お客様導入事例
東日本電信電話株式会社 様
コンテナ集約基盤でAIによる映像解析を活用したアプリを低コストでスピーディにデリバリー
NTT東日本がHPE ProLiant DL380 Gen10サーバーとHPE 3PAR StoreServストレージを採用しRed Hat® OpenShift®で「映像AI解析プラットフォーム」を新たに構築
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)ではAIによる映像解析サービスの提供を通じて市場に多様なニーズがあることを把握し、そのビジネスの可能性を確信してサービスプラットフォームとなる「映像AI解析プラットフォーム」の構築および商用化を進めている。2022年には国内に500万台以上のIPカメラが稼働すると見られている成長市場に向けて、高い性能を効率よく実現するHPEの「HPE ProLiant DL380 Gen10サーバー」と「HPE 3PAR StoreServストレージ」、そしてレッドハットの「Red Hat OpenShift」が映像AI解析プラットフォームに採用された。
業種
Webサービス
ビジョン
映像解析に対する多様なニーズに応えられるサービスの具現化をスピーディーに行える環境の構築
戦略
• 基本機能を集約した映像AI解析プラットフォームを構築、個別要件はその上にアドオンして開発
• コンテナ技術を利用しアプリ開発の効率化を図る
成果
商用化に向けた様々な検証を本番環境を想定し迅速に行うことができた
映像解析の多様なニーズにビジネスの可能性を見出した
防犯カメラの映像を顧客サービスの向上や店舗運営の効率化に役立てたいなど、映像活用へのニーズが多様化している。こうしたニーズに対して東日本電信電話株式会社(NTT東日本)では店舗や施設で録画された映像をAI(人工知能)で解析して業務の改善やリスク対策に活かすサービス「AIガードマン」や「ギガらくカメラ」などを以前より提供してきた。
同社はこれらのサービスの提供を通じて映像解析に対してさまざまなニーズがあることを把握し、ビジネスの可能性を確信したという。NTT東日本で映像解析サービスの販売を担当するほか、AIやIoTを活用した新規サービスの開発にも携わるビジネス開発本部 第二部門 市場開拓担当 担当課長 佐藤優氏は次のように説明する。
「店舗や街頭、工場やオフィスなどあらゆる場所にIPカメラが設置されており、国内のIPカメラの稼働台数は2022年には510万台に増加すると言われています。しかし録画した映像は撮り溜めているだけで活用されていないケースが多いのが実情です。映像解析のさまざまなニーズに応えることで、国内の映像解析市場規模は2022年に2018年の28倍となる1,500億円に拡大できると期待しています」
そこで佐藤氏は映像解析に対する多様なニーズに応えられるサービスの具現化に向けて構想を立て始めた。2019年春、佐藤氏のもとに集まったのはこれまで社内のさまざまなPoC(概念実証)を商用化してきた仲間たちだ。佐藤氏のアイデアはこうだ。
「お客様からご相談いただいた要望は多岐にわたり、それぞれに個別に応えていくと時間とコストの負担が大きくなります。ベースとなる機能を開発してプラットフォームを構築し、その上にお客様の要望に応じた機能を乗せることで幅広いニーズに低コストでサービス提供できると考えました」
構想の具現化を技術面で支援するとともに、商用化に向けたビジネス企画も支援するデジタル革新本部 デジタルデザイン部 プラットフォーム開発部門 アーキテクチャ担当 担当課長 鴨田純一氏は次のように当時を振り返る。
「社内ではAI系のPoCを数多く実施してきましたが、その際に苦労するのが専用基盤の開発・構築です。これまで幾度もサーバーの調達からネットワークの構築、設備の設置場所の確保といった苦労を実際に体験してきました。基本的な機能があらかじめ用意されている映像AI解析プラットフォームをシェアして利用すれば、映像解析を活用したアイデアをスピーディかつ低コストで検証できます」
プロジェクトで商用環境の構築に携わるネットワーク事業推進本部 高度化推進部クラウドサーバ技術部門 サーバ基盤技術担当 担当課長 多田将太氏は映像AI解析プラットフォームのメリットについて次のように話を続ける。
「PoCごとに専用環境を構築するととても高価になってしまいます。集約した環境をシェアして利用すればコストを抑えられ、映像解析への需要促進にもつながります」
サーバーを局舎に集約してマルチカメラ・マルチAIを実現
システムの具体的な要件を議論し、主に次のように定義した。通常はIPカメラが設置されているエッジに設置するサーバーをNTT東日本の局舎に設置することで、複数の顧客の複数のカメラの映像を局舎のサーバーに集約してシェアする。
また局舎に設置したサーバーをシェアすることで、一つの映像に対して複数のAIを適用できるようになる。従来のエッジのサーバーでは一つの映像に対して一つのAIしか適用できないが、映像AI解析プラットフォームではAI機能を局舎に集約してMEC(Multi-access Edge Computing)を構築することでマルチカメラ・マルチAIを実現する。
さらに、商用化にあたっての課題のひとつであった、GPUを低コストに利用可能とするため、NTTソフトウェアイノベーションセンタが開発したリアルタイム映像解析技術「Deepack®」を用いた、GPU高収容化技術を確立。これにより、1つのGPUサーバでより多くのカメラの映像解析を実現可能になった。
