庁内システム統合とデータ集約を目指し、LG-WAN系サーバーをHPE SimpliVityで刷新

美波町 様

所在地:徳島県海部郡美波町奥河内字本村18-1
URL:https://www.town.minami.lg.jp/

リソース有効活用とインフラ最適化に貢献

徳島県南東部に位置する美波町では、LG-WAN(総合行政ネットワーク)接続系業務サーバー群の再構築を実施した。今回の更新にあたっては、災害時における行政機能の確保やインフラ環境のシンプル化/最適化、重要業務データの集約化など、様々な要件が課せられた。そこで、同町では、「HPE SimpliVity 380 Gen10」を新たに導入。将来的なクラウド移行にも柔軟に対応できる、先進的な庁内情報基盤を実現している。 

業界

行政

 

目的

町役場業務の中枢を担うLG-WAN系サーバー基盤を刷新。高い信頼性とセキュリティを確保すると同時に、将来のクラウド移行も見据えた柔軟な環境を実現すること。

 

アプローチ

クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル®Xeon®スケーラブル・プロセッサーを搭載する「HPE SimpliVity 380 Gen10」を新たに採用。個別の物理サーバーで構築されたシステムとデータを効果的に集約すると同時に、圧縮・重複排除機能によるリソース有効活用も推進。

 

ITの効果

• 「HPE SimpliVity 380 Gen10」による新たなLG-WAN系サーバー基盤を構築

• 2ノード構成を採用し先進HCI環境を低コストで実現

• 圧縮・重複排除機能によりストレージ容量を最大約93%削減

• 標準バックアップ機能を活用し、高速なバックアップ/リストアを実現

 

ビジネスの効果

• ベースとなる地図情報を圧縮・重複排除することで統合型GISと同様の運用を実現

• サイロ化した業務サーバー群をシンプルに統合することに成功

• 各業務システムや職員が保有する重要データの集約化/冗長化に成功

• 新たな行政ニーズにもスピーディに対応することが可能に


先進ITを駆使した地域振興施策を展開 庁内情報基盤の大規模プレースが課題に

 

目前に拡がる雄大な太平洋を背景に、美しいリアス式海岸や砂浜、断崖絶壁が続く徳島県東南部エリア。室戸阿南海岸国定公園にも指定されるこの地域に、その先進性で全国から注目を集める自治体がある。旧日和佐町、旧由岐町の二町合併により、2006年に誕生した美波町だ。元々は漁業や農業などを主力産業とする同町だが、四国霊場23番札所・薬王寺やアカウミガメの産卵地である日和佐海岸など、様々な観光資源にも恵まれている。しかし、その一方で、全国平均よりも速いペースで人口減少が進むなど、深刻な過疎化問題に直面していた。総務課 課長の浜 孝至氏は「こうした状況を変えていくためには、当町らしさを最大限に活かした地域振興策が必要です。そこで、『“にぎやかそ”にぎやかな過疎の町 美波町』というキャッチフレーズを策定。過疎地域ではあるものの、にぎわいが感じられる町づくりを進めています」と説明する。

この取り組みで注目されるのが、地域振興にITをフル活用している点だ。豊かな自然環境と充実した光ファイバー網を活かし、都市部のベンチャー企業などをターゲットとしたサテライトオフィス誘致政策を展開。親子一緒でも気軽に訪れられるよう、学童の多拠点修学を可能とするデュアルスクール制度も日本で初めて実施している。その結果、東京などに本社を置く企業19社のサテライトオフィス誘致に成功。ちなみに、この数は徳島県内でも最多となる。さらに、その他にも、産学官のオープンイノベーション創出を加速する施設「ミナミマリンラボ」を設置するなど、様々な取り組みを推進。浜氏は「最近では、サテライトオフィスに勤務する方々も、地域の祭りや行事などに積極的に参加されています」とにこやかに語る。

このように、新たなにぎわいを取り戻しつつある同町だが、庁内業務を支える情報基盤に関しても一つの課題を抱えていた。それは、地方自治体の業務に欠かせないLG-WAN接続系のサーバー群や、個人番号利用事務用クライアントPCの大規模リプレースである。総務課の大地 辰弥氏は「2018年に総務課へ異動し、最初に取り組むことになったのが今回のリプレースでした。当町は、他の小規模自治体と同様の“ゼロ情シス”状態であり、私自身もエンジニア経験はありません。更新対象のサーバーが複数台あることも初めて知るような状況の中で、インフラの刷新に取り組むこととなったのです」と振り返る。

