テレワークの生産性向上により、オリジナル新薬の開発を着実に推進
日本たばこ産業株式会社 様
所在地:〒105-6927 東京都港区虎ノ門4-1-1
URL:https://www.jti.co.jp/
日本たばこ産業 医薬総合研究所がVDI基盤を刷新、柔軟で生産性の高いテレワーク環境を整備するとともに自動化により運用負荷を低減
日本たばこ産業 医薬総合研究所が、テレワーク推進の一環として400ユーザーが利用するVDI環境を構築した。オリジナル新薬の開発に挑む同研究所において、コロナ禍でも高い生産性を維持し、研究活動を着実に前進させるための基盤となるシステムである。HPE SimpliVityが採用されたVDI基盤では、Red Hat Ansible Automation Platformによる運用自動化が組み込まれるなど、HPE Pointnextアドバイザリー&プロフェッショナルサービスが持つ様々な知見が盛り込まれた。
業界
医薬品開発
ビジョン
テレワークと研究者の柔軟な働き方を実現し、世界市場を見据えたオリジナル新薬の開発を支える
戦略
多様な働き方に柔軟に対応できるハイブリッドワーク環境を整備するとともに、将来の事業継続性の礎を築く
成果
・HPE Pointnextが最大400ユーザーを収容可能なVDI環境を設計・構築
・運用負荷の低減と将来のBCP対策など、潜在的な顧客課題を見通した機能を実装
・HPE SimpliVityによりVDI基盤を構築し、Red Hat Ansible Automation Platformによるプロビジョニング自動化を実現
・テレワーク/ハイブリッドワークを支える運用負荷の低いVDIシステムを実現
世界市場を視野に創薬に取り組む戦略拠点
「国際的に通用する特色ある研究開発主導型事業の構築」「オリジナル新薬の開発を通じての存在感の確保」――日本たばこ産業(JT)医薬総合研究所は、これらの実現を目指して研究開発に取り組んでいる。JT医薬総合研究所 研究企画部 グループリーダーの川上浩氏は次のように話す。
「病気から世界の人々を救うJTオリジナル新薬を提供することが私たちの目標であり、創薬のプロフェッショナル集団である医薬総合研究所のミッションです。その達成に向けて国内外のネットワークを拡充させ、グループ企業との連携を強化しながら研究開発を推進しています」
JTの医薬事業への取り組みは1987年にまで遡る。世界市場を視野に創薬に取り組むための戦略拠点として1993年に医薬総合研究所が高槻に設立された。2012年にJT初のオリジナル新薬として、「elvitegravir(エルビテグラビル)」を含む配合錠である抗HIV薬「Stribild(スタリビルド)」が米国FDAから承認された。直近では、2020年にアトピー性皮膚炎治療薬「コレクチム軟膏」、腎性貧血治療薬「エナロイ錠」の2剤を世に送り出すなど、研究開発を着実に進展させている。
JTでは、すべての従業員がその潜在能力を発揮できるよう、多様な働き方を支える制度を整えるとともに職場環境の整備を推進してきた。そしてコロナ禍をきっかけに、医薬総合研究所がテレワークの導入に踏み切ったのは2020年のことだ。
「2021年9月に、最大400ユーザーが利用可能なVDI環境を構築しました。コロナ禍におけるテレワークの推進と、柔軟な働き方を支える環境を提供することが目的です。2017年から利用してきたVDI基盤を刷新し規模を拡大するとともに、より多くの研究所員に、より高性能で使い勝手の良いシステムの実現を目指しました」(川上氏)
実験業務が多くを占める医薬総合研究所では、当初、テレワークができる研究所員は限られると考えられていた。しかし、コロナ禍の拡大は予断を許さない状況になっていった。
「私たちは、出社制限が本格化する中、業務手順や役割分担を工夫しながらテレワークの拡充を進めてきました。新しいVDI環境は、多くの研究所員がコロナ禍でも高い生産性を維持し、研究活動を着実に前進させるための基盤システムと位置づけられます」と川上氏は話す。
JT医薬総合研究所の新しいVDI環境の導入をトータルにサポートしたのは、HPE Pointnextのアドバイザリー&プロフェッショナルサービスである。本システムには、研究所員が使うVDI環境ならではのアイデアと工夫が盛り込まれた。
潜在的な課題を予期した「RFPに縛られない提案」
新しいVDI環境の整備に際してJT医薬総合研究所が示したRFPには、100を超える要件が記載されていた。HPEはRFPに対して満点の回答を示したが、JTが高く評価したのはHPE Pointnextのユニークな提案内容だったという。医薬総合研究所 研究企画部の河野周作氏は次のように振り返る。
