ミッションクリティカルコンテナとハイブリッドクラウドの理想へ
株式会社ジェーシービー 様
所在地:東京都港区南青山5-1-22 青山ライズスクエア
URL:https://www.global.jcb/ja/
クラウドネイティブテクノロジーを採り入れた「次世代MyJCBサービス基盤」にHPE GreenLake edge-to-cloudプラットフォームを選択
JCBカードユーザーが利用する「MyJCBサービス基盤」が、大きな進化を遂げようとしている。ミッションクリティカルな要求に応える信頼性・可用性をさらに強化しながら、クラウドネイティブテクノロジーを積極的に採用して、新サービスをいち早くリリースするための俊敏性、アプリケーション開発の柔軟性と高速化を追求。HPEは「次世代MyJCBサービス基盤」の構想を具現化し、JCBの新しいビジネスチャレンジを支えている。ミッションクリティカルシステムとクラウドネイティブテクノロジーが融合した、ハイブリッドクラウドの現実解がここにある。
業界
クレジットカード事業
ビジョン
「次世代MyJCBサービス基盤」を通じたカスタマーエンゲージメントのさらなる強化、新サービスの拡充
戦略
ミッションクリティカルプラットフォームにクラウドネイティブテクノロジーを採用し、アプリケーション開発の柔軟性と高速化を追求
成果
・Red Hat OpenShift Container Platformの導入とCI/CD環境の整備によりアプリケーション開発の高速化を実現
・Kubernetes運用と親和性の高いGitOpsの導入と一貫したパイプラインの実装によりインフラ運用とアプリケーション運用の共通化を実現
・システム構成においてオンプレミス(内製)/クラウド(外製・SaaS)の最適解を実現
・HPE GreenLakeを活用しHybrid Cloud as a Serviceを実現
顧客接点を支えるMyJCBサービス基盤の最新化
キャッシュレス化の世界的な潮流とともに、JCBがビジネス成長をさらに加速させている。日本発唯一の国際カードブランドであるJCBは、約150の国・地域で利用でき、国内外会員数1億4千万以上、加盟店約3,700万、年間取扱高33.8兆円超というビジネス規模を誇る*。成長の原動力は、高品質なサービス体験を通じて構築された強固なカスタマーエンゲージメントである。同社システム本部の松岡亮氏は次のように話す。
「JCBカード会員様専用サイト『MyJCB(マイジェーシービー)』は、お客様とJCBを結ぶ最も重要なオンラインチャネルのひとつです。私たちのチームでは、お客様にいつでも快適にMyJCBをご利用いただけるよう、24時間365日の安定的なサービス提供が可能な高信頼なシステムを構築・運用しています」
カード利用明細の照会、ポイントの確認と利用、お得なキャンペーンへの参加など、MyJCBはJCBカード会員にとって欠かせない存在だ。JCBは、顧客との関係をいっそう強化するためにMyJCBのサービス拡充に力を注いでいる。
「2019年より、全社を挙げて『ビジネス構築の高速化プロジェクト』に取り組んでおり、サービスの主管部門とシステム本部が緊密に連携して、サービス開発のスピード化、アプリケーションのアジャイル開発を本格化させています。注力しているのはSoE(System of Engagement)系のアプリケーションです」(松岡氏)
こうした流れは、MyJCBとこれを支えるサービス基盤に大きな指針を示した。2020年から始まった「次世代MyJCBサービス基盤プロジェクト」では、現行システムを上回る信頼性・可用性に加え、新サービスをいち早くリリースするための俊敏性、アプリケーション開発の柔軟性と高速化が目標に掲げられた。
「新しいデータセンターへの移行が計画されており、これと歩調を合わせて『次世代MyJCBサービス基盤』を構築し、モダナイズされたコンテナアプリケーションを稼働させる考えです。ミッションクリティカルシステムとクラウドネイティブテクノロジーを融合させ、MyJCBに最適化されたハイブリッドクラウド環境の実現を目指します」(松岡氏)
*会員数・加盟店数は2021年9月末時点、年間取扱高は2021年3月末時点
*クラウドネイティブとは
CNCF Cloud Native Definition v1.0では、「コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス等により、回復性、管理力、および可観測性のある疎結合システムが実現可能となる。これらを堅牢な自動化と組み合わせることで、エンジニアはインパクトのある変更を最小限の労力で頻繁かつ予測どおりに行うことができる。」と定義している。
MyJCBに最適なハイブリッドクラウドへの進化
「次世代MyJCBサービス基盤プロジェクト」には、MyJCBのコンテナアプリケーション開発を担う株式会社SCC、インフラ/アプリケーションアーキテクチャーのクラウドネイティブ化を担当するHPE Pointnextのアドバイザリー&プロフェッショナルサービスが参画した。
