お客様導入事例
北海道電力株式会社 様
データドリブン経営を支える “統合データファクトリー”
全社統合的なクラウドデータ基盤を整備し、新たな事業ポートフォリオの確立を目指す
北海道電力が『統合データファクトリー』と呼ばれるクラウドデータ基盤の活用を開始した。部門やシステム単位に分散していた多様なデータを統合し、データ資産として全社横断的に利用可能にすることで、経営から現場まで幅広いユーザーが、様々なシーンでデータに基づく意思決定を行えるようにする戦略的なシステムだ。HPE Servicesは、全社クラウド基盤『ほくでんデジタルプラットフォーム』と『統合データファクトリー』の整備にかかる戦略の策定から、技術選定、設計、構築、運用までをトータルにサポートしその実現に大きく貢献した。HPEが提唱する「データファーストモダナイゼーション」の先進事例である。
業種
エネルギー
ビジョン
電力の安定供給という社会的使命を担いながら、スピード感をもってビジネスモデル変革と事業領域の拡大を進め、競争力の高い事業ポートフォリオの確立を目指す
戦略
既存ビジネスの変革と新規事業へのチャレンジを同時に加速させるために、「データドリブン経営」を強化する全社統合的なクラウドデータ基盤を整備
成果
・Microsoft Azure上に全社統合的なクラウドデータ基盤『統合データファクトリー』を整備
・初期の成果として、経営・事業部門長レベルの意思決定を支援するダッシュボードの提供を開始
・北海道電力の構想を具現化するために、HPE Servicesのチームがクラウド戦略の策定、技術選定、クラウド基盤の設計、構築、運用をトータルにサポート
・OpenAIを利用したインタラクティブなデータ活用にも着手
経営ビジョン2030の実現に向け事業ポートフォリオの変革に挑む
北海道電力グループが掲げた「ほくでんグループ経営ビジョン2030」には、環境性と利便性を向上させた新しい時代の電気事業のあり方や、北海道という地域社会に貢献し続けるための方策が示されている。電力の安定供給とレジリエンス(復元力)の向上、低炭素化と電気料金低廉化の両立、地域課題の克服と持続的発展など、取り組むべきテーマは多岐にわたる。北海道電力 情報通信部長の田村圭司氏は次のように話す。
「ほくでんグループを取り巻く環境の著しい変化に適応するために、情報通信部が主導して全社デジタル変革(DX)への取り組みを本格化させています。電力の安定供給という社会的使命を担いつつ効率性を追求して収益を高め、新しい事業領域を開拓して競争力の高い事業ポートフォリオを確立する――こうした経営目標の達成に向けて様々なチャレンジが始まっています」
田村氏は、情報通信部 DX推進グループリーダー、情報通信部 情報通信企画グループリーダーなどを歴任し、2024年6月に情報通信部長として着任した。そのミッションは、北海道電力のDX推進とこれを支えるICT戦略の策定および全社クラウド基盤整備である。
「経営トップの強い意思のもと、スピード感をもってDXへの取り組みが進められています。キーワードは『データドリブン』です。北海道電力が持つデータ資産を全社横断的に利用可能にすることで、経営から現場まであらゆる社員が、様々なシーンでデータに基づく意思決定を行えるようにしていく考えです」と田村氏は話す。
北海道電力では、クラウド・バイ・デフォルトを掲げて全社システムのモダナイゼーションを進めている。2021年には『ほくでんデジタルプラットフォーム』をMicrosoft AzureとIIJバックボーンサービス上に整備し、将来的には基幹系を含む主要システムやアプリケーションもここに統合する予定である。情報通信部 情報基盤グループ 副主幹、部門改革プロジェクト プロジェクトリーダーの八鍬(やくわ)史典氏は次のように話す。
「多様なシステムを稼働させる『ほくでんデジタルプラットフォーム』は、ほくでんグループが持つデータやコンテンツといった資産を一元管理する中核システムでもあり、グループ全社のDX推進基盤として重要な役割を担います。さらに2022年6月には、クラウドデータ基盤『統合データファクトリー』を構築して本格的なデータ活用に向けた準備を整えました」
HPE Servicesは、北海道電力のクラウド戦略の策定から、技術選定、基盤設計、構築、運用までをトータルにサポートし、全社クラウド基盤『ほくでんデジタルプラットフォーム』、全社統合的なクラウドデータ基盤『統合データファクトリー』の実現に大きく貢献している。
様々なデータ活用環境を最短のリードタイムで提供
北海道電力が新たに構築した『統合データファクトリー』のコンセプトは、「あらゆるデータを収集・蓄積し、分析や見える化が可能なデータ活用プラットフォーム」である。マネジメント層向けダッシュボードの提供、IoTデータの分析に基づく高度な需給予測、生成AIによる非定型データの検索など、幅広い活用に向けて整備が進められている。PMとしてプロジェクトに参画したHPE Servicesの余川達郎氏は次のように話す。
「データドリブンの意思決定を行うための環境では、常に高品質で整合性のとれたデータを利用できることが欠かせません。私たちは『統合データファクトリー』の構築と同時に、大量のデータを適切に扱うシステム/データの規則やプロセスを整えるための『データマネジメント』、全社にデータ活用を定着化させ適切なデータマネジメントを維持するための『データガバナンス』といった標準ガイドラインを入念に作り込みました」
HPE Servicesは、ハイブリッドクラウドやデジタルワークプレイスなどの革新的なDXプラットフォームを提供し、企業や組織のDXへのチャレンジをサポートするサービス組織である。世界200カ国、1万5,000人を超えるITプロフェッショナルが、豊富な実績とナレッジに基づくアドバイザリー、構築サービス、運用保守サービスをトータルに提供している。