美波町

総務課
課長
浜 孝至 氏

美波町

総務課
大地 辰弥 氏

システム統合とデータ集約を図るべくHPE SimpliVityを新たに採用

 

実際に取り組みを進めるにあたっては、まずクラウド移行への準備を進めていくことを基本方針とした。「本業を抱えながらIT担当も兼務するわけですから、出せるものは外へ出していかないと業務が廻りません。そこで、クラウドの導入・活用を念頭に置いた上で、庁内外の関係者などとも相談しながら、どのような形がベストなのか探っていきました」と大地氏は語る。自治体では様々な行政計画に添って活動を進めるため、これらの指針との整合性も十分に考慮したとのこと。大地氏は「たとえば自然災害対策もその一つ。海に面した当町では、地震や津波などにも万全の備えが求められます。重要な業務システムやデータがクライアントPCベースで運用されていたこともあり、こうしたものをきちんと守れる環境にしたいと考えました」と語る。

このような検討の過程で、今回の更改対象となったサーバー群については、オンプレミスでの再構築を行うことを決断。他自治体でのクラウド障害事例がいくつか報告されるなど、信頼性・可用性面でまだリスクが高いと考えられたからだ。ただし、コストや信頼性の問題が解決すれば、容易にクラウドへ移行できる環境は整備しておきたい。そこで個別の物理サーバーを仮想統合すべく、新たなインフラ製品の選定に取り掛かった。ここで新たに導入されたのが、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)のハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(以下、HCI)製品、クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル®Xeon®スケーラブル・プロセッサーを搭載する「HPE SimpliVity 380 Gen10」(以下、SimpliVity)である。今回のプロジェクトを担当した西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の篠原 祥仁氏は、SimpliVityを提案した理由を「分散したサーバー群をシンプルに集約できる上に、VMware vCenterによる一元的な管理も実現できます。インフラの運用に手が掛からないようにしたいというお客様のご要望に応える上で、最適な製品だと考えました」と説明する。

同町でもこの提案を高く評価。大地氏は「物理、仮想、クラウド、シンクライアントなど、いろいろな方法を模索する中で、一番これからの方向性に適合しているのはHCIだと感じました。特に今回の取り組みでは、システム統合とクライアントPCのデータ集約を重要テーマに掲げましたので、専用ハードウェア・アクセラレータによる圧縮・重複排除機能に期待するところは大きかったですね。これなら各担当者が重複して保有する業務データなどを効率よく集約でき、サーバー側でしっかりと管理することもできます」と語る。

図1

図2

複数部門の地図情報を圧縮・重複排除 統合型GISと同様の効果を実現

 

SimpliVityによる新LG-WAN系サーバー基盤は、2019年10月より本番稼働を開始。従来は個別の物理環境で稼働していたメールサーバーやファイルサーバー、ウィルス対策サーバー、Active Directoryサーバーなどのサーバー群を統合したほか、特定部門用の業務システムやGIS(地図情報システム)なども同じ環境に統合している。また、2ノード構成でインフラを構築することで、導入コストを最小限に抑えることにも成功している。導入後の具体的なメリットとしては、まず圧縮・重複排除機能による大幅なデータ容量削減効果が挙げられる。「USBメモリや外付けHDDは情報漏えいなどのセキュリティリスクがあるため、今回はWindows 7からWindows 10へのアップグレードに伴うデータ移行もファイルサーバー経由で行いたいと考えました。当然、かなりの容量を用意しておく必要がありますが、SimpliVityの圧縮・重複排除機能は優秀で、最大約93%もの容量を削減できています。おかげでクライアントのデータ移行を円滑に進めることができました」と大地氏は満足げに語る。

