エッジ‐クラウド連携による「次世代工場DX」への挑戦
三井化学株式会社 様
所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター
URL:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/
三井化学が全国7拠点にエッジコンピューティング環境を整備、IoTデータのエッジ処理・活用とクラウド連携により、データドリブンな工場オペレーション最適化を推進
三井化学が、Nutanix Cloud Platform搭載のHPE ProLiant DX380 Gen10を採用し「次世代工場DX基盤」を構築した。国内の研究所および主要工場に、IoTセンサーデバイスネットワークとエッジコンピューティング環境を整備。各拠点でのIoTデータの収集・活用を可能にするとともに、IoTデータを本社/データセンターへ集約してAmazon Web Services(AWS)と連携する大規模なデータ分析環境を実現している。同社の取り組みは、製造業におけるIoT/ エッジコンピューティングの先進事例であるとともに、エッジ- クラウドが連携するハイブリッドクラウドの理想形を示している。
業種
製造
ビジョン
長期経営計画「VISION 2030」で掲げるDXの一環として、IoTデータの戦略活用を通じたデータドリブンな工場オペレーション最適化を実現
戦略
エッジにおけるIoTデータ収集・活用と、エッジ-クラウド連携による大規模なデータ分析を可能にする「次世代工場DX基盤」の整備
成果
• Nutanix Cloud Platform搭載のHPE ProLiant DX380 Gen10を採用し、全拠点共通アーキテクチャーのエッジコンピューティング環境を整備
• 研究所・工場のエッジ環境でIoTデータの収集とリアルタイム分析・活用が可能に
• IoTデータをAWSと連携しクラウドリソースを活用した大規模なデータ分析を可能に
• 熟練プラント技術者の知識をシステムで継承し、データドリブンな工場オペレーション最適化を推進
デジタルトランスフォーメーション推進本部の設立
三井化学が、長期経営計画「VISION 2030」で掲げたDXによる事業基盤の強化を着実に前進させている。2022年4月に新設された「デジタルトランスフォーメーション推進本部」には、情報システム部門を中心に全社からDX人材が集結。製造・販売型のビジネスから、ソリューション型ビジネスモデルへの転換を目指し、全社・全事業でのデジタルテクノロジーの活用を加速させている。情報システム統括部 基盤グループで業務基盤チームリーダーを務める黒田雅人氏は次のように話す。
「VISION 2030では、三井化学グループの存在意義を『社会課題の解決』と再定義し、サーキュラーエコノミー(循環経済)への対応力と、ビジネスの競争力を同時に高めるためにDXを活用することを示しています。デジタルトランスフォーメーション推進本部がリードするDXへの取り組みは、あらゆる業務部門の生産性向上から、研究開発や生産技術の進化、物流や購買の最適化まで広範に及びます」
総合化学メーカーである三井化学の事業ポートフォリオは、ライフ&ヘルスケアソリューション、モビリティソリューション、ICTソリューション、ベーシック&グリーンマテリアルズの4軸で構成される。同社の競争力を支える「モノづくり」を担うのは、研究所(袖ケ浦)と国内に展開する主要5工場(市原・茂原分、大阪、名古屋、岩国大竹、大牟田)である。
「私たちは、全社・全事業で変革に取り組むための共通プラットフォームとして『次世代工場DX基盤』の整備に取り組んできました。国内6拠点と本社/データセンターを結ぶエッジコンピューティング環境の導入を完了させたのは2021年12月です。これは、2017年より大阪工場で取り組んできたIoTの先行研究を発展させ、変革へのチャレンジを新しいステージに進めるものです」(黒田氏)
三井化学の「次世代工場DX基盤」の一翼を担うエッジコンピューティング環境に採用されたのは、Nutanix Cloud Platformを搭載するHCI製品「HPE ProLiant DX380 Gen10」である。
「より高効率で安全・安心・安定的な工場を追求していくには、私たち自身の生産技術を磨き続けるしかありません。しかし、QC活動のようなボトムアップ型の改善には限界があります。『次世代工場DX基盤』は、この壁を突破し、新しいイノベーションを生み出すための中核となるシステムです」(黒田氏)
熟練プラント技術者の知識をシステムで継承
「HPE ProLiant DX380 Gen10」は、NutanixとHPEが緊密に協力して生まれたエンタープライズクラウドソリューションである。高い信頼性とセキュリティ機能を備えたHPE ProLiant Gen10サーバーに、洗練された運用体験をもたらすNutanix Cloud Platformを統合。コストパフォーマンスと運用管理性に優れたNutanixアプライアンスとして、世界中で急速に支持を拡大している。
「私たちが『次世代工場DX基盤』を整備しIoTの活用を決断した背景には、熟練プラント技術者の知識と経験を次の時代に正しく継承していく、という大きなテーマがありました。技術者が持つ暗黙知をデジタル化して、システムで共有・再利用できるようにすることが目標です」と黒田氏は話す。
三井化学の「次世代工場DX基盤」は、6拠点のエッジサーバー、データを集約する本社/データセンターの中央サーバー、これらと連携するパブリッククラウド(AWS)によって構成される。Nutanix Cloud Platform搭載のHPE ProLiant DX380 Gen10は、HCI製品ならではのシンプルな機器構成で扱いやすいエッジコンピューティング環境を実現した。