HPE Pointnextは、企業や組織のデジタルトランスフォーメーションをトータルに支援するサービス組織である。世界80カ国、2万2,000人を超えるITプロフェッショナルが、豊富な実績とナレッジに基づくアドバイザリー、構築サービス、運用保守サービスをトータルに提供している。ハイブリッドクラウド環境、エンタープライズ向けKubernetesクラスターの構築においても世界屈指の実績を持つ。
「データセンター移行を安全に遂行することを前提に、モダンな技術をミッションクリティカルなシステムに適用する際に必要となる機能/非機能要件を網羅的に検討し、カオスとも言えるこのテクノロジー領域において、現時点の最適解は何なのか――その答えを導き出すために徹底的に議論しました」とHPE Pointnextの副島翔悟氏は話す。
「ワークショップやPoCをはじめとするHPEのアドバイザリーサービスを通じて、次世代MyJCBに最適なハイブリッドクラウドの実現に向けて『成長・進化するシステム』が現実解であると確信しました。その第一歩として、Kubernetesによるコンテナオーケストレーションを初めて採用するとともに、CI/CDを一貫させてコンテナアプリケーション開発のアジャイル化を目指します」と松岡氏は話す。
次世代MyJCBでは、マイクロサービス化を視野に、中核的なアプリケーションとそのアーキテクチャーも段階的に見直されていく。クラウドネイティブテクノロジーのアーキテクトとして設計を担当したHPEの太田航平氏は次のように話す。
「まず、セッション情報をアプリケーションコンテナと切り離してインメモリデータストアに持たせることでスティッキーなセッション管理から脱却し、アプリケーションデータの疎結合性を実現します。これにより、アプリケーションの稼働状態に弾力性を持たせることができ、耐障害性を向上させることに加え、拡張の容易性やアップデートの柔軟性など様々なメリットが得られます」
セッション情報の管理に加え、ソースコードのリポジトリ管理、ドキュメント管理、モニタリング/オブザーバビリティ、ログ収集・管理にもクラウドネイティブテクノロジーが利用される。
「オープンなクラウドネイティブテクノロジー/SaaSを積極的に採用し、システム全体のアーキテクチャーを“疎結合”へと見直します。特定のプラットフォームやテクノロジーに縛られず、最適な組み合わせに変更できる柔軟なシステムを実現したかったからです。そうすることで、JCB様にとって理想的なハイブリッドクラウド環境を作り込んでいくための土台ができあがり、ビジネスのニーズや成長に合わせて基盤も成長・進化させることができます」(太田氏)
コンテナアプリケーション開発のさらなる高速化
株式会社SCCは、JCBのビジネスパートナーとしてMyJCBのアプリケーション開発を長年にわたり担っている。システム開発や宇宙開発を手掛ける「産業」、情報教育を行う「学校」、情報通信技術の「研究」という3軸でビジネスを展開するeDCグループにおいて、企業向けITソリューションを担う事業会社であり、ミッションクリティカルアプリケーションの開発力には定評がある。同社の鈴木秀氏は次のように話す。
「MyJCBの主要アプリケーションはすでに8割以上がコンテナ化されており、CI(継続的インテグレーション)への取り組みも独自に進めてきました。次世代MyJCBにおけるチャレンジは、Kubernetesによる自動化のさらなる推進と、CIからCD(継続的デリバリー)までを一貫させるアジャイル開発の本格化です。ソースコード管理にクラウドベースのリポジトリを活用し、これをデリバリープロセスの中心としてGitOpsを実践していく考えです」
Kubernetesネイティブな手順を採ることで、人手を介さずに全自動でデリバリーが可能になる。ユーザー範囲を限定してアプリケーションをリリースし、不具合を確認したら即座にロールバックするような運用もできるため、CI/CDによるトライ&エラーのサイクルが回しやすくなるメリットも大きい。
「システムアーキテクチャーの疎結合化の一環として、SCCには中核アプリケーションのマイクロサービス化にも取り組んでもらいます。モノリシックなアーキテクチャーから脱却することで、複数チームによる並行開発が容易になり、アプリケーション開発の柔軟性を大きく高めることができるはずです」と松岡氏は期待を示す。
ミッションクリティカルシステムにおけるコンテナの実装
「ミッションクリティカルシステムとクラウドネイティブテクノロジーの融合」――次世代MyJCBをひと言であらわすなら、この表現が適切だろう。インフラストラクチャ―は、ミッションクリティカルサーバーHPE Superdome Flex 280、オールフラッシュアレイHPE Primeraを中心に盤石に構成され、エンタープライズグレードのKubernetesコンテナプラットフォームとしてRed Hat OpenShiftが採用されている。さらに、HPE GreenLakeにより、システム全体を月額制で利用するas-a-serviceモデルが適用された。HPEの元木健二氏は次のように話す。
「ミッションクリティカルシステムで信頼性の高い基盤を構築し、その上でレガシーテクノロジーとクラウドネイティブテクノロジーを最適に利用して俊敏性・開発の柔軟性を向上させることに、本システムの大きな意義があります。両者のメリットを兼ね備えた『ミッションクリティカルコンテナ』の実現は、次世代MyJCBが成長・進化していく上で最も重要な要件のひとつです」