「HPEは、研究機関ならではの私たちの業務を理解し、運用段階に入ってから顕在化する課題を予測して、良い意味で『RFPに縛られない提案』をしてくれました。たとえば、私たちは既存環境と同じ3Tier方式のインフラを想定していたのですが、HPEの提案は要件になかったハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品によるVDI基盤の構築でした。最初は驚かされましたが、丁寧なプレゼンテーションを通じて、運用までを見通して全体最適を実現する構成が重要だと気づかされました」
HPEの提案は、実績豊富なHCI製品「HPE SimpliVity」を軸に、VDIサービスの信頼性向上、VDIシステムの運用負荷の低減、消費電力の抑制、将来のBCP/DR対策までを見通したものだった。提案段階から設計・構築・運用支援まで、プロジェクト全体を支援したHPE Pointnextの堀場暁生氏は次のように話す。
「まず、HPE SimpliVityを採用することで、構成機器をシンプル化し設置スペースと消費電力を抑制できると考えました。私たちが重視したのはその先です。いかにシステムの信頼性を高め、JT様のシステム移行や運用にかかる負荷を低減するか。そして、テレワークの拡充をスムーズに行い、コロナ禍における研究活動に貢献するための提案を練り上げました」
400ユーザーが使うVDI環境において、システムの不調は研究業務の停滞に直結する。HPE Pointnextは、VDI基盤の信頼性を高め、高品質なVDIサービスを持続的に提供できる仕組み・体制を提案した。ここでは、最上位の保守サービス「HPE Pointnext Complete Care」が重要な役割を担う。
「高い信頼性・可用性を備えたHPE SimpliVityをベースに、JT様のVDI基盤を熟知したアカウントサポートチームが監視・保守を担います。新システム稼働直後は、VDIシステム構築チームとアカウントサポートチームが連携して、迅速に問い合わせに対応できる体制を整えました」(堀場氏)
さらに、VDI基盤の運用段階におけるHPE Pointnextの提案はユニークなものだった。その代表例は、Red Hat Ansible Automation Platformを利用したプロビジョニングの自動化である。
Ansibleによるユーザー環境の自動払い出し
HPE Pointnextは、企業や組織のデジタルトランスフォーメーションをトータルに支援するサービス組織である。世界200カ国、1万5,000人を超えるITプロフェッショナルが、豊富な実績とナレッジに基づくコンサルティング、構築サービス、運用保守サービスをトータルに提供している。Red Hat Ansible Automation Platformによる自動化の実装経験も豊富だ。
「Ansibleによるユーザー環境の自動払い出し、というHPEの提案はまさに想定外でした。ですが、自動化こそが私たちのVDI環境の日々のオペレーション業務の効率化に必要なものだと気づかされました。HPEより自動化タスクを実行するためのInventoryやPlaybookの提供を受け、Ansible Towerのダッシュボードから必要な時に手間なくプロビジョニングを行える環境が整えられました」(河野氏)
Red Hat Ansible Automation Platformには、コアモジュールであるRed Hat Ansible EngineとGUI管理ツールRed Hat Ansible Towerが含まれる。Ansible Towerでは、視覚的なダッシュボード、ロールベースのアクセス制御、ジョブスケジューリング機能により、ITインフラのプロビジョニングの集中管理が可能だ。
「運用自動化においては、まずユーザー環境の払い出しから着手し、運用手順の標準化を進めながら適用範囲を拡大していく考えです。たとえば、VDIシステムが設置されている研究所では定期的な計画停電があるのですが、これに伴うシステムのシャットダウンと再起動のプロセスを自動化して簡単・確実にしたいと思っています。また、VDI環境のBCP/DR対策を強化する構想を持っており、DR先でのVDIシステム再起動とサービス再開までを自動化できるようにしたいと考えています」と川上氏は話す。
VDI環境に最適なHPE SimpliVity
