地域住民の健康な暮らしを支える新電子カルテシステムを確立



独立行政法人地域医療機能推進機構 様

 

JCHO(地域医療機能推進機構)がHPE Synergyを活用し中小病院向け統一電子カルテシステムを構築


全国57の病院による充実した医療に加えて、予防やリハビリ、介護等も含めた地域包括ケアを推進するJCHO(地域医療機能推進機構)。医療業務や経営の効率化を図るべく、先端ICTの利活用にも力を入れている。そうした取り組みの一環として、病床数200床以下の病院を対象とした統一電子カルテシステムを新たに構築。ここではクラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル®Xeon®スケーラブル・プロセッサーを搭載するコンポーザブル・インフラ製品「HPE Synergy」を活用し、医療情報システムに欠かせない高い性能・信頼性を確保。また、運用管理の標準化・省力化にも役立てている。

業界

医療/ヘルスケア

 

ビジョン

「JCHO統一モデル」に基づく効率的な医療情報インフラの実現

 

戦略

中小病院向けの統一電子カルテシステムを構築し、コスト・セキュリティ・運用管理性を改善

 

成果

• 集約化によるコスト削減メリットを活かしIT投資効率を向上

• 病院職員をシステムの運用管理から解放し業務負担を軽減

• 医療ビッグデータとしての分析・活用が容易に

電子カルテシステムの統一化を目指して


全国の社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院の3つの民間病院群の統合により、2014年に設立された地域医療機能推進機構(JCHO)。「我ら全国ネットのJCHOは地域の住民、行政、関係機関と連携し地域医療の改革を進め安心して暮らせる地域づくりに貢献します」を理念として掲げる同機構では、全国57の病院に加えて、介護老人保健施設や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなど様々な施設を展開。生活習慣病などの予防・健康管理から医療、介護、リハビリに至るまで、地域で求められるケアや医療機能を包括的に提供している。

そのJCHOにおいて、今回実施されたのが、統一電子カルテシステム構築プロジェクトである。JCHO 本部 総務部IT 担当部副部長(併)総務部IT 推進課長 西川英敏氏は、取り組みの背景を次のように語る。

「当機構では設立時より医療業務の情報化に力を入れており、電子カルテの導入を進めてきました。しかし以前は、それぞれの病院で個別にシステムの調達を行っていたため、グループ内で様々なベンダーの製品が稼働していました。こうした状況のままでは、次世代医療基盤法でのデータ提供や地域医療連携などの情報共有が病院毎の対応となりスムーズに行えません。また、ICT投資の最適化という面でも、共通化できる部分はできるだけ揃えていくことが望ましい。そこで、JCHOグループの各病院が共同で使える電子カルテシステムを作りたいと考えたのです」

以前の環境においては、運用面でも様々な課題を抱えていたとのこと。JCHO 本部 総務部 IT 推進課 IT 推進専門職 風間貴之氏は「中小病院ではIT専任の職員が配置されておらず、他に本業を持つ職員が兼任でサーバーやネットワークなどの管理を行っている状況。これでは現場の業務負担が増してしまい、日常的な運用がなおざりとなり、障害が生じた際に問題になるケースや、専門家でないと分からないようなセキュリティリスクが見落とされるおそれもあります。また、各病院で使っている製品のベンダーが異なるため、人事異動で別の病院へ移った際には、一からシステムの使い方を覚えないといけない点も問題でした」と語る。その点、本部側で統一化された電子カルテシステムを提供すれば、このような現場の課題も一挙に解決することができる。

独立行政法人 地域医療機能推進機構本部

総務部
IT担当部副部長(併) 総務部IT推進課長

西川 英敏 氏

独立行政法人 地域医療機能推進機構本部

総務部
IT推進課
IT推進専門職

風間 貴之 氏

200床以下の中小病院をターゲットに選定


実際に取り組みを進めるにあたっては、まず病床数が200床以下の中小病院をターゲットとする方針が定められた。西川氏はその理由を「当初は57病院すべてを対象とすることも考えましたが、この方法だと病院規模の違いが大きなネックになりました。JCHOグループには600床を超える病院もありますが、こうした大規模病院に合わせると全体の費用が高止まりしてしまいます。かといって、100床規模の病院に合わせると、今度は機能面で不足が生じます。そこで、グループ内で一番数の多い200床規模の中小病院にマッチした環境を作ることにしました」と説明する。

