お客様導入事例

愛知製鋼株式会社 様

モノづくりの未来を拓く、デジタル設計開発環境の実現

愛知製鋼株式会社 様

所在地:愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地
URL:https://www.aichi-steel.co.jp/

熱流体解析システムにHPE ProLiant サーバーを採用、インフラの性能・信頼性向上と解析業務の効率化に寄与

特殊鋼条鋼、ステンレス鋼、鍛造品などの製造を手がける愛知製鋼では、先端シミュレーション技術を製品の品質/生産性向上に活用している。しかし、その基盤となる熱流体解析システムは信頼性に課題を抱えており、年々大規模化・複雑化する解析ニーズへの対応も不安視されていた。そこで同社では、AMD EPYC™ プロセッサを搭載した日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)の「HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus v2」を新たに採用。信頼性・可用性の大幅な向上を果たすと同時に、高い処理能力を活かしてシミュレーション業務の効率化も実現している。

業種

製鋼業

 

ビジョン

高品質な素材の提供を通して社会への貢献を目指す

 

戦略

流体解析システム基盤をAMD EPYC™ プロセッサ搭載「HPE ProLiantサーバー」で構築

 

成果

• 旧環境と比較してインフラの性能を約30%アップすることに成功

• 同一期間内に処理できる解析業務の件数を約1.5倍に増加

• ラックスペースを80U→11Uと従来の約1/8に削減

• システムの消費電力は、以前の10,000Wあまりから約4,800Wへと半分以下に削減


トヨタグループ唯一の素材メーカーとして、高品質な製品群を提供

 

「よきクルマは、よきハガネから。」というトヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏の強い思いから、トヨタグループ唯一の素材メーカーとして生まれた愛知製鋼。同社では1940年の創立以来、日本の自動車産業を根底から支える重要な使命を担い続けてきた。現在では、機械構造用炭素鋼/合金鋼をはじめとする「特殊鋼条鋼」、建築資材などに用いられる「ステンレス鋼」、自動車のクランクシャフトやステアリング・シャシ̶、トランスミッション部品などの「鍛造品」、磁気センサ、磁石、電子材料・部品などの「電磁品」と、幅広い領域にわたる製品群を提供している。

そのモノづくりの大きな特長となっているのが、「鍛鋼一貫」という言葉で示される総合力だ。同社製品の原材料は、廃車された自動車や建物の解体などから発生する鉄スクラップ。これらを最適に配合した上で電気炉で溶かし、合金などを加えて品質を作り込む。溶けた素材は、顧客の要望に応じた形状・サイズに圧延されるほか、プレス機を用いて自動車部品の形に鍛造される。同社の工場では、これらの工程をすべて同一敷地内で一貫して行えるのである。しかも、製品が世に送り出された後も、その役割を終えればまた鉄スクラップとして新たな製品の材料となる。つまり同社の事業は、環境に過大な負荷を掛けない資源循環型モデルにも則っているのだ。

モノづくりに関わる技術課題を、先端シミュレーション技術で解決

 

こうした同社のビジネスを、先進デジタル技術で支えているのが開発本部 部品開発部 デジタル・ソリューション開発室だ。「当部門では、コンピュータによるシミュレーション技術で、モノづくりに関わる様々な技術課題を解決する役割を担っています。その一環として、熱流体解析システムを用いた解析業務を行っています」こう説明するのは、同部門の近藤真英氏だ。

前述の通り、同社の製鋼工程は鉄スクラップを溶かすところから始まるが、製品にするためにはこの溶けた鋼を冷やさなくてはならない。そして、この材料が冷えていくプロセスが、製品品質を左右する重要なポイントになるのだという。「もし、冷え方が適切でないと、製品が割れてしまったり、内部に『引け巣』が入ってしまったりします。しかも、当社製品は、比較的柔らかいもの、硬いもの、さびないステンレス鋼と、様々な種類が存在します。これらそれぞれによって特性が異なりますので、最適な冷やし方に変えなくてはなりません」と近藤氏は続ける。

生産性のことだけを考えれば、溶けた鋼をできるだけ速く冷やしたいのだという。しかし、あまり速すぎても品質に影響が生じるため、どこがベストなのかを探り出す必要があるのだ。「概念的には、材料を溶かして冷やし固める流れになりますが、実際の生産現場には、材料が速く流れ過ぎないよう一時的に溜めておく設備などもあります。ここについても解析が必要なので、シミュレーションの対象領域も多岐にわたります」と語るのは、同部門の甲村啓伍氏。また、同伊達英人氏も「我々は流体や解析のエキスパートですが、解析の依頼元である生産部門の担当者もそうだとは限りません。専門的な内容を正しく理解してもらうため、丁寧なコミュニケーションも心掛けています」と続ける。

熱流体解析システムの、性能・信頼性向上が課題に

 