「HPEの支援により、『統合データファクトリー』とこれを支える『データマネジメント』『データガバナンス』の枠組みを整備し、事業部門からの要求に即座に応えられる体制を確立できました。実際に、火力部門の部門経営ダッシュボードを整備したのですが、利用可能になるまでのリードタイムを従来の開発と比較し半分以下に削減しています。直後に着手した販売推進部門のダッシュボードではさらに期間を短縮できました」と八鍬氏は話す。
田村氏は、「経営トップの業務変革に対する強い意志を汲み、各事業部門は自部門のありたい姿を描き、それを実現するためのデジタルやICTによる施策を生み出し、試行錯誤を繰り返しながらDXへの取り組みを開始しています。データ利活用のニーズが顕在化してから準備を始めていては手遅れです。先手を打って『統合データファクトリー』を整備するからこそ、新しいビジネス要求にタイムリーに応えることができるのです」と力を込める。
『統合データファクトリー』が提供するメリットについて、HPE ServicesでITアドバイザリーを担当する大塚麻実氏は次のように話す。
「部門ごとシステムごとにサイロ化していたデータの統合化が進み、より網羅的かつ横断的に検索・参照・分析できるようになると、さらに大きな価値が得られるものと考えています。たとえば、火力、水力、再生可能エネルギーの各部門が持つデータを横串で分析することで、これまで見えなかった傾向が明らかになり、考えもしなかったような施策が可能になるかもしれません」
データドリブンを支える、モダンアーキテクチャ
『統合データファクトリー』では、データの収集から、蓄積、加工、活用に至るプロセス全体でAzureのPaaSが有効に活用されている。アーキテクチャ設計にはHPE Servicesの豊富な知見が活かされた。
「ビジネス要求にタイムリーに応えられる柔軟性を備え、予測の難しいリソース要求に対しても拡張が容易なアーキテクチャを採用しています。最新のクラウド技術をいち早く採用しながら『統合データファクトリー』を進化させ、よりビジネス価値を高めていきたいと考えています」とHPE Servicesの余川氏は話す。
さらにHPE Servicesは、『統合データファクトリー』を含む『ほくでんデジタルプラットフォーム』全体の監視・運用・保守を通じてリソースの最適化とシステムの健全化を支えている。マネージドサービス本部の川上雅己氏は次のように話す。
「クラウド環境の安定的な運用を維持するために、モダンなアプローチを採り入れて監視・保守体制を強化しました。リソースやパフォーマンスの状況に常に気を配りながら、何らかの不具合を検知したときには、速やかに関係者と連携して対処できるようTeamsによる情報共有の仕組みを整えています」
情報通信部自身の変革で守りから攻めに転換
田村氏、八鍬氏らは、DXの推進(クラウド)基盤整備と並行し自部門の取組みとして「情報通信部門改革プロジェクト」に取り組んでいる。自らを変革し会社に貢献するために生まれ変わろうとするこのプロジェクトの活動は、成功も失敗も途中経過も、全部員に対しすべてオープンにされているという。
「私たちは、『クラウド』『データ』『セキュリティ』の3軸でICT戦略を組み立て、情報通信部が経営および事業に貢献するための具体策を着実に実行するとともに、コア技術の手の内化、人材育成、新技術へのチャレンジを進めてきました。その成果のひとつがDX推進基盤の整備であり、今後はここから得られる価値を最大化することが目標です。北海道電力のDXおよび自部門の改革に取り組んで3年、情報通信部の役割は『守りのITから攻めのDX』へと大きく変わり始めています」(田村氏)
「情報通信部の変革にはさらに先があります。部門変革(部門トランスフォーメーション)とデータドリブンへの取り組みを加速させ、真に経営と事業に貢献できるよう『人材、組織、考え方』を再定義していきます」と八鍬氏は続けた。
DX推進基盤への社内認知が広がるとともに、情報通信部自身の変革への取り組みも全社に知れ渡り、事業部門の「変革マインド」に火をつけた。各部門が変革の成果を競い合うようになったのである。田村氏は次のように結んだ。
「誰も経験のなかった当社の新たなチャレンジに、HPE Servicesがチーム一丸となって支援してくれたことにとても感謝しています。戦略策定から技術選定、設計、構築、運用まで、HPE Servicesの一貫した協力があったからこそ様々な難題を乗り越えることができました。OpenAIを社内Q&Aに活用する試みも始まっていますが、『ほくでんデジタルプラットフォーム』にAIアシスタントを適用することで、データドリブンへの取り組みが加速していくものと期待しています。ビジネス環境が急速に変化していく状況下では、データに基づく意思決定とアクションがいっそう重要になっていくでしょう。HPE Servicesのチームには、DX推進基盤のライフサイクル全体を通して私たちをサポートしてもらえることを期待しています」
北海道電力株式会社
情報通信部長
田村 圭司 氏
北海道電力株式会社
情報通信部
情報基盤グループ 情報通信企画グループ(兼務)
情報通信部門改革プロジェクト
プロジェクトリーダー
副主幹
八鍬(やくわ) 史典 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
サービスデリバリー統括本部
マネージドサービス本部
マネージドサービス三部
川上 雅己 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
サービスデリバリー統括本部
トランスフォーメーションコンサルティング本部
ITアドバイザリーサービス部
大塚 麻実 氏
日本ヒューレット・パッカード合同会社
サービスデリバリー統括本部
製造・流通サービスデリバリー第二本部 第五部
余川 達郎 氏
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