キャッシュレスの未来を支える決済システムのモダナイゼーション

三井住友カード株式会社 様

所在地:東京都江東区豊洲二丁目2番31号 SMBC豊洲ビル
URL:https://www.smbc-card.com/

 

株式会社日本総合研究所 様

所在地:東京都品川区東五反田2丁目18番1号大崎フォレストビルディング
URL:https://www.jri.co.jp/

三井住友カードがHPE Virtualized NonStopを採用し、オーソリシステムのモダナイゼーションを推進するとともに将来を見据えたテクノロジーの評価に着手

 

キャッシュレス化の進展とともに、これを支える「社会インフラシステム」の重要性が改めて注目されている。三井住友カードでは、クレジットカード決済時のオーソリゼーション(与信・信用照会)を担うシステムの一部にHPE Virtualized NonStopを採用し、24時間365日の無停止運用を維持しながらモダナイゼーションを推進中だ。本プロジェクトをリードする日本総合研究所は、仮想化技術やオープンテクノロジーを積極的に活用し、新しい時代に求められる社会インフラシステムの実現を目指している。

業種

IT

 

ビジョン

三井住友カード向けオーソリシステムのモダナイゼーション

 

戦略

24時間365日の無停止運用を維持しながら最新テクノロジーを積極活用

 

成果

・HPE Virtualized NonStopを採用しゲートウェイシステムを仮想化

・無停止運用を実現しながら通信手順や開発言語など主要技術をオープン化

・決済トランザクションの変化に柔軟に対応するためのテクノロジーを検証

・リスクとコストを最小化しながらシステムのモダナイゼーションを推進

 

ご導入製品

HPE ProLiant DL380 Gen10

HPE 3PAR StoreServ 8400

HPE Virtualized NonStop

社会インフラとしての使命を担う「止まらないシステム」

 

三井住友カードカードは、世界で圧倒的なシェアを持つ「Visa」の日本におけるパイオニアとして広く親しまれている。2020年度のカード会員数は4,986万に達し、年間カード取扱高は20兆円を大きく超えた。三井住友フィナンシャルグループの中でもひときわ目覚ましいビジネス成長は、顧客にとって「安全・安心・便利なペイメントサービス」を一貫して追求してきた企業姿勢に支えられている。

日本総合研究所(以下、日本総研)は、三井住友フィナンシャルグループにおけるITソリューションのエキスパートとして、三井住友カードをはじめグループ各社の基幹業務システムの開発・運用に長年にわたり携わっている。同社 カード基幹システム本部 カード決済システム部 次長の北氏義康氏は次のように話す。

「カード取扱高が大きな伸びを示す中、決済を担う基幹システムの処理量も増え続けています。私たちのミッションは、お客様がいつでも快適に三井住友カードをご利用いただくためのシステムサービスを提供することにあります。24時間365日無停止かつコンマ秒単位で、確実にオンライン決済トランザクションを完了させなければなりません」

オーソリゼーション(与信・信用照会)を担うシステムは、最も高い可用性・信頼性、リアルタイム処理性能が求められる環境のひとつだ。この「オーソリシステム」を長年にわたり支え続けているのが、HPE NonStopサーバーである。

「オーソリシステムは、クレジットカード決済システムという『社会インフラシステム』の一翼を担っています。私たちは1983年のNonStopⅡ(当時はタンデムコンピューターズ社)の導入以来、HPE NonStopサーバーを数世代にわたって使い続けています。その理由は、HPE NonStopサーバーが『止まらないシステム』であり、メンテナンスや更新に際しても『止めなくていいシステム』だからです」(北氏氏)

HPE NonStopサーバーは、独自のNonStopプロセスペア技術により100%の可用性を実現するとともに、性能と規模を直線的に拡張できる。さらに、無停止データベースNonStop SQLを提供するなど他のシステムにない優れた特徴を備えている。2019年、北氏氏らはオーソリシステムの中核サーバーとしてHPE Integrity NonStop NBシリーズを採用。同じく2019年に、仮想化テクノロジーを採用したHPE Virtualized NonStopの検証・導入プロジェクトを立ち上げた。