このように、デジタルの力を積極的に活用している同社だが、その一方である課題も抱えていた。それはシミュレーション業務の中核を担う熱流体解析システムの信頼性不足である。シミュレーション業務には極めて高いパフォーマンスが要求されるため、これまで同社では処理能力に特化した専用システムを導入・活用してきた。しかしこのシステムは、導入当初から度々トラブルに見舞われてきたのだという。

「最初の1~2年は、毎月何かしらの障害が発生しているような状況で、稼働率も8割程度に留まっていました。ようやく落ち着いてきたと思ったら、今度は経年劣化によるトラブルが頻発。性能自体はそれなりに確保できていたものの、導入からリプレースまでの全期間を通して、安定稼働していた時期があまりありませんでした」と近藤氏は振り返る。

肝心のインフラがこのような状況では、解析業務への影響も避けられない。「シミュレーションには十数時間~数十時間を要しますので、帰宅前に処理を走らせておいて翌朝結果を確認するようにしています。ところが、いざ出社してみたら、処理が失敗していたということも度々でした。もちろん作業は最初からやり直しですから、精神的なダメージも大きい。特に、土日を丸ごと費やして行った処理が失敗していた際などは、やり切れない思いでした」と甲村氏は振り返る。しかも、こうした信頼性の問題に加えて、今後ますます高度化・複雑化する解析ニーズに、現状の環境で対応できるのかとの懸念もあった。

AMD EPYC™ プロセッサ搭載の「HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus v2」でインフラ環境を全面刷新

 

このような課題を解消すべく、同部門では熱流体解析システムのインフラ環境を全面刷新することを決断。旧環境が更新時期を迎えたことを機に、次期システムの中核を担うサーバー製品の選定に着手した。ここで、同部門のAIチームから薦められたのが、「HPEサーバー」である。AIチーム長を務める村瀬博典氏は「現在我々のチームでは、過去の操業実績データなどをAIに機械学習させて、設備の予防保守や製品の不具合防止などに役立てる取り組みを進めています。この機械学習システムのインフラはHPEサーバーで構築していますが、高い性能を発揮してくれているだけでなく、本番稼働開始から3年の間一度もトラブルを起こしたことがありません。この高い性能・信頼性は、熱流体解析システムにおいても大いに役立ってくれることと考えました」と語る。

さらにProLiantサーバーには、もう一つ大きな利点が備わっていた。それはAMD社の高性能CPU「AMD EPYC™ プロセッサ」を搭載した「HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus v2」(以下、ProLiant DL385)がラインナップされている点だ。「システムの性能・信頼性向上はマスト要件ですが、とはいえあまり多額のコストは掛けられません。その点、AMD EPYC™ プロセッサは、最新アーキテクチャの高性能プロセッサである上に、価格面でも比較的リーズナブル。インフラのコストパフォーマンスを高めていく上で、大きな効果が期待できます。もし、今回の取り組みで成果を上げられれば、社内の他システムでも同様の成果が見込めます。そこで、我々が試金石となって、AMD EPYC™ プロセッサ搭載モデルのProLiant DL385を採用することにしました」と近藤氏は語る。

愛知製鋼株式会社
開発本部 部品開発部
デジタル・ソリューション開発室
近藤 真英 氏

愛知製鋼株式会社
開発本部 部品開発部
デジタル・ソリューション開発室
AIチーム長 村瀬 博典 氏

愛知製鋼株式会社
開発本部 部品開発部
デジタル・ソリューション開発室
甲村 啓伍 氏

愛知製鋼株式会社
開発本部 部品開発部
デジタル・ソリューション開発室
伊達 英人 氏

高いパフォーマンスを活かし、解析件数を従来の約1.5倍に増加、信頼性の問題も完全に解消

 

こうして、2023年4月より本番稼働を開始した新熱流体解析システムでは、計算ノード用2台+ファイルサーバー用1台と合計3台のProLiant DL385を導入。前者はこれまで述べてきた解析業務用だが、後者は過去の解析データを保存・再利用する目的で用いられている。

システム構築面での工夫としては、スペックにとことんこだわった点が挙げられる。計算用ノードのCPUコア数は64コアのCPUを2基搭載したサーバー2台の合計256コア。メモリ容量も1台あたり512GBの合計1TBが確保されている。「旧環境のコア数は合計136コアだったため、計算能力は以前より大幅に強化されています。また、ProLiant DL385の導入と並行してソフトウェア環境の改良も行いましたので、システム全体の性能は旧環境比で約20~30%アップしています。この結果、旧環境では対応が難しかった複雑なシミュレーションも走らせられるようになりました」と伊達氏は説明する。