また、圧縮・重複排除機能の効果が特に顕著に発揮されているのが、前述のGISである。GISは建設課や水道課、税務課など、庁内の様々な部門で利用されるが、ベースとなる航空写真や現況平面図などは、基本的に同じデータをそれぞれのシステムで保有している。これらのデータは容量が数百GBにも達するため、庁内のあちこちに重複して存在するのは、あまり好ましいこととは言えない。しかし、このような状況を避けるには、統合型GISを導入するしかないというのがこれまでの常識であった。「市販の統合型GIS製品も、用途によって向き/不向きがあります。いくらリソースがムダだといっても、そうおいそれと入れ替えられるものでもありません。しかし、SimpliVityを利用すれば、実はもっと簡単にこの問題を解決できます。筐体内に各部門のGISを統合すれば、自動的に共通する地図データの圧縮・重複排除が行われます。わざわざ新しい統合型GISを導入したりしなくとも、それとほぼ同じ効果を得られるというわけです」と大地氏は力強く語る。当初は容量を1/3程度に減らせればと考えていたそうだが、1/10未満にまで削減できたのは驚きだったとのこと。「庁内のサーバーやデータをとにかく早期に集めたいと考えていただけに、データだけでなくOS領域も含めて圧縮・重複排除されるのは大きかった。今後新たなサービスを立ち上げる際なども、空き容量不足などの心配をせずに済みます。将来的にハイブリッド/マルチクラウドへの移行を行う際にも、柔軟に対応できる環境が実現できました」と大地氏は続ける。

西日本電信電話株式会社

徳島支店
ビジネス営業部
SE担当
篠原 祥仁 氏

災害時の運用を考慮した仕組みも構築 バックアップ業務の改善にも成功

 

今回のプロジェクトでは、最大の懸案であったデータ集約化の方法についても一工夫が凝らされている。「日々の業務で利用するデータについては、Windowsのフォルダリダイレクト機能を利用することで、自動的にSimpliVity上のファイルサーバーに保存される仕組みを導入しました。これにより、ユーザーに特に意識させることなく、サーバーにデータを集めることができます」と大地氏は説明する。ただし、同町では、災害時に職員がクライアントを持ち出すことを想定して、今回からノートPCへの切り替えを行っている。しかし、いくらノートPCを持ち出したとしても、そこにデータが存在しないのでは肝心の行政機能を維持できない。そこで、一度サーバーに保存されたデータを、30分置きにノートPC側に逆コピーする仕組みも構築しているのだ。「この方式ではサーバーにも大きな負荷が掛かりますが、高速なオールフラッシュ・ストレージのおかげで、性能的な問題は全く生じていません」と大地氏は語る。

また、バックアップ業務が改善された点も見逃せない。従来は各職員にデータバックアップを任せていたため、繁忙期などは業務に追われて後回しになる可能性もあった。その点、SimpliVityの標準バックアップ機能を利用することで、毎日確実にバックアップを実施することが可能に。大地氏は「現在は7世代分のデータを保存していますが、圧縮・重複排除機能のおかげでほとんど容量も消費しません。処理も非常にスピーディで、数百GB分のバックアップがものの数秒で終わります。リストア作業もvCenterから簡単に行えますので、運用管理効率は格段に向上しました」と語る。また、篠原氏も「以前はバックアップデータをNASに書き出していましたが、年々容量が増大しているため、処理に丸一日掛かってしまうようなケースもありました。こうした状況を改善できたことで、お客様への貢献も果たせたと感じています」と続ける。

なお、今回のインフラ更改にあたっては、職員のリテラシー向上や業務ストレス低減を図るなど、人に関わる様々な施策も展開。また、クラウド活用推進の一貫としてMicrosoft Office365の導入を行っているが、ここでもLG-WAN ASP事業者をPOP(接続点)としてOffice365認証サーバーの認証を行うなど、県内の他自治体に先駆けた取り組みを実施している。「その他に、個人番号利用事務系へのDaaS導入なども進めているほか、まだ物理環境で残っているインターネット接続系のインフラについても、より最適な形に改めていきたいと考えています」と大地氏。また、浜氏も「今回のインフラ更改を行ったことで、職員の業務効率や生産性も大きく改善できました。今後もこの取り組みをさらに進めて、町のにぎわいや発展につなげていきたい」と展望を語る。SimpliVityの力が活かされる場面も、まだまだ増えていきそうだ。


ご導入製品情報

HPE SimpliVity

世界最高レベルの効率と耐障害性を備えた、大企業から中小企業まで幅広い企業で利用されているエンタープライズグレードのハイパーコンバージド(HCI)製品であるHPE SimpliVityは、複雑なIT環境をシンプル&コンパクトに統合し、これまでにないシンプルで扱いやすい仮想化基盤を実現します。


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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導入ハードウェア

HPE SimpliVity 380 Gen10
HPE ProLiant DL360 Gen10