HPE Virtualized NonStopの検証・導入プロジェクトを開始

 

HPE NonStopサーバーは、冗長化されたハードウェア上で実行プロセスを冗長化する「NonStopプロセスペア技術」によって、障害時にシステムを再起動することなくトランザクションを継続させる。HPE Virtualized NonStop(以下、HPE vNonStop)は、標準的なインテル® Xeon® プロセッサー搭載x86サーバー上でVMware vSphereによる仮想サーバー環境に「NonStopプロセスペア技術」を実現する製品だ。プライマリープロセスに何らかの問題が発生したときに、瞬時にバックアッププロセスが処理を引き継ぐことで100%の可用性を実現する。

「社会インフラシステムとしての役割を担いながら、クレジットカード決済システムをどのように進化させていくべきか、時間をかけて議論してきました。私たちが導き出した方針は、仮想化をはじめとする業界標準テクノロジーを採り入れた『モダナイゼーションのトライアル』を実施することです」とプロジェクトマネージャーを務めるカード決済システム部次長の小此木崇志氏は話す。

専用サーバー、レガシーな通信手順、ニッチな開発言語とアプリケーションを業界標準テクノロジーに置き換える対象として選ばれたのが、与信業務端末とオーソリシステム/ホストを接続するための「ゲートウェイシステム」だった。

「お客様がカードを紛失されたときに、そのカードを利用停止にする手続きは一刻を争う対応のひとつです。全国の拠点に設置された数千台規模の与信業務端末は、こうしたお客様からの様々なお問合せやご要望にお応えするために24時間365日休みなく利用されます。既存のゲートウェイシステムは商用UNIXシステムで運用されていますが、これをHPE vNonStopと業界標準テクノロジーに置き換えます」(小此木氏)

小此木氏らは、2020年初頭にHPE vNonStopとHPE NonStop Application Server for Java(以下、NSASJ)による開発・テスト環境を構築し、Javaベースのアプリケーション開発を進めてきた。NSASJを利用すればHPE NonStopサーバー上にJava Platform、Java Enterprise Edition(Java EE)環境を容易に実装できる。データ交換にはJavaScript Object Notation(以下、JSON)を利用する。

「HPE vNonStopの本番環境での採用は、『x86サーバー上で実現する無停止システムの実用性』を評価するとともに、決済トランザクションの変化に対応するための『サーバー仮想化技術の有効性』を確かめる狙いもありました。決済システムの将来に向け、24時間365日無停止運用を前提にしながら、私たちにとって利用価値の高いテクノロジーを見極めていく考えです」(北氏氏)

ソフトウェアスタックで無停止システムを実現する意義

 

新しいゲートウェイシステムには、ホスト通信のためのプロトコル変換やゲートウェイ機能など複数の役割が集約される。北氏氏、小此木氏を中心とするプロジェクトが掲げたテーマは次の通りだ。

①インテル® Xeon® プロセッサー搭載x86サーバーで稼働するHPE vNonStop上にJavaアプリによる無停止システムを構築

②SNAプロトコルから脱却しJSONベースの電文とREST APIによる通信手順へ移行

③バックエンドのアプリケーションを改修することなく、システムリプレースを実現

④将来のオーソリシステムのアーキテクチャー最適化を見据えたHPE vNonStopの評価

「ソフトウェアスタックで無停止システムを実現するHPE vNonStopは、私たちにとって多くのメリットがあります。ハードウェアとソフトウェアが分離されることで、それぞれのライフサイクルが異なることによる諸問題が解決できます。また、標準ラックに収容するx86サーバーで無停止システムを実現できれば、三井住友フィナンシャルグループの共通基盤システム上で無停止サービスを提供することも将来的には視野に入れることが出来るでしょう」と北氏氏は期待を示す。

