへの変革
戦略
グローバル戦略の一環として日ア・欧州・米国のオフィス系システムを統合し、共通のセキュリティポリシーを適用するとともに、シームレスな全社コミュニケーションを実現する
成果
・オフィス系システムの統合を通じて世界共通のセキュリティポリシーを適用
・グローバル共通のオフィスアプリケーションを活用したシームレスなコミュニケーションと業務遂行が可能に
・AGC本社とHPE Pointnextのチームがプロジェクトをリードし、各社に「グローバルワンチーム」の意識を醸成
念願のオフィス系システムのグローバル統合を達成
我が国を代表する総合素材メーカーAGCが、グローバルでビジネスを急伸させている。建築・自動車・ディスプレイ用ガラス、電子部材、化学品、セラミックス、高機能材料など、世界トップシェアを誇る製品群を強みに、グループシナジーを発揮させる成長戦略を推進。AGCグループの総売上は今や1兆7千億円に迫る勢いだ。グローバルITリーダー情報システム部長の伊藤肇氏は次のように話す。
「グローバル共通ブランドである『AGC』のもと、日本・アジア、欧州、米国でグループ一体経営の強化に取り組んでいます。2021年10月には、長年の悲願ともいえるオフィス系システム(OAシステム)の統合プロジェクトを完遂させました。これにより、AGC標準のセキュリティが適用された環境で、世界中の従業員がシームレスにコミュニケーションしながら、緊密に連携して業務を遂行できる環境が整いました」
世界30か国以上に事業展開するAGCグループで、OAシステムを利用する従業員は40,000名を超える。各社でサイロ化していたOAシステムの統合により、Microsoft 365から提供されるExchange Online、SharePoint Online、Teams、OneDriveなどのオフィスアプリケーションと、ユーザー認証、セキュリティ基盤、サポートデスクが単一のシステムから提供される形に大きく変わった。
「AGCがビジネスの規模とポートフォリオを拡大していく中で、グローバルでのコミュニケーションがいっそう重要度を増しています。中でもライフサイエンスなどの新しい領域でのチャレンジには、より効果的な情報共有、より迅速な意思決定と行動が求められます。ビジネスのスピードを上げていくために、グローバルで統合されたOAシステムが大きな役割を果たしていくことになるでしょう」(伊藤氏)
2019年4月より計画策定に着手し、2020年1月に本格化した統合プロジェクトが、完遂に至る道のりは決して平坦ではなかった。AGCの情報システム部とともにこのプロジェクトに立ち向かったのは、HPE Pointnextのアドバイザリー&プロフェッショナルサービスのメンバーである。
ワークショップを通じてプロジェクトの一体感を醸成
AGCでは、グループ経営方針AGC plus 2.0においてライフサイエンスを戦略領域のひとつに位置づけており、バイオ医薬品関連事業への投資・M&Aを積極的に展開している。海外では、2016年の独企業買収を皮切りに、遺伝子・細胞治療技術を持つ企業や開発・製造受託企業など、欧州や米国で複数の事業を統合してきた。
「プロジェクトの最初の難関は、独立意識の強い欧州・米国の事業会社との合意形成でした。私たちは、数ヶ月の意見交換を経て主要メンバーを日本に招き、10日間のワークショップを通じてさらに議論を重ねました。当事者意識を持ってもらうことが何より重要です。2009年に日本とアジア圏のOAシステムを統合したプロジェクトでは、日本側で決めた方針を各国に受け入れてもらう手順で進めたのですが、この時に対立構造のようなものが生まれてしまったことに対する反省もありました」とプロジェクトリーダーを務めた谷口直樹氏は振り返る。
OAシステム統合というゴールを共有し、プロジェクトメンバーの気持ちをひとつにまとめるには様々なハードルを越えなければならなかった。情報システム部(当時、現在はAGC Glass Europe SA)の渡邊亮介氏は次のように続ける。
「システム統合の意義やメリットを一方的に説くのではなく、各国の考えや事情を聞き出しながら未来志向で話し合いました。目の前の投資対効果だけを問うのではなく、数年後に自分たちのビジネスをどのようにしたいのか、そのために必要なインフラを自分たちでどう作るのか、話し合いを重ねていく中で建設的な意見が大勢を占めるようになっていきました」
システム化方針の策定まで漕ぎ着けたワークショップの意義は極めて大きかった。直後にコロナ禍が世界を襲い、海外との行き来が困難になってしまったからだ。ワークショップでファシリテーターを務めたHPE Pointnextの林理恵氏は、次のように振り返る。
「現地を訪問できない状況下では、プロジェクトの進行はすべてオンラインでのコミュニケーションを通じて行わなければなりませんでした。実際のところ、時差、言語、文化の違いを乗り越え、各国の事情を考慮しながら作業を前進させるには多くの困難が伴いましたが、大きな計画変更なしに着実に前進できたのはワークショップを通じた相互理解があったからでしょう」
様々な困難に直面した統合プロジェクト
HPE Pointnextは、企業や組織のデジタルトランスフォーメーションをトータルに支援するサービス組織である。世界200カ国、1万5,000人を超えるITプロフェッショナルが、豊富な実績とナレッジに基づくアドバイザリー、構築サービス、運用保守サービスをトータルに提供している。国境を越えたグローバルITプロジェクトの経験も豊富だ。
「プロジェクトのゴールは、AGCグループ全社で統合されたオフィスアプリケーション環境を実現することです。私たちのミッションは、グローバルでのMicrosoft 365のテナント統合、オンプレミスのActive Directory(AD)の統合とアカウント移行、20,000ユーザーが使うPCのドメイン移行、ID管理システムの構築でした」とHPE側でプロジェクトマネジメントを担当したHPE Pointnextの吉川由氏は話す。
入念な準備と設計期間を経て、米事業会社の統合作業が始まったのは2020年夏である。Microsoft 365のテナントとメールなどの各種データ、PCドメインの移行は、日本・アジアの既存ユーザーならびに現地ユーザーの業務に影響の少ない土・日曜日を基本に実施された。日米のメンバー間でゴールは正しく共有されていた。だが、本番移行が開始されると現場では少なからず問題が発生したという。
「限られた時間内に移行作業を終えるには、日本と現地でタイミングを合わせて作業を実施する必要があります。オンラインのもどかしさを感じつつ、可能な限りコミュニケーションを密にして、それでも発生した問題は一つひとつ丁寧に解決していきました。HPE自身がコロナ禍以前よりリモートワークを積極的に推進しており、海外とのやり取りを含むオンラインでのコミュニケーションに精通していたことも大きかったと思います」(吉川氏)
AGCではオンプレミスのADを認証基盤として、これをクラウド上のADと同期させる仕組みを採っている。本プロジェクトではオンプレミスのADを統合するとともに、新たにID管理システムを構築してアカウントの移行を効率的に進めていった。
「2021年に入り欧州の事業会社の移行が始まりました。10,000ユーザーを超える大規模環境も対象となり、統合の難易度は一気に高まりました。最初にグローバルで守るべきセキュリティ基準を定め、HPE主導でその重要性を各国の事業会社へ丁寧に説明し調整していきました。事業会社ごとの要望に対して、AGC様と協議しながらセキュリティ基準を逸脱しない範囲で柔軟に対応できたことが、現場での技術的課題を迅速に解決するための大きな助けになったと思います」とシステム設計を担当したHPE Pointnextの森田高晋氏は言う。
AGCとHPE Pointnextは、米事業会社の統合で獲得したノウハウを活かし、チーム内での情報共有を密にしていくつもの難局を乗り越えていった。「先手を打った行動や、相手の期待を上回る提案を常に意識した」(吉川氏)という通り、日本チームの熱意を感じた欧州各社はワンチームとしての意識を高めていったという。
グローバルワンチームの意識を醸成
2021年10月、AGCとHPE Pointnextのチームは、計画通り日本・アジア、欧州、米国のOAシステム統合プロジェクトを完遂させた。コロナ禍の影響で人的な交流が困難な中、移行・統合にかかる日本での作業、欧州・米国の事業会社との連携作業をリモートでやり切った形だ。谷口氏は次のように話す。
「決してスマートなプロジェクト進行とは言えませんが、チーム全員が一丸となって目標達成を目指した、これまでにないチャレンジだったことは間違いありません。決して逃げずに困難に立ち向かってくれたHPEに対しては、私からは最高の評価と最大の賛辞を伝えたいと思います」
渡邊氏は、「HPEとともに走りながら考え、走りながら問題を解決していきました。OAシステムのグローバル統合という大きな目標を達成できたことに、一緒に走り続けてきたチームの仲間として感謝しています。グローバルのメンバーとも新しい関係を築くことができました。人の気持ちを動かす、意識を変えることは本当に難しいですが、このプロジェクトを通じてそれが決して不可能ではないことを体感しました」と話す。渡邊氏は、その後AGC Glass Europe SAの所属となりIT Managerとして活躍中だ。
グローバルで統合されたOAシステムは、AGCのグローバル一体経営をより強固にし、ビジネス変革と成長戦略を加速させるための重要な基盤となる。伊藤氏は次のように結んだ。
「いかなる困難に直面しても、決して諦めずチャレンジし続ける――統合プロジェクトは、私たちの創業の精神『易きになじまず難きにつく』をまさに体現したものでした。AGCとHPEが真のワンチームとしてプロジェクトに臨んだことが、最大の成功要因だったと考えています。そして、私たちはIT業務に携わる世界中のメンバーの『グローバルワンチーム化』という大きな成果を手にすることができました。HPEには、これからも私たちのIT環境とグローバルマネジメントへのご支援を期待しています」
AGC株式会社
グローバルITリーダー
情報システム部長
博士(理学)
伊藤 肇 氏
AGC株式会社
情報システム部
グループITデリバリーセンター
日本・アジアブランチ
コミュニケーションチームリーダー
谷口 直樹 氏
AGC Glass Europe SA
IT Department
IT Manager
渡邊 亮介 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
Pointnextデリバリー統括本部
製造・流通サービスデリバリー第一本部
第四部
森田 高晋 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
Pointnextデリバリー統括本部
製造・流通サービスデリバリー第一本部
第四部
プロジェクトマネジャー
吉川 由 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
Pointnextデリバリー統括本部
製造・流通サービスデリバリー第一本部
第四部
林 理恵 氏
ご導入サービス情報
HPE Pointnext Servicesは、お客様がデジタルトランスフォーメーションを作り出し、HPEのエッジからクラウドまでの包括的な専門知識に基づいてトランスフォーメーションを計画し、適切なテクノロジーとプラットフォームを使用してデジタル化への高い目標の遂行加速を支援します。
HPE GreenLakeは、エッジ、コロケーション、データセンターでオンプレミスのワークロード向けに、従量制課金モデルでフルマネージドのパブリッククラウドサービスとInfrastructure as a Serviceを提供します。
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