北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンターが、ゲノム解析による革新的な「感染症検査法」の開発を推進



北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 様

 

第2世代AMD EPYC™ プロセッサー(2CPU/128コア)搭載HPE ProLiant DL385 Gen10 Plusにより解析能力を大幅に強化


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中、世界中の研究者がその制圧に向けて心血を注いでいる。北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンターは、我が国におけるCOVID-19の診断法および治療法の開発、疫学調査等における重要な役割を託された。注目すべきは、より手軽で迅速な診断を可能にする革新的な診断法の研究だ。これに活用される「ナノポアシーケンサー」から得られたデータの解析に威力を発揮するのが、第2世代AMD EPYC™ プロセッサー搭載のHPE ProLiant DL385 Gen10 Plusサーバーである。

業界

大学・研究機関

 

目的

COVID-19やインフルエンザに代表される人獣共通感染症の克服に寄与する、より迅速かつ安価で、どこでも実施可能な網羅的なゲノム解析に基づく感染症診断方法の確立。

 

アプローチ

次世代シーケンサーを用いた網羅的な病原体ゲノム解析により、「一度の検査で何の感染症かを診断」できる検査システムの実現を目指す。

 

ITの効果

• 第2世代AMD EPYC ™ プロセッサー(2CPU/128コア)搭載のHPE ProLiant DL385 Gen10 Plus サーバーを採用し、増大する計算要求に応える高性能な解析システムを実現

• シーケンサーから得られたDNA配列のアライメント、変異同定等の処理性能を大幅に向上

• 5年前に導入した8ソケットサーバー(8CPU/80コア)の2倍近い処理性能を2ソケット機で実現

 

ビジネスの効果

• 複数の感染症を網羅的に診断できる、迅速な検査への道をひらく技術開発を推進

• 低コストのナノポアシーケンサーを利用し、高額な検査機器が不要でコストを抑えた感染症検査を可能に

• 空港や小規模なクリニックでも数時間で検査が可能な感染症診断システムの実現に向け前進

• アジア・アフリカ圏など感染症診断システムが未整備の国や地域への適用も可能に

チャレンジ

人獣共通感染症の克服に向けた迅速な感染症診断法の確立へ

 

北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンターは、「人獣共通感染症」の第一人者である喜田宏獣医学部長(当時)により2005年に設立された。文部科学省が認定する人獣共通感染症学分野の共同利用・共同研究拠点だ。世界的な流行を繰り返す新型インフルエンザ、人類の新たな脅威となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などは、野生動物由来の感染症(=人獣共通感染症)とされている。同センター 国際協力・教育部門 准教授の山岸潤也氏は次のように話す。

「野生動物から家畜などを経て人間に感染する悪性の感染症は、現在も人類を脅かし続けています。人間に感染する可能性のある動物の病原体を先回りして見つけ出し『予防』すること、より正確かつ効率的に『診断』する新技術を開発すること、病原体の性質や感染メカニズムを知ってワクチンや『治療法』を確立すること――これらの研究・開発・確立を通じた人獣共通感染症の制圧が、人獣共通感染症リサーチセンターのミッションです」

同センターは、我が国におけるCOVID-19の診断法および治療法の開発、疫学調査等においても重要な役割を担っている。国内外の関係機関に助言や疫学専門家の派遣を行うとともに、治療法の開発においては2020年3月に製薬会社との共同研究を通じた有望な化合物の確認を報告した。山岸氏は、「診断法」への取り組みについて次のように紹介する。

「COVID-19の診断はPCR検査が主流となっていますが、検査設備が高額であることや結果を得るまでに時間を要するなどいくつかの課題があります。また、PCR検査は『感染しているか、いないか』のような二者択一的な診断には有効ですが、『何に感染しているか』の特定は困難です。現在私が参加している研究チームでは、次世代シーケンサーを用いた網羅的な病原体ゲノム解析により、『一度の検査で何の感染症かを特定できる検査システム:Diagnosis-by-Sequencing』の開発に取り組んでいます」