バックエンドのホストとの通信に使われてきたSNAプロトコルは、REST APIとJSONに置き換えられる。これにより、「REST APIを介して無停止システムが社内外の多様なシステムと連携する道も拓かれる」(北氏氏)という。

「与信業務を支えているバックエンドシステムに手を入れることなく、Windows PCによる与信業務端末のユーザーインターフェースをより使い勝手の良いものに洗練させていきます。Javaアプリケーションの開発は豊富なエンジニアリソースを活かせますので、大規模な開発要求にも容易に応えられます。HPE vNonStopなら、最新テクノロジーとレガシーのそれぞれの良いところを活かせます。既存資産を保護しながら、システム更新とモダナイゼーションを実現するためのひとつの有効な選択肢になるでしょう」(小此木氏)

オーソリシステムの未来を見据えたチャレンジ

 

プロジェクトがHPE vNonStopの検討を開始した2019年当時、世界を見渡してもクレジットカード決済システムへの採用例は見当たらなかったという。国内でも初となるHPE vNonStopの採用は、オーソリシステムの未来を見据えた新しいテクノロジーへのチャレンジでもあった。小此木氏はプロジェクトに先立って渡米し、HPE NonStop開発チームとの対話を経てHPE vNonStopの導入への手応えを得たという。

「長い歴史のあるHPE NonStopサーバーは、社内の一部ではレガシーシステムと思われていました。HPEの開発チームとの対話を通じて、HPE NonStopサーバーが、仮想化やJavaをはじめ実用性の高い業界標準テクノロジーを採り入れながら着実に進化していることを知りました。HPE NonStopサーバーはモダンな使い方ができるシステムであること。最新技術とレガシーを融合ができるのが、HPE NonStopサーバーのメリットであることを社内で報告しました」(小此木氏)

NFC Pay方式などの「タッチ決済」の普及がクレジットカードの小口決済を拡大させている。キャッシュレス化の更なる進展は、三井住友カードのオーソリシステムにも新たな課題を突き付ける。社会インフラシステムとしての使命を担いながら、変化するビジネス要求にどう応えていくか。いかにコストを抑えながら増え続けるトランザクションに対応していくか――その解決のヒントもHPEにあると北氏氏は言う。

「HPE GreenLakeは月額・従量制の費用処理が可能で、仮想化テクノロジーとの親和性が高いことに注目しています。トランザクションの増減に合わせてサーバーリソースを伸縮させ、使用量に応じた課金モデルが実現されればコストメリットは大きいはずです」

経済産業省が発表したキャッシュレス・ビジョンでは、「2025年までにキャッシュレス決済比率40%」を達成するという目標を掲げている。その中心を担うのは、三井住友カードをはじめとする「進化するクレジットカードサービス」である。北氏氏は次のように話して締めくくった。

「ゲートウェイシステムへのHPE vNonStopの適用は、『ミッションクリティカルな本番システムで、HPE vNonStopの実効性を見極める』という大きな狙いがあります。24時間365日無停止で運用しながら期待通りのパフォーマンスを発揮できるなら、HPE vNonStopの適用範囲をさらに拡大できるでしょう。x86サーバー上で実現する無停止システムには、大きなポテンシャルがあると確信しています。HPEとHPE NonStopサーバーには、これからも私たちのミッションを支え続けてもらえることを期待しています」

株式会社日本総合研究所

(左から)カード基幹システム本部 カード決済システム部 次長 小此木 崇志 氏 / カード基幹システム本部 カード決済システム部 川名 達也 氏 / カード基幹システム本部 カード決済システム部 千葉 裕也 氏 / カード基幹システム本部 カード決済システム部 次長 北氏 義康 氏


ご導入製品情報

HPE NonStop family of systems

ビジネス継続性と100%のフォールトトレランスが求められる、ミッションクリティカルな環境に合わせて新規設計されたHPE NonStopシステムは、大規模なビジネスニーズやオンライントランザクション処理およびデータベースの要件に対応すると同時に、ダウンタイムのリスクを排除します。


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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導入ハードウェア

導入ソフトウェア

HPE NonStop Application Server for Java