「エッジサーバーは、プラントに設置された多数のセンサーから、温度、圧力、流量、振動などの様々なデータを収集します。こうした『現場でのオペレーショナルなデータの分析』をリアルタイムで実行し、プラント設備の異常検知や予防保全、製品の品質評価や歩留まり率の予測に活用するとともに、より柔軟な増産対応やラインオペレーションの最適化に役立てます」(黒田氏)
6拠点のエッジサーバーが収集・分析したデータは、本社/データセンターの中央サーバーに集約される。すべての拠点で「同じアーキテクチャーのエッジ環境」が整えられていることがポイントだ。
「中央サーバーは、全てのエッジサーバーのデータをバックアップするとともに、パブリッククラウド(AWS)へデータを転送する役割を担います。膨大な量のIoTデータをオブジェクトストレージ(Amazon S3)にティアリングすることで、ストレージコストを抑える構成を採用しました。AWS上では、中長期にわたり収集されたデータを活用して『経営視点・全社視点でのストラテジックなデータ分析』を行います」(黒田氏)
エッジ-クラウドが相互に補完するBCP対策
三井化学は2015年に「クラウドファースト」を宣言し、基幹業務システムをはじめ全社のあらゆるシステムをパブリッククラウド上に移行してきた。その三井化学が「エッジコンピューティング」を採用し、ハイブリッドクラウドを指向した理由はどこにあるのか。
「まず、『工場の生産を止めることはできない、生産に直結するデータの管理はエッジで行うべき』という基本的な考えがあります。そのうえで、『IoTデータをクラウドに送るタイムロスを回避し、エッジでリアルタイム処理を行いたい』という現実的な要求を考慮したときに、エッジ-クラウドが連携するデザインが最適と判断しました」と黒田氏は振り返る。
クラウドに何らかの問題が発生しても、エッジ=拠点の生産業務に影響があってはならない――この方針は、エッジとクラウドが相互に補完するBCP対策として実装された。Nutanix Cloud Platform搭載のHPE ProLiant DX380 Gen10がこれを実現している。
「私たちは『エッジ環境のクラウド側への延伸』と表現していますが、エッジと同じ仕組みをクラウドで稼働できる、逆にクラウドで運用しているシステムをエッジ側でも稼働できる環境を、HPE ProLiant DX380 Gen10とAWSの連携によって実現しました。予測できない自然災害とこれに伴う大規模停電やネットワーク分断のリスクを最小化するためには、システムとデータ資産を分散配置できるハイブリッドクラウドは極めて現実的な選択です」(黒田氏)
黒田氏らは、Nutanix Cloud Platformが備える「優れた重複排除機能を備えたファイルストレージ」「コンテナネイティブな機能性」「データ連携やティアリングなどクラウド延伸の容易さ」を高く評価してHPE ProLiant DX380 Gen10の採用を決めた。
「Nutanix Cloud Platformが提供する機能をフルに活用して、AWSとのハイブリッドクラウド環境の効果的な運用を進めています。仮想マシンをエッジとクラウドでより柔軟に行き来できるようにするために、Nutanix Cloud Clusters (NC2) on AWSの導入検討にも着手しました」(黒田氏)
Nutanix on HPE ProLiant DXはベストの選択
Nutanix Cloud Platform搭載のHPE ProLiant DX380 Gen10が配備されたエッジ環境では、ウェアラブルデバイスやドローンを活用したユニークな取り組みが加速しているという。
「エッジ環境の整備から1年も経たないうちに稼働システムが100を超えました。『目の前に自分たちが使えるエッジサーバーがある』ことが、ここまで拠点の技術者たちのモチベーションを高めるのかと、まさに嬉しい驚きでした。弊社としては、若手技術者のトレーニングに活用できるプラント運転シミュレーターの開発や、熟練プラント技術者の知識を埋め込んだAI学習モデルの構築にも取り組んでおり、技術と知識の継承を着実に進めています」と黒田氏は笑顔を見せる。
今後の新しいチャレンジは、IoTデータを活用する「デジタルツイン」である。プラント全体を3Dモデル化し、現在の運転状況・定期修繕に役立てることを目指すという。黒田氏は次のように結んだ。
「私たちのビジネスは、政府が示した『重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画』における重要インフラ事業者に指定されています。HPE ProLiant DX380 Gen10が優れたセキュリティ機能と信頼性を備えていることは大きな安心です。およそ1年の運用を通じて、Nutanix Cloud Platformが備える多様な機能の有用性を実感してきましたが、Nutanix on HPE ProLiant DXは私たちにとってまさに最適な選択でした。HCI製品の導入を検討している企業にとっても、ベストの選択になるだろうと思います。HPEには、これからも私たちのチャレンジを支えてもらえる新しい提案を期待しています」
三井化学株式会社
デジタルトランスフォーメーション推進本部
情報システム統括部 基盤グループ
業務基盤チームリーダー
黒田 雅人 氏
ご導入製品情報
HPE ProLiant DX
HCIのパイオニアであるNutanixを稼働させるための専用プラットフォームです。Nutanixが誇る洗練された管理ソフトウェアやツールはそのままに、世界標準の安心サーバー「HPE ProLiant」が提供する先進テクノロジーでNutanixを更に安心・安全にお使い頂ける環境を実現します。
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