システムを構成するハードウェア群については、Tier4クラス(※注)の基準を満たすデータセンターに設置することで、高い安全性とセキュリティを確保。また、別の遠隔地データセンターへのバックアップも行うことで、万一の大規模災害時などにも確実にデータを保護できるようにした。

さらに、もう一つ注目されるのが、電子カルテ等の業務アプリケーションとそれを支えるインフラ製品の調達を別々に行った点だ。西川氏は「まずアプリケーションについては、各病院の業務ニーズを『JCHO統一モデル』として取りまとめ、これを満たせるかどうかを技術面・コスト面の総合評価方式で選定。また、インフラ製品については、JCHOグループが求める性能・信頼性・拡張性などを最適なコストで実現できる製品を選ぶこととしました」と続ける。その結果、競争入札を経て採用されたのが、日本ヒューレット・パッカードのクラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル®Xeon®スケーラブル・プロセッサーを搭載するコンポーザブル・インフラ製品「HPE Synergy」(以下、Synergy)であった。

(※注) Tier4クラス :「Tier」とはデータセンターの信頼性や安全性を示す基準。Tier1~Tier4の4段階に分けられており、数字が大きいほど品質が高い。

システムを集約する基盤に「HPE Synergy」を採用


今回導入されたSynergyは、多種多様なワークロードを含むシステム環境を効率的に実現できる製品だ。フレーム内に収容するコンピュート/ストレージ/ファブリックモジュールを自在に組み合わせることで、要件に合ったインフラを柔軟に構成することができる。また、高い集積率を有するため、今回のような複数病院のシステムもコンパクトに統合することが可能だ。ちなみに本プロジェクトでは、Synergy上で稼働するアプリケーションはすべて仮想化されているが、Synergy自体はベアメタルの物理環境やコンテナなども同一環境内に統合することができる。

「従来のインフラ環境における課題として、システムリソースの適正化という点がありました。医療情報システムには極めて高い信頼性・可用性が要求されますので、どうしても安全を見越した構成を組みがちです。その結果、CPUやメモリを潤沢に搭載し、クラスタ化も施されたサーバーがそれぞれの病院でどんどん導入されるようになっていました。もちろん、システムの安定性確保は大前提ですが、その一方でそこに費やされているリソースや費用が果たして適切かどうかという評価はあまり行われてこなかった。今回、アプリケーションとインフラ製品の調達を分けたのも、機構全体として最適な基盤を目指したいという狙いがあったからです」と西川氏は語る。その点、Synergyによる共通基盤に各病院のシステムを集約すれば、導入したリソースを最大限に有効活用できるようになる。

インフラ運用管理の標準化・省力化も推進


加えて、今回の取り組みでは、導入後の運用管理についても十分な目配りが行われている。西川氏は「データセンターの利用については以前から取り組んでいますが、その際にも運用受託業者に対してITIL(IT Infrastructure Library)に沿った運用管理を求めた経緯があります。ハードウェア/ソフトウェアなどの資産をCMDB(Configuration Management Databese:構成管理データベースで)でしっかり管理すると共に、運用管理にまつわる各種のプロセスも標準化していく。こうすることで、何らかのトラブルが生じた際の対応を迅速・確実に行えますし、医療現場への影響も最小限に抑えられます。当然、今回の統一電子カルテシステムにおいても、同様の仕組みを盛り込みたいと考えました」と語る。

その点、Synergyには、ITインフラ全体の統合化管理を可能にする運用管理プラットフォーム「HPE OneView」が用意されている。ここでは、シンプルで分かりやすいGUIを利用して、サーバーやストレージ、ネットワークなどの状況を簡単に確認することが可能。各デバイス間の接続情報などもグラフィカルに可視化できるため、現在の構成が一目で把握できる。

またSynergyは、ユニファイドAPIを備えているため、各種のソフトウェアや運用管理製品とも柔軟に連携できる。たとえばVMware環境に精通したユーザーであれば、使い慣れたVMware vCenterやVMware vRealize OperationsからSynergyを管理できるのだ。これらの機能を活用すれば、同機構が目指す効率的な運用管理環境を容易に実現できる。「当機構本部で実際の運用管理作業を行うわけではありません。しかし、受託業者に標準化されたプロセスに則った運用管理を行ってもらえれば、統一電子カルテシステムを安定的に維持運用することができます」と西川氏は語る。