HPEにとっては、MyJCBサービス基盤の3度目の最新化プロジェクトである。ここまでHPEは、システムの標準化・統合化プロジェクトを完遂し、UNIXからLinuxへの移行とアプリケーションのコンテナ化を支援してきた。本プロジェクトでは、クラウドネイティブという到達点を見据え、新しいチャレンジへと歩み出す。「同じ方向性、同じ視点、同じ歩調、これらを見出すプロセスこそが重要で、価値のあるものでした。HPEのコンサルティングにより、次期MyJCBシステムの目的や手段を明確化させ、また、疑問や課題を解決しながら、結果として私たちが十分に納得できるアーキテクチャーやテクノロジーに落とし込んでもらえました」と松岡氏は評価する。
お客様とともにシステムを進化させるパートナー
JCBでは、サービスの主管部門とシステム本部が一体となって、アジャイル開発とクラウドネイティブへの取り組みを加速させている。サービス部門がプロダクトオーナーとなり、アプリケーション開発を主導する体制を目指すものだ。松岡氏は次のように話す。
「クラウドネイティブな文化を貪欲に吸収して、アジャイルなアプリケーション開発とサービス展開を全社に根づかせるチャレンジです。サービス部門=頼む人、システム本部=作る人、という関係性から脱却して、ビジネス目標をしっかりと共有しつつ、双方でアジャイルな手順を磨き上げていきます」
一方、HPEは「Edge to Cloud platform as-a-serviceカンパニー」となることを宣言している。変革の象徴ともいえるHPE GreenLakeでは、プラットフォーム、ソフトウェア、各種サービスを費用化して月額・従量/定額制で利用可能にするとともに、オンプレミスとクラウド環境全体の監視・運用・保守をHPEのエキスパートに任せられる。
「HPEは、お客様の変革を支援する企業として常に進化を指向しており、注力領域のひとつにハイブリッドクラウドがあります。これは、オンプレミスとパブリッククラウドを活用する『プラットフォームとしてのハイブリッド』を指すだけでなく、『継承すべきレガシー資産と先進テクノロジーのハイブリッド』もエンタープライズの領域においては必要不可欠な視点だと認識しています。これを具現化したのが次世代MyJCBシステムであり、まさにHPEが強みを発揮できるテーマでした」と元木氏は話す。
次世代MyJCBサービス基盤プロジェクトは、JCB-SCC-HPEのチームが緊密に連携しながら計画通り進んでいる。松岡氏は次のように話して締めくくった。
「次世代MyJCBは、これまで培ってきたミッションクリティカルな能力をベースラインとし、新たなテクノロジーであるクラウドネイティブを融合させ、ここから大きく発展していきます。より多くのサービスや、より多くのアプリケーションを、より高速かつ容易に開発できる環境として利用されることになるでしょう。SCCとHPEには、私たちJCBのパートナーとしてさらなるご支援を期待しています」
株式会社ジェーシービー
システム本部
デジタルソリューション開発部
ダイレクトチャネルシステムⅠグループ 主幹
松岡 亮 氏
株式会社エスシーシー
インテグレーション本部
クレジットサービス2部
マネージャ ITスペシャリスト
鈴木 秀 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
プリセールスエンジニアリング統括本部
金融・公共技術部
元木 健二 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
ハイブリッドIT技術本部
太田 航平 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
Pointnext事業統括
Pointnextデリバリー統括本部
金融・公共サービスデリバリー本部 第二部
副島 翔悟 氏
ご導入サービス情報
HPE Pointnext Servicesは、お客様がデジタルトランスフォーメーションを作り出し、HPEのエッジからクラウドまでの包括的な専門知識に基づいてトランスフォーメーションを計画し、適切なテクノロジーとプラットフォームを使用してデジタル化への高い目標の遂行加速を支援します。
HPE GreenLakeは、エッジ、コロケーション、データセンターでオンプレミスのワークロード向けに、従量制課金モデルでフルマネージドのパブリッククラウドサービスとInfrastructure as a Serviceを提供します。
ご導入製品情報
あらゆる規模のビジネスにおいて、重要なデータをリアルタイムのビジネスインサイトに変えることができる、独自のモジュール方式を採用し、かつ高い柔軟性と信頼性を備えた、シームレスに拡張するプラットフォーム。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。
導入ソフトウェア
Red Hat OpenShift Container Platform
Kafka
Redis
Istio
Fluentd
導入クラウド
Amazon RDS
Sysdig
LogDNA
GitHub