これにより、解析業務の大幅な効率化が実現。近藤氏は「繁忙期には数多くの解析依頼が寄せられるため、毎日シミュレーションを走らせないと追い付かないような状況でした。その点、新システム導入後は、同じ期間内でも以前の約1.5倍程度の依頼件数をさばけています。できることが増えると依頼も増えますので、なかなか我々も楽にはなりませんが、とはいえパフォーマンスは高ければ高いに越したことはありません」と語る。

もちろん、解析の依頼元である生産部門側にとっても、シミュレーションの結果がスピーディに戻ってくることのメリットは大きい。製品の品質向上や歩留まり改善に役立つのはもちろんのこと、顧客や市場の新たな要望にもより柔軟に応えられるようになる。「せっかく高性能なインフラを手に入れたわけですから、今後は将来に向けた先行開発にも力を入れていきたい」と語る近藤氏。まさに新熱流体解析システムは、「ハガネづくり」のデジタル・トランスフォーメーションを牽引する重要な役割を果たしているのだ。

加えて、長年の懸案であった信頼性・可用性の問題も完全に解消。本稼働開始以来ノートラブルで稼働を続けているため、普段はインフラのことを忘れていられるとのことだ。甲村氏は「サーバーの状況確認や電源のオン/オフを行いたい際なども、ProLiantサーバーには専用管理チップの『iLO 5(integrated Lights-Out 5)』が搭載されています。旧環境ではこうした仕組みが無かったため、何かあった際には、わざわざ別の建屋にあるサーバー室までいかなくてはなりませんでした。それが現在では、リモートワーク中の自宅からでも各種の操作が行えます。おかげで、運用管理負担も格段に軽減されました」と満足げに語る。ちなみに、iLO 5には、ファームウェア改ざんなどを検知して自動修復する「シリコンレベルの信頼性」も備わっている。今回のような設計開発環境においては、こうしたセキュリティ機能があることも非常に重要なポイントだ。

大幅な省スペース・省電力化も実現、デジタルによるモノづくり革新を、今後もさらに加速

 

インフラ環境の最適化という面でも、ProLiant DL385がもたらしたメリットは大きい。旧環境ではサーバーラックを丸ごと2本分、80U分のスペースを占有していたが、新システムはわずか11Uと約1/8の省スペース化を実現している。またシステムの消費電力についても、以前の10,000Wあまりから約4,800Wへと半分以下に減少。その一方で、前述の通りパフォーマンスは大きくアップしているのである。

「ノード数も従来の17ノードから3ノードに減っていますので、ハードウェア障害によるトラブルの可能性も少なくなります。もちろん、万一障害が起きた時の影響は大きくなりますが、我々AIチームの環境も含めてノートラブルで稼働していますので、その点もあまり心配していません」と村瀬氏は語る。

同社では、今回の成果を踏まえて、今後もシミュレーション環境の強化・改善を進めていく考えだ。「当社の競合企業は国内外に数多く存在しますが、デジタルの分野ではナンバーワンを目指していきたい。たとえば、その取り組みの一つとして、GPUの活用が挙げられます。現在はまだソフトウェア側の対応が十分ではないのですが、先々に向けた検証用としてProLiant DL385にも1枚だけGPUを積んであります」と近藤氏は語る。

なお、HPE ProLiant Gen11サーバーは、ニーズに合わせて最適な筐体サイズに変更できるモジュールアーキテクチャを採用しており、GPUの高集約が可能だ。たとえば、HPE ProLiant DL385 Gen11の場合は最大4ダブルワイド/8シングルワイドのGPUを搭載できる。

同社ではクラウドも利用しているが、クラウドはクラウドなりに使い勝手の問題もあるため、オンプレミスの計算資源も引き続き確保していくとのこと。近藤氏は「もちろん、予算には限りがありますので、性能要件とコスト要件をうまく両立させる必要があります。コストパフォーマンスに優れたAMD EPYC™ プロセッサ搭載ProLiantサーバーは、そうした面でも有力な選択肢となり得ると考えています」と述べた。

(写真左より)

愛知製鋼株式会社 開発本部 部品開発部 デジタル・ソリューション開発室 甲村 啓伍 氏/同 伊達 英人 氏/同 近藤 真英 氏/同 開発本部 部品開発部 デジタル・ソリューション開発室 AIチーム長 村瀬 博典 氏


ご導入製品情報

HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus v2

HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus v2サーバーは、第3世代のAMD EPYC™ 7000シリーズプロセッサーを搭載し、前世代と比較してより高いパフォーマンスを実現し、データ転送速度とネットワーク速度が向上しています。グラフィックアクセラレータのサポート、より高度なストレージRAIDソリューション、ストレージ密度と相まって、ML/DLやビッグデータ分析に理想的な選択肢となっています。


ソリューションパートナー

SCSK株式会社 様


所在地:東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント

URL:https://www.scsk.jp/

アイチ情報システム株式会社 様


所在地:愛知県刈谷市住吉町3丁目5番地

URL:http://www.asc21.net/


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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