すべての病原体は固有のゲノムを持っており、その配列を調べることで病原体を特定できる。だが、たとえば「発熱」という症状に対してPCR検査でCOVID-19ではないと診断されたとき、インフルエンザなど他の可能性を診断するには別の検査を行わなければならない。

「新しい検査システムでは、手のひらに載るほど小さな『ナノポアシーケンサー』を使って病原体のゲノムを解析し、これをゲノムデータベースと照合して病原体を特定します。この方法には、高価な検査設備を必要としないため小規模なクリニックでの導入・活用も可能というメリットもあります。シーケンサーにかけるまでのプロセスを確立できれば、空港などの水際対策の強化にも利用できるでしょう」(山岸氏)

自然宿主と伝搬経路を特定し感染症の発生や拡大に先手を打って対策

 

現在、山岸氏が取り組んでいる研究テーマは大きく3つある。ひとつは先に紹介した「感染症検査システム:Diagnosis-by-Sequencing」の開発。もうひとつは、「トランスクリプトーム解析」と呼ばれるアプローチで、生体細胞内における遺伝子発現状況を網羅的に把握するチャレンジ。3つ目は、ザンビア大学 獣医学部と連携した疫学調査である。

「トランスクリプトーム解析では、数万の遺伝子を一度にプロファイリングして細胞機能の全体像を描き出します。感染症を対象に『細胞が原虫やウイルスなどの病原体に感染したときどのような影響を受けるのか、どのような反応をするのか』、あるいは『細胞が備えている防御機構と、病原体がその防御をすり抜ける仕組み』などを、遺伝子発現から明らかにしていきます」と山岸氏は話す。

人獣共通感染症リサーチセンターはザンビア大学獣医学部と緊密な協力関係を築いており、ザンビア共和国を中心とする南部アフリカにおける疫学調査のための活動拠点を同学内に開設している。

「現地でのフィールド調査を起点に、家畜や野生動物、蚊やダニなどの媒介動物からウイルスなどを採取し、ゲノムと病原性を明らかにしてデータベース化していきます。また、既知の感染症に対しては自然宿主と伝搬経路を特定し、感染症の発生や拡大に先手を打って対策できるようにすることも私たちの重要なミッションです」(山岸氏)

こうした山岸氏の幅広い研究テーマと、調査・実験・解析・データベース化に至るプロセスを全体支えているのが、第2世代AMD EPYC™ プロセッサーを搭載するHPE ProLiant DL385 Gen10 Plusサーバーである。

北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター

国際協力・教育部門
准教授
山岸 潤也 氏
博士(農学)

シネックスジャパン株式会社

プロダクトマネジメント部門
第2プロダクトマネジメント本部
PM2部
白井 泰博 氏

ソリューション

2CPU/128コア搭載サーバーが8CPU/80コア機の性能を大きく上回る

 

7nmプロセスルールで製造される「第2世代AMD EPYC™ プロセッサー」は、業界最大となる1ソケットあたり64コア/128スレッドを実現したハイエンドCPUである。新たにサポートしたPCIeGen4のI/O帯域はPCIe Gen3の2倍(ソケットあたり256GB/s)に達し、DDR4-3200メモリのサポートと8チャネルでのアクセス、最大256MBの大容量L3キャッシュ搭載と合わせてHPE ProLiant DL385 Gen10 Plusサーバーの高性能化に大きく寄与している。

「山岸先生の解析要求を慎重に検討し、より多くのコア数で並列計算を行えることを最優先で考えて、スレッド数と扱うデータ量に見合ったメモリをバランスよく組み合わせました。第2世代AMD EPYC™ プロセッサーを選定することで、計128コア/256スレッドを1台の2Uサーバーで実現しています。予算内で最大のパフォーマンスを発揮できる構成をご提案できたと考えています」とシネックスジャパンの白井泰博氏は話す。

シネックスジャパンは、日本ヒューレット・パッカードと緊密に協力し、HPEプラットフォーム製品を最先端の研究分野でフルに活用するためのコンサルティングサービスを提供している。日本ヒューレット・パッカードのソリューションセンターを利用した製品導入前のベンチマークテストも好評だ。