全国のJCHO 病院への展開を着実に実施


こうして導入された統一電子カルテシステムは、2019年5月より本番稼働を開始。風間氏は「まずはパイロット病院で実業務への適用を開始し、アプリケーションの改善点などを洗い出した上で他の病院への展開を進めていきました。展開中に出た要望のうちJCHO病院全体に必要なものを取り込みながら現在も発展中です」と語る。

パイロット導入の過程では、電子掲示板で意見を募るなどして広く現場の声にも耳を傾けた。西川氏はその狙いを「今回のシステムには、本丸の電子カルテ以外にも、医事会計やオーダリング、看護関連、リハビリ、栄養・給食、地域連携など様々な業務システムが搭載されています。とはいえ、単にこちらから必要な機能を提供するというのではなく、現場の要望も積極的に取り入れてより使いやすいシステムにしたかった。考え方としては、ERP導入の際にFit/Gap分析を行うのと同じですね」と語る。

取材時点では全国10病院への展開を既に完了しており、さらに4病院の移行作業を進めているところであった。当初は全病院の約1/3程度をターゲットと想定していたが、国の方針に沿って病床数を減らす病院もあるため、最終的には半数を超える病院が統合対象となる可能性もあるとのことだ。

病院職員の負担軽減やコスト削減に大きく貢献


統一電子カルテシステムを利用することで、業務面でも大きな改善効果が期待されている。風間氏は「まず一点目は、病院職員の負担軽減です。統一電子カルテのシステムはすべてデータセンターに集約されますから、今後は各病院側でバックアップ等の日常運用や修正パッチ等の適用作業などの面倒を見る必要がなくなります。その分、本来の業務に専念できますし、人事異動時は最小限の引継ぎで済みます」と語る。

また、最適なIT投資の実現にも大きく寄与。西川氏は「各病院のシステムを集約することで、データセンターやネットワークなどのインフラにそれなりの費用が掛かることは確かです。しかし、独立行政法人はサイバーセキュリティ基本法で定められた政府統一基準のセキュリティ対策を遵守する必要があり、これを個々の病院で対応することと比較すると、以前よりコスト的に優位であり、今後他の病院への展開が進んでいけば、さらに大きなスケールメリットが期待できます。また、セキュリティやデータ保護に関する投資なども、今後は個々の病院で行わずとも済むようになります」と語る。

加えて見逃せないのが、より柔軟なデータ活用が行えるようになった点だ。以前の環境では、電子カルテのベンダーごとにデータフォーマットが異なっていた上に、ITに詳しい担当者が自病院のマスタデータを個別に作り込んでいたケースもあった。しかし、統一電子カルテシステムではJCHO標準のマスタデータを使用すること、マスタデータ管理を保守業務の一環として構築業者へ委託し、長期のマスタデータの整合性を確保する体制とすると同時に職員の業務軽減を実現した。西川氏は「最近では、政府でも医療ビッグデータの利活用を進めていますが、当機構にデータ提供の要望があった際には、一度変換するだけですぐに全病院分のデータを用意できます」と力強く語る。

今回導入されたSynergyも、インフラの安定稼働に大きく貢献。風間氏は「障害の予兆監視なども行っているため、Synergyについてはトラブルなく運用を継続できています。病院数を増やしても性能が落ちるようなことはありませんし、今後のシステム拡張等についても一切不安はありません。今後もこの調子で動き続けてもらえれば」と語る。

こうして統一電子カルテシステムの導入に成功したJCHOだが、今後も引き続き医療情報環境の改善に取り組んでいく考えだ。「病院で働く職員には、可能な限り医療関連業務に専念できる環境を用意していきたいと考えています」と抱負を語る風間氏。また西川氏も「医療業務を支えるインフラは、とにかく何事も起きないことが一番です。今後も信頼性の高い業務環境の実現に向けて、力を尽くしていきたいですね」と述べた。

ご導入企業様

独立行政法人地域医療機能推進機構 様

 

所在地:東京都港区高輪3-22-12

URL:https://www.jcho.go.jp/