こうしたシステム要件をもとに映像AI解析プラットフォームの中枢を担うサーバーの調達に関して提案を募集し、製品紹介、技術討論を経て複数のベンダーの中から日本ヒューレット・パッカード(HPE)が提案した「HPE ProLiant DL380 Gen10サーバー」と「HPE 3PAR StoreServストレージ」を選定した。
NVIDIA T4を搭載 汎用のx86サーバーで高性能を実現
HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーを選定した理由を多田氏は次のように説明する。
「システムの性能効率を引き上げるには1台のサーバーにCPU、メモリー、GPUをバランスよく、できるだけ多く収容できることが求められます。HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーは1台に4枚のNVIDIA T4 GPUを搭載できるなど、性能効率に優れていました。また高い性能が求められる用途では高価なHPCも選択肢となりますが、汎用サーバーで高い性能を発揮できることも評価しました」
NTT東日本におけるHPEの実績も評価されたと多田氏は話を続ける。
「パートナー企業や大学などとAIやIoT、エッジコンピューティング等の技術を活用した実証実験を行っているスマートイノベーションラボにもHPEのGPUサーバーが導入されており、AIの学習環境が稼働して実際に活用されています。社内の多くの案件でHPE製品の利用実績があり、性能と信頼性に満足しています」
Kubernetesでアプリ開発を効率化 レッドハットのOpenShiftを採用
映像AI解析プラットフォームではコンテナ技術が採用されている点も大きな特長でありメリットとなっている。映像AI解析プラットフォーム上ではさまざまなアプリケーションが開発されてサービス提供されることになるが、アプリケーションの開発には通常、テスト環境と本番環境がそれぞれ必要で、双方でアプリケーションを構築しなければならず手間とリスクが伴う。
そこでコンテナ技術を利用すればテスト環境で構築したアプリケーションを本番環境に持ち運ぶことができ、テストから提供までを効率化、迅速化できる。このコンテナ技術を便利に使えるツールとして注目されているのが「Kubernetes」だ。ただし課題もあると多田氏は指摘する。
「本番環境を想定するとKubernetesに足りない周辺機能があり、それを補うには必要な機能が揃っておりテクニカルサポートも受けられるレッドハットのOpenShiftを利用することが最適解でした」
2020年5月、HPE ProLiant DL380 Gen10サーバーとHPE 3PAR StoreServストレージ、レッドハットのOpenShiftで開発・構築した検証環境が無事完成し、商用化に向けたさまざまな検証が実施され、期待通りの成果を得ることができた。そして現在、2021年夏の商用化に向けて本番環境の開発・構築が佳境を迎えている。商用化に向けて佐藤氏は次のように意気込みを語っている。
「映像AI解析プラットフォームには既設のIPカメラをつなげることができるため、活用方法はアイデア次第といったところでしょうか。映像AI解析プラットフォームによって実証から商用化までをシームレスに、スピーディに進められます。今後はニューノーマル時代ならではの非接触、無人化、過密対策などをテーマにユースケースを増やしていきたいと考えています。防犯やマーケティングにも新しいサービスを提供できると期待しています」
HPEではNTT東日本の映像AI解析プラットフォームに採用されたHPE ProLiant DL380 Gen10サーバーやNVIDIAのT4 GPUやNVIDIA NGC、そしてレッドハットのOpenShiftなどを「Microbus」という名称でパッケージング化して提供している。今後の展望について多田氏は次のように締めくくった。
「現在は1,000台のIPカメラを接続することを想定してサイジングしましたが、お客様の反応を見ると数万台、数十万台のIPカメラが接続されることを想定してサーバーを増強する必要があると考えています。またGPUアクセラレーターを搭載したサーバーのライフサイクルは汎用サーバーよりも短く、新しいテクノロジー、特に最新のGPUを搭載したサーバーへのニーズは常にあります。サーバーのリプレースに伴う投資の効率化において「HPE GreenLake」によるコンサンプションモデルでの利用に期待しています」
東日本電信電話株式会社
(左より)ネットワーク事業推進本部 高度化推進部 クラウドサーバ技術部門 サーバ基盤技術担当 担当課長 多田 将太 氏
ビジネス開発本部 第二部門 市場開拓担当 担当課長 佐藤 優 氏
デジタル革新本部 デジタルデザイン部 プラットフォーム開発部門 アーキテクチャ担当 担当課長 鴨田 純一 氏
ご導入製品情報
HPE ProLiant DL380 Gen10
マルチワークロードのコンピュートに対応できる世界最高レベルのパフォーマンスときわめて高い汎用性を備えた、業界をリードする2P/2Uサーバーです。
本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス
本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。
導入ハードウェア
NVIDIA Tesla T4 GPU
導入ソフトウェア
Red Hat OpenShift