HPE ProLiant DL385 Gen10 Plus(2CPU/128コア)は、5年以上利用してきた8ソケット/80コアの計算サーバーの後継機として導入された。山岸氏は、2017年に発表された「第1世代EPYC」から、再びサーバー市場に挑んできたAMDに注目していたという。

「典型的な解析要求としては、シーケンサーから得られた数千万リードの配列データを、ゲノムデータベースと照合して整列させる『アライメント』という処理があります。対象にもよりますが、既存環境で丸1日を要していたような処理を一晩で完了できるようになりました。EPYC搭載サーバーにより、従来の1.5~2倍近い性能が得られたものと考えています」

山岸氏はBowtie やBLASTなどのOSSを中心に利用しているが、いずれもメニーコアによる並列処理が有効だ。白井氏が次のように続ける。

「第2世代AMD EPYC™ プロセッサーは、メモリ帯域が広いことも大きな優位性です。計128コアからのメモリアクセスを高速に実行しボトルネックを発生させません。ゲノム解析におけるアライメントやアセンブルの高速化に寄与し、ループ処理でも多くのコア数が活かせます」

「解析性能は高いほどいい、ストレージ容量は大きいほどいい」と山岸氏は言う。それほどゲノム解析におけるデータ量と計算リソース要求の増大は著しい。

「長鎖型シーケンシング技術に代表されるシーケンサーの進化により、扱うデータ量は右肩上がりで増えています。また、ゲノムやトランスクリプトームを単一細胞レベルで解析する『シングルセル解析』への取り組みが本格化すると、データ増大がさらに加速することは明らかです。コンピューティングリソースへの要求には際限がありません」(山岸氏)

この課題に向き合うための山岸氏の構想のひとつに、GPUの活用がある。白井氏が次のように話す。

「HPE ProLiant DL385 Gen10 Plusでは、最大128コア構成に加えて最新のNVIDIA A100GPUをご利用いただけます。PCIe Gen4の広い帯域を活かしたGPUパフォーマンスが、解析処理のさらなる高速化を実現し、結果としてバイオインフォマティクス分野の発展に貢献することにもつながります」

ベネフィット

感染症に国境はなく、しかも人類が対峙すべき感染症は増えている

 

人獣共通感染症リサーチセンターが取り組むのは、「感染症の制圧」という人類の悲願とも言えるテーマだ。しかし、COVID-19の例を挙げるまでもなく未知の感染症の克服には多くの困難が伴う。さらに、世界中で流行を繰り返す既知の感染症も、人体の防御機構を巧妙にすり抜けるような進化を遂げている。

「感染症に国境はありません。また、人間の活動領域の拡大にともない、野生動物の病原体が人間に感染するリスクも増大しています。だからこそ、人間だけでなく野生動物や環境を含めた疫学調査を徹底的に行い、その発生を予測し、流行のリスクに先回りして対策することが重要です。『一度の検査で何の感染症かを特定できるDiagnosis-by-Sequencing』は、治療法や治療薬の確立した感染症への対応に即座に貢献できるものと期待しています。COVID-19に限らず多くの感染症で治療方法が整備されていく過程で『診断』の重要性はさらに高まることでしょう」と山岸氏は話す。

山岸氏が参画しているプロジェクトのひとつでは、ザンビアにおける新型コロナウイルスのゲノム解析を行っており、これにはHPE ProLiant DL385 Gen10 Plus(2CPU/64コア)が利用されている。山岸氏は次のように語って締めくくった。

「先行して導入した64コア機の性能に驚かされて、直後に128コア機の導入を進めた経緯があります。進化した最新のハードウェアを利用するメリットを日々実感しています。シネックスジャパンとHPEには、私たちとともに『感染症から世界を救う』ミッションを支えてほしいと願っています」

ソリューションパートナー

シネックスジャパン株式会社 様

 

所在地:東京都江東区東陽6-3-1 東京イースト21 ビジネスセンター 2F

URL:https://www.synnex.co.jp/

ご導入企業様

北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 様

 

所在地:北海道札幌市北区北20条西10丁目 人獣共通感染症リサーチセンター

URL:http://www.czc.hokudai.ac.jp/