HPE SimpliVityはVDI環境における実績が豊富だ。独自の重複排除・データ圧縮テクノロジーと、「秒速」を謳うバックアップ&リストアは他のHCI製品にはないメリットをもたらす。新しいVDIシステムが稼働を開始してから、「運用が楽になる、とHPEから言われた意味を日々実感している」(河野氏)という。
「新しいVDI環境になり、Ansibleによるユーザー環境の払い出しだけでなく、HPE SimpliVityによってバックアップとリストアも驚くほど容易になりました。日次バックアップの所要時間は大幅に短縮され、仮想マシン単位でのリストアも秒単位で行えます。従来環境ではリストアに1時間ほど要していましたので、劇的な高速化と言っていいでしょう」(河野氏)
研究所のVDI環境では、ユーザーごとの自由度の高いフルクローン方式が採用されているが、HPE SimpliVityの重複排除・データ圧縮を利用することでストレージ容量を抑制している。OSなど重複の多い本環境でのデータ削減効果は、実に80%を超えているという。
「新しいVDI環境では、最新の『標準PC』(JT全社員が利用している物理PC)と同等のリソースを利用できます。これにより、ユーザーの使用体験が大幅に改善されました。400ユーザーのうち、290ユーザー分を社外での利用が多い研究所員に専用機として提供しています。残る110ユーザー分は共用機とすることで、テレワークを希望する研究所員へ柔軟に配分できるよう工夫しました」(川上氏)
新しいVDI環境がハイブリッドワークを具現化
HPE Pointnextが設計・構築・運用・保守までをトータルにサポートした新しいVDI環境は、JT医薬総合研究所のテレワークを快適なものとし、研究所、自宅、外出先など、働く場所を柔軟に選べるハイブリッドワークを具現化しつつある。オフィスでもリモートからも、研究所内の業務システムやMicrosoft 365などの外部サービスへ安全にアクセスできる仕組みも万全に整えられた。
「コロナ禍でも研究活動を止めず、テレワークで高い生産性を維持できる基盤が整備されました。ワークライフバランスの観点からも、新しい働き方、多様な働き方を支える環境として重要な役割を担っていくことになるでしょう。今後ユーザーが増えることになっても、HPE SimpliVityであればVDI基盤を設計し直すことなく柔軟に拡張できることも大きな安心です」(河野氏)
オリジナル新薬の開発に挑むJT医薬総合研究所にとって、予期しない状況に直面しても、高い生産性を維持し研究活動を着実に前進できる基盤が整備されたことは大きい。川上氏は次のように話して結んだ。
「RFPで示した要件にとらわれず私たちの潜在的な課題を見通した提案内容、各チームが連携した着実なプロジェクト遂行、提案内容を具現化してしっかりと成果を出す技術力――すべてにおいてHPE Pointnextの働きは私たちの期待を超えていました。新しいVDI環境が、私たちの新しい薬を生み出すためのチャレンジとワークライフバランスを支え続けてくれることを期待します」
日本たばこ産業株式会社
医薬総合研究所
研究企画部
グループリーダー
川上 浩 氏
日本たばこ産業株式会社
医薬総合研究所
研究企画部
河野 周作 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
Pointnextデリバリー統括本部
製造・流通サービスデリバリー第一本部
第三部
堀場 暁生 氏
ご導入サービス情報
HPE Pointnext Servicesは、お客様がデジタルトランスフォーメーションを作り出し、HPEのエッジからクラウドまでの包括的な専門知識に基づいてトランスフォーメーションを計画し、適切なテクノロジーとプラットフォームを使用してデジタル化への高い目標の遂行加速を支援します。
HPE GreenLakeは、エッジ、コロケーション、データセンターでオンプレミスのワークロード向けに、従量制課金モデルでフルマネージドのパブリッククラウドサービスとInfrastructure as a Serviceを提供します。
ご導入製品情報
世界最高レベルの効率と耐障害性を備えた、大企業から中小企業まで幅広い企業で利用されているエンタープライズグレードのハイパーコンバージド(HCI)製品であるHPE SimpliVityは、複雑なIT環境をシンプル&コンパクトに統合し、これまでにないシンプルで扱いやすい仮想化基盤